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月刊中小企業レポート
更新日:2007/03/20

イノベーション

バランス・シート(B/S。貸借対照表)感覚で行政の財政をチェック

 『全国の市の10%が倒産の懸念を抱いている事がわかった』と日本経済新聞が自社の調査で公表しています。北海道夕張市の財政破綻で、行政の再建が注目されています。しかし、これは、住民サービスの低下・租税等住民負担の増加などが前提となる住民にとってつらいものです。それが第二の夕張市になるかもしれない行政がたくさんあるかもしれないという事は、地域社会の生活の安心が根本から覆される事であり、私たちは税金を払う身として、監視していく必要があると思います。
 本来、国や県や市町村のオーナーは誰かというと、国民や地域住民の一人一人であるはずです。株主として、追加出資など応分の負担を求められるのが税金ともいえるのでしょう。その使い道を監視すべきなのですが、容易ではありません。
 それは、たくさんの特別会計の存在もあり、行政の財務諸表が国民や住民にとってわかりにくいものになっているからです。また、現金の出し入れの会計のみで、本来作成すべき財務諸表が強制されていないからといって作成していない行政もたくさんあるからと言えます。行政単体の財産の状況を示す貸借対照表を作成している市町村は、全体の半分しかありません。さらに、上下水道事業などの公営事業や関連団体まで含めた貸借対照表まで作成している市町村に至っては4%しかありません。行政サービスとそれに対応したコストを対比した、企業の損益計算書にあたる『行政コスト計算書』を作成している市町村も30%しかありません。
 企業でいうなら現金出納帳と資金繰表のみで経営を、家庭に例えるなら会計簿のみで経営をしているのと変わらない市町村が多く存在している事がとても問題であり、これでは税金を支払う側が本当に価値ある事に税金が使われているのか、また自分の所属する市町村の財政は将来にわたって健全なのか確認する事がとても困難になります。総務省も危機感を抱いたのか、人口3万人以上の市町村から貸借対照表や『行政コスト計算書』などを作成するように指導を始めました。しかし、税金を支払う市民として自分の住む行政の財務がどうなっているのか、興味を持たない事には第二、第三の夕張市が出現してもおかしくありません。税金を意識する時期です。その税金の使い道が適切なのか、また担っている行政は健全なのか、貸借対照表をチェックしてみたいものです。

減税?それとも増税?

~平成19年から税源移譲により所得税・地方税が変わります!~

 小泉純一郎前政権の元、「地方でできることは地方で」という方針で、地方分権を目指し、身近な行政サービスの実現のため、三位一体改革が進められてきました。
 その一環として、国税である所得税から地方税の住民税へ約3兆円の税源移譲が行われます。所得税(国税)と住民税(地方税)の税率を変えることで、国の税収を減らし、地方の税収を増やします。税源移譲は、私たち納税者にとってどのような影響があるのでしょうか?
 税源移譲によって、所得税と住民税の税率が以下のように変わります。
 税率だけみると、増税のように見えますが、人的控除の適用状況などに応じて住民税の減額をすることによって所得税と住民税を合わせた税負担が変わらないように制度設計されています。地方自治体からは結果として納税者の負担額は変わらないとPRされている税源移譲ですが、次のような注意点があります。
  1. サラリーマンの方
     A図は、妻と子2人を持つサラリーマンの方の年収額とその税負担額を表しています。年収500万円の場合を例にしてみると、18年末の所得税と住民税の合計は10,950円で、1月には、税源移譲により、まず所得税だけが減ることで、合計で8,700円となり、手取り額が増えます。6月に遅れて住民税も税源移譲により増え、合計は14,100円となり、手取り額は減ります。18年末の負担額と19年6月の負担額で後者の方が多くなっているのは、平成11年度から導入された景気対策のための暫定的な税負担の軽減措置、定率減税の廃止の影響を受けているためです。
  2. 住民税を自分で納付されている方
     住民税を自分で納付されており、給与から天引きされない方は、年4回の納付となるため、一度の納付金額が以前に比べ大きく増加します。
  3. 年金受給者で納税義務のある方
     所得税は年6回の年金支給時に天引きし、住民税は納税者が年4回(6,8、10、1月)納める仕組みです。B図にあるように、6月からは住民税が11,600円と1月までに比べ倍の金額となっています。所得税は給与から天引きされる上、2月より減額となっていますが、住民税は6月に倍の金額で請求されるため、一度の納付金額が以前に比べて大きく増加します。(B図参照)
  4. 住宅ローン控除の適用がある方
     平成18年度以前の住宅ローン控除の適用がある方の場合には、平成19年度分以降は、所得税と住民税の比率が変わるため、所得金額によっては控除金額が全て控除できず控除額が残ってしまうという問題が生じます。そのため、その控除残額分を翌年度、平成20年の住宅税を減額することで、住宅ローン控除の適用者が不利にならないように経過措置がとられます。この措置を受けるためには「減額申請書」の提出が必要となります。
     確定申告される方は税務署へ確定申告書と提出し、確定申告を行わない方は市長村への提出が必要です。

