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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集2 高齢社会と定年の引き上げ、継続雇用制度について

 65歳までの定年の引上げや継続雇用などを企業に義務づける「改正高齢者雇用安定法」が平成18年4月より施行されるのを前に、長野県中央会では会員企業を対象に雇用についてのアンケートを行い、その結果がまとまったのでその結果を抜粋し紹介します。

65歳継続雇用実態調査報告

はじめに
 この調査は、厚生労働省長野労働局から委託された「65歳継続雇用達成事業」により実施いたしました。本事業は平成18年4月1日に改正施行される「高齢者等の雇用の安定等に関する法律(高齢者雇用安定法)」を周知し、雇用主等に対し65歳までの継続雇用制度の円滑な導入を図っていただくことを目的としています。

1. 調査概要

(1)アンケート調査

①調査対象 長野県中小企業団体中央会加盟組合の参加企業
②対象数 100社
③調査期間 平成16年9月より12月
④調査方法 郵送方式によるアンケート調査
⑤回収状況 76社(76.0%)

(2)面談調査

①調査対象 長野県中小企業団体中央会加盟組合の参加企業
②対象数 10社
③調査期間 平成16年11月
④調査方法 訪問による面談

2. 総合考察


(1)調査結果のまとめ

  • 高齢法の改正については、関心も高く、様々な情報を集める努力をしている。しかし、その改正内容を正しく理解している方は限られている。
  • そのため、「高齢法への今後の対応」については、「変更された内容を充分に理解した上で対応を決める」(52.1%)という回答が一番多くなっている。
  • 定年は、96.1%とほとんどの企業が定めており、60歳以上の高齢者も84.2%の企業で雇用をしている実態である。ただし、従業員30人未満の事業所では、60歳以上の高齢者を雇用している割合が60%程度まで低下している。
  • 高齢者の雇用については、「再雇用制度」を採用している事業所が約80%に達している。その制度内容を就業規則等で規定せず、運用として対応している事業所が30.3%ある。さらに、対象となる高齢者は希望者全員でなく、会社が認める者のみとしているところは、81.2%となる。
  • 高齢者を雇用するメリットとしては、「人件費を抑制して、経験者を雇用できる」「技能の伝承が進む」「後輩の育成につながる」という意見が多い。デメリットとしては、「健康状態に個人差がある」「従事できる仕事に制限がある」「能力の伸びが期待できない」「会社、業務の変化に対応できない」が多くなっている。
  • 団塊の世代の大量定年については、対象者全員を継続雇用することは難しく、「4割から6割」の雇用継続という回答が17.8%と最も多く、「分からない」という回答も15.1%となる。
  • 継続雇用を導入、定着させるための給付金制度については、制度を充分しらない事業所も多く、その利用状況も事業所により異なる。
  • 雇用関連の課題としては、「賃金制度の見直し」「若年社員の確保、採用」という答えが半数を超えている。

(2)今後の対応策

  • 高齢法の改正について、その内容、事業所としての対応方法などを含めた情報を提供し、充分理解が図れるよう取り組む。特に、段階的に義務年齢が引き上げられ、その対応についての猶予がある点や明確な制度による雇用延長の実施に関しての情報を、分かりやすく提供していく必要がある。
  • 情報の提供に関しては、講習会やセミナーの開催だけでなく、ホームページや様々な方法を活用し、より多くの事業者に伝わるよう取り組むことがより望ましい。
  • 高齢法への対応を進めるためには、若年者の採用、現従業員の賃金制度、評価制度を見直す必要も迫られる。そのための方法、施策を示すことも重要である。
  • 再雇用制度を導入しているものの、明確な規定もない場合や会社が認める者という条件がある事業所も多い。高齢法の改正趣旨に則り、順次対応を促す必要がある。
  • 中小企業においては、高齢者の雇用を進めようとしても、社内で従事できる業務が限られている場合が多い。高齢者の雇用の受け皿をどのように作っていくかが大きな課題となる。地域や複数の企業としてこの問題に関する対応を進めることが、高齢法の改正に対応したことになるかどうかも研究する必要がある。

3. アンケート調査結果

1. 定年以降も継続的に雇用する「継続雇用制度」等を導入されていますか?

