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月刊中小企業レポート
更新日:2006/11/09

特集2 商店街の活性化ツールをめざして

~カードシステム、スタンプ・商品券事業の導入事例より~

 新聞やテレビなどで「景気回復」の文字が繰り返されるなか、ほとんど実感が持てないでいる地域の商店街。
 平成十六年商業統計速報(経済産業省)によれば、全国商業事業所の76.7%を占める小売業の事業所数は昭和57年(1721000事業所)をピークに減少が続き、昭和33年(1245000事業所)以来の低い水準。また平成九年まで増加が続いた年間販売額も、平成11年には景気低迷にともなう消費不振に加え、価格の低下などから初めて減少に転じた。平成16年の年間販売額は133兆2851億円と、前回調査(平成十四年)に比べて1.4%の減少となった。
 「消費をどうしたら伸ばせるか」。個店はもとより商店街全体としても悩みは尽きない問題だが、そのなかで売上げアップをめざしたさまざまな取り組みが注目を集めている。商店街独自の各種カードシステムや、スタンプカード・商品券の導入もそのひとつだ。
 カードシステムは各種機能を持ち、それぞれに期待されるサービス効果がある。例えば、買い物やサービスを受けるたびにポイントが貯まる「ポイントサービス」、カードに入金したお金で支払いができる「プリペイドカード」、地域住民および商店街の交流・活性化を促す「地域通貨・エコマネー」のほか、少額決済を簡素化する「電子マネー」など。オホーツクカード協同組合(北海道)、土手町商店街振興組合連合会(青森)、烏山駅前通り商店街(東京)、きょうと情報カードシステム(京都)、佐世保福栄会協同組合(長崎)など、全国に導入事例が見られる。
 長野県内でも駒ヶ根市の「つれてってカード協同組合」がICカード「つれてってカード」を運用する。プリペイド機能、金融機関との提携など、全国に先がけて取り組んできた多機能が特徴だ。
 一方、小海町の「こうみP-ねっと協同組合」はシール式スタンプカード、商品券と従来からあるスタイルを踏襲。運用に新機軸を打ち出し、順調に利用率を上げている。
 本特集では商店街活性化ツールとしてのカードシステム、スタンプ・商品券事業について、駒ヶ根スタンプ協同組合、こうみP-ねっと協同組合それぞれの取り組みを紹介する。

商店街情報システム化概念図

 

事例1:「つれてってカード」 つれてってカード協同組合(駒ヶ根市)

「多機能なコミュニティーカード」を実現。

小売店から行政、医療施設、福祉まで使えるカード

つれてってカード 「つれてってカード」は平成8年10月、電子マネー機能を持つICカードとして全国に先がけて駒ヶ根市をエリアにスタート。平成10年にはサービスエリアを飯島町に拡大し、現在は中川村にも広がっている。
 同カードは、つれてってカード協同組合発行の「つれてってカード」と、アルプス中央信用金庫発行の「しんきんつれてってカード」(キャッシュカード併用)の二種類。加盟店で買い物をすると100円につき一ポイント付加され、一ポイントを1円として買い物やサービスの提供が受けられるポイント機能と、カードにお金を入金して使うプリペイド機能(100円につき0.5ポイントのサービスポイントつき)をあわせ持つ多機能が特徴だ。
 小売店・飲食店・ガソリンスタンド・理美容院・ボウリング場・高速バスターミナルなど、加盟店は約200カ所。駒ヶ根市役所での各種手数料、昭和伊南総合病院での医療費の支払い、第三セクターの温泉施設「こまくさの湯」での入浴料支払いでも利用できる。
 さらに駒ヶ根市では福祉チケットサービス、子育て支援サービス、行政文書管理サービス、エコポイントサービスなども受けられる。行政も巻き込んだ、生活のさまざまな場面で利用できるコミュニティーカードとしての性格を強めている。

