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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集1 「コモンズ」として活動する協同組合の取り組み

事例1 「『食農』による地域活性化、付加価値をつけ地域ブランドの確立へ」
協同組合いいやま故郷庵(こきょうあん

 当組合は、飯山の財産である自然を活かし、現在飯山市内で活動する「食」「農」「観光」の異業種ネットワークの核となり、「安心」「安全」「健康」の付加価値を加えることにより、新たな地域ブランドの確立と雇用の創出を図るための活動を開始した。

■組合設立の経緯

「食の伝え人」講座 講習風景
「食の伝え人」講座 講習風景
 飯山市の地域産業は、スキー観光の低迷、建設産業でのリストラ、農産物の価格の低迷等の様々な分野で縮小傾向が強まり、地域産業基盤が急速に衰退している。このような状況に対応し、「食農分野」をコミュニティ事業として立ち上げ、「農産物の生産」「食品加工」「販売・情報・観光」までの総合産業(6次産業(※注1))を構築するため、同じ思いを寄せる地域内の異業種の事業者によるネットワークを形成。地元の「農業」「観光」「消費者」の連携から、地域に新たな産業を創出するため、8月に協同組合が設立された。

 地域の特性に応じて「社会的共通資本」「地域資源」「地域伝統」等の管理・運営の主体となる人的ネットワークとして「コモンズ支援金事業」「コモンズ新産業創出事業」を活用した事業活動を展開している協同組合を紹介します。

※ 注1「6次産業」とは
 農産物生産(1次産業)、食品加工(2次産業)、販売・情報・観光(3次産業)までの総合産業(6次産業=1次産業×2次産業×3次産業)。

 

■事業の特色と目的

加工企業者育成講座 講習風景
加工企業者育成講座 講習風景

 当組合は、「食べるたいせつ」「食べ物を作るたいせつ」「こころ豊かに暮らすたいせつ」の3つの大切を踏まえ、自然や郷土の豊かさに包まれた「なつかしい未来」を目指し、いのちを大切にした「食」「農」に取り組み、「こころ豊かな田舎暮らし」の実現に向けた活動を行っていく。
 当組合が行う事業は、次の事項を目的としている。

  1. 市内各地域で活動中の異業種を結ぶネットワークの立ち上げ
  2. 地元での産直の連携(農、観光、消費者)
  3. 地域食材と地域食の掘り起こし
  4. 加工起業者の育成・研修、地元農産物の加工・生産・販売の研究

 地産地消・旬産地消の推進のため、地域の異業種ネットワークと農業を中心とした6次産業に携わる人材の育成を行うため、「コモンズ支援金」を8月に申請した。

■事業の内容と事業規模


 この事業は、「田畑事業」「アグリビジネス」「交流事業」「ホスピタル」の4つの切り口から次のことを行っている。

人にやさしい「いいやま故郷庵」事業計画

田畑事業

◆環境保全型農業の推進
◆遊休農地利用(試験用農地)

  • 環境保全型農業を普及員や講演者の講習・指導のもと小規模に実施
     → 作り手ネットワークの構築
  • 「大豆100粒運動」との連携による大豆作り
     → 豆腐・味噌の加工へ
アグリビジネス

◆加工起業者の育成研修・講習(実践型人材育成)

  • 毎月1~2回の講習会開催(実地研修)

◆地元農産物の加工の研究

  • 地域食材の掘り起こし(保存食)
  • 地域食の講習 → 食の風土記編纂委員会と連携 → 地域の料理上手のネットワーク化
  • 民宿との連携(薬膳料理等)
交流事業

◆地産地消・旬産地消の推進

  • 地元産農産物の斡旋・連携
     → 地域内消費システム構築
     → 農家と民宿等観光業・消費者
  • ホームページ(インターネット)利用による情報収集・発信・宅配産直
ホスピタル

◆森林セラピー・エコヒーリング事業との連携
◆療養食メニューの研究・開発

  • 食のセラピー開発


(1)環境保全型農業の講習(全6回)
(「大豆100粒運動」(※注2)と連携)

※注2「大豆100粒運動」とは
 子供たちの両手にのる「大豆100粒」を畑にまき収穫、そして食べ物にして口にするまでを学習する。
 夏には枝豆として、収穫後は「豆腐」「納豆」「味噌」と色々な食を作り、1年間を通して「農」と「食」を学び、生きる力を育むための運動。

◆「農のこころ」講座
 大地と人をつなぐ、食と農の大切。広い視野で「食」と「農」に取り組む意識向上講座。

(「農のこころ」講座 第1回目)

「寒地の自給菜園12カ月」

百品自給の菜園づくり。
 『365日絶やさない野菜作り耐寒野菜』『生ゴミの堆肥化と循環の暮らし方』『小学生と共同畑を持っての食育活動』等を講習した。
 講 師  細井千重子さん

<参加者 11名>
細井先生の「寒地の自給菜園12カ月」講座
細井先生の
「寒地の自給菜園12カ月」講座

(「農のこころ」講座 第2回目)

「こだわり農家の経営術」

 松本平の気候条件を生かし、こだわって作った安心な売れる農作物(水稲・果樹・大豆・そば等)づくりを、地域内自給することを目標に活動している内容について学んだ。
 講 師  浜農場 浜幾郎さん
 アドバイザー  農文協 相沢啓一さん