1. 定年以降も継続的に雇用する「継続雇用制度」等を導入されていますか?

 

定年以降の継続雇用制度は、60.5%が就業規則等でその制度を定めている。しかし、約30%、特に規則を定めず運用している実態である。従業員30人未満と300人以上という事業所では、規則を定めずに運用しているケースが多くなっている。

2. どのような形態で継続雇用制度を導入していますか?

2. どのような形態で継続雇用制度を導入していますか?

継続雇用の方法としては、一旦雇用契約を終了して再度雇用する再雇用制度を導入している事業所が75.4%に達している。その一方で、雇用契約を終了せず引き続き雇用を行う勤務延長制度を導入している事業所も15.9%ある。従業員10名未満の事業所では、再雇用制度のみが採用されている。

3. 高齢法が改正され、平成18年度より65歳までの雇用が義務化されます。(雇用義務の対象となる労働者の基準は労使協定により定めます。ただし、法施行後、大企業は3年、中小企業は5年、猶予措置として本制度の対象となりうる労働者の基準を就業規則により定めることが可能です)。

高齢法への対応について、該当すると考えられる項目は?

3. 高齢法への対応について、該当すると考えられる項目は?

高齢法の改正に対しては、変更された制度内容を充分に理解した上で対応を決めるという事業所が52.1%と一番多くなっている。特に、従業員数30人未満の事業所では、70%が変更された制度内容を充分に理解してという回答である。
従業員300人以上の事業所では、制度の対象となる労働者の規準を定め、希望者のうちその基準に該当する者だけを継続雇用するという回答が、半数に達している。
定年を65歳まで引き上げるという回答も、6.8%となる。従業員30~99人の事業所で、65歳までの定年延長という回答がやや多くなっている。

4. 60歳以上の高齢者を雇用するメリット、デメリットはどんな点と考えられますか?

メリットと考えられる点

メリットと考えられる点

高齢者を雇用するメリットは、人件費を抑制して、経験者を雇用できるという回答が最も多く、75.3%に達している。続いて、技能の伝承が進む、後輩の育成につながるとなる。
従業員30人未満の事業所では、管理能力が高い、対人折衝能力が高い、知識が豊富という点も回答が多くなっている。技能の伝承を挙げている事業所は、30人以上の場合が多いといえる。

デメリットと考えられる点

デメリットと考えられる点

高齢者を雇用するデメリットは、健康に個人差があるが一番多く、65.8%となっている。次に、従事できる仕事に制限がある、能力の伸びが期待できないと続いている。
従業員が10人未満の事業所では、健康の問題よりも、従事できる仕事に制限がある、会社、業務の変化に対応できないといった回答が多くなっている。従業員300人以上の事業所では、健康の問題と能力の伸びが期待できないという回答が同数となっている。

5. 高年齢雇用者継続給付金制度をご存知ですか?

5. 高年齢雇用者継続給付金制度をご存知ですか?

高年齢雇用者継続給付金制度については、59.2%の事業所が利用したことがある結果となっている。特に、100人から299人の事業所で利用率が高く、71.4%に達している。また、従業員30人未満の事業所では、制度を知らないという回答が生まれている。

6. 継続雇用定着促進助成金制度をご存知ですか?

6. 継続雇用定着促進助成金制度をご存知ですか?

継続雇用定着促進助成金については、利用したことがある割合が7.9%と低く、内容は知っているが利用したことはない割合が53.9%となっている。さらに、32.9%は制度そのものも知らない結果である。特に、30人未満の事業所では制度を知らない割合が高くなっている。

7. 現在貴社で検討中の課題について該当する点は?

7. 現在貴社で検討中の課題について該当する点は?

