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月刊中小企業レポート
更新日:2006/07/30

特集 高度化めざす中小企業のものづくり基盤技術

 わが国製造業の国際競争力の強化と新たな事業の創出を図るため、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が6月13日施行されました。
 これは、わが国の強みである中小企業が持つ高度な「ものづくり基盤技術」と最終製品を提供する大企業等との密接な連携にあることを踏まえたものです。
 同法律は、中小企業のものづくり基盤技術の高度化がわが国製造業の国際競争力の強化および新たな事業の創出において果たす役割の重要性にかんがみ、中小企業がその高度化に向けて行う研究開発およびその成果を促進するための措置を講じたものです。
 中小企業のものづくり基盤技術の高度化をめざした取り組みの事例を掲載。また、ものづくり創造塾塾長の柳澤さんの寄稿文も紹介します。

中小企業のものづくり基盤技術の高度化をめざして

―「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」(中小ものづくり高度化法)今年6月施行―

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化を支援し、我が国製造業の国際競争力の強化および新たな事業の創出を図ることをめざす「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」(中小ものづくり高度化法)が今年6月13日施行された。
 これにより中小企業は、単独あるいは共同で「特定ものづくり基盤技術の高度化を図るために単独で又は共同で行おうとする特定研究開発等に関する計画」(特定研究開発等計画)を作成し、同法の規定に基づいて経済産業大臣(経済産業局長)の認定を受けることができるようになった。
 また同法第2条第2項に基づき、中小企業者がその高度化を図ることが我が国製造業の国際競争力の強化、または新たな事業の創出に特に資するものとして「特定ものづくり基盤技術」として次のとおり指定した。

  1. 組込みソフトウェアに係る技術
  2. 金型に係る技術
  3. 電子部品・デバイスの実装に係る技術
  4. プラスチック成形加工に係る技術
  5. 鍛造に係る技術
  6. .動力伝達に係る技術
  7. 部材の結合に係る技術
  8. 鋳造に係る技術
  9. 金属プレス加工に係る技術
  10. 位置決めに係る技術
  11. 切削加工に係る技術
  12. 織染加工に係る技術
  13. 高機能化学合成に係る技術
  14. 熱処理に係る技術
  15. めっきに係る技術
  16. 発酵に係る技術
  17. 真空の維持に係る技術

英知を結集し、売れるモノづくりを創造しよう。

―ものづくりで地域活性化をめざす「ものづくり創造塾」の取り組み―

 「産学官連携を通じて英知を集結し、”売れるものづくり“をめざして地域製造業・中小企業の今後に活路を見い出していこう」。
 ものづくりに携わる松本地域の企業8社が平成15年にスタートさせた「ものづくり創造塾」の基本コンセプトだ。
 松本商工会議所に事務局を置き、メンバー8社のほか、支援メンバーとして信州大学医学部附属病院、長野県松本地方事務所商工課、(財)長野県テクノ財団アルプスハイランド地域センター、長野県情報技術部門、松本市経済部、(財)長野県中小企業振興公社松本支所、商工中金松本支店が参加している。
 ものづくり創造塾には毎月1回メンバーが集まり、ものづくりのアイデアを出し合い、製品化に向けた議論を重ねる。商品開発のターゲットは「医療福祉分野」「環境分野」。
 原則として、メンバー企業が商品の設計・開発・モニタリング・マーケティングから販路に乗せるまで自前でやり抜くが、各メンバーがそれぞれの得意分野で協力する。
 スタート以来4年を迎え、数々の成果を世に出しているものづくり創造塾。その取り組み事例から一部を紹介する。

事例1:家庭用可燃ゴミ・廃プラスチックごみ減容ボックス

製造元/有限会社上條紙工
松本市和田3967 松本臨空工業団地

 一般家庭用廃棄物のうち「その他のプラスチック類」がかさばって始末に困る点に注目して開発した、逆戻りしないふたの付いた廃プラ減容器。開発と製造は上條紙工。
 行政指定のゴミ袋にぴったりのサイズとし、可動式のふたが付いているためゴミがあふれない。水洗いができるため衛生的で、燃やしてもダイオキシンが発生しないポリプロピレン製とし環境にも配慮した。これはものづくり創造塾が開発して商品化した第1号。徹底的なコストダウンにより低価格を実現し、ヒット商品となった。

