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月刊中小企業レポート
更新日:2006/07/30

イノベーション

100年に一度の大改正ついに新会社法施行!

~今こそ「定款の見直し」で安定経営を掴み取る!!~

 この5月1日から商法施行以来、例を見ない大改正を経て新会社法が施行されました。今回はこの新会社法を踏まえた「定款の見直し」についてご紹介します。定款は会社の憲法ともいわれますが、従来、定款は旧商法の規制によって画一的な条項を置くことしかできませんでした。新会社法では定款に盛り込む内容の選択の幅が大きく広がりましたので、新会社法をフル活用した「定款の見直し」によって、安定経営の基盤としてはいかがでしょうか?

■『実質一人会社規制』対策とセットで 「定款の見直し」を!

 4月号で、「一部の会社を除いて『実質一人会社』のオーナー社長の役員給与のうち、給与所得控除部分が経費として認められなくなる」という税制改正についてお伝えしました。この『実質一人会社規制』への対策と「定款の見直し」は密接な関係にあり、実際には2つセットで考える必要があるでしょう。そこで今回は「取締役の半分を第三者にする」という増税回避対策をとった場合、どのような見直しができるのかご紹介したいと思います。

~取締役に第三者を入れようと思うが、経営が不安定にならないか心配…

 増税回避対策とセットで「定款の見直し」をする場合、「増税回避と安定経営を両立する選択をする」ことが大切になります。対策としては、

 ①取締役をオーナー(代表取締役)と第三者(従業員など)の合計2名とする
 ②取締役会を設置しない
 ③株式はすべてオーナー一族が持ち、株主総会ですべてを決定するようにする

といったことが考えられます。①によって「実質一人会社」の定義をはずれ増税を回避できます。②③重要事項の意思決定はオーナー一族が占める「株主総会」で行えるよう、「取締役会」は非設置にします。これにより第三者の取締役は意思決定に加わらず、経営の安定が図れます。〔新会社法では非公開会社(株式の全部が会社の承認がなければ譲渡することができない会社)の場合には取締役は一人でもよく、取締役会を設置しないことが可能です。そして取締役会を設置しない場合、取締役会に変わって、取締役を選任・監督する立場にある株主総会ですべてを決議するようになります。〕
 また、新会社法では非公開会社の取締役の任期が最長10年に延長されました。しかし安易に任期を長くすると、取締役を任期途中で解任した場合、残りの任期につき役員報酬分を損害賠償請求されるおそれがあります。従来通り任期2年とするのが無難でしょう。
 以上のような対策をとることで、増税回避と安定経営が両立できるのではないでしょうか?これはあくまで一例です。

■譲渡や相続で株式が分散するのを回避したい!

~会社の承認がなければ譲渡できないように定款で定める

 株主の中に従業員や取引先といった第三者が入っている場合には、この第三者が会社に無断で売却し、株式が分散してしまうことが心配されるのではないでしょうか。
 対策としては「代表取締役の承認がなければ株式が譲渡できない」といった株式譲渡を制限する旨の条項を設けることが可能です。この場合、譲渡承認の請求は「書面」によるものとすべきでしょう。(なぜなら、新会社法では株式譲渡の承認請求が口頭でも可能とされるからです。例えば口頭で「○○さんに株式を譲渡したいので承認して欲しい」という承認請求の連絡があったにも拘らず、一定期間放置していた場合、承認があったものと見なされて株式が望ましくない人の手に渡ってしまうというおそれがあります。)また、代表取締役に事故があった場合の代行者を株主総会で定めるようにして置くのが賢明でしょう。

~売渡請求権の定めを置いて、相続による株式の分散に対処

 また、第三者に相続が生じて株式が望ましくない人の手に渡ってしまうということも考えられます。新会社法では対策として株式売渡請求権を設けることが可能になりました。こうしたリスクに備えて定款に「相続その他一般承継により当会社の株式を所得したものに対し、その株式を売り渡すことを請求できる」という定めを置けば会社は相続人に対して株式を売り渡すよう請求することが可能となり、売渡請求された相続人はこれを拒むことができません。ただし、この売渡請求権はオーナーに相続が生じた場合には少数株主に会社を乗っ取られることに繋がりかねませんのでさらなる対策が必要になります。

ついに「ボンド制度」の概要が明らかになった!!

