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月刊中小企業レポート
更新日:2007/04/20

元気な企業を訪ねて ―チャレンジャーたちの系譜―

誰もが二の足を踏む高いハードルをつねに狙い、
独創のFAエンジニアリングで世界最先端を支える。

アスリートFA株式会社代表取締役社長 山嵜 晃さん
アスリートFA株式会社
代表取締役社長 山嵜 晃さん


ニッチを狙ったFAシステムで世界から高い評価

ニッチを狙ったFAシステムで世界から高い評価 「ロボティクス(ロボット工学)、メカトロニクス技術を駆使してお客様の未到領域へのチャレンジをサポートすることを使命」とし、開発設計から製造、販売まで一貫して手がけるFAエンジニアリングの専門開発メーカー。それが、アスリートFAである。
 手がけるのは半導体、液晶パネル、電子部品、自動車部品、通信機器等々の生産工程に組み込まれる高精度実装・組立システム。ニッチを狙った製品群は世界の名だたる関連メーカーから高く評価され、特に主力である半導体の「ポッティング装置」や「ボール搭載機」は高いシェアを誇る。
 同社は平成元年、大手電子機器メーカーから自社開発ロボットのエンジニアリングを任されたのをきっかけに独立創業した。
 当初はエンジニアリングのみを受注していたが、ほどなくロボットを使ったFAシステムの独自開発および営業活動を開始。特に半導体業界でその存在感を高めていく。山晃代表取締役社長は当時をこう振り返る。
 「製品によってはあえてロボットを使用しなくても、高精度な位置決め機構を電気的に動かす装置を作れば対応できる。システムも簡単で安上がりだ。そう考えて開発した装置が液晶パネルを制御する半導体の封止装置でした。これが液晶パネルの需要増にうまくのり、半導体製造工程への導入が進んだのです」
 物理的にも化学的にも弱く微細なチップや配線部を保護するため、半導体は樹脂でパッケージング(封止)される。半導体製造になくてはならない工程だけに、このマーケットに食い込む意義は大きい。「以後、半導体製造装置を中心とする生産設備機械の設計開発・製造・販売の一貫体制で展開してきました」。

挑戦テーマから生まれたブランド名「Athlete(アスリート)」

 同社の強みは、機械設計、電気・電子回路設計、ソフトウェア開発をトータルに駆使して、製品をコンパクトに作りあげていく技術力。そしてユーザー個々の要望をきめ細かく採り入れたカスタム品、つまり一品料理を提供していく小回りの良さだ。
 携帯電話や爆発的人気を集める「iPod」など、電子機器の技術革新を牽引する半導体。その進化は速く、とどまるところを知らない。半導体製造メーカーはもちろん、関連産業も激しい技術革新レースを繰り広げている。
 そこで勝ち抜くために、技術的ハードルが高く他社ではやりたがらないものにあえて挑戦することを基本姿勢とする。開発に成功すればレースの先頭に立てるからだ。「技術者たちは時に自分の能力以上を求められる。それだけにキツイとは思いますが、苦労した結果より高い技術が身につけられるんですから」。実践で鍛え磨きあげる技術力。これが同社を支えている。技術だけでなく、商品の知名度を上げることも大切だ。
 設立以来「セミコン・ジャパン」に出展し注目を集めていた。しかし世界にもっとアピールするためには商品イメージの浸透が必要と実感。そこで平成3年、ブランド名「Athlete(アスリート)」を立ち上げた。山社長は意外なブランド名の由来を次のように明かす。
 「挑戦テーマである、Advance(進歩)、Accuracy(精密)、Assembly(組立)の
”3つのA“に、Technology(技術)のTEを組み合わせた造語です。運動選手という意味は全然考えていませんでした(笑)。ところがちょうど翌年開催されるオリンピックの話題から、運動選手という意味での”アスリート“が盛んに使われた。図らずも当社ブランド名の大々的な宣伝になりました(笑)」
 以来、受注も社員数も増加の一途。そして平成12年、ブランド名に「FA(ファクトリーオートメーション)」を付け、社名とした。

マイクロボールマウンタで「新機械振興賞」を受賞

マイクロボールマウンタで「新機械振興賞」を受賞 急速に進む半導体の高速化・高集積化。それを実現しているのは半導体表面実装技術の進化だ。
 半導体チップからプリント基板への信号伝達速度の高速化を図るため、多くのワイヤとリードフレームを使って接続する従来型から、格子の目のように並べた微小なはんだボールを直接プリント基板に載せて接続する格子端子型(BGA/CSP)へのシフトが進んでいる。
 90年代後半にBGAが誕生以来、同社はつねにこの分野の最先端を追求。主力製品のひとつであるボール搭載機「マイクロボールマウンタ」の開発により、今や圧倒的な技術集積を誇る。
 その最先端をゆく「マイクロボールマウンタBM‐1100」は、12インチのシリコンウェハ上に直径70ミクロンのはんだボールを200万個一括搭載できる世界初の装置(日立金属(株)との共同開発)。それが高く評価され、今年2月、生産機械技術に秀でた会社を表彰する(財)日本機械振興協会主催の「新機械振興賞」を受賞した。
 「半導体関連設備機械メーカーは数多くあり、競争は激しい。いかに生産性が高く品質が安定した装置を先がけて供給するかが勝負です。当社の競争相手はすべて大手上場企業。対抗していくためには、つねにニッチを探っていかなければいけない。受賞した機械もそこから生まれました。しかしそのうち他社から同様の機械が出てくる。そのためにもさらに上を開発していかなければいけない。その繰り返しです」。
 今後のターゲットは自動車関連分野だ。車載半導体はもとより、特に力を入れようと考えているがMEMS(マイクロエレクトロニクス・メカニカルシステム)。衝突時の衝撃信号を察知し伝達するデバイスなど、さまざまな製品が考えられるという。「数多くの種類が必要になるため、大量生産というよりも多品種少量生産。その分野での高精度なFAシステムの開発はまさに当社が挑戦すべきテーマです」。
 今や世界の最先端を走る日本のカーテクノロジー。その新たなステップを担う製品の開発はもう始まっている。