事例2:竹炭焼炉

製造元/株式会社一ノ瀬鐵工所
松本市神林3888

 円筒回転式で材料の出し入れや掃除が簡便で、軽量で移動も簡単にできる炭焼き炉。良質な竹炭を焼くことができる。開発と製造は一ノ瀬鐵工所。
 本装置は会社経営の第一線から退き、純粋にものづくりがしたいと考えた同社会長、一ノ瀬清秀氏が開発を手がけた。二十数年前に中国地方に旅行した際、当地で竹の処理に苦慮していたことを思い出し開発に取り組んだ。一時開発に行き詰まることもあったが、県の技術指導も受け、商品化を果たした。

事例3:マジックハンド

製造元/ エンジニアリング・ システム株式会社
松本市笹賀5652-83

 バネを使い、ハンドルに手をかけて押すと先端から4つのつめが出て、離すと物をはさみこむ仕組みのマジックハンド。新聞、タオル、ティッシュなど身の回り品をつかんで取り寄せることができる。開発と製造はエンジニアリング・システム。
 ものづくり創造塾メンバーと交流のある「松本障がい者運転協会」の会員から、高速道路利用時にチケットの受け取りに苦労していると聞き、商品化に取り組んだ。超高齢社会を迎え、日常生活の中で立ったり座ったりにも苦労する高齢者や障害者が増える中、製品の評判も上々。つかみ取る部品の大きさ、重さ、距離などを変えた各種商品を開発している。

事例4:地震下敷き防止救命具

製造元/ 株式会社タカノ
松本市和田3967-73 臨空工業団地

 コの字形のステンレスパイプを寝ている人の布団の上に立てかけることで、地震による家具の転倒から身を守る救命具。高さ約70センチ、奥行き約210センチのパイプをX状に広げて設置し、使わない時には畳んでしまえる。安曇野市の坂巻捷男氏が考案し、株式会社タカノと一ノ瀬鐵工所で、プロジェクトを組み株式会社タカノが製作した。
 坂巻氏は阪神大震災の教訓から、倒れた家具の直撃を避ける救命具のアイデアを考え、実用新案登録していた。平成17年まつもと広域工業まつりでものづくり創造塾のブースを訪れたのがきっかけとなり、試作を依頼、製品化にこぎつけた。

寄稿 ものづくり創造塾がめざすもの

ものづくり創造塾塾長 柳澤 源内

 モノづくりの原点は、そこにちょっとした考案を入れる、他と違うアイデアを取り入れる、品質を良くする、価格を安くするといったことにあります。そして大切なことは買ってくれる人がいること。それがなければモノづくりは単なる道楽になってしまいます。
 ものづくり創造塾では「モノづくりのプロ」を自負するメンバーが月1回集まり、モノづくりのアイデアを出しあい製品化をめざします。そして製品開発から販路開拓まで成し遂げていきます。
 ターゲットは医療・福祉分野と環境分野が中心。あれば便利で売れる、しかもある程度の利益を上げられる製品づくりをめざして、忌憚のない意見を出しあい、知恵をぶつけ合い、アイデアを磨き上げていきます。そして松本市や信州大学医学部などの支援メンバーも参加し、事業化への見極めをつけていきます。
 製品開発にあたっては原則として、メンバー企業自ら開発から製造、販売まで手がけます。モノづくり企業は技術は抜群でも市場動向の把握、販路の開拓といった部分が苦手というケースが少なくないため、創造塾では事業化の節目ごとにアドバイスをしたり、相続に乗ったりすることでサポートしています。また各企業は設計・開発段階では公的な補助金などに頼らず、身銭を切ってやり抜くようにしています。あくまで企業として自立した経営、モノづくりをしていかなければいけないと考えるからです。
 ものづくり創造塾の目的は、メンバー企業が持っているキラリと光る技術や独自のアイデアを事業化というかたちで、実際に芽吹かせること。
 さまざまな業種のモノづくり企業がお互いに協力し合えば、1社では困難な課題もクリアできる。その中からヒット商品が生まれれば、メンバー以外の地域の企業経営者の皆さんにも大きな刺激になるはずです。
 ものづくり創造塾の活動が地域にインパクトを与え、将来にわたって地域経済を活性化させていけたらと願っています。

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