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月刊中小企業レポート
更新日:2007/05/20

新しい中小企業組合制度の概要(最終回)
~中小企業組合制度が改正されました~

 平成19年4月1日から中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律(平成18年6月15日、平成18年法律第75号)が施行されます。また、この改正された法律を施行するための関係政省令等も施行されました。
 これにより、中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合・連合会、事業協同小組合、火災共済協同組合・連合会、企業組合、中小企業団体の組織に関する法律に規定する商工組合・連合会、協業組合の運営方法が大きく変わり、また商店街振興組合法も改正されておりますので、改正法及び政省令の内容をご理解いただき、適切に対応することが必要です。
 改正法の概要を3月号から3回に亘り掲載いたしました。制度内容等についてご不明な点は中央会連携支援部又は各事務所へお問い合わせください。

一般共済組合が対応しなければならない改正点(一般共済組合改正点)

(3月号の6P「一般組合改正点」に追加して)

  1. 共済事業に関する定義の創設
    火災共済事業以外の共済事業の定義が創設されました
     これまで、中協法には、火災共済事業以外の例えば生命、自動車などの共済事業の明確な定義規定がありませんでした。今般、この共済事業の定義が規定されました。
     組合員から事前に何らかの資金(賦課金を含む)を徴収し、何らかの事故が発生した時に、組合員に対して一定の金銭を支払うこととしている場合には、事故の内容及び慶弔金、見舞金といった名称に関わらず共済事業に該当します。
     共済事業に該当した場合、保険業法に類似した諸規制が適用されることとなりますので、これに対応することが必要になります。

    規制対象となる共済事業であるかどうかは組合員に支払われる金額が10万円を超えるか否かで判断されます
     この共済事業に該当するか否かは、組合員である1契約者(正確には1被共済者当たり)に対して支払う金額(共済金額)が10万円を超えるものであるか否かで判断されます。
     この場合の「10万円超」の適用は複数の共済契約がある場合には、それぞれの契約ごとに判断されます。
     したがって、実施事業の名称が共済事業でなく、例えば慶弔見舞金等の給付であっても、金額的に共済事業の範疇に入る場合は共済事業とみなされ、規制の対象となることに留意する必要があります。共済事業に該当しないようにするためには、給付金額(共済金額)を10万円以下に引き下げるか、保険会社の保険に切り替えることが必要です。特に、既に平成19年度の事業年度が既に始まっている組合では、事業年度中に何らかの対応が必要となりますので留意が必要です。

    商工組合・商工組合連合会では、共済金額が10万円を超える共済事業の実施が禁止されます
     商工組合、商工組合連合会においては、平成19年4月1日以降、共済金額が10万円を超える共済事業の実施が禁止されますので、十分にご注意ください。経過措置も設けられていません。
     共済事業とみなされない範囲としては、中協法と同様の規定が中団法に置かれています。

  2. 共済規程の作成と認可

     共済事業を実施する場合、共済事業の内容、共済事業の実施方法、共済掛金・責任準備金の算出方法などを内容とした共済規程を作成し、行政庁の認可を受ける必要があります。法律施行日に共済事業を実施している場合は、施行日から6か月間は引き続き、共済事業を実施することが可能であり、その期間中に行政庁の認可を受けることが必要です。

〈定款参考例〉

(事業)
第○条 本組合は、第○条の目的を達成するため、次の事業を行う。
 (○)組合員のためにする○○に生ずる損害又は○○に生ずる傷害をうめるための○○共済事業

  1. 第1項第○号に掲げる共済事業の内容及び実施に関する事項は、共済規程で定めるものとする。

※参考

(事業)
第○条 本組合は、第○条の目的を達成するため、次の事業を行う。
 (○)前号の事業のほか、組合員の福利厚生に関する事業

  1. 第1項第○号の規定により実施する共済事業(慶弔見舞金給付を含む)は、共済契約者1人につき共済金額の総額が、○○万円を超えてはならないものとする。
  1. 共済事業実施に係る諸規制(共済事業と他の事業との区分経理、経費賦課の禁止、責任準備金等、余裕金運用の制限、外部監査の導入、共済計理人の選任・関与、重要事項の説明義務、業務・財務に関する説明書類の公衆縦覧、共済代理店規定の整備、共済金額の削減、共済掛金の追徴に関する事項の定款への記載、員外利用に関する定義の見直し)