知名度につられて来る人はだめ。この仕事が好きだという人を採用

 ここ数年大手企業を中心に採用意欲が高まり、特に今年は新卒生の「売り手市場」といわれる。採用に苦戦を強いられる中小企業も多いなか、同社も同じ悩みを抱える。しかし、新卒採用のため今も自ら大学を回るという山社長に妥協はない。
 「寄らば大樹と会社の知名度につられて来るようなタイプはだめ。欲しいのは、たとえ地味でも高度な技術が求められる仕事が好きだという人。そういう人でなければ当社ではもたないと必ず話します。多少厳しくても、好きだからこそ続けられるんです」
 同社では営業はもちろん、技術者も客先を訪問する機会は多い。それだけに社員には社会人としての基本的な常識やマナーを厳しく求める。「その時代の常識が通らない人には当社は厳しい。それができない人には断固として辞めてもらいます」と山社長は言い切る。
 そうした基本的なルールを守れば、基本的に自由な社風。働きやすい職場環境づくりにも力を入れている。
 例えば納期が切迫している時や、ユーザー工場での機械の設置など、休日出勤で対応しなければならない場合も少なくない。特に技術者の場合、日本全国はもとより、東南アジアを中心とする海外まで工場のあるところならどこへでも飛んでゆく。「中国やフィリピンの山奥に出かけることもありますよ」。
 そのため同社では、休日出勤の代休をある程度まとめて取得することを奨励。長期休暇を取って海外旅行に出かける社員も少なくない。
 「ひとつの物件が終了するたびに、代休を集めて一週間休むという消化の仕方が理想。本当は休日通りに休めればいいのですが、お客様の要求に合わせていかざるを得ない。社員には逆にそれを前向きに受け止め、その休暇で好きなことをしてもらう。それが人間的な成長にもつながると私は思っているんです」
 人材を確保するためには、地元での採用活動ばかりに頼ってはいられない。平成12年東京出身者も安心して就職できるようにと東京事務所を開設した。平成15年には中国上海に現地法人を設立。昨年工場を確保し、以前から本社で研修を受けさせて育成してきた中国人社員を中心に、いよいよ本格的に稼働する。
 東京、上海に拠点を設けたのはいずれも優秀な人材の確保が目的。「とにかく人のいるところにオフィスを作らなければいけないと感じています」。

魅力をどう打ち出し差別化するか。それが課題です

 山社長は現在、関東甲信越エリアの企業約260社が参加し異業種ビジネス交流を展開する「協同組合ハイコープ」(本部・岡谷市)の理事長を務める。
 同組合は昭和53年、諏訪圏で精密業を営む中小企業者4人でスタート。平成元年に組織変更を行い、本格的な異業種交流を主たる事業とする組合に改組した。異業種交流のほか、組合員間ビジネスの引き合わせ、海外研修視察、金融斡旋、共同購入、教育情報提供、高速道別納カード共同利用、組合報発行、福利厚生事業といった各種事業を展開。中国人研修生の採用活動や「諏訪圏メッセ」へのブース出展など、数々の取り組みも行ってきた。
 「組合は借金はしない、赤字はつくらない、組合員による組合員のための自立自営組織」が組織運営のポリシー。平成6年には関東甲信越を地区とする組織に拡大し、運営部会、専門部会、ブロック会(4地区)を設置し活発に活動している。
 エリアが広く、大所帯の組織。まとめていくのは大変だ。再来年は創立20周年の節目にあたり、その意味でも理事長への期待は大きい。
 「ハイコープならではの魅力をどう打ち出し、他の異業種交流団体と差別化を図るかが課題です。異業種の集まりだけに組合員のニーズが幅広く、いかに共通点を見いだしていくかも難しいところ。20周年には何をやっていこうかと今思案中です。できる限り関東甲信越地区を回って、最大公約数を見いだしていきたいと思っています」
 アスリートFAを率いるトップとして、また協同組合ハイコープの理事長として、いよいよ多忙な山社長だ。



プロフィール
代表取締役社長山嵜 晃
代表取締役社長
山嵜 晃
(やまざきあきら)
中央会に期待すること

中央会への提言
 長野県中小企業団体中央会の事業支援内容等について一般企業に広く知ってもらうことが必要と思います。

アスリートFA株式会社
社屋


経歴 1943年(昭和18年)3月5日生まれ
1988年   アスリートFA(株)設立と同時に代表取締役社長就任
出身   諏訪市
家族構成   妻、義母
趣味   ウォーキング。毎朝1時間以上早足で歩くのが日課。海外などの出張先でも欠かさず、トレーニングウェアと歩きながら腕を鍛えるダンベルは必携品。

 

企業ガイド
アスリートFA株式会社

本社 〒392-0012 諏訪市四賀2970-1
TEL(0266)53-3369(代)
FAX(0266)58-1755
創業   平成元年3月
資本金   8,580万円
事業内容   FAエンジニアリング
OA機器、半導体、電子部品、自動車、通信機器など各業界向け各種高精密実装・組立システムの開発・設計・製造・販売、省力化ユニット装置の設計・製作・販売
事業所   東京事務所(東京都墨田区錦糸町)
関連会社   愛立発自動化設備(上海)有限公司(中国上海)
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