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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

コミュニティビジネスとしての企業組合

~17年度関東甲信越静ブロック中央会指導員研究会より~

 企業組合は、新たに創業、起業する際に容易に活用できる法人組織であることから、最近、その活用について全国的にも注目され、13年度81組合、14年度117組合、15年度167組合、16年度187組合と新規設立数が大幅に増加してきている。
 近年は、企業をリタイアした人材や主婦、高年齢者、SOHO事業者等が自らの経験、ノウハウを活かして、働く場を作ろうとするケースが増えており、介護福祉、託児所開設、地元特産品開発、ソフトウェア開発、インターネットを活用したビジネス等様々な分野での創業例がみられ、その実施する事業も地域貢献型(コミュニティビジネス)、職場確保型など多岐に亘っている。
 こうした中で17年度関東甲信越静ブロック中央会指導員研究会が2月1日に松本市において開催され、そこで発表された事例や特色ある企業組合を紹介します。

 

 


企業組合を設立して!!

矢沢ブランドの構築へ

長野県塩尻市 矢沢加工所企業組合 代表理事 塩原 輝子 氏

 野菜生産者が野菜を出荷するには、市場の規格に合わせる必要があり、規格外の野菜・果物は「余剰野菜」として市場経済には乗らず畑に放置されてきた。
 野菜生産者として、味に変わりがない野菜・農産物に付加価値を付けて消費者に届けたいとの思いを昭和60年頃から抱き、加工技術の取得を行ってきた。そして、平成7年に「矢沢会」を再結成し農産物製品を無人の直売所で販売してきた。こうした中で、平成10年に「自分たちの加工施設を持ちたい」との意識が高まり、何回かの研究会を通じ現在の未組織から法人化を決意し、各種の組織形態を検討し、最終的に企業組合組織を選択したのである。

 平成16年4月に「矢沢加工所企業組合」が成立し、同年8月に加工施設が完成、9月より加工が開始され、平成18年4月から12月の間の売り上げは約600万円で、19年3月までには1000万円の売り上げを達成したいと考えている。
 これからも初期の理念を忘れずに食の安心と安全を目指し、地域の高年齢の婦人達が生き生きと働く企業組合として運営していきたい。



特徴ある企業組合の活動事例

企業組合ネイチャーファームあなん(長野県)

レストラン経営、農産物、加工品等の販売
~産業構造変化の中での建設業者の新分野進出~


◎南信州の中小建設業者(6社)は長引く景気低迷と公共事業削減により大きな影響を受ける中で新分野への進出や経営の多角化を模索していた。その様な状況下で建設産業構造改革支援幹、コンサルタント等からアドバイスを受けながら、創業の機会を求めていた。
 検討の結果、様々な可能性を考慮して、建設業に軸足を残し、女性3名が主体となって「地産地消」を目指したレストラン経営をメーン事業にした企業組合を設立した。

 そして阿南町が経営する「かじかの湯」のリニューアルに併せ、レストラン事業の公募に当選し、17年4月にレストランをオープンし活動中である。

企業組合萌(千葉県)

介護事業
~地域密着で介護サービス展開中~

◎企業組合萌は、組合設立以前は、別のデイサービスセンターで勤務していた組合員が、地域に密着した家庭的な雰囲気の開かれたデイサービスセンターを開設し、利用者、家族との信頼関係を築きながら、利用者が住み慣れた地域で心豊かに過ごせるよう利用者本位の質の高い介護サービスを自分たちの手で提供することを目的として設立した。
 組合員4名がそれぞれに介護福祉士及びホームヘルパー1級の資格を有し、デイサービスセンターでの食事、入浴等の介護サービスや機能訓練等の指定通所介護事業を実施している。ケアプラン作成においてもケアマネジャーの資格を有する組合員がいるので、指定居宅介護支援事業を実施している。平成17年8月に千葉県より指定事業者に指定され、施設は、民家(建坪50坪)を借り上げ。組合でデイサービスに必要とする設備(テーブル、入浴施設等)を整え運営中である。

企業組合シニア旅行カウンセラーズ(東京都)