    法に規定する共済事業に対しては、次の規制が導入されます
    (1)共済事業と他の事業との区分経理
     組合員数(連合会の場合は会員組合の組合員数)が1、000人以下の組合においては、共済事業と共済事業以外の事業を兼業することは可能ですが、この場合、共済事業と共済事業以外の事業を区分して経理することが必要となります。区分された経理間での資金の流用は禁止され、また、共済事業の会計に属する資産を担保にして共済事業以外の事業に関する資金調達をしてはならないとされています。

    (2)賦課金徴収の禁止
     共済事業については、事業費を含めて掛金を設定することが一般的であるため、共済事業に関する賦課金の徴収は禁止されます。

〈定款参考例〉

(経費の賦課)
第○条 本組合は、その行う事業(共済事業を除く)の費用(使用料又は手数料をもって充てるべきものを除く)に充てるため、組合員に経費を賦課することができる。
  1. 前項の経費の額、その徴収の時期及び方法その他必要な事項は、総会において定める。
     (注)共済事業(付帯事業を含む)のみを行う組合は、本条を削除すること。

(3)責任準備金等の積立て
 共済契約に基づいた共済金の支払に充当するための責任準備金や支払準備金の積立てが義務づけられます。また、利益準備金の積立て基準が引き上げられます(毎事業年度の利益の10分の1以上が5分の1以上に、積立限度額が出資総額の2分の1から出資総額へ)。

〈定款参考例〉

(法定利益準備金)
第○条 本組合は、出資総額に相当する金額に達するまでは、毎事業年度の利益剰余金(ただし、前期繰越損失がある場合には、これをてん補した後の金額。以下、第○条及び第○条において同じ)の5分の1以上を法定利益準備金として積み立てるものとする。

  1. 前項の準備金は、損失のてん補に充てる場合を除いては、取り崩さない。会計帳簿等の保存の義務化、会計帳簿の閲覧請求要件の緩和

(4)余裕金運用の制限
 共済事業を実施する組合に対しては、組合員数が1、000人を超えていなくても、余裕金の運用が制限されます。制限の内容は4月号19ページの余裕金運用の制限と同様です。
(5)外部監査の導入
 年度末時点での負債総額が200億円を超える組合は、翌年度において公認会計士や監査法人の会計監査が義務づけられます。なお、共済事業と他の事業を兼業している場合であっても、その負債総額は按分して適用することはできません。
(6)共済計理人の選任・関与
 共済計理人(共済事業の数理計算に専門的な知見のある者)を共済事業に関与させることが義務づけられます(契約期間が1年未満のもの、満期返戻金がないものは適用除外)。
(7)重要事項の説明義務、業務・財務に関する説明書類の公衆縦覧
 組合員である契約者に対して重要事項を説明する義務や、公衆に対して業務・財務に関する説明書類の公表が義務づけられます。
(8)共済代理店規定の整備
 共済事業の募集・代理契約を行う共済代理店についても、保険業法と同様の行為規制が導入されます。
(9)共済金額の削減、共済掛金の追徴に関する事項の定款への記載
 共済事業の損失が発生した場合に総会の議決により、組合員である契約者に対して、共済金額の削減や共済掛金の追徴ができる旨の規定を定款に記載することが義務づけられます。

〈定款参考例〉

(共済金額の削減及び共済掛金の追徴)
第○条 共済事業に損失を生じた場合であって、積立金その他の取崩しにより補てんすることができない場合は、総会の議決により共済金を削減し又は共済掛金を追徴することができるものとする。

  1. 共済金の削減は、損失金をその事業年度に支払う共済金総額と個々の共済契約者に支払う共済金との割合により、共済金の支払いを受ける個々の共済契約者に割り当てて行うものとする。
  2. 共済掛金の追徴は、損失金をその事業年度の各共済契約者より徴収する共済掛金の総額と各共済契約者より徴収する共済掛金との割合により、各共済契約者に割り当てて行うものとする。

(10)共済事業に関する員外利用の定義の見直し
 共済事業を実施する組合では、組合員だけでなく、組合員(個人事業者)と生計を一にする親族や組合員たる組合が組合員となっている場合のその組合を直接又は間接に構成する中小企業者が共済事業を利用している場合も、員内利用とみなされます。

共済事業の利用者で員内利用となる範囲

大規模共済組合が対応しなければならない改正点(大規模共済組合改正点)

(一般組合が対応しなければならない改正点(3月号掲載)、大規模組合が対応しなければならない改正点(4月号掲載)、一般共済組合が対応しなければならない改正点(5月号掲載)に追加して)

