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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

会社の評価がアップ!? ―変わる中小企業の会計―

 今年の8月に会計処理の手引きになる中小企業会計指針(会計指針)が公表され話題を呼んでいます。
 ご存知の通り上場会社は証券取引法による決算書を作成しています。それに対して中小企業については会計処理について統一されたルールが無く税理士会など4団体が別々に公表していました。その結果会社によって様々な決算書になり、金融機関などが一律に評価するのが難しい問題がありました。今回4団体のルールが一本化され、それを活用することで会社の経営の内容を明確につかめて、金融機関などから評価される動きがでてきます。
 そこで今回は、会計指針を活用した場合に会社に与えるメリット、デメリットをご紹介いたします。

(1) 会計指針を活用した場合のメリット

  1. 金融機関からの評価アップ ~融資審査に影響、保証料率の割引優遇措置も~
  2. 会社の実態が決算書に表わされ、経営に役立つ決算書になる

 会計指針は決算書作成の基本的な考え方を示しています。例えば、債権の回収が可能かきちんと評価することです。その結果、会社の実態が決算書に表われるので、経営者や株主、融資を考えている金融機関にとって評価しやすいものになります。
 金融機関は会社に融資をする際、実態が分からない決算書はあまり評価せず、個人の保証や担保を重点的に審査しています。これからは会計指針に従った決算書を評価するため融資が受けやすくなる場合があります。
 既に商工中金、三井住友銀行などは無担保融資制度を導入しており①金利の優遇、②融資期間の延長、③事務手数料の免除の特典があります。この制度を受けるためには、会計指針に沿って決算書が作成されているか確認する“税理士会策定のチェックリスト”の提出が条件となります。
 現在、国民金融公庫、中小企業金融公庫でも貸し付け条件面での優遇を検討中です。
 また、信用保証協会でも保証料の割引優遇があります。保証料率は国が通達で担保付融資であれば融資額に対して年1.25%、無担保であれば1.35%の料率を一律に決めていましたが来年度にも実施する方向です。

(2)会計指針のデメリット

I. 自己資本や利益が減少?!

 会計処理が変わることによって会社の経営体力を示す自己資本や利益が減少する場合があります。その中でも特に影響が大きい項目である、①減価償却費②貸倒損失・貸倒引当金③退職給付引当金についてとりあげます。

項 目 会計指針の影響
減価償却費 費用計上するかどうか会社の任意であったが、正しい実態を示すために毎期継続して償却費を計上する。
貸倒損失
貸倒引当金
回収や取立てができない債権については債権金額から控除して貸倒損失・貸倒引当金として計上する。
退職給付引当金 退職金規定があり、将来発生する従業員の退職金の支払が経営に大きな影響を与える場合、退職金の準備として必要な額を毎年負債計上する。

 これらの項目は費用や負債をきちんと計算して計上するもので厳しい内容になっています。しかしこれをメリットにとらえ直すことができます。例えば退職金規程の見直しで退職金の積立不足を防ぐ中退共に加入するなど、会社に無理のない仕組みを作ることができます。
 会計指針は会社の経営の実態を正しく表わすツールになります。また金融機関や取引先などは会計指針を活用しようとする姿勢を好意的に評価します。これを機会に会計指針を導入し、その際には今からできることとして退職金規程の見直しや売掛債権の管理徹底を始められてみてはいかがでしょうか。

本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。


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