 

現在の課題は、賃金制度の見直しを挙げている事業所が57.9%となっている。次に、若年社員の確保、採用、派遣社員の活用と続いている。
定年の延長については、従業員30人以上の事業所で課題に挙がっているものの、その割合は低くなっている。賃金制度の見直しについては、従業員10人から300人未満の事業所で回答が多くなっている。従業員300人以上の事業所では、派遣社員の活用が最も多い回答となっている。


4. ヒアリング調査結果


(1)ヒアリング結果のまとめ

  • 高齢法の改正に関しては、関心度が高いといえる。既に65歳までの雇用延長を実施している会社もあるが、その対応をこれから検討する会社もある。
  • 「希望者全員」への対処方法が分からず、どのように対応すべきかの悩みがある。
  • 高齢者の雇用を確保すると、若年者の雇用ができなくなる点を疑問に感じる方も多い。また、労務構成にゆがみが生じ、将来の不安につながる恐れも指摘された。
  • 高齢者を再雇用するメリットは、経験や知識が豊富な人材を、比較的安い人件費で雇用できる点を挙げる意見が多い。
  • デメリットは、体力的な衰え、健康の不安とともに、仕事に対するやる気も含め、個人差が大きい点との意見が多い。また、能力が向上しないだけでなく、年齢が上がるにつれ、年々状況が変わっていくという点も不安な点である。
  • 高齢者が働く場の確保も、大きな課題となる。職場、職種によっては、定年前と変わらずに働けるものの、場合によっては仕事内容を変更する必要もある。特に、中小企業においては、高齢者の受け皿となる職種を社内に設けることは難しく、一部の企業では今後の対応に苦慮している。
  • 概して社員の関心度は低いようである。定年を目前にしないと、自らの問題として考えない傾向が強いといえる。

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定年制がある事業主の皆様へ
定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の義務化について


 高年齢者雇用安定法の改正により、平成18年4月1日から、年金支給開始年齢の段階的引上げにあわせて、65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置を講ずることが事業主に義務づけられます。

1.

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正(高年齢者雇用確保措置の実施義務化)の概要

【平成18年4月1日から施行】

 少子高齢化の急速な進展の中で、高い就労意欲を有する高年齢者が長年培った知識と経験を活かし、社会の支え手として意欲と能力のある限り活躍し続ける社会が求められています。
 このため、高年齢者が少なくとも年金支給開始年齢までは働き続けることができるよう、平成18年4月1日から、事業主は以下の措置を講じなければならないこととなりました。

  • 定年(65歳未満のものに限ります。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳(注1)までの安定した雇用を確保するため、
    定年の引上げ
    継続雇用制度(注2)の導入
    定年の定めの廃止
    のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
     ただし、事業主は、労使協定により、②の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準(注3)を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、②の措置を講じたものとみなします。

    (注1) この年齢は、年金(定額部分)の支給開始年齢の引上げスケジュールにあわせ、平成25(2013)年4月1日までに段階的に引き上げていくものとします。

    平成18(2006)年4月1日~平成19(2007)年3月31日:62歳
    平成19(2007)年4月1日~平成22(2010)年3月31日:63歳
    平成22(2010)年4月1日~平成25(2013)年3月31日:64歳
    平成25(2013)年4月1日~ :65歳
    (注2) 継続雇用制度は、「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」をいいます(詳しくは19頁を参照してください。)。
    (注3) 「基準」について、詳しくは20頁を参照してください。


2. 高年齢者雇用確保措置(継続雇用制度について)

(1)継続雇用制度の内容

継続雇用制度 = 現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度

継続雇用制度には、

定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する『勤務延長制度』と、
定年年齢に達した者をいったん退職させた後、再び雇用する『再雇用制度』の2つの制度があります。

(2)雇用条件

 雇用条件については、高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではありません。また、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含みますので、企業の実情にあった制度を導入しましょう。

(3)継続雇用制度の対象者に係る基準

 各企業の実情に応じ労使の工夫による柔軟な対応が取れるよう、労使協定により継続雇用制度の対象者となる高年齢者に係る基準を定めたときは、この基準に該当する高年齢者を対象とする制度を導入することも認められています。(詳しくは20頁をを参照してください)。

(4)高年齢者雇用確保措置に係る各種支援

条件整備に関する相談・助言を希望する事業主の方へ

 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等を実現するためには、年功的賃金や退職金制度を含む人事管理制度の見直し、職業能力の開発及び向上、職域開発・職場改善等、さまざまな条件整備に取り組む必要がある場合があります。
 そこで、企業における条件整備の取組みを支援するため、高年齢者の雇用問題に精通した経営コンサルタント、中小企業診断士、社会保険労務士等、専門的・実務的能力を有する高年齢者雇用アドバイザーが、具体的かつ実践的な相談・助言を行っておりますので、是非、ご相談ください(無料)。
 また、高齢労働力の活用に向けて、企業内において取り組むべき課題と方向を整理するため、コンピュータによる簡易診断も行っています(無料)。