 以前、新しい入札制度、「ボンド制度」について取り上げさせていただきました。その時は、本格導入時期等の詳しい内容は明らかになっていませんでした。先日も建設業のお客様に「ボンド制度はいつから導入されますか?」、「自社にとってどんな影響がありますか?」というご質問を多数受けました。
 3月29日、国交省が中央建設業審議会の場で、今年の秋から「ボンド制度」を段階的に導入すると発表しました。
 今回は明らかに「ボンド制度」をQ&A形式でお話しさせていただきます。

Q1.「ボンド制度」はなぜ導入されることになったのですか?
 近年、国、地方自治体で一般競争入札の公平性を図るための動きが高まってきました。ただ、一方で、不良業者が大量に入札に加わり、安値受注が横行し、受注企業の倒産で工事が中断するケースがありました。
 そのため、不良業者の排除と、施工能力のある企業間の競争が行われる環境づくりをするため、今回の「ボンド制度」の導入に踏み切ったのです。

Q2.誰が評価をするのですか?
 保証協会、金融機関、損害保険会社が評価機関として候補になっています。評価は、「3C」という視点に基づき、企業の財務内容・経営体力を評価します。

Q3.3Cとは何ですか?
①資金力(Capital)、②過去の工事経歴(Character)、③契約遂行能力(Capacity)の3つを指します。
①資金力では、
会社の資本力、決算状況、金融機関の評価等を含めた財務全般の情報など。
②過去の工事経歴では、
工事の種類・規模・数、施工体制、公共団体の工事取得点数、下請け業者に対する誠実な対応など。
③契約遂行能力では、
工事の施工体制、計画、技術者の能力・経験、工事に対する適正な見積りなど。

Q4.財務内容は経営事項審査でも評価されてきましたが、違いは何ですか?
 下記の内容で経審との一番の相違点は、審査の頻度と厳しさと言えます。
 なぜなら、万が一、建設会社が工事を完成できなかった場合、ボンドを発行した保証会社は大きなリスクを負うからです。そのため、審査を年数回行い、財務内容を評価しなおし、ボンドを発行します。

Q5.国では秋から導入ということですが、長野県ではいつ導入されますか?
 県の公共事業改革チームに確認をとったところ、長野県での導入は十分な検討が必要であるという慎重な姿勢です。
 また、具体的なルールや、導入も国の方向性を踏まえた上で、検討予定なので、1~2年ほど時間がかかりそうです。

Q6.では、その1~2年の間にどんな準備をすればいいのでしょうか?
 ①中小企業の会計指針(建設業版)に従った会計処理の実施
 ②自己資金の充実
 ③月の適正な財務内容の報告
 ④工事施工能力・技術力のアップ
 ⑤内部の管理体制の構築  等が挙げられます。
 4月末に、中小企業庁から発表された中小企業白書「金融機関が貸出に際して中小企業を評価する視点」でも、①財務(決算書)②保全(担保や保証)③企業を取り巻く環境(市場動向や技術力)④代表者(計画立案能力や経営意欲)の大きく分けて4つの項目が挙げられています。これは先に挙げました3Cの視点とも似ています。

Q7.今後はどんな動向ですか?
 建設業のみならず、中小企業全体を取り巻く環境が企業の持つ本当の力を見極めるという方向へ向かっています。
 「ボンド制度」の導入は、まだ決定していない部分もあり、目が離せません。
 今年は経審の改正もあり、建設業者にとって激動の年となっていきます。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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