MENU

 月刊中小企業レポート
> 月刊中小企業レポート

月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

資金繰りの特効薬!?

 売掛債権の回収サイトが、仕入債務の支払サイトより長く、資金繰りが大変!!運転資金を調達したいが、担保となる不動産がないので金融機関からの融資が難しい!!そのような経営者の皆様へ、資金繰りを潤滑にする、「売掛債権担保融資保障制度」をご紹介させていただきます。

利用できる人 中小企業者の法人・個人(注1)
対象となる債権 事業者に対する売掛債権(注2)
担保の保全 売掛先の承諾 or 売掛先へ通知 or 登記
借入限度額 債権金額の1億1,100万円(注3)
金利・保証料 各金融機関の金利+0.85%(保証料)
保証方式 個別保証、根保証
借入形式 手形借入方式
返済期日 売掛債権入金予定日(最大で1年
(注1)中小企業信用保険法第2条、遊興娯楽、農林水産業等は対象外
(注2)債権譲渡禁止特約つきは一定の手続きが必要
(注3)債権金額に対し7割~10割の掛け目で融資


【制度概要】

 小企業者が取引先に対し有している売掛債権を担保として金融機関から融資を受け、同時にその融資額の9割を信用保証協会が保証する制度です。利用できる人等の詳細は右図のようになります。
 本制度は、売掛債権を担保として譲渡するため、第三者に対抗できるように担保の保全の手続きが必要となってきます。その方法は、上図の表中にある担保の保全(売掛先の承諾 or 売掛先への通知 or 登記)の3つのうち、いずれかを選択することになります。実務的には、売掛先への承諾を行うのが一般的なようです。理由は、承諾の方法が借入限度額への掛け目が一番高いこと、相手先に承諾を得てすっきりしたいこと、登記は手間がかかること、などがあげられます。掛け目については、通常の融資で不動産を担保とする場合は7割。本制度の場合は、売掛先と上記担保保全の方法の組み合わせにより7割~10割で融資額が決定されます。売掛先については、官公庁や上場企業など信用が高いほど高く、担保保全方法については、承諾、通知、登記の順に高く設定されています。
 また、融資実行の流れについては、通常の流れのほかに、

  1. 債権譲渡禁止特約の解除
  2. 売掛債権を譲渡担保
  3. 金融機関による担保保全手続き

 が加わります。1.については、取引基本契約書等で債権譲渡が禁止されている場合は、その解除をしないと債権譲渡できないため、解除の手続きが必要になります。

【メリット・デメリット】

メリット デメリット
不動産担保が無くても借入れができ、第三者保証も不要
売掛債権を早期資金化しキャッシュフローを安定化
優良得意先の信用を借入交渉に活用できる
手形割引枠の実質的増加
承諾通知による暗黙の督促効果
固定費の増加(金利・保証料)
債権譲渡登記からの風評被害
手続きの煩雑さ
本制度利用後の取引に影響

 本制度を利用するメリット・デメリットを挙げると、以下のものが考えられます。
 本制度のメリットとして大きなところは、不動産担保がなくても、売掛債権担保とし融資が受けられるため、キャッシュフローの安定化が図れる点にありますが、そのほかにも、③~⑤のようなメリットも考えられます。メリット③については、通常融資を受ける場合は、融資を受ける人自身の信用が大切になりますが、本制度の場合は、たとえば、公共団体への売掛債権を担保とする場合は、その取引先の信用度(確実に回収が見込める)も利用にすることが可能になり、融資を受けやすくなる可能性があります。また、メリット④については、手形を割引するのも本制度を利用するのも一見同じように思えますが、受取手形を割引するよりも、本制度を利用したほうが、実質的に与信枠が増加します(通常、金融機関では手形割引限度額の与信枠を会社ごとに決めています)。それは、信用保証協会の保証が9割ついているためで、その保証枠の分だけ与信枠が広がるというわけです。たとえば、与信枠が500万円の会社が額面1,000万円の受取手形を使って借入をしたいとき、割引ですと与信枠以上ですから資金化することができません。しかし、本制度の場合は、信用保証協会の保証が9割=900万円つきますので、金融機関の負担は100万円となり、融資を受けることが可能となります。また、手形を差し入れるので担保保全の手続きも不要となります。
 デメリットについてですが、担保不要の手続きで「登記」を選んだ場合、登記簿謄本に債権譲渡の記録が残りますので、風評被害のリスクが無いとはいえません。また、取引先に承諾を得る場合・通知をする場合は十分な説明をしないと、資金繰りが危いのか?というような誤解を招く恐れもありますので、注意が必要になります。
 以上簡単に本制度を紹介させていただきましたが、不動産担保が無く、しかも売掛債権の回収サイトの長い中小企業者にとっては、資金繰りを円滑にする非常に有効な制度です。また、金利を考慮する必要はありますが、使い方によっては、売掛債権を早期に資金化し、その資金を使って一括仕入をし、あら利率の向上を図ることも可能ではないでしょうか?
 本制度を利用し、資金繰りを安定化させ、本来の経営に従事する時間を増やすのもよいのではないでしょうか?

本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。
このページの上へ