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月刊中小企業レポート
更新日:2007/2/09

特集 平成18年度長野県における中小企業の労働事情

 今回で43回目となる本調査は、従業員の規模、業種による分析を通し、中小企業の多様な実態や規模による格差問題等を明らかにするほか、小規模企業の現状を知る、数少ない資料としての特色を持っています。
 このような中で「労働実態調査」は、長野県中小企業における労働問題の論議を深めるための資料として広く活用され、企業の発展に寄与できる資料となることでしょう。本特集では、その内容を抜粋してご紹介します。

I.調査のあらまし

  1. 調査の目的
     この調査は長野県内の中小企業における賃金・労働時間・雇用等の実態を把握し、中央会労務指導方針策定の基礎資料とするとともに、中小企業における労務対策の参考に資することを目的とする。
  2. 調査方法・集計
     長野県内の従業員300人以下の民間事業所(卸売業100人以下、小売業50人・サービス業100人以下)を対象に任意抽出し、郵送により調査を依頼。
      有効回答402事業所(対象従業者19,559人)について集計した。
     (1) 集計事業所内訳
    集計事業所内訳  
     (2) 集計労働者内訳
    集計労働者内訳
  3. 調査時点
     平成18年7月1日現在

II.調査結果の概要

  1. 中小企業の経営環境
    (1)経営状況
     
     中小企業の経営状況は「悪い」とする事業所は前年同期に比べ10.5ポイント減少し36.1%、「良い」とする事業所は6.5ポイント増加し15.2%となり改善の兆しがうかがえる。
      規模別には、規模の小さい事業所ほど経営状況が「悪い」とする比率が高く、業種別では、「金属製品」「機械器具」で経営状況が「良い」とする事業所が四分の一を占めるのに対し、「窯業・土石」、「出版・印刷」では「悪い」とする事業所が過半数を占めるなど、業種間格差も目立っている。
    経営状況と規模別経営状況
    業種別経営状況
    (2)経営上のあい路
     中小企業の経営上のあい路として、本年も「販売不振・受注の減少」が48.6%とトップにあげられ、次いで「原材料・仕入品の高騰」が43.0%、「同業他社との競争激化」が33.3%と経営環境の変化を反映した結果となっている。また、「人材不足」とする事業所も28.8%と、中小企業での、より質の高い人材への要請の高まりを裏付ける結果となっている。
     業種別では、「販売不振・受注の減少」が多くの業種で最大のあい路としているなかで、「金属製品」「機械器具」「その他製造業」では、「原材料・仕入品の高騰」をあい路の1位にあげている。
    経営上のあい路
    経営上のあい路
    (3)経営上の強み
     
     自社の経営上の強みとしては、「製品の品質・精度の高さ」が34.7%とトップにあげられ、「顧客への納品・サービスの速さ」が31.3%、次いで、「製品・サービスの独自性」が24.5%となっている。
     産業別では、製造業が「製品の品質・精度の高さ」45.8%、「顧客への納品・サービスの速さ」30.7%、「生産技術・生産管理能力」27.5%の順となっているのに対し、非製造業では、「顧客への納品・サービスの速さ」32.6%、「組織の機動力・柔軟性」24.0%、「製品・サービスの独自性」23.3%となっている。
    (4)主たる事業の経営方針
     
     企業が現在行っている主要事業について、今後の方針をみると、全体では「現状維持」とする事業所が60.3%と多数を占め、「強化拡大」が30.7%、「縮小」が7.0%、「廃止」が1.5%となっている。
     規模別にみると、規模が大きくなるほど「強化拡大」する方針をもっている事業所の割合が高い一方、事業所規模が小さくなるほど、「縮小」「廃止」とする事業所が多くなっている。
    主たる事業の経営方針
    主たる事業の経営方針
    主たる事業の経営方針
  2. 高年齢者の継続雇用制度について
    (1)高齢法に伴う雇用確保措置への対応状況
     平成18年4月から、年金支給開始年齢の引き上げに合わせて段階的に65歳までの高年齢者の雇用確保措置が義務付けられたが、その対応状況についてみると、「継続雇用制度を導入した」とする事業所が76.6%と最も多く、「62歳以上の定年に引き上げた」8.5%、「定年の定めを廃止した」2.5%と回答事業所の87.6%で雇用確保措置がとられている。しかしながら、「対応していない」とする事業所も12.5%あり、小規模事業所での対応の遅れが目立っている。
    高齢法に伴う雇用確保措置への対応状
    (2)継続雇用制度対象者の雇用形態
     雇用確保措置の中で継続雇用制度をとる事業所が大多数を占めるが、継続雇用対象者雇用形態としては「嘱託社員・契約社員」が62.9%と最も多く、「正社員」が34.2%、「パートタイム・アルバイト」が12.7%となっている。
    継続雇用制度対象者の雇用形態
    (3) 継続雇用対象者の労働条件
     継続雇用対象者の労働条件について定年時との比較で見ると、①仕事の内容は「変わらない」「個人による」がともに47.9%を占め「変わる」とする事業所は僅か4.2%となっている。②所定労働時間・所定労働日数については、定年時と「変わらない」とする事業所が大多数を占める。③賃金については、「一律に下がる」が43.3%、「変わらない」が9.4%の一方「個人による」とする事業所が47.2%と高い比率となっており、中小企業における継続雇用制度の弾力的な運用をうかがわせる結果となっている。
    継続雇用対象者の労働条件
    (4) 継続雇用制度導入にあたっての課題
     継続雇用制度導入にあたっての課題として「賃金体系や水準の見直し」が66.4%と最も多く、次いで「役職や人事制度の見直し」32.2%、「業務や作業内容の見直し」26.3%となっている。
    継続雇用制度導入にあたっての課題
  3. 3.団塊世代従業員の退職が経営に与える影響
    (1)団塊世代の正社員数
     団塊世代(1947年~1954年に生まれた、55歳~59歳までの世代)の正社員は、354事業所でその総計は、2766人となっている。「100~300人」規模事業所でみると、団塊世代人員が「10~19人」とする事業所が21、「20~29人」が16事業所、「30人超」が10事業所となっており、中小企業でも規模の大きいところ程団塊世代が退職期を迎えることで受ける影響が大きいことがうかがわれる。
    団塊世代の正社員数
    (2)団塊世代の退職が経営に与える影響
     団塊世代が退職することによる経営に及ぼす影響については、全産業において「影響はない」とする事業所は半数弱の49.2%、「マイナスの影響が強い」27.4%、「プラスの影響が強い」9.3%となり、製造業においては「マイナスの影響が強い」とする事業所が30.6%と高くなっている。
     プラスの影響については「人件費の削減」81.8%、「企業内の活性化」48.5%、「過剰労働力の解消」42.4%、「昇進遅滞の解消」39.4%の回答となっている。マイナスの影響については「技術水準の低下」63.9%、「労働力の不足」41.2%、「技能の継承手段の喪失」39.2%、「ノウハウの喪失」36.1%と続いている。
    団塊世代の退職が経営に与える影響
    団塊世代の退職が経営に与えるプラス影響
    団塊世代の退職が経営に与えるマイナス影響
    (3)団塊世代の退職への対策
     
    団塊世代の退職への対策は「雇用延長した高年齢者の活用」が66.2%と半数を超え、次いで「人材育成・能力開発の推進」43.0%、「中途採用の拡大」40.1%と続いている。

 

 

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