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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集 中小企業向け環境マネジメントシステム
エコアクション21認証・登録制度と事例

地球環境にやさしい事業活動を実践し、
グリーン調達、グリーン購入へ対応する制度とそれに取り組む企業の事例を紹介します。

 今年の2月に地球温暖化防止を目的とした「京都議定書」が発効。来年春には、欧州での有害物質に関する規制の強化などを背景として、中小企業への環境対応への関心が高まってきている。
 このような中で、「エコアクション21認証・登録制度」は中小企業、学校、公共機関などが、なるべく効果的・効率的に環境への取組ができる方法として、環境省が策定した「エコアクション21環境経営システム・環境活動レポートガイドライン2004年度版」に基づく認証・登録制度である。
 これまでは環境経営システムの規格といえば、ISO14001が良く知られていたが、コストや労力の面で必ずしも中小企業向けとはいえない面もあった。しかし、「エコアクション21」の登場により、中小企業が、自社に環境経営システムを導入し、環境負荷の削減に向けて取り組みやすくなったと期待されている。
 本特集では「エコアクション21認証・登録制度」の内容を紹介するとともに、すでにこの「エコアクション21」の認証取得をした企業の取組の様子などをレポートする。

環境対応で企業が選別される時代

グリーン購入と グリーン調達の動き

 「グリーン」という言葉は「環境にやさしい」とか「環境に配慮した」という意味に使われている。また、物を買う場合にその商品が環境にやさしい商品を選んで買う場合その消費者を「グリーンコンシューマー」と呼んでいる。さらにそうした行為をグリーン購入と呼んでいる。
 政府は00年に「グリーン購入法」を定め、国や独立行政法人などの国の機関に対してグリーン購入を義務付けるとともに、地方公共団体にグリーン購入の努力義務を求めていますし、民間事業者や国民に対してもできるだけグリーン購入に努めるよう要請している。
 一方、企業が部品などを調達する際に「環境にやさしい企業」から「環境にやさしい部品等」を調達することを「グリーン調達」と言うが、大企業による「グリーン調達」は今では常識となっている。この方針の達成のため、各企業とも取引先に向けた詳細なガイドラインなどを定めている。この中でいずれの企業もISO14001などの外部認証機関による「環境マネジメントシステム」の認証取得を求めている。

中小企業も例外ではない

 現在、地球環境に最も環境負荷を与えているのは産業界であり、その日本の産業界の圧倒的多数を構成しているのは中小企業であり、中小企業の環境に配慮した経営が極めて重要である。
 このため、環境省では「エコアクション21」を開発し、奨励している。これまで、環境経営システムと言えば、ISO14001だと思われてきたが、ISO14001の認証を取得するには、数百万円の費用がかかると言われている。また、認証取得までには、長い時間と多くの労力が必要とされる。
 ISO14001だけが環境経営システムではない。京都市が中小企業向けに開発した「KES」や民間組織が中心になった「エコステージ」と呼ばれる環境経営システムも登場してきている。

エコアクション21の特徴

 エコアクション21は中小企業向けに開発された環境経営システムであるため、優れたいくつかの特徴を持っている。

  1. 取組の内容が具体的で、わかり易い
     活動に必要で集める基礎データの種類が示されており、すぐに取組をはじめる事ができる。また、実際の活動の中では、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物の排出量削減、排水量(水使用量)削減など、取り組むべき項目が明らかにされている。
     また、現在自分達が、このような環境負荷の削減にどれぐらい取り組んでいるかをチェックシートをもとに調べることができる。今取り組んではいないが、重要と思われる項目は今後の活動計画に取り入れることが可能だ。
  2. 環境負荷削減によりコスト削減が可能
     二酸化炭素排出量削減を目標に取り組むと実際には電力使用量の削減、暖房用、加熱用、自動車、トラック等の燃料使用量削減に取り組むことになる。これらは全て、コスト削減につながる。また、廃棄物排出量を減らすため、分別を強化し、部品の輸送には通い箱を増やすなどの取組をすれば、廃棄物処分費を削減できる。実際に取り組んだ企業からも、認証取得のメリットとして報告されている。
  3. 認証取得までのコストが低い
     環境経営システムの第三者による認証取得には次のような費用がかかる。
    1. 審査までのコンサルタント費用
    2. 審査費用
    3. 登録のための費用

     ISO14001ならすべて含めて、数百万といったところであるが、エコアクション21は従業員数100人以下程度の企業ならすべて含めて30万円から40万円程度で認証取得が可能である。

  4. 大企業のグリーン調達や入札制度に対応
     前述したように、エコアクション21の認証取得をしていれば、グリーン調達の基準をクリアできる。また、国、地方公共団体の入札制度でも認められている制度である。
  5. 活動の結果を公表する

エコアクション21の内容

1. 環境経営(環境マネジメント)システムとは何か?