「カード事業」の将来構想について

つれてってカード協同組合
理事長 池上 善文

 今、商業のあらゆる分野で、ポイントサービスが行われております。当組合も昭和50年にスタンプ事業をスタートさせ、平成8年には、プリペイド機能を付加し、当時、最先端の高機能多機能ICカードとして生まれ変わり、今日に至っております。
信州の片田舎、商圏5万人地域でのポイントサービスに加え、プリペイド機能、信金キャッシュ機能を併せ持つICカードは画期的であり、全国各地から取材を受けるなど脚光を浴びてまいりました。
 平成13年には、国のIT装備都市実証実験事業の採択を受け、新たに行政サービスも加わり、更に充実したシステムとしてリニューアルいたしました。カード発行枚数は2万8千枚とその普及率は高く、今年、地域の皆様に支持されながら満10周年を迎えることが出来ました。しかしながら、カード及び店舗用端末機等には寿命があり、また同時に、現在一体となってカード事業を推進していただいているアルプス中央信用金庫様の、2008年5月の信金東京共同事務センター加盟に伴い、私共「つれてってカード」システムの大きな見直しが必要となり、本年9月、中央会からの助成のもと、カード事業先進地の東京千歳烏山駅前通り商店街、武蔵小山商店街への視察を皮切りに、システム更新に向け始動したところであります。ハードシステムもさることながら、買い物の楽しさとメリットを感じていただけるカードを目指し、原点に返って、ますます高齢化社会が加速する中、消費者にも、加盟店にも分かりやすいシステムを考慮しながら、新カードシステムの研究開発を進めていきたいと考えております。
 景気回復が伝えられる昨今でありますが、私共地方の商店街では、その実感は全くないのが現状と言ってよいでしょう。私たちが、今まで大切に育ててきた「つれてってカード」が、地域を結ぶコミュニティーカードとして、更に支持されますよう、加盟店一同、今後ますます努力を重ね商店街の活性化を図って参りたいと思います。

高普及率とポイント回収率の高さを誇る

 同カードの前身は、駒ヶ根市の「駒ヶ根スタンプ協同組合」が昭和50年から買い物客に発行していたサービススタンプ事業。
 平成5年、駒ヶ根市郊外に進出した大型ショッピングセンターの影響により客離れが進み、商店街の売上げは軒並み大幅ダウン。それにともなってスタンプ発行高も平成元年の5000万円から、3500万円まで落ち込んだ。
 商店街ではこうした状況を打開しようと検討を重ね、加速する高齢化社会に対応したソフト事業の充実を図るべきという結論に達した。そのひとつがサービススタンプ事業の刷新であり、従来のシール式スタンプからカード化への取り組みだった。
 同組合ではより魅力的なカードにするため「カードシステム研究会」を立ち上げ、視察や研究を重ねた。その結果、商店街活性化につながるカードは「多機能なコミュニティーカード」であると結論づけ、ICカードの導入を決めたのである。導入にあわせて組合名も現在の名称に変更した。当時、最先端の画期的なICカードだったこともあり、全国各地から視察や取材が相次いだという。
 当初の目的通り、コミュニティーカードとしての性格を強めてきた結果もあり、「つれてってカード」の発行枚数は約28000枚と高い普及率を誇り、ポイントの回収率も高い。商店街活性化の確かな一助になっているようだ。

名称: つれてってカード協同組合
所在地: 駒ヶ根市上穂栄町3-1
設立年月: 昭和50年6月
理事長: 池上善文
組合員数: 160
事業: ICカード事業(ポイントサービス機能、プリペイド機能つき)
事業エリア: 駒ヶ根市、飯島町、中川村
加盟店: 小売店・飲食店・ガソリンスタンド・理美容院・ボウリング場・高速バス・駒ヶ根市役所・「こまくさの湯」(第三セクター温泉施設)など

発行年度別未回収ポイント数と発行年度別未回収ポイント数

事例2:「P-ねっとカード・P-マネー」 こうみP-ねっと協同組合(小海町)

心が伝わるアナログのコミュニケーション。

町の活性化をめざして、地元商店街と観光地が手を組む

P-ねっとカード シール式スタンプ「P-ねっとカード」と共通商品券「P-マネー」を展開しているのが、小海町の「こうみP-ねっと協同組合」だ。
 佐久市などに相次いで出店した大型店の影響もあり、地元買い物客の流出に危機感を抱く地元商店街と、入り込み客の減少に悩む松原湖高原の観光地が手を組んで町の活性化をめざそうと平成14年7月、町内の商工観光業者約90社が参加してスタートした。
 「P-ねっとカード」は、加盟店で買い物をすると200円につき一枚と5000円につき1枚の二種類のポイントシールがつき、300円分のシール(カード一枚)で200円分の買い物ができる。また「P-マネー」(P-ねっと商品券)は加盟店で現金感覚で使える商品券。当初、経費分として3%の手数料を取っていたが昨年からそれを廃止し、現金で釣り銭を出せるようにした。手数料なしで釣り銭まで出しているところは全国でも珍しいという。
 同町では平成10年から、町内に三つあったスタンプカードのサービス統一を模索。しかしどう一本化するか、カード式にするかシール式にするかなどで、なかなか調整がつかなかった。
 結局、カード方式にした場合、本部のコンピュータと各加盟店に設置する端末の初期投資がかさむうえ、故障などトラブルが発生した際の迅速な対応も難しいことから、シール式に決着。そこには「これからは心がより伝わるアナログのコミュニケーションが大事」という“こだわり”
もあった。
 ちなみに名称の「P」はパーティー(仲間)、パーク(公園)、そして小海町のシンボルキャラクター「プティリッツァ」の頭文字からとった。

