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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

イノベーション

役員退職金を試算してみませんか?

 経営者・役員は従業員と比べ法的保護が薄いのが現状です。従業員の退職制度は国の労働基準法、就業規則等で権利や保障が保全されていますが、役員の退職金については自己責任で確保しなければなりません。しかし、一体自分がどれくらいの役員退職金をもらえるのか、もらえると分かっている方でもその準備がしっかりと出来ているか把握されていますでしょうか。

■役員退職金の仕組み
 役員退職金には勇退時に支払われる生存退職金と、在任時にもしものことがあった際にご家族に支払われる死亡退職金があります。

■役員退職金の支給効果
 役員退職金を支給することによって

役員退職金は一般的に以下のように計算します。
 「最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率(社長の場合は3相当)」
 死亡退職の場合は上記の他、別途弔慰金として、業務上の死亡の場合は最終月額報酬の36ヶ月分、業務外の死亡の場合は最終月額報酬の6ヶ月分を支給することが出来ます。この役員退職金は退職所得として他の所得とは分けて課税されます。
 退職所得の計算方法は「(収入金額-退職所得控除額(※))×」となります。
※勤続年数20年以下………40万円×勤続年数
※勤続年数20年超…………70万円×(勤続年数-20年)+800万円
 仮に最終月額報酬が100万円で在任年数10年の社長が生存退職されたとすると、役員退職金額は3,000万円、所得税額・住民税額は合わせて約405万円となります。(3,000万の役員報酬の場合では約1,060万円)

(1) 退職所得は所得税法上最も優遇されている所得のため、退職金をもらう役員にとっては税負担が少なくなる(※)。
(2) 死亡退職金を受け取った家族はその退職金がみなし相続財産と扱われるため「法定相続人×500万円」までは非課税になる。(弔慰金は一定の範囲内で非課税)
(3) 自社株を純資産価額方式で相続税評価する場合に、評価減の効果が大きく株式の生前贈与等が容易になる。
(4) 適正な金額で支給された役員退職金は損金と認められ会社の利益と相殺されるため、法人税の負担が少なく済む。
以上のような効果が考えられます。
ただし、退職所得に関しては、退職金の支給実態の多様化などにより、優遇措置を見直す動き(退職金控除の縮小と、控除後の金額の1/2課税の変更)が出ています。

■役員退職金の準備
 内部留保をして退職金を積み立てていく方法や、借入金をして支払う方法もありますが、一番多い方法としては保険による積立ではないでしょうか。保険を使って外部貯蓄が出来る方法の一例としては事務所通信163号でご紹介させていただきましたが、保険の商品によっては支払った保険料を会社の経費にしながら貯蓄が出来ることや、万一の際の資金確保をしながらの積立もできます。また、役員退職金を支払う時期(勇退時期)を明確にしておけば、解約返戻金のピークも勇退時期に合わせて設定することもできます。
 しかし、たとえ保険に加入済みであっても解約のタイミングが退職より早ければ一時的に法人に利益が膨らんでしまい大きく法人税が発生してしまうことがありますし、役員退職金の金額に比べ保障額を高く設定しすぎた保険に加入したために保険料が高くなり資金繰りを圧迫してしまうことも考えられます。
 自分がどれだけ役員退職金をもらうことが出来るのか、今後の事業の予定はどうなのか、自分にもしものことがあった際に法人・家族にどれだけ資金が必要なのかを検討していただき、役員退職金の準備をされていない方は準備のご検討をしていただき、また保険によって準備をされている方は、今現在加入している保険が適正なのか再確認されてみてはいかがでしょうか。

 

役員給与の税務が変わる!!
~役員報酬の給与所得控除額分が経費にならない?!~

 平成18年の税制大綱の内容が発表されました。その中でもマスコミではほとんど報道されていませんが、オーナー社長様にとって重要な改正が盛り込まれています。弊社代表が事務所通信第166号でお話させていただいた、役員給与に関する内容についての詳細をご説明したいと思います。
 医療法人、社会福祉法人、協業組合等、行政許認可の必要な業種は対象外となり、株式会社、有限会社で「所得と社長様の役員報酬の合計が800万円超」等の一定の条件に当てはまる法人が対象となります。つまり、会社の所得と社長様の報酬の合計が800万円以下の場合は対象となりません。
 また、会社の所得と社長様の報酬の合計が800万円超3,000万円未満の場合で、『(社長様への報酬の3年平均)/(会社の所得と社長様への報酬の額)≦50%』という算式に当てはまる方も対象となりません。これは、利益を会社に残していらっしゃる場合に課税されないということです。
 また、株主・出資者、役員数の状況によっても課税されない場合があります。

イ) 代表者の親族以外の方で10%超の割合を保有している場合。
ロ) 代表者の親族以外の方が、常勤役員数の過半数となっている場合。
 以上をまとめると3点に集約されます。『会社の所得と社長様の報酬の合計が800万円超、社長様親族関係で資本金のほとんどを保有し、取締役会の過半数が社長様親族関係の場合』には税負担が増える改正となりました。ではいくらぐらいの影響になるのでしょうか?

増税影響額一覧表
社長への3年間平均の報酬額 給与所得控除額 実行税率 増税額
600万円 174万円 29.8% 51万円
1,000万円 220万円 30.0% 66万円

 かなり影響の大きい税額ですので、次に対策の一部をご紹介させていただきます。是非ご検討下さい。

イ) 株主・出資者の構成を変更し、同族関係者での割合を90%未満にする。
例:息子さんの配偶者のお父様等、親族でない信頼できる方に10%超の株を持ってもらう。
例:仲間業者の方同士で株の持ち合いをする。
ロ) 信頼できる従業員さんに取締役になってもらい、同族での役員数が過半数にならないようにする。
 増税を回避することは可能ですが、他株主の増加や取締役の増加により、経営の安定性を欠く可能性がありますので、会計担当者とご相談の上、対策をしていきましょう。
本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。
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