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月刊中小企業レポート
更新日:2006/09/09

イノベーション

会社の支配権が奪われる?!

~売渡し請求に潜むワナ~

 今年の4月より税制改正があり、主宰者給与の損金不算入(いわゆるオーナー課税)対策で株式の10%超を第三者に移すことを検討されているのではないでしょうか。それにあわせて会社法改正で定款の見直しもされているかと思います。
 株式を移した第三者に法人税の増税は免れますが、会社法改正で新しく導入されました売渡請求権を定款に追加したことで、その第三者に会社を乗っ取られる恐れがあります。
 会社を乗っ取られるとはどのような場合か事例を使って、説明させていただきます。

I.株式の売渡請求権とは

 会社にとって好ましくない人に株式が相続してしまった場合に、支配権の維持と経営の安定を目的として株主総会の特別決議により会社が買い取ることのできる権利です。

II.支配権が奪われるケース

支配権が奪われるケース

~会社が乗っ取られるまでの過程~

III.支配権を維持するためには

 支配権を維持する方法としては、生前贈与をおすすめします。
 その結果、第三者が持つ株式の議決権割合を抑えることができます。
 その方法は、①相続時精算課税、②100万円の贈与の活用が有効ではないでしょうか。

活用するPOINT

活用するPOINT

  1. 相続時精算課税:今後も会社で利益が出続ける場合、株価が安い時に活用する。
  2. 110万円贈与:事業承継の緊急性が低く、贈与税が払えない場合。

 定款を変更すれば自由に会社のルールを作ることができますが、安易に変更してしまうと思わぬアクシデントに遭遇してしまう可能性があります。
 定款の改正には税法も考慮し経営の安定や事業承継がスムーズに行えるような改正をしていきましょう。

新役員給与制度がスタート

 平成18年4月1日以後最初に開始する事業年度において、役員給与に関する取り扱いが大幅に見直されました。今月は、その全体像、注意すべき点をご紹介いたします。

Q役員給与って、どんなふうに支給すれば税務署も認めてくれるの?

A認められる支給方法は、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与ですが、中小企業に影響するのは定期同額給与・事前確定届出給与の2つです。

Q定期同額給与?事前確定届出給与って…?

A定期同額給与とは、今まで通りの毎月一定額を支給する方法です。事前確定届出給与とは、不定期に支給する場合には事前に税務署に届出をしておく方法で、今回新しく創られた制度です。

Q改正にあわせて、何かする事は?

A今後も一定の時期に一定の額を支給していくのであれば、今まで通りで特に問題はありません。ただし、一定の時期とは1ヶ月以内をさしますので、同額でも3、4ヶ月に一度支給をする非常勤の役員さんがいる場合等には、届出が必要です。
 なお、以前は名前だけでも、3人の取締役が必要でした。しかし会社法が施行されて、取締役が一人の会社も認められましたので、役員の見直しも含めて、まずはご相談ください。

増税回避の注意点

 既に4月号にてお話しさせていただきました、オーナーの給与を経費として認めない改正ですが、その後明らかになった点を追加という形でご紹介いたします。
 まず、この改正は完全な増税改正です。その適用される会社ですが、医療法人等を除いた「会社」で個人と実質上変わらない会社です。そしてその影響額は、社長の報酬1,000万円の場合、66万円ほどの増税と試算されます。一人会社とみなされないようにする、これが適用回避の鍵です。

〈実状は回避が厳しい〉
 一人会社とみなされないようにするためには、株主を替えるか取締役を代えるかですが、この基準も実質的には厳しいものになっていることが、現在明らかになっています。主な注意点は株の形式的な異動はだめ、常務に従事する役員とは、です。
 
〈株の形式的な異動はだめ〉
 回避方法の一つに、オーナー関係者以外の方に、10%超の株式を持ってもらう方法があります。ただし、形式的な異動ではオーナーのものとみなされてしまうため、慎重に行わなければなりません。基本的には信用できる人にもってもらえばいいのですが、総会に参加しない、委任しっぱなしではまずいです。証拠となる書類の準備をしていきましょう。
 また、従業員持株会等の創設を一度考えてみてはいかがでしょうか。従業員さんが株を持つことで適用は回避され、従業員さんの意識改革にも一役かってくれます。
 
〈常務に従事する役員とは〉
 もう一つの回避方法に、オーナー関係者以外の方で、常務に従事する役員の半数以上を占めるように、役員を改選する方法も考えられます。ただし「会計参与」「監査役」「使用人兼務役員」は常務に従事する役員ではないことが、現在明らかになっています。
 これらが除かれてしまい、この回避方法は相当厳しくなりました。ただし、その内容を詳しくみれば回避できる可能性はあります。
 
〈今後の対策方針〉
 一人会社とみなされないようにするためには、多少とはいえ、資本と経営、どちらかを実質的に変化させなければならないことになります。また、10%超の株式を他人に所有してもらって回避する方法も、今後の情勢によっては20、30%と、その範囲を広げる改正があるかもしれません。最新の情報を元に、貴社にあった対策方法を考えてみてはいかがですか。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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