旅行業 損害保険代理業
~現役時代の旅行企画のノウハウを活かす~

◎旅行会社OBで、特に団塊の世代で、第1次旅行ブームに併せ大量に採用された者が、定年退職の時期を迎え、現役時代のノウハウと顧客を引き継ぎ、業務を行う受け皿として2001年9月に設立した。
 資格として旅行業の取扱主任者のみとし、組合は第3種旅行業登録。JATA正会員でもある(主催旅行受託可能営業所が2カ所)。
 企業組合シニア旅行カウンセラーズは、設立時は組合員6名で旅行業法をクリアするため1人150万円の出資を募り合計900万円で運営を開始し、2003年3月には旅行取扱高は6000万円を超え、現在も堅調に運営している。

企業組合OFFICEサンライズ(静岡県)

印刷技術のコンサルティング業
~紙幣印刷の経験と技術を活かして第2の人生を~

◎大蔵省造幣局で紙幣の品質管理や技術開発に携わってきた4人が、退職後再び仕事をして社会から評価されたいと気づき、これまでの経験を活かし平成16年3月に設立した。
 事業内容は高度な印刷技術と厳格な品質管理のもとに行われる紙幣印刷の経験を活かし、印刷業を中心とする中小製造業に対して、技術改善から生産管理を経て品質管理に至るまでのコンサルタント業務を展開中である。

玄人工房企業組合(新潟県)

労働者派遣法に基づく特定労働者派遣事業他
~特定組合員制度を活用し、団塊世代退職者の就業と企業の人材ニーズを結合~

◎年金支給開始年齢の引き上げ等に伴う所得補完や勤労を通じた生き甲斐を目的とした退職者・高齢者の就業ニーズが高まっている一方で、企業側では団塊世代の大量退職を目前に熟練技術者等の散逸を防ぐ策に迫られている。
 そのような中で、特定組合員制度の導入で会社等の法人も企業組合に加わることができるようになったことに着目し、新潟市内の印刷会社とその定年退職者が中心となって、双方のニーズをマッチさせるための企業組合を設立した。

 組合は特定労働者派遣事業を行うことにより、印刷業関連の技能や人材を持っていた定年退職者等を派遣労働者(個人組合員)として特定組合員である印刷会社等に派遣し、若年者への技能等の継承などを行わせている。この他、書籍・アルバム制作、家事代行、住宅修繕工事等様々な事業メニューをそろえ、他業種の特定組合員ネットワークも活用しながら顧客ニーズと個人組合員の就業ニーズに幅広く応えられるよう展開中である。

企業組合ライフサポートいばらき(茨城県)

飲食良品小売業
~家族等で地域の生活者と密着し事業活動中~

◎茨城県内で豆腐の移動販売を展開する企業の共同・発展組織として同社代表とその家族、親類5名で設立した。

 少子高齢化の急速な進展に加え、女性の高学歴化や社会進出等の構造変化を背景とした雇用や処遇、年金給付、介護などで将来の生活に不安を抱える人が増加する中で、自分たちが地域のためにできることを探した結果、生活の基本をなす衣・食・住のうち「食」に対する安全・安心への関心の高まりと、少子高齢化やシングル化の進行、高齢者独居の拡大の中での家族、個々人の住む家が多様化している「住」に注目した。
 安全で安心な食の提供を中心とした様々な生活者支援の事業化を検討してきたが、構想を具体化する中で、地域に根ざした事業活動と対外的信用を得るには法人組織がメリットあると感じていたが、会社組織の利益追求型というイメージに自分たちの構想とのズレを感じていた。そのような折、茨城県の「いばらき創業・第二創業拡大セミナー」を通じ企業組合制度を知り、最も自分たちの事業構想にあった組織「企業組合」を選択した。
 設立と同時にオープンさせた店舗においてヘルシー、機能性食品として注目の高い豆腐をはじめとする大豆関連飲食品、笠間焼きなど近隣地場産品の販売や宅配を行うほか、理事長の建築設計士資格を活かし、庭木の手入れ、リフォーム工事等に取り組んでいる。
 地域生活者の支援に、組合の専門分野である「食」、「住」に関するアドバイス、更には暮らしの様々な問題に専門家とのネットワークを構築し、日常生活の素朴な疑問から専門性を必要とする高度な問題の解決を図るサポート事業を展開中である。

 「コミュニティービジネス」の実施主体は、地域内の個人やグループ、NPO法人、組合、企業等様々であるが、「企業組合」は資本の結びつきだけでなく人的結合体でもあるので創業のために今後活用が大いに期待されている。

 

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