「P-ねっと商品券」の将来構想

こうみP-ねっと協同組合
理事長 品田 宗久

 こうみP-ねっと協同組合は小海町の中に3つあったスタンプ会を1つにして、スタンプ事業と商品券事業をする為に設立した組合です。
 1本化することも大変だったのですが、カード方式にするか、シール方式にするかで3年位かかりました。結局、初期投資がかかりすぎるし、これからはわかりやすくアナログでコミュニケーションが取れることが大事だということでシール方式で行うことになりました。
 そして組合員も商店、飲食店、自動車、美容院、民宿等いろいろな業種が加盟してくれたので1枚2円(200円で1枚)と1枚50円(5,000円で1枚)の2種類を発行しました。そしてなるべく組合員に負担をかけないようにお客様には300円分のシールを貼って頂き、200円で換金をして100円分は組合で預かり、いろいろなイベントや経費に使うことにしました。また、商品券も当初は銀行の手数料、印刷代等がかかるので3%の手数料を頂いていたのですが、組合員の中には商品券の利用を嫌がる店もあるということで昨年の総会で3%の手数料を頂かないこととして1,000円は1,000円で換金できるようにして、現金と同じでシールもちゃんと出して頂くようにしました。
 今、シールの買い上げが一番多いのはガソリンスタンドで掛売りの分も(銀行、農協などの引落とし分も含めて)3ヵ月まとめて売上げに対してシールが何枚ということで郵送しています。多い人には直接届けていますので非常に評判が良く、固定客が増えています。
「夏至祭」とか「クリスマス」などのイベントの時にも子供は500円の参加費のところを200円の満点カード1枚(300円は組合負担)で参加して大変喜ばれています。毎年「P-ねっと杯ママさんバレーボール大会」も行っていますが、1チーム満点カード15枚(3,000円分)で15から20チームが参加して大変盛り上がっています。また、町会議員の報酬の一部や、審議会の報酬もP-ねっと商品券で支払って頂いています。
 今、病院とか歯医者への支払いなども商品券で出来ないかとお願いしているのですが、法律等いろいろあってなかなか難しいようです。将来的には町の中で地域通貨的に使っていけるように町づくりとうまく連携しながらやっていければと思っています。


利用の伸びは順調。地域通貨としての定着をめざす

 「P-ねっとカード」「P-マネー」ともに利用は順調に伸び、事業は好調。その理由は行政への積極的な働きかけも含めた、利用推進への強力な取り組みにある。
 加盟店の業種は商店、飲食店、民宿、美容院、ガソリンスタンド、自動車整備工場と幅広い。シールの配布については個店の裁量に任される部分が大きく、販売促進ツールとして自由に活用できるのも大きな特徴だ。売り出しなどでシールを通常の数倍から十倍以上つけている店もあるという。
 また町内で開催される「P-ねっと杯ママさんバレーボール大会」の参加費は「P-ねっとカード」で支払う決まりにした。主婦を中心とする参加選手たちにシール集めを促し、町内での購買促進を図ろうという狙いからだ。
 一方、「P-マネー」も町民はもとより行政にも積極的に利用を働きかけ、町議会議員報酬の一部や、行政による審議会への出席報酬もこれで支払われている。まちづくりとも連携し、将来的に地域通貨としての定着をめざしたい考えだ。

名称: こうみP-ねっと協同組合
所在地: 南佐久郡小海町 大字豊里57-1
設立年月: 平成14年7月
理事長: 品田宗久
組合員数: 86
事業: シール式スタンプ・共通商品券発行事業
事業エリア: 小海町
加盟店: 小売店・飲食店・ガソリンスタンド・理美容院・民宿・自動車整備工場など

商品券発行事業

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