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月刊中小企業レポート
更新日:2006/08/11

コラム

人材を求める

長野県中小企業団体中央会副会長 丸山 彰一(長野県信用組合理事長) 今年の新卒採用期間は長期に亘っている。採用スケジュールを昨年より早めたが、終了はエンドレスという企業が多くなったと聞く。雇用環境は企業業績の回復と共に改善され「採用人数を増やす」という企業が増加していることが主因であるが、企業が「量」と共に「質」を求めている事にもある。今年の場合「量」確保を優先し「質」重視の傾向は若干低下しているようであるが、経営者が永い不況を克服した経験から「人材」の必要性を痛感した結果であろうと思っている。
 また、2007年団塊の世代が一線を退く時期が目前に迫ってきた事も要因の一つと考えられる。「技能・技術の伝承」。これは企業存続の根幹である。継続雇用制度の導入など高年齢者の雇用環境は整備されてきたが、企業の歴史は技能・技術伝承の歴史と考えれば、「若者の力」に期待し長期的な視野にたって人材育成をしていく姿勢こそ必要であろう。
 ところで、質を求めるという事であれば採用手法とか形態を考え直してみてはどうか。通年(または随時)採用制を採る。新卒に拘らないなど、広く人材を求める事を考えても良いのではないか。最近、学業を修了しても上手に社会に溶け込めない人が年々増えている。更に、就業後短期間で離職してしまう比率も高くなっている。これらの若年者を一束にして「意欲が無い」、「辛抱ができない」と片付けてしまう事もできるが、「自分の適性」を探している少数派もいる。面接の結果「相思相愛」となれば「採用費+費やす時間」以上の財産ができる。若年者ばかりでなく、高齢者でも、性別も問わず、場合によっては他企業からの出向受入という手段もある。それぞれの分野で能力を持った人を戦力(質)として活用することが企業を活性化させる。ただし技能・技術の伝承という点では、若年者を育てる事が有益であろう。
 では、そのような人を採用するために必要な事はといえば、やはり広報活動であろう。ただし広報活動とは、マスコミに求人広告を掲載するという事だけでなく、日頃から企業姿勢(企業風土)を宣伝する事である。新卒者への就職案内誌はどの企業も立派なものを用意している。企業説明会においてもビジュアル・コミュニケーションが多くなり、企業属性とか、採用条件など理解しやすいように工夫されている。しかし、ここでいう企業姿勢の宣伝とは採用に限ったものではなく、その企業が日頃取り組んでいる姿を事ある度に、多くの場で、多くの人に知ってもらう努力をすることを言っている。日頃のそのような姿勢が、その企業の「価値観の形成」に役立ち、それが社会に広まり質の高い人材を得られる事に繋がるはずである。

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