消費税の税率改正。地方税の税率改正、A図:税源移譲による負担税額の変化(月額)、B図:税源移譲による負担税額の変化(月額)

今回の税源移譲を含む平成19年の所得税・国民税は我々納税者の「負担感は増す」と言えます。6月に住民税の納付通知を見て納税額が高くなったことで慌てることがないよう、事業主の方だけでなく、従業員の方にも是非、今回の改正内容をお知らせ下さい。
 また、長野県のHP(http://www.zenzeikyo.jp/
18jyumin/form.html
)で個人の住民税がどのくらい変わるかを概算ですが、試算できるのでお試し下さい。

パート厚生年金の協議進む、働いても手取りが変わらない?

 現在日本では1、200万人がパート社員として働いています。全雇用者の4分の1に相当しています。この背景には、1990年以降、デフレ不況に苦しむ企業が人件費削減のために正社員を減らし、低賃金のパート社員を増やしてきた経緯があります。パート社員の賃金は、正社員を100とした場合、男性52・5%、女性69・0%と低水準です。企業にとってはその手軽さから、パート社員の増加が進んできました。
 そのような中、政府・与党内のこれまでの協議では、勤務時間を週20時間以上(正社員のおおむね2分の1以上)とすることで加入対象を拡大する。勤務時間にかかわらず、年収が65万円以上の人も該当する。というような論議が浮上してきています。
 適用拡大でパートさんが新たに厚生年金の適用に加われば、雇い主も厚生年金の半分を負担せねばならなくなります。支払額が実質1・1倍程に膨れあがることになり、かなり手痛いです。
 一方働く側のパートさんにとっても、夫婦の手取りで考えると、厚生年金の適用でそれは大きく変わってきてしまします。

 上のグラフは、夫の給与収入を500万円と仮定し、厚生年金・税負担を考慮した上での、妻の給与と夫婦の手取りの相関関係を示したものです。なお便宜上、健康保険等を除いております。
 大きく目に付く点は、以下の3つではないでしょうか

  1. 妻の収入が130万円になると、手取りが激減する点。(厚生年金が適用)
  2. 妻の収入が100万円辺りから、傾斜が緩くなる点。(所得・住民税が発生)
  3. 妻の収入が150万円以降から、傾斜がさらに緩くなる点。(扶養控除の効果が徐々になくなる)

 一般に103万円と130万円の壁といわれるのは、このことです。
 さて前記を踏まえ、御社のパートの採用と管理を、今後どのようにお考えでしょうか?
一例として

  1. 130万円以上(厚生年金を適用)で働いていただく。
  2. 103万円以内(扶養の範囲内)で働いていただく。
  3. 外注業者の検討。

 今後、パートさん一人一人の家族構成を知り、よりよい就労・賃金計画をアドバイスしてあげることも大切になってくるのではないでしょうか?
 また、団塊の世代の離脱により、若い世代のパート・フリーターからの人材発掘こそが、今後の企業発展であることは明白となってきています。
 最後に今現在パートさんは何人雇っていますか?それぞれの人が月に何時間働いていますか?いくらぐらい稼いでいますか?そのパートさんにとってまた御社にとって有効な働き方ですか?


※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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