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月刊中小企業レポート
更新日:2006/08/11

特集 よくわかる中小企業のための新会社法33問33答その1(抜粋)

 平成17年6月29日、第162回国会で「会社法」(以下、「新会社法」)が成立しました。
 これまで、会社に関する規定は、商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(いわゆる「商法特例法」)など、様々な法律に分散しており、一つの法律にまとまっていませんでした。
 新会社法で導入される制度のうち特に中小企業にとってメリットが大きいと考えられるものについて、内容がよくわかるよう、33の問答形式にまとめたものが中小企業庁発行の『よくわかる中小企業のための新会社法33問33答』です。
 今月号と来月号の2回に分けて抜粋したものを掲載いたします。
 なお、この『よくわかる中小企業のための新会社法33問33答』の詳細は中小企業庁のホームページでも、ご覧いただけます。

会社の実態に合った組織づくりを

株式譲渡制限会社

1.「株式譲渡制限会社」とは何ですか。

「株式譲渡制限会社」とは、すべての株式の譲渡を制限している株式会社のことです。新会社法では、有限会社制度の廃止により、株式譲渡制限会社であるかどうかが制度設計の新たな基準となってきます。

■株式譲渡制限会社の定義

 株式譲渡制限会社とは、
①すべての株式の譲渡について、
②会社の承認を必要とする旨の定めを、
③定款に置いている株式会社のことです。

①について:
 株式譲渡制限会社は、「すべての株式」の譲渡を制限している株式会社です。
 種類株式を用いて一部の株式のみ譲渡制限している場合は、株式譲渡制限会社に該当しません。
②について:
「会社の承認」とは、原則として取締役会における承認を指しますが、定款で別段の定めを置くことも可能です。また、株式譲渡制限会社では取締役会を設置しないことも可能なので(Q2参照)、その場合の承認機関は原則として株主総会となります。
③について:
株式の譲渡制限の定めを定款に置くためには、株主総会の特殊決議(議決権を有する株主の半数以上、かつ当該株主の議決権の2/3以上の賛成)が必要となります。

中小企業にマッチした機関設計

2.株式会社の機関設計が柔軟化されるそうですが、具体的にはどういう組み合わせがあるのですか。

株式譲渡制限会社では、取締役会および監査役の設置が任意になり、取締役を1人のみとすることも可能となります。

■新会社法における機関設計のルール

 新会社法では、株式会社は次のようなルールに従って、機関設計を行うことになります。

①株主総会:
すべての株式会社で必ず設置。
②取締役:
すべての株式会社で最低1人は必要。ただし、取締役会を設置する株式会社では3人以上(取締役会は取締役3人以上で構成するため)。
 (これまでは必ず3人以上必要だった。)
③取締役会:
株式譲渡制限会社では任意設置。それ以外の株式会社では必ず設置。
 (これまでは必ず設置しなければならなかった。)
④監査役:
株式譲渡制限会社では任意設置。ただし、取締役会を設置する会社では原則設置(⑧参照)。
 (これまでは必ず設置しなければならなかった。)
⑤監査役会:
大会社(株式譲渡制限会社、委員会設置会社を除く)では必ず設置。取締役会を設置しない場合には、設置できない。
⑥委員会:
監査役を設置する会社では、設置できない。会計監査人を設置しない場合には、設置できない。
⑦会計監査人:
大会社では必ず設置。大会社以外の会社では任意設置。
 (これまでは、資本金が1億円以下かつ負債総額が200億円未満の場合、設置できなかった。)
⑧会計参与:
すべての株式会社で任意設置。大会社以外の株式譲渡制限会社が取締役会を設置する場合、会計参与を設置することで監査役に代えることができる。

 (注)大会社:資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社

取締役会を設置しない会社の株主総会

3.取締役会を設置しない会社の株主総会は、どう変わりますか。

取締役会を設置しない会社では、株主総会の決議事項が拡大されるとともに、招集手続が簡素化されます。

■株主総会の権限の拡大・招集手続の簡素化

 株式譲渡制限会社では、取締役会を設置しない機関設計も可能になります(Q2参照)。
 取締役会を設置しない株式会社では、これまで取締役会で決定していた事項について、株主総会で決議することが可能になります。このため、次のように株主総会の決議事項が拡大されるとともに、その招集手続が簡素化されます。

株主総会の権限の拡大・招集手続の簡素化

取締役・監査役の任期

4.株式会社の取締役や監査役の任期はどう変わりますか。

株式会社の取締役の任期は原則として2年、監査役は原則として4年となりますが、株式譲渡制限会社では、定款でそれぞれ10年まで延ばすことができます。

取締役等の責任

5.取締役等、会社役員の責任は、どう変わりますか。

取締役の会社に対する責任は、原則として過失責任となります。
   また、一定の場合に、役員の損害賠償額を制限することもできます。

■取締役の会社に対する責任

 取締役は、次のような行為により会社に損害を与えた場合、他の役員等と連帯して損害賠償等の責任を負うこととされています。

①違法配当:
分配可能額を超えて剰余金の配当を行うような場合。
②利益供与:
株主の権利行使に関して、株主に対し金銭その他の財産を供与するような場合。
③利益相反取引:
取締役と会社の利益が相反する取引を行うような場合(原則取締役会決議必要)。
④法令・定款違反:
法令や定款に違反するような行為を行うような場合。

