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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

元気な企業を訪ねて −チャレンジャーたちの系譜ー

“「自然を豊かにするために最先端の仕事がある」を基本に、
顧客の要望に耳をかたむけ、独創的自社製品の創造めざす。”

大林 頼彦さん
株式会社エーアイテック
代表取締役社長 大林 頼彦さん

製品を一貫して手がける自社ブランドメーカー

 昨年12月7日から3日間、幕張メッセで「セミコン・ジャパン2005」が開催された。これは毎年この時期に開催される世界最大の半導体装置・材料の国際展示会。世界26カ国から約千六百社・団体が参加し、約4,300ブースを出展した。
 そのなかに、エーアイテックの出展ブースもあった。
 最大の目玉は、車載用半導体の低温検査用に新規開発した「水冷2元冷凍機一体型低温ICハンドラAI-1000」。
 これは半導体検査装置と冷凍機を一体化した装置で、マイナス65度からプラス150度までの検査が可能な同社の自信作。省エネ、省資源、省スペースに配慮し、液体窒素冷却方式にくらべ、イニシャルコストおよびランニングコストの大幅な低減を実現した。全数検査が基本の半導体分野ではハンドラの需要は大きく、今後積極的に需要を拡大していきたい製品だ。
 世界初となるマイナス65度でのデモンストレーションは期間中、大きな注目を集めた。また同時出展し、デモンストレーションを行った異形部品挿入機、冷凍機も高い関心をよび、期間中ブースは大勢の来場者でにぎわった。
 エーアイテックは、独自の省力化機械、電子機器の開発・設計から製造まで一貫して手がける自社ブランド研究開発メーカー。開発製品はすでに300モデル以上におよぶ。
 「大企業の開発室がそのままひとつの企業になったようなもの」。大林頼彦社長が話すように、社員一人ひとりがものづくりに濃密に関わるのが同社の大きな特徴だ。

自然を豊かにするために最先端の仕事がある

 「大学以来一貫して、熱に関する技術を追求。さらに、非人間的な仕事は機械に任せ、人間がもっと人間らしい仕事ができる社会づくりに貢献したいと、半導体関係を中心にロボットを使った省力化機械の開発にも取り組んできました」
 大林社長は広島県福山市出身。名古屋工業大学で伝熱工学、熱力学を専攻した。工学部に進んだのは「最先端の仕事がしたいと思ったから」。その一方で、馬術部に入り自然と親しむという一面も。「自然を破壊するのではなく、人間はもちろん、自然を豊かにするために最先端の仕事があるというのが私の基本。ただ最先端だけに憧れたわけではないんです」。
 大学卒業後、新潟鉄工所に就職し、吸収式冷凍機の開発を手がける。その後、ヒートポンプに技術的興味を抱き、72年「当時ヒートポンプを手がける唯一の会社だった」、豊科町(現安曇野市)のゼネラルエアコン(現GAC)に入社。初めて安曇野に住まいを構えた。
 同社で数々の開発を手がけ、技術者としての実績と評価も高まっていた83年に同社をスピンアウト。仕事仲間もでき、環境の良さも気に入っていた安曇野に「骨を埋めるつもり」で、一緒に辞めた仲間と会社を立ち上げた。
 ところが数年後、資本比率の問題もあり経営権を他に握られるというトラブルに遭遇。代表だった大林社長も身を引いた。「根っからの技術屋で、資本関係など何も考えていなかった。」
 その経験を生かし、満を持して八六年設立したのが、エーアイテックだ。

ニッチを狙った独創的な自社製品に活路を見出す

 設立以来、省力化機械の設計・製造を請け負い、業績は順調。90年には現在地(松本臨空工業団地)に移転した。
 そんななか来たのが、世界トップの表面実装機メーカ子会社からの依頼。プリント基板に自動機で表面実装後、部品によっては手作業で基板の穴に差し込み固定しなければならないものもある。その工程を自動化する機械が欲しいというのである。
 数カ月間苦労した末、それぞれ形状の異なる電子部品を基板に自動挿入する「異形部品挿入機」を納入。すると各拠点から次々に、さらには親会社からもオーダーが来た。「そんな大メーカーがうちに開発を依頼してくるのを見て、我々は本当に世の中にないものを作っているんだと確信しました」。
 しかしその矢先、バブルが崩壊。顧客は一斉に外注を抑制し、めっきり仕事が減った。
 大林社長はこれを契機に、大手が手を出せないニッチ分野を狙った、独創的な自社製品の開発に活路を見出す。
 まず選んだのは異形部品挿入機。部品挿入率の向上、処理時間の短縮など、ユーザーニーズに応えながら製品の完成度を高めた。「部品の角度を変えられないか」という要望には、基板を載せた搬送テーブルを360度回転させる逆転の発想でクリア。この業界初の機構を搭載した九六年発売の「アイサート2100」は、同社の知名度と評価を大きく高めた。
 異形部品挿入機は、特に耐久性と信頼性が求められる車載基板での需要が高く、その8割が自動車業界向け。またパチンコ、パチスロなどの娯楽機器向けも増えている。今では同社の代表機種のひとつだ。

