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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

知って得する労務情報 $$$人事ことはじめ$$$

“差がないほうが不公平”


 成果主義ということで、結果を求められる賃金制度への流れはもはや止めようがありません。最近では、その弊害を指摘する書籍やマスコミの報道などもあり、確かに過度の成果主義は疑問の余地がありますが、この流れはさらに広がっていくことでしょう。
実は裁判所で、この成果主義を認めるような判決が出ているケースが過去にありましたので簡単にご紹介いたします。

~「ハクスイテック事件(大阪地裁判決 平成12年2月28日)」~


 不動産投資等の失敗により2期連続赤字経営となったこの会社は、収支改善措置の必要性に迫られました。
 そこで賃金制度の改訂に着手したこたから物事は始まります。
 会社は競争力を高めること、従業員のモラルアップを図ること、これらを目的に、能力主義、成果主義の賃金制度を導入しました。具体的には、年功によって決まる部分が80%を占めていた賃金体系を、職能で決まる部分を80%へと変更し、また、賃金、退職金が下がることもあるという形としたのです。
 それを不服とした一部の従業員が合理性のない不利益変更で無効であるとして、会社を訴えました。
結論はどうなったかと言いますと、会社に軍配が上がりました。理由はいくつかあります。最終的に労働組合の合意は得られなかったものの制度変更の段階できちんと会社が説明をして組合との交渉も多数にわたったこと、移行時の賃金は従前の金額がほぼ補償されていたこと、などがあげられています。
 しかし、この事例で特筆すべきことはもっと他にあるのです。
 それは次の一文が判決理由に含まれていたことです。

「評価の低い者に対しても高額の賃金を補償することは、
むしろ公平を害するものであり、合理性がない。」

 なんだ、あたりまえのことではないか、とお考えの社長や先生も多いことでしょう。しかし、裁判所の見解としてここまではっきりと表明されるということには時代の流れというものを感じざるを得ません。
さて、成果主義というものの導入を考えるとき、またそれ以外でも組織を運営していくうえで、たいへん大切なものがあります。往々にして、組織を管理しようとするときは制度や枠組み、決まりごとを作ればよいと考えがちとなりますが、社長、先生と職員の間で信頼関係が築かれていないところでは、かえって問題の種となりかねません。
みなさんお気づきのとおり、人を使って仕事をしていくうえではあたりまえのこと。しかし、本当に真剣に取り組んでいるところは数少ないであろう、社内コミュニケーションの必要性と改善方法について、次回以降に触れて見たいと思います。

労務Q&A
 スタッフの雇入れを検討しています。正社員としての採用になるため、3ヶ月 の試用期間経過後に、本採用したいと考えています。そこで質問ですが、試用期間中の社員の試用期間は延長できますか?また、試用期間中であればいつでも即時解雇ができますか?
その他、試用期間中についての注意点を教えて下さい。


《ANSWER》

 試用期間とは、一定の期間を設定し雇用した労働者の能力、適性を判断するための期間であり、試みの試用期間とされています。試用期間を定める場合は、就業規則等でその期間を明確にする必要があります。法律上では、試用期間の長さの制限はありません。しかし、「労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行うのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し無効」とする判例があります(昭和59年3月23日名古屋地裁)。 試用期間の延長は、労働者に大幅な不利益をもたらす労働条件の変更にあたりますので、一方的な延長の場合には、就業規則等に定めが必要であり、かつ延長事由そのものが合理的な内容であることが必要です。双方合意のもとに延長することは可能です。
試用期間中の解雇に関してですが、雇入れ後14日を経過しての解雇には労働基準法20条が適用され、30日以上の解雇予告、もしくは平均賃金の30日分以上の予告手当の支払いが必要になります。
そこで、労働者の雇用を慎重に行いたい場合、期間を定めた労働契約を締結するケースが増えています。当初、契約社員として雇入れを行い、その期間で対象労働者の適性や業務遂行可能性を見極めた上で、本採用するかどうかを決めます。もし不採用とした場合でも、契約期間満了により解雇予告手当を支払うことなく、自然退職となります。
注意点として、当初の労働契約締結の際に、期間満了により退職となる可能性があることを、労働者に説明し、了解を得ておく必要があります。
例えば、3ヶ月の契約期間を定めた契約の場合も、14日の試用期間を超えた場合は、3ヶ月後に契約期間満了で退職して頂く以外は、30日以上の解雇予告、もしくは平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
 また、有期労働契約であっても、更新を繰り返し、1年を超えて継続雇用している場合は、期間の定めのない労働契約とみなされ、解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要になると考えられます。
労働契約の期間に関しては、労働基準法第14条の規定により、3年を超える期間について締結してはならないことになっています(専門知識を有する者や60歳以上の者については5年が限度)。

これは使える!! 助成金!!

雇入れ時に試用期間を設けていますか?

 ハローワークが紹介する対象労働者(35歳未満または45歳以上)を短期間(原則3ヶ月間)試行的に雇っていただき、この間に対象労働者の適性や業務遂行の可能性などを実際に見極めた上で、本採用するかどうか決めていただくことができるものです。
トライアル雇用を実施する対象労働者1人につき、月額50,000円が最大3ヶ月間支給されます。
この機会にぜひご活用下さい。
本文は松本市巾上の成迫社会保険労務士事務所(税理士法人成迫会計事務所内)で執筆していただい たものを掲載いたしました。
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