 ①~③の行為は、これまで無過失責任とされていましたが、新会社法で原則過失責任となり、不注意ミスがない(無過失)場合は責任を負わなくなります。

注意:
*「不注意ミスがない(無過失)」ことの証明は、取締役が行う必要があります。
*自ら利益供与や自己のための利益相反取引を行った取締役は、無過失責任となります。

取締役会の書面決議

6.取締役会の決議の方法は、どう変わりますか。

定款に定めれば、実際に会議を開かずに、書面上で決議すること(いわゆる「書面決議」)が認められるようになります。

進化した株式を中小企業ではどう使う?

譲渡制限株式の発行

7.譲渡制限株式の制度は、どう変わりますか。

すべての株式でなく、一部の株式について譲渡制限することができるなど、柔軟な制度設計が可能となります。

■譲渡制限の定め方

 譲渡制限株式とは、その株式を譲渡しようとする場合には会社の承認を必要とすることを定款で定めた株式のことです。譲渡を承認する機関は、原則として、取締役会を設置しない株式会社では株主総会が、取締役会を設置する株式会社では取締役会が務めることになります。
 株式の譲渡制限については、定款で次の事項を定めることが認められるなど、柔軟な制度設計が可能となっています。

  1. すべての株式でなく、一部の種類株式について譲渡を制限すること。
  2. 株主間の譲渡について、承認を要しないこと。
  3. 特定の属性を有する者(従業員等)に対する譲渡については、承認を要しないこと。
  4. 譲渡を承認しない場合において先買権者をあらかじめ指定しておくこと。
  5. 取締役会を設置する会社において、承認機関を株主総会とすること。
注意:
一部の株式についてのみ譲渡制限を行っている場合には、株式譲渡制限会社にはなりません(Q1参照)。

自己株式の機動的な取得

8.株式が市場取引されていない会社の自己株式の取得方法は、どう変わりますか。

自己株式の取得の決議が定時株主総会に限定されず、臨時株主総会でも可能となります。
また、譲渡人を指定しない方法も新設されます。

■あらかじめ指定した譲渡人からの自己株式の取得(相対取引)

 これまで、株式が市場取引されていない会社の自己株式取得の手段は、あらかじめ会社に株式を売却する「譲渡人」を指定し、その譲渡人から直接株式を取得する「相対取引」という方法に限られていました。
 相対取引で自己株式を取得する場合は、株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の2/3以上の賛成)において、次の事項を定めて取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に授権することが必要となります。

  1. 取得する株式の数(種類株式発行会社では、株式の種類および種類ごとの数)。
  2. 株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額。
  3. 株式を取得することができる期間。
  4. 譲渡人となる株主(譲渡人以外の株主は、自己を譲渡人に加えることを請求できる)。

 取締役(取締役会)への授権決議は、これまでは年1度の定時株主総会で行う必要がありましたが、新会社法では、いつでも開催できる臨時株主総会でも授権決議が可能となるため、自己株式の機動的な取得が可能となります。

■譲渡人を指定しない方法による自己株式の取得

 新会社法では、あらかじめ譲渡人を指定せずに会社が自己株式を取得できる方法が新設されます。この方法による場合、株主総会で決議して取締役(取締役会設置会社では取締役会)に授権する事項は次のとおりです。

  1. 取得する株式の数(種類株式発行会社では、株式の種類および種類ごとの数)。
  2. 株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額。
  3. 株式を取得することができる期間。

 取締役(取締役会)への授権決議は、定時株主総会だけでなく臨時株主総会でも行うことができます。また、特別決議が必要となる相対取引の場合と違い、あらかじめ譲渡人を指定しない方法による場合の株主総会決議は、普通決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の過半数の賛成)で足りることになります。
 授権決議後は、会社は取締役(取締役会)の決議を経て全株主に対して1株当たりの取得価格などの買受条件を通知し、これに応じた株主から自己株式を取得することができるようになります。

相続人等に対する売渡請求

9.相続や合併等により会社にとって好ましくない者に株式が分散することを防ぐには、どうしたらいいですか。

相続や合併等で株式を取得した者に対して、会社がその株式を売り渡すように請求できる旨を定款で定めることができます。

■会社が売渡請求を行う際の注意点

 この制度を活用するには、次のような注意点があります。

①請求期限:
相続等があったことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の2/3以上の賛成)を経て請求する必要があります。
②売買価格:
株式の売買価格は当事者間の協議によりますが、協議が整わない場合、裁判所に売買価格決定の申立てができます。ただし、申立ては売渡請求の日から20日以内に行う必要があります。
③財源規制:
剰余金分配可能額を超える買取りはできません(Q15参照)。