<参加者 16名>

相沢アドバイザーと「こだわり農家の経営術」講座
相沢アドバイザーと
「こだわり農家の経営術」講座

◆視察研修
 「食の祭典」視察と「高畠町有機農業推進協議会」との懇談会・交流会。「レインボープラン」視察。

視察研修スケジュールとその内容

■第1日目(10月23日)(山形県東置賜郡高畠町)
「まほろばの里たかはた『食の祭典』」視察
 この町に古くから伝わる郷土料理、美味しい農産物、地酒、ジャム、乳製品とこの町民と共に育まれてきた食文化と伝統。町民総参加のお祭りを見聞した。
「高畠町有機農業推進協議会」との懇談会
 農薬と健康の問題、生産と生命の問題を解決するために、安全な農産物の生産を町をあげて取り組んでいる協議会と意見交換を行った。

■第2日目(10月24日)(山形県長井市)
「レインボープラン」視察
 台所の生ごみを堆肥化し、地域の農業に活かすことを基本に、市民と行政が推進する「レインボープラン」について学んだ。

<参加者 20名>

レインボープラン視察研修風景
レインボープラン視察研修風景

(2) 食の匠(地域食・療養食)養成講習会(全8回)
◆「食の伝え人」講座
 食の大切。いのちの大切。伝える大切。風土にあった郷土食を中心に、食を作るだけではなく、その想いを伝えることができることに主眼を置いた講座。

(第1回目)

食の伝え人講座「北信州の集い」

 北信州といえば「そば」。そば打ちの講習会をしながら、そばの郷土食についての話をした。そばの他に「くじら煮」「いなごの佃煮」など、普段では食べられないものも登場した。
 講 師  樋口一郎さん

<参加者 11名>

樋口先生の「北信州の集い」講座
樋口先生の「北信州の集い」講座

手造り食品加工起業者養成講座
田舎のエプロン起業家 ここに誕生 講座
講師:(有)小池手造り農産加工所 経営 小池芳子 氏

  日  時 テーマ 内  容
1 平成17年
8月26日(金)
「農家が商品として販売できるシステムづくり」 生産した農作物に対して、全て収入につなげていく農産加工技術。農作物を捨てない経営方法の大切。
2 9月13日(火) 「手作り加工食品の魅力 I」 良い商品とは?売れる商品とは?
商品の作り方・考え方を、2からおしえていただきましょう。
3 10月18日(火) 「手作り加工食品の魅力 II」 素敵な商品を生む優れた加工所の作り方を、ばっちり、しっかり、教えていただきます。
4 11月14日(月) 「小池手作り農産加工所 視察」 小池講師の加工所を見学します。肌で感じることが、なにより大切。また、商品の販売について学びます。バスにて移動。
5 11月15日(火) 「小池手作り農産加工所での勉強会」
「農の大切と農家レストラン視察」
良い食材を生む人・場所とは。
良い食材を生かす考え方や技を習得します。
6 平成18年
12月 6日(火)
「加工所での実践ノウハウ」 加工所での実体験により、手ごたえをつかみます。
そこから生まれる新たな視点で、レベルアップを図ります。
7 1月17日(火) 「かゆいところに手が届く。
 知っておくと絶対いいこと。」
袋・容器の賢い使い方。ラミネート加工の実習。
賢い仕入れ方法など。
8 2月 7日(火) 「エプロン起業家 夢プラン」 自分の夢の実現に向けてプランを作ります。専門家からアドバイスを受けながら進めて行きます。はっきり言って贅沢です。
9 3月 7日(火) 「エプロン起業家 大地に立つ!」 起業プランを発表しながら、各自の意見を取り入れて、さらに質の高いものにして行きます。修了証書をお渡しします。

小池先生と「田舎のエプロン起業家 ここに誕生」講座
小池先生と「田舎のエプロン起業家 ここに誕生」講座

(3) 加工起業者育成講座
(実地研修型)
 ◆「田舎のエプロン起業家 ここに誕生」講座
(第1回~第9回)

<メンバー19名>
 田舎がやんなきゃ誰がやる。美味しいモノは、美味しい作物がとれる田舎がつくる。手作り食品加工の起業に向けて、専門家を招いての養成講座。

 本年度総事業費は455万7千円。うち支援金充当額は195万5千円である。

■今後の方向性について

 12月には「自分の畑の土壌診断しませんか」の講座を開催。3月までにコモンズ支援金の事業を終え、次のステップへ移ることとなる。
 現在のメンバーは当初のネットワークの核であり、一つ一つの事業の実現化を図るため、今後は「食」「農」「観光」そして「消費者」を含めた幅広いネットワークづくりをする必要がある。中央会としてはそのネットワークづくり、連携のしくみづくり等スムーズな組合運営ができるような支援を行っていく予定である。

(構成 北信事務所)

(協)いいやま故郷庵の概要

■住  所 飯山市静間622
■連絡先   TEL 0269-63-1113
■代表者名   理事長 宮本 務
■設  立   2005年8月
■組合員数   組合員数6名
■事業内容  
  1. 農産物の生産、食品加工、販売・情報・観光までの総合産業(6次産業)を構築するための「食農分野」のコミュニティ事業の研究開発
  2. 農産物、食品加工品等の共同販売
  3. 教育情報事業
  4. 福利厚生事業
■ホームページ   http://www.iiyama-kokyouan.org

 

 

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