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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

イノベーション

はじめに会社法施行

 会社法が5月1日から施行されました。医療法人、社会福祉法人、NPO法人など公益法人には関係ありませんが、株式会社や有限会社、合名会社、合資会社の経営者にとっては、早速対応すべき点がある場合も多く注意が必要です。今回の改正は、商法から会社についての規定だけを抜き出し、会社関係の法律を1つにまとめたものです。公益法人制度改革においてもこのスタイルが用いられ、民法から公益法人の部分を抜き出して作られるのではと言われています。法人関係の知識層の見解ですと、会社法の規定が一番良くできているからモデルにするのだそうです。
 改正の中で一番大きいのは、会社法で最低資本金が撤廃されて、株式会社も特別な認定を受けなくても資本金1円でよくなった点です。これにより会社の数が爆発的に増えるだろうと言われています。一方、ドイツの制度を真似して作られた有限会社は、4月をもって68年の歴史を終了し設立がダメになります。しかし、その使いやすさが改めてクローズアップされ現在は設立ラッシュです。いつもの年よりも数万件は多く設立される予定です。
 会社が作りやすく改正されたのはよいのですが、既存の会社ですぐに影響が出るのは、「会社法施行に伴って1人会社がたくさん出来るだろう」ということで税制改正されてしまった実質1人会社規制だと思います。オーナー一族で90%以上の持株割合だと、社長さんの役員報酬の給与所得控除を認めませんよという制度です。会社によっては年間100万円近い増税になるところもあります。この制度を回避するにも会社法を検討しながら進めないと思わぬ落とし穴がありますので注意が必要です。節税と経営の安定の両立が出来ればよいのですが、そうはいかないケースもありますので、会社法とそれに伴った税制が自社にどう影響するのか興味を持っていただければ幸いです。
 中小企業の事業承継について大きな3つの課題と言われている『①後継者を誰にするか②自社株への相続税を下げられないか?どう支払うか?③株式の分散をどう防ぐか』については、自社株の買い取りが緩やかになったり、相続などによって株式の分散を防ぐ手段など、中小企業の安定経営にプラスになる制度もたくさんこの会社法に盛り込まれています。5月以降の決算について、株主総会(または社員総会)を機会に、新会社法を使っての会社の安定経営(リスクマネジメント)を検討してみてはいかがでしょうか。

金融機関や取引先も注目!
決算書から会社の姿が丸裸になる!?

 決算書類は1年間の業績を示し、経営者や会社を評価したり、自社の強みや弱みを把握する重要な役割があります。自社の分析や経営の実態を正しく示すツールである決算書類は金融機関において融資を行う基準として重視してきていますが、その決算書類が5月1日からの会社法施行で大きく変わります。この変更により①貸借対照表の「資本の部」の名称変更、②利益の配当ルールの変更、③会計ソフト見直しの対応が必要になってきます。
 今回は会社法の施行によって変更になる決算書類とその影響についてご紹介させていただきます。

  • 決算書類の変更ですべての会社に影響がでます!

     会社法の施行に伴い、決算書類に関する主な変更点は左記の2点になります。この変更は会社の規模・形態を問わず「すべての会社」に適用される共通ルールとなります。
     ①貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」に変更(図1参照)
     ②利益処分案がなくなり株主資本等変動計算書が導入される(図2参照)

    ①貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」に変更(図1参照) ②利益処分案がなくなり株主資本等変動計算書が導入される(図2参照)

  • 変更による影響① 会社の実態、信用力を見るには純資産の部に注目!!
     純資産の部は、株主資本とそれ以外に分けて表示することになりました。株主資本とは主に資本金と、会社が蓄積してきた税引後利益である利益剰余金の合計になります。会社法により今後新たに資本金1円の会社がどんどんできる可能性があります。皆様が資金の調達力がない1円会社とこれから取引を考えた場合、判断の基準の1つとして純資産の部が注目されます。その中の利益剰余金は、会社の将来の配当財源、投資に備える金額がいくらあるか示しています。この金額が大きい会社は過去に利益を出してきたと見れるので、相手先の実態や信用を調べるモノサシになります。

  • 変更による影響② 配当は総会の決議によりいつでもできるようになります
     これまで、利益の配当は定時総会で決算が確定した後、利益処分で行う仕組みになっていました。今後は、総会の決議をとれば何回でも出来るようになります。そのため利益処分案がなくなり、代わりに利益の動きを示す株主資本等変動計算書が必要になりました。今後は会社が蓄積してきた利益や配当の動きが一目瞭然になります。

  • 法人税申告に添付する決算書類も新しい様式に!
     法人税の申告の時にも決算書類が必要ですが、5月決算7月申告の会社から新しい様式での作成になります。既存の会計ソフトでは対応できないことが多く、バージョンアップの準備が必要になりますが、各メーカーの対応は6月頃からになりそうです。
     会社の信用には社長の人柄に対するものや事業に対する信用などがありますが、今後は会社法や会計指針によって決算書の形式や中身の信用についても注目されてきます。自社の決算書が果たしている役割についてもう一度確認されてみてはいかがでしょうか。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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