  1. 名称中への一定の文字使用の強制
     組合員数が1,000人を超える大規模な共済事業を行う組合に対しては、「共済協同組合」「共済協同組合連合会」の名称を使用しなければならないこととされています。

  2. 兼業禁止
     共済事業以外の他の事業を兼業することが、原則として禁止されます。ただし、行政庁の承認を受けた場合には、兼業することができますが、兼業可能な事業は共済事業の運営に影響を及ぼすことが想定されない事業に限定されます。法施行時に特定共済組合に該当する組合が共済事業と他の事業を併せて行っていた場合には、5年間に限り、行政庁の承認を経なくても、兼業を継続することができます。

  3. 財務の健全性基準の導入
     組合が、保有する共済リスク等に見合った支払い余力を確保しているかに関する基準(健全性に関する基準)が設定されます。

  4. 最低出資金の導入
     最低出資金規制が導入されます。特定共済組合の出資金は1,000万円、再共済等を行う特定共済組合及び特定共済組合連合会は3,000万円を下回ることができません。法施行時に存在する特定共済組合又は特定共済組合連合会において、最低出資金を満たしていない場合は、法施行後5年以内に最低出資金を満たすことが必要となります。

会社法整備法による改正(平成18年5月施行)の概要

  1. 定款自治の拡大(定款に規定することによる本則要件の緩和)

    1. 任期伸長規定の導入(定款に規定した場合、3年の任期を超えて開催された通常総会終結時までの任期伸長)(第36条)
    2. 理事会の定足数、議決要件の引上げ(過半数を上回る割合を規定することも可)(第36条の6)
    3. 理事全員の同意がある場合の理事会決議の省略(理事会決議があったものとみなす定款規定)(第36条の6)
    4. 会計帳簿等の閲覧請求要件の引下げ(総組合員の10分の1以上の同意要件を緩和する旨の規定も可)(第41条)
    5. 役員改選請求要件の引下げ(総組合員の5分の1以上の連署要件を緩和する旨の規定も可)(第42条)
    6. 参事・会計主任の解任請求要件の引下げ(総組合員の10分の1以上の同意要件を緩和する旨の規定も可)(第45条)
    7. 臨時総会招集請求要件の引下げ(総組合員の5分の1以上の同意要件を緩和する旨の規定も可)(第47条)
    8. 理事の職務を行う者がいない場合の組合員の総会招集要件の引下げ(総組合員の5分の1以上の同意要件を緩和する旨の規定も可)(第48条)
    9. 総会招集手続の緩和(会日の10日前までの招集要件を定款規定により短縮することも可)(第49条)

  2. 会社法施行等に伴う規定の整備
    1. 理事全員に報告した場合の理事会への報告の省略(第36条の6)
    2. 主務省令に基づく理事会議事録の作成(記載事項の変更)(第36条の7)
       出席理事・監事の氏名、特別利害関係理事の氏名の記載の追加
    3. 代表理事規定の創設(第36条の8)
    4. 役員の組合に対する損害賠償責任の一部免除規定の創設(第38条の2)
       総会の特別議決による報酬等を基準とした一部免除規定の創設
    5. 主務省令に基づく総会議事録の作成(記載事項の変更と署名又は記名押印義務の廃止)(第53条の3)
       出席理事・監事の氏名、議事録作成担当理事の氏名の追加
    6. 定款の公告方法の見直し(公告方法の例示の追加)(第33条)
       官報、日刊新聞、電子公告の例示追加
    7. 組合と役員の関係規定の創設(第35条の3)、役員の残任義務規定の創設(第36条の2)、理事の忠実義務規定の創設(第36条の3)、理事会の権限の創設(第36条の5)、旧商法準用から独立規定の創設
    8. 主務省令に基づく会計帳簿の作成(第41条)
    9. 全組合員の同意がある場合の招集手続の省略規定の創設、総会招集の理事会決定権限の明確化(第49条)
    10. 総会の延期・続行決議規定の創設(第53条の2)
    11. 出資一口の金額の減少を行う場合の個別債権者への催告省略の特例(第56条の2)
       官報、日刊新聞、電子公告のいずれかによる公告を行った場合の催告の省略
    12. 会社への組織変更規定の見直し(中団法第100条の3~第100条の14)
       有限会社への組織変更規定の削除、組織変更計画の内容の改正、効力発生日の任意設定、新会社の資本(株主資本)の要件の変更(資本が純資産を下回る場合の不足額の補てん義務の削除)

 

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