議決権制限株式の活用

10.議決権制限株式は、どう変わりますか。

株式譲渡制限会社においては、これまで発行済株式総数の1/2までとされていた議決権制限株式の発行限度がなくなります。

■種類株式と種類株主総会

株式会社は、剰余金の配当や残余財産の分配、株主総会で議決権を行使できる事項などについて、内容の異なる2種類以上の株式を「種類株式」として発行できることになっています。議決権制限株式もこうした種類株式の一形態です。

注意:

種類株式を発行している会社では、次のような行為を行った結果、ある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、全体の株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の2/3以上の賛成)の他に、その種類株式の株主で構成される「種類株主総会」の特別決議が必要とされます。

  1. 株式の種類追加など一定の事項に関する定款変更。
  2. 株主割当による新株発行等。
  3. 合併等の組織再編。
  4. その他(会社法第322条参照)。

 ただし、あらかじめ定款で種類株主総会の決議を必要としない旨を定めることも可能です。

議決権や配当についての株主ごとの異なる取扱い

11.株式会社においては、議決権、配当等について、必ず出資額に応じた配分にしなければなりませんか。

株式譲渡制限会社においては、株主総会の特殊決議により、議決権や配当について株主ごとに異なる取扱いを定款に定めることができるようになります。

■株主ごとの異なる取扱いと株主総会の特殊決議

 株主ごとの異なる取扱いには、例えば次のようなものがあります。

  1. 議決権の行使について、株式の数によるのでなく1人1議決権とする。
  2. 一定数以上の株式を有する株主については、議決権を制限する。
  3. 配当や残余財産の分配について、株式の数によらず株主の頭割りで分配する。

株券の廃止

12.株券は発行しなくてもよくなったと聞きましたが、本当ですか。

新会社法では、株券は定款に株券発行の定めがない限り発行されないことになります。

社債の発行

13.社債の発行は株式会社以外はできないのですか。

株式会社のみならず、特例有限会社、合名会社、合資会社、合同会社も社債を発行することができるようになります。

会計参与の導入で、会計がますます重要に

会計参与制度

14.新設される会計参与とは、どのような機関ですか。

会計参与は、取締役と共同して計算書類の作成・説明・開示等を行う会社内部の機関で、税理士・公認会計士等の会計専門家からなります。設置は完全に会社の任意であり、強制はありません。

■会計参与の職務

 会計参与は、株式会社の機関で、取締役と共同で計算書類を作成し、株主の求めがあった場合は株主総会で説明をします。また、会社とは別にその計算書類を5年間保存して株主や会社債権者に開示し、閲覧請求への対応を行います。

■会計参与の資格要件

 会計参与は誰もがなれるものではなく、会計の専門家である税理士(税理士法人含む)、公認会計士(監査法人含む)のいずれかに限られます。
 その会社または子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人等は会計参与にはなれませんが、顧問税理士が会計参与として就任することは可能です。

■会計参与の責任

 会計参与は、次のとおり、会社や第三者に対して社外取締役と同様の責任を負います(Q5参照)。
 また、会計参与の氏名または名称は登記事項となります。

①会社に対する責任
会計参与が会社に損害を与えた場合は、損害賠償等の責任が生じます。この責任は過失(不注意ミス)があった場合の責任で、株主代表訴訟の対象にもなります。
  ただし、損害賠償額については、会計参与が善意(知らない状態)で重過失(重大な不注意ミス)がない場合、株主総会の特別決議により、報酬の2年分までに制限することが可能です。また、責任限定契約を締結しておくこともできます。
②第三者に対する責任
会計参与が、職務について悪意(知っている状態)または重過失があったときは、第三者に対して損害賠償責任が生じます。

■設置は完全に会社の任意

 会計参与の設置は完全に会社の任意であり、機関設計や株式の譲渡制限の有無にかかわらず、強制されることはありません。
 なお、大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社)以外の株式譲渡制限会社(Q1参照)が取締役会を設置する場合、会計参与を設置することで監査役に代えることができます。

剰余金の分配

15.剰余金の株主への分配は、どう変わりますか。

配当は、株主総会の決議によりいつでもできるようになります。
また、剰余金の分配の規定が整理され、統一の財源規制の下に置かれます。

■金銭配当と現物配当

 新会社法では、金銭以外の財産で配当を行う手続が明文化されるため、自社商品等で配当を行う、いわゆる「現物配当」が可能となります。
 ただし、金銭配当の決議は、株主総会の普通決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の過半数の賛成)で足りますが、現物配当については、原則として株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の2/3以上の賛成)が必要とされます。

決算公告

16.どのような会社で決算公告が義務付けられるのでしょうか。

すべての機関設計の株式会社で、決算公告が義務付けられます。

■決算公告の方法

主な公告の方法とその内容は次のとおりです。
 インターネットによる公開の具体的な手続は、次のとおりです。

  1. 取締役会の決議。
  2. 貸借対照表を画像処理してホームページに掲載。
  3. アドレスの登記。

(注)なお、一度掲載した貸借対照表は5年間継続して掲載します。

決算公告の方法と内容

決算公告の方法と内容

 

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