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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

健康を考える

年をとると歯は抜けていくものでしょうか?

健康を考える 歯は年をとることで抜けるものではありません。ではなぜ、現状のご老人には多数の歯がない方が多いのでしょうか?
 歯を失う原因は虫歯で約55%、歯周病で約45%といわれています。この2つが大きな原因なのです。老化が原因で失うのではないのです。今のご老人の多くは今まで悪くなった時だけ歯科医院に行って、悪くなる原因について改善したり、よい状態を維持するための通院をしてこられなかったのではないでしょうか?
 これからの歯科医院のかかり方は、悪くなった時かかるのはもちろん、それをきっかけにしていただいて、悪くなった原因を改善し、よい状態を維持するための通院に、かかり方を変えていただくことが大切と考えられます。悪いところを治しても、原因が改善されないままであるなら、同じことを繰り返してしまうのです。そんなことを繰り返しているうちに、むし歯で歯がボロボロになり、歯周病が進行してとうとう抜歯となってしまうのです。
 この繰り返しを断ち切り、繰り返さないようにすることが第一歩で、次に改善した状態を維持していくメンテナンスを行っていくことが、ポイントになります。

むし歯になりにくい人は歯が強いから?

 確かに、フッ素の摂取量の多い地域の方や、歯の萌出直後からフッ素を使用し歯を強くしている方は、むし歯になりにくくなります。ただし、むし歯のなり易さは、歯の強さだけではありません。その他の多くの要因も関与しています。皆さんがご存知の甘味の摂取頻度や歯磨きの良し悪しも影響しますが、それ以外にも唾液の量や性質、虫歯菌の量も影響しています。会社やご家庭で間食の多い方、薬の副作用で唾液の分泌量が少なくなっていらっしゃる方、虫歯菌の多い方などは要注意です。
 最近では、歯科医院でむし歯リスク検査を行っている医院も多くあります。唾液検査によって量、性質、お口の中の虫歯菌などの数を検査し、ブラッシング状況や食生活環境を問診させていただき総合的にリスクを判定します。その後不十分であった項目を改善していく方法を、その方の生活に合わせてご提案し、実行可能な予防対策をしていくことが歯科医院の役割となってきています。
 歯は削れば削るだけ、虫歯になりやすくなります。歯科医院でむし歯を治すという行為は決して風邪のように治るものではなく、虫歯になってしまったところを削り取り、別の材料に置き換えているだけなのです。そういった詰め物と、自分の歯のつなぎ目は、健康な歯面より格段にむし歯に対して弱くなっていることは一般の方でも想像がつくと思います。一度虫歯にしたら決して治らないということを肝に銘じて、予防することに気を配っていただきたいと思います。その力になるのがこれからの歯科医院のあるべき姿と考えています。

あなたも歯周病かも?

 最近では、テレビでも歯周病に関してCMされることが多くなってきていますので、歯周病がどういった病気か思い浮かぶ方も多いと思われます。また、30歳で80%の人が歯周病にかかっていると言っているCMもあります。歯周病はむし歯とは違って、歯そのものが悪くなるのではなく、歯を支えている骨が溶けてなくなっていく病気です。支えが無くなった歯は、たとえむし歯になっていなくても抜けてしまうということになります。もったいないことです。むし歯だけを予防しても、歯周病を予防しなくては結局歯を失ってしまいます。歯周病を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。歯周病は多くの場合、歯と歯肉の境目の汚れが原因で進行していきます。この部分の汚れは長時間ついていると口の中のばい菌と一緒になってバイオフィルムという、とても頑固な膜となってこびりつきます。この汚れがきっかけとなって、歯肉に炎症を起こさせ、やがて歯を支えている骨を破壊することにつながっていきます。このバイオフィルムに唾液や血液の中のリンやカルシウム、ミネラルが沈着して歯石になっていきます。食べかすと違ってバイオフィルムや歯石はブラッシングで取り除くことが難しく、歯科医院でプロフェッショナル・クリーニングを受ける必要があります。こびりついた汚れを放置しても、歯周病は相当悪化してくるまで痛みなどの症状が出ないという特徴があり、気づかれた時にはすでに非常に進行しており抜歯せざるを得ない場合や寿命が著しく短くなっている場合もありますので、やはり予防が大切ということになります。
 長期間定期的メンテナンスを行った先生のデータによれば、15年間以上悪くなった時だけ通院されている方と、15年間以上定期的にクリーニングに通っている方では75歳以上で残っている歯の本数は10本以上の差があります。クリーニングに通っている方は約18本残存しており、比較的快適な食生活が送ることができそうです。それに対して悪くなった時だけ通院されていた方は約4本で、これでは入れ歯なしでの食事は無理といえるでしょう。

これからの歯科のかかり方

 繰り返しになりますが、生涯楽しく快適に食事を楽しむために、上手に歯科医院を利用していただきたいと思います。そのポイントは、悪くなってからかかるのではなく、悪くなる前にかかるということ。そして、検査によってご自身の現状をしっかり把握し、その人それぞれに合った予防プランの提示を受け、実行していくこと。実行できないことは、ご一緒に考え実行できるプランに組み直していくこと。また、現状が一定レベルまで改善したら、そのよい状態を維持していくために定期的にクリーニングを受けることと言えます。
 さあ、今からでも遅くありません。いつまでも自分の歯でおいしく楽しく食べるために、新しい習慣を実行してみてはいかがでしょうか?

長野県保険医協同組合
小塚 一芳

 

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