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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

成迫会計事務所通信より

倒産した取引先から販売した商品を引き上げられる!?

 景気が回復傾向にあると、新聞等で報じられてはおりますが、中小企業では未だ企業により格差があり、取引先が倒産する危険性が少ないとはいえない状況であるのは変わりがないと思われます。以前当事務所通信で、取引先の倒産に備えるための「倒産防止共済」や債権回収のための「少額訴訟制度」についてご紹介させていただきましたが、今回は、取引先に売上げた商品を取り戻しやすくする方法をご紹介させていただきます。
 商品を掛けで販売したけれども、代金を回収する前に取引先が倒産してしまい、結局回収できなかったといった悔しい体験をなさった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 そのような場合、せめて販売した商品だけでも取り戻せたら、どうでしょうか。
 また、いくら代金を回収できていないからといって、自社商品を引き上げる目的で、相手倉庫にある商品を承諾なしに回収した場合には、住居侵入罪と窃盗罪が成立してしまいます。このような事態をさけるために、契約書にある条項を記載することによって、倒産した得意先から販売した商品を引き上げることが可能になります。その条項は以下①から③になります。

①所有権留保の特約

 民法には「善意の取得(同法192)」というものがあり、取引の安全を図っています。つまり、商品が相手に渡ってしまうと、その商品の所有権は相手に移ります。ですので、商品を引き渡してしまった以上、その取引先が倒産してしまった場合は、その売った商品を取り戻すことが法律上難しくなります。
 このような事態にならないためには、次のような「所有権留保の特約」を設定しておくべきでしょう。

第××条(所有権留保の特約)
 本件物件の所有権は、買主が商品代金を全額支払うまで(完済するまで)売主に留保し、商品代金の完済と同時に売主より買主に所有権を移転するものとする。


②約定解除の特約

 取引先に経営悪化の影が現れたとき、契約を解除したい、商品を回収しておきたいと思われると思います。しかし、民法541条には、契約を解除するために相当な期間を定めて買い主側に催告をし、なお、その期間内に代金が支払われない時に契約が解除できるといった内容が書かれています。つまり、経営悪化が明らかであっても、直ちに契約が解除できるわけではないというわけです。この相当な期間を定めて契約解除の手続きをとっている間に、相手方が完全に倒産し、売った商品が第三者に転売されてしまう可能性も無いとはいえません。次のような特約を設定しておけば、相手方に不渡りが出て倒産すれば、約定解除の通知を出して契約を解除し、直ちに商品を引き上げることが可能になります。

第××条(約定解除の特約)
 乙において、次の各号に該当する場合に、甲は催告無くして本契約を解除できる
 ①乙が自ら振出し、もしくは引き受けた手形又は小切手が不渡り処分を受けた時


③失権約款の特約

 ②の約定解除の特約は、契約解除の通知が必要ですが、失権約款の特約を設定しておけば、自動的に契約を解除することができます。つまり、当該特約の中に定めた事実が発生した時には、自動的に契約が解除となり、その結果、売った商品の所有権は買主より売主に戻ることになります。(民法545条)
 以上契約書に設定することによって、取引先から商品をスムーズに取り戻すことが可能になります。

第××条(失権約款の特約)
 下記の各号の一つが発生したときには、本契約は直ちに効力を失う
 ①乙が振り出した手形又は小切手が不渡処分を受けたとき
 ②乙が本契約に定める債務を一つでも履行しないとき
 ③乙が他から強制執行、破産手続き開始の申し立てを受けたり、自ら破産や更正手続の開始を申し出たとき


 2006年に施行される新会社法により、資本金が1円でも株式会社が作れるようになります。つまり、誰でも簡単に会社を作れるようになるというわけです。その反面、会社の「信用」というものも現況に増して不安定なものになってしまうとも言えるのではないでしょうか。

建設業界のリストラ!入札制度、大改正の予感?!

 現在、建設業の事務所数の減少が進んでいます。新建新聞12月16日号によると、県内では去年の6月時点で、ピーク時の平成8年から2,000事業所減の17,000事業所となっていて、公共の建設市場もピーク時の37%で16年度は3,933億円となっています。
 市場規模が減少すると粉飾、談合が増加し、工事に必要な技術や資格を十分に備えていない会社が参入する危険があります。そのため国交省では、技術、経営、財務に優れた会社だけが入札に参加する「ボンド制度」の導入に向けて本格的に動き出しました。
 今回はボンド制度が建設業界に与える影響と、来年から施行される経審改正項目についてご説明させていただきます。

ボンド制度とは

図 ボンド制度とは、一定以上の公共工事に参加する場合の新たな入札制度のことをいいます(図参照)。建設業者の皆様は、①銀行や損保会社等の民間の保証会社に「ボンド」と呼ばれる保証書の発行を依頼し、②保証会社が建設業者の財務力等を評価し発行します。業者の皆様は、③入札参加申込の際ボンドを添付して申請する仕組みです。

ボンド制度が導入された場合の影響

 例えば、土木工事で1億円の工事が発注された場合、土木工事では経審の点数が929点以上(Aランク)に入札参加資格がありますが、ボンド制度が導入されると経審のランクの他に「ボンド」の添付も入札参加条件になります。そうするとたとえAランクであっても1億円の評価に値するボンドがなければ入札に参加することができなくなります。
 ボンドは、会社の①財務力、②施工能力、③経営能力を総合して評価されますが、評価の約75%は財務力が占めるといわれています。現状の経審では財務力の評価は期末のみですが、この制度が導入されるとボンドを発行するために期中の財務体質や関係会社間の取引についてチェックする可能性も出てきます。また、今年の8月から中小企業会計指針が公表され、金融機関が会社を評価する姿勢が厳格になってきています。
 ボンド制度の本格実施の有無や具体的な内容は来年3月末の国交省の報告を待つことになり、実施まで2~3年かかるといわれていますが、新たな入札制度として導入する環境が整ってきています。売掛債権や在庫の徹底管理など、自社の財務体制についてもう一度見直しをされてみてはいかがでしょうか。

経審改正項目について

 最近の社会情勢の変化に対応して、今回は以下の改正が行われます。

1. X1(完成工事高)の評点テーブルの見直し
X1の評点が平均14点かさ上げになり、P点は4.9点加算されることになります。
2. 防災に貢献する建設業者への加点
国や自治体と防災協定を結んでいる場合、W(社会性)を20点加算します。P点は3点加算になりますが、長野県の場合、新客観点数で5点加算されているので今後追加修正が考えられます。
3. 加点対象となる資格追加、建設業経理事務士の扱いについて
電気通信工事業の経審の加点対象となる資格者に「電気通信主任技術者資格者証の交付後5年以上の実務経験者」が新たに加わりました。また、建設業経理事務士のW加点については、引き続き加点対象となりました。

本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。
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