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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

トピックス東西南北
新潟県中越地震の被災者支援
新潟県中越地震の被災者支援の波

 去る10月23日発生した新潟県中越地震に際して、隣県の長野県におきましても様々な支援活動が展開されましたが、特に長野県内で最も被災地に近い野沢温泉及び飯山市におきましては、中小企業組合も積極的な素早い支援をしたことをご紹介します。

野沢温泉では

 野沢温泉では、地震発生に従い、野沢温泉旅館ホテル事業協同組合(理事長森行成氏)等が参画し、野沢温泉村及び社会福祉協議会が中心となりボランティアの方々と共に、10月25日いち早く避難場所の十日町市吉田中学校へ赴き11月4日まで食事の提供をいたしました。そして、その避難状況を確認し、野沢温泉での受け入れ方法を検討し、10月28日から11月4日までの間に延べ254人の被災者を受け入れました。受け入れの方法は、送迎から始まり午前10時に野沢温泉に入り、野沢温泉の旅館・ホテルの温泉及び外湯での入浴と休憩を提供し、昼食は、野沢温泉公民館にて村のボランティアの方々が炊き出しを行いました。
 当初は受け入れに際し宿泊も計画しましたが、被災者は仮設住宅の入居等の問題を抱えている様子で、余り宿泊は希望しないことが予想されたので日帰りでの実施となりました。
 また、今回の地震の影響は野沢温泉も確実に受けており、予約のキャンセルが多発した中での支援ということで、関係各位の尽力には頭が下がる思いです。
 また、観光立村としての野沢温泉が、いち早く地域ぐるみで被災者支援を企画・実施できたことを県内外の大勢の人に知ってもらいたいと思います。

戸狩では

 戸狩では、戸狩温泉事業協同組合(理事長大口裕文氏)等で組織する戸狩観光協会が中心となり、10月26日いち早く被災地へ赴き、受け入れの申し出をしたが、行政がその受け入れ対象を選別することができないとの理由で民間ベースでの選抜を行い、10月29日から11月4日までの間に延べ133人(日帰り105人、宿泊28人)の十日町市十日町中学校に避難されている被災者を受け入れました。受け入れの方法は、送迎の上午前10時に戸狩に入り、旅館・民宿に分散し、そこで昼食をとり、休むことはもとより入浴・洗濯ができるというもので、また、地域の温泉「暁の湯」の無料券も用意しました。
 訪れた被災者には、地震発生当日から常に地震に怯えた気の休まらない状態から一時的にも解放され、大変好評でした。また、戸狩の場合は、食事を旅館・民宿等が提供しましたが、一番好評なのは、普通の家庭料理だったそうです。このような被災者の情報を次の受け入れに生かす工夫をしているのが特徴です。

飯山市本町商店街協同組合のエコステーション

 また、戸狩での被災者受け入れについては、飯山市本町商店街協同組合(理事長田辺謹治氏)で行っているエコステーションのネットワークを経由して、全国商店街から様々な支援物資が届けられました。このことは、日本経済新聞のコミュニティに関する記事として報道されました。
 このエコステーションとは、「空缶・ペットボトル回収機による商店街サービスチケットの発行システム」のことであり、早稲田商店会がこれを開発、全国展開しました。また、エコステーション導入商店街が中心となり、全国商店街ネットワークを形成し、「震災疎開パッケージ」を企画開発販売しています。この仕組みは、商店街が「震災疎開パッケージ」(税込み5、520円)を消費者に販売し、震災が発生の場合は、疎開先として協力を申し出た地域に行く交通費と滞在費を保証し、震災が発生しない場合は疎開先から名産品が消費者に届くというものです。今回の被災者の中で具体的購入者はいませんでしたが、飯山エコステーションがそのネットワークに加入し、戸