環境経営システム 環境経営(環境マネジメント)システムとは組織が環境問題に効果的・効率的に取り組むための仕組みであり、計画(PLAN)、実施・運用(DO)、点検・是正(CHECK)、見直し(ACTION)の繰り返しによるPDCAサイクルを基本としている。すなわち、

Plan 計画:
 自分達の活動が環境にどれくらい影響を与えているか知る。そのうち大きな要素に対して、目標とそれを達成するための計画を立てる。(良いものは増加させる)
Do 実行:
 目標の達成のため、役割、責任、分担を決め、従業員の教育や必要な文書を作成して実行する。
Check 取組状況の確認・評価:
 一定期間実行したら、自ら実行状況を確認する。問題点があれば、是正する。
Action 代表者による見直し:
 活動の全結果を見て、不具合の修正、新たな課題など最も責任のあるものが、来期に向けて判断を下す。
 実際の取組では、「二酸化炭素排出量の削減(電力使用量や燃料使用量の削減等の省エネ)」、「廃棄物排出量の削減」、「排水量削減(節水)」などに対して目標を設定して、取り組むことになる。

2. 環境経営(マネジメント)システムを構築するとどんなメリットがあるか?

 現在、事業所内に次のような問題点があるとすれば、環境経営(マネジメント)システム構築のメリットは大きい。

  • ルールを決めても、その場限りで定着しない。
  • 事業所内に無理や無駄があっても減らせない。
  • 目標を立てても、なかなか達成できない。
  • 特定の人に仕事が集中し、その人が休むと仕事が進まない。

PDCAサイクルに基づいた環境経営に取り組むということは次のようなことを実行することである。

  • 全員で取り組む。
  • 決められたルールに基づいて行動する。
  • 取組に当たって目標を明確にする。
  • 取組の結果を、きちんと評価する。
  • 出来なかった場合は、原因を明らかにする。
  • 毎日、毎年、取組を重ね継続する。

さらに、目標を定めてシステムを運用することにより次のような効果も期待できる。

  • 省資源、省エネルギー、廃棄物削減によるコストダウン。
  • 環境汚染や事故による環境リスクの未然防止。
  • 事業所のイメージアップ。
  • グリーン購入への対応等の営業力向上。

3. エコアクション21の認証取得をするには?

  1. エコアクション21地域事務局
     エコアクション21認証登録制度では、地域において、エコアクション21の普及促進、コンサルタント、審査人の斡旋、審査の公正性などの判定機関を目的として、地域事務局を置いている。長野県内では、2つの事務局が中央事務局の認定を得て、活動を開始している。
  2. コンサルタントの利用
     新たに事業所に環境経営システムを構築する場合には、コンサルタントの利用が推奨される。コンサルタントはエコアクション21の内容を教えてくれるだけでなく、活動の際の効果的な事例紹介などもしてくれるので価値がある。ただし、コンサルタントが事業所の業種についてよく知っているかどうか予め、確認しておく必要がある。地域事務局では、エコアクション21の審査ができる審査人の資格を持った人を多くの場合に紹介している。
  3. システムの構築
     エコアクション21には、4つの構成要素があり、その内3つが完成するとシステム構築が終わる。
     第1は「環境への負荷の自己チェック」であり、事業所が「どんな環境への負荷をどれだけ与えているか」を調べる。すなわち、電力使用量、廃棄物排出量、水使用量、化学物質使用量などを調べる。
     第2は「環境への取組の自己チェック」である。事業所が現在、「環境負荷を減らすような取組をどの程度しているか」をチェックシートにしたがって知る。
     第3は「環境経営システムガイドライン」であり、PDCAサイクルを回すための12の要求事項が示されている。これを一つ一つ満たすようシステムを構築する。
  4. システムの運用
     事業所において、システム構築が終わると実際に3ヶ月以上のそのシステムにそった運用が求められている。3ヶ月以上の運用終了後、取組状況の「評価・確認」が行われ、最後に全体の結果をまとめ、「事業所の代表者の見直し」が実施される。
    ⑤ 環境活動レポートの作成
     4つ目の構成要素が環境活動レポートの作成である。取組の内容と結果をレポートにまとめ、公表する。公表する内容の必須事項が決められている。
  5. 登録審査と判定
     環境活動レポートが完成すると審査の申込が出来る。申し込み先は地域事務局である。審査を実施する審査人が決まると書類による審査と現地審査が実施され、合否が決まる。審査結果は地方事務局の判定委員会で審査内容や公正性などが判定され、結果がよければ、中央事務局に送られ、認証登録となる。
  6. 中間審査と更新審査
     その後の事業活動の変化や活動内容を確認するため、登録審査の1年後に「中間審査」、更に1年後に「更新審査」が実施される。
エコアクション21地域事務局長野産環協
(社)長野県産業環境保全協会
所在地 〒380-0936
    長野市中御所岡田131-10
    長野県中小企業指導センター5階
電 話:026-228-5886
FAX:026-228-5872
E-mail:nasankan@icon.pref.nagano.jp
URL:http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/ea21/
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4. 活動の広まり

 昨年秋からスタートした「エコアクション21認証・登録制度」であるが、現在までに、全国で約500の認証登録がある。長野県内では、千曲市が市内の事業者20社ほどで認証取得に取り組んでいる他、長野県紙器ダンボール箱工業組合は組合として各組合員の認証取得に取組を開始している。また、長野県印刷工業組合でも、研修会を計画している。

エコアクション21認証取得とその後の流れ

事例1 中村製作所株式会社穂高工場
事例2 栄研工業株式会社
事例3 長野県紙器ダンボール箱工業組合

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