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月刊中小企業レポート
更新日:2006/08/11

健康を考える

46回目の「鼻の日」に

健康を考える 8月7日は、「鼻の日」です。日本耳鼻咽喉科学会は1961年に、鼻の病気に対する啓蒙活動を行うために、この日を「鼻の日」と定めています。今年は、46回目の「鼻の日」ということになります。そこで今回は、鼻の健康と病気が、個人と社会に及ぼす影響について考えてみます。

■外鼻と鼻腔の役割

 外鼻は、顔面の中央に隆起した器官で、文学的には「鼻が高い」、「鼻を明かす」などのように自己や個人を象徴的に示す言葉です。外鼻の疾病は目立つだけに早く治したいと考えるのが人情でしょう。美容外科では外鼻形成手術を希望する人も多いようです。日本人は隆鼻術、欧米人は外鼻を低くする手術が多いと聞きます。このように外鼻の正常・異常の判断は、極めて個人的なものと考えられます。芥川龍之介の短編小説「鼻」で描かれた禅智内供の長い鼻は、高僧のエゴイスティックな対処で、衆愚の物笑いの種になっていました。外鼻の形体が病的かどうかの最終判断は個人に任せるのが道理ですが、安易に外鼻を審美対象にして外見力向上のための手術を受けることが、健康増進につながるかどうか考えさせられます。
 一方鼻腔は、脊椎動物の頭部の嗅覚器で、ほ乳類では口腔と独立した鼻腔が呼吸器の一部としても機能しています。更に、人においては言語・音声の共鳴腔としての役割も果たしています。鼻腔の健康を考える場合、上記の①嗅覚機能、②呼吸機能、③共鳴機能の3つに分けて考えると理解し易いと思います。

■社会の自立した一員として人類文化を享受していくために嗅覚は重要

 嗅覚は、食物・生殖対象・外敵の発見・識別に重要な役割を果たしていると言われています。陸生動物一般には、嗅覚は、個体の保存・種の保存に欠かせない機能ですが、人では、嗅覚障害は個体に致命的な損害を与えることはほとんどないので、最低限の生存のための必須条件ではありません。しかし、社会の自立した一員として人類文化を享受していくためには嗅覚は重要です。食事会での香辛料・社交界の香水・宗教儀式の香料などが自分だけ感じないのは、寂しいものです。嗅覚の健康は、社会的連帯感を潜在的に強める機能がありそうです。社長も参加する食事会は、会社組織の健康に大いに役立っていると思われます。

■鼻の健康が国際競争力を支えている

 呼吸器の一部としての鼻腔の役割は、体外から空気を取り込む際に加湿・加温・除塵・気道免疫などが状況に応じて機能し、外界の環境変化・気候変動から肺胞を護り、肺の呼吸機能を効率的に補助・支援することです。鼻腔の呼吸機能があればこそ、人類は地球上の広範囲の環境で活動が可能となります。現代は、企業活動もグローバル化し、社長も社員も世界中に出張しなければならず、鼻の健康が国際競争力を支えていると言っても過言ではありません。

■鼻詰まりは、とどのつまり、「万事休す」

 最後に、鼻腔の共鳴機能は、人の高度に発達した聴覚に対応して、音声言語のバリエーションを拡大しています。例えば、日本語50音中、ナ行とマ行は鼻を詰まらせるとほとんど発音できません。音声が不明瞭になり、ママと呼んだのにパパと聞こえてしまいます。鼻腔の共鳴機能が確保されていなければ、情報化社会に能動的に生きていくための発言力やコミュニケーション力が維持できません。鼻詰まりでは、副鼻腔炎の予防・改善にもなると言われている鼻歌も歌えません。鼻詰まりは、とどのつまり、「万事休す」です。

長野県保険医協同組合理事 
三田 温

 

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