 さらに、人事管理制度、賃金・退職金制度や職務再設計、職場改善に関することなどについて、高年齢者雇用アドバイザーが、具体的な企画立案書を作成し、条件整備をお手伝いをします(必要経費の2分の1の負担)。




継続雇用制度を導入した事業主の方へ

 定年の引上げ又は65歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度を新たに導入した事業主や高年齢者事業所を設立し、継続雇用制度を設けた事業主には、「継続雇用定着促進助成金」が支給されることがあります。

3. 継続雇用制度の対象者に係る『基準』

(1)基本的な考え方

 継続雇用制度について労使協定で基準を定めることを求めることとしたのは、継続雇用の対象者の選定に当たっては、企業によって必要とする能力や経験等が様々であると考えられるため、労使間で十分に話し合い、その企業に最もふさわしい基準を労使納得の上で策定するという仕組みを作ることが適当であるという理由からです。
 このようなことから、基準の策定に当たっては、労使間で十分協議の上、各企業の実情に応じて定められることを想定しておりますので、その内容については、原則として労使に委ねられています。

ただし、労使で十分に協議の上、定められたものであっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除しようとするなど本改正の趣旨や他の労働関連法規に反する又は公序良俗に反するものは認められません。

【適切ではないと考えられる例】

『会社が特に必要と認めた者に限る』(基準がないことと等しく、これのみでは本改正の趣旨に反するおそれがあります。)
『上司の推薦がある者に限る』(基準がないことと等しく、これのみでは本改正の趣旨に反するおそれがあります。)
『男性(女性)に限る』(男女差別に該当するおそれがあります。)
『組合活動に従事していない者』(不当労働行為に該当するおそれがあります。)

(2)望ましい基準

 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準については、以下の2つの観点に留意して策定されたものが望ましいと考えています。

【例】
『社内技能検定レベルAレベル』
『営業経験が豊富な者』(全国の営業所を3か所以上経験)
『過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者』(勤務評定が開示されている企業の場合)

(3)基準に係る経過措置

 事業主が労使協定のために努力したにもかかわらず協議が調わないときは、大企業の事業主は、平成21年3月31日まで、中小企業の事業主(常時雇用する労働者の数が300人以下である事業主をいいます。)は、平成23年3月31日までの間は、就業規則等により高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入できることとしています。

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厚生労働省委託事業

17年度 65歳継続雇用達成事業実施計画の内容
(実施期間 平成17年4月1日~平成18年3月31日)

《事業目的》

 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が改正され、猶予期間等は設けられていますが全ての事業所において定年廃止、65歳までの定年の延長か継続雇用の制度化のいずれかを平成18年4月から行うよう義務化されました。
 現在、中小企業を取り巻く経済環境は厳しく、現員の雇用維持に注力している状況にあることと存じますが、本法には罰則は無いものの、法の内容を正しく理解し平成18年4月に向けて準備を行う必要があります。
 昨年度の事業結果によると、改正法の広報不足、誤解等により改正法の制度内容が未だ充分理解されず、そうしたことが原因となって抵抗感に繋がっていることが現れました。
 法の改正施行が目前の本年度は、当会会員の皆様に、今後発表される継続雇用の際の条件作りの指針等を効果的にお伝えするため、昨年度以上の広報・周知活動を行い、改正法に則した継続雇用制度等の導入を円滑にしていただけるよう努めます。

《事業内容》
  1. 本会役員等により構成される「65歳継続雇用達成会議」を開催し、会員企業において65歳までの継続雇用確保措置の導入のため必要な「65歳継続雇用達成方針」を策定します。
  2. 会員企業から100社を抽出し現状把握と継続雇用の導入状況や好事例収集のための実態調査を行います。
  3. 会員企業等に対して、効果的な広報・周知を行うとともに業界、地域単位で改正法、指針、労働環境等を説明するためのセミナーを開催します。
  4. 会員企業等が65歳継続雇用制度を円滑に導入できるよう、相談、助言体制を整備します。
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