融合化事業補助金を活用し、事業協組で開発に取り組む

 もうひとつ代表機種のひとつが、半導体や電子部品の極寒環境での耐久性を試験する「脱フロン超低温冷却装置」。エーアイテックが得意とする熱技術をフルに生かした製品だ。
 開発にあたっては国、県の融合化開発促進関連技術事業費補助金(約6千万円)を活用した。開発主体は松本臨空工業団地内の異業種5社が集まり、大林社長が理事長になって九四年設立した「エア・テクノ事業協同組合」。95年から97年の3年間をかけた。
 大林社長はその経緯をこう振り返る。「この事業は最初から最後まで中央会の細かで的確なご指導があってはじめて、成功させることができた。冷凍機では当社の色が強すぎると、開発テーマの選定でも二の足を踏んでいた。しかし、お客様は何を欲しがっているかを最優先すべき、という中央会から推選されたカタライザーのアドバイスで吹っ切れました。この補助金がおりたことは大きかった」。
 そして「最先端技術は自然を豊かにするためにある」という信念に基づき、自然環境に配慮し、オゾン層を破壊するフロンを使わずマイナス55度が出せる信頼性試験用冷凍機の開発に着手。98年、脱フロン超低温冷却装置として結実した。
 この分野では今も液体窒素を使った装置が一般的。しかし同社では改良を重ねより安く、手軽に運用できるメリットを生かし設備更新を狙う。エレクトロニクス化が急速に進む自動車業界でのニーズが急速に高まり、需要拡大に応えている。
 中小企業にとって、新たな研究開発のネックになるのが資金調達。融合化事業補助金を活用した同社だけに各種補助金の活用にも前向きだ。もっとも、使いづらさを痛感することが度々だという。
 「特に書類選考で落ちた場合、どうして申請が認められなかったのか、その理由がまったく示されないこと。それでは次への生かしようがありません。書類作成にはかなりの時間がかかるだけに、申請そのものに二の足を踏んでしまうことにもなる。もっとフォローがあってもいいのではないかと思います」

顧客の要望に耳をかたむけ、安く早く、高品質な製品に

 「お客様が何を求めているかを聞いていくとカタチが見えてきます。自分の頭の中だけで考えていくと製品化の成功率はとても低い。環境への配慮や省エネなど、実際にお客様とやりとりしながら要望を聞き、それを詰め、そのなかからお客様に共通しているものを標準化していきます」
 大林社長は自社製品の開発スタイルについてそう明かす。顧客の要望に真摯に耳をかたむけ、安く、早く、高品質な製品にまとめ上げていくこと。それが同社のものづくりの基本だ。
 将来、自社製品の海外展開も当然視野に入れる。しかし「海外展開は慎重にしている」という。サービス体制ができていないことが一番の理由。一品料理が多く、そのつど社員を派遣するのは困難だからだ。
 「国内の仕事で技術を磨くと世界に通用する技術になる。だから今は技術を磨くことに専念したい。まず装置の標準化に取り組み、ある程度量産品に近いものにして国内での信頼と評価を高めたい。海外展開はそれからです。そのためのステップとして、ICハンドラの標準化を進めたいと考えています」

開発環境に共感した技術者が全国から集まる

 同社は、積極的に全国から人材募集を行っている。社長自身、広島県出身ということもあってか、社内にIターン者を特別視する風土はない。
 「大手企業では一人が関われるのは一部分に過ぎない。でも当社では設計から完成まで、一貫して携わってもらう。納期・コストは厳しいが、自分の裁量で取り組んでもらう比重が高い。エンジニアにとってこの環境は大きなやりがいにつながっているようです」と大林社長。同社にはその姿勢や、開発環境に共感した技術者が全国から集まってくる。
 「会社の規模は小さくてもニッチ部分では世界一をめざす。その姿勢に魅力を感じ、当社をめざしてくれるのではないか。若い世代に技術を受け継いでもらうためにも、今後も全国から優秀な人材を集めていきたいと思っています」
 大林社長が若いエンジニアだった頃、「今開発している仕事は世界中で誰よりも自分が知っている。誰に聞くより自分に聞いてくれ」という強烈な自負心を持っていたという。今若い技術者に求めるのもその気持ちだ。
 経営者と同時に、一ベテラン技術者としての顔がそこにはあった。

プロフィール
大林 頼彦さん
代表取締役
大林 頼彦
(おおばやし よりひこ)
中央会に期待すること

中央会への提言
 当社ほどお世話になっている会社も少ないでしょう。きめ細かい情報提供にいつも支えられ感謝しています。

経歴 1941年(昭和16年)5月生まれ
1965年3月 名古屋工業大学卒業
1965年4月   新潟鉄工所入社
1972年   ゼネラルエアコン(現・GAC)入社
1986年9月   株式会社エーアイテックを設立し、代表取締役社長に就任
出身   広島県福山市
家族構成   妻、長男、長女
趣味   カメラ・VTR、映画鑑賞、乗馬

企業ガイド
株式会社エーアイテック

本社 〒390-1242
長野県松本市和田3967-74(松本臨空工業団地)
TEL(0263)48-1170
FAX(0263)48-1173
創業   1986年9月
資本金   4,000万円
事業内容   異形部品挿入機、IC挿入機、低・高・常温ICハンドラ、超低温冷却装置、塗布機、組立機等 FA機器の開発・設計・製造・販売
事業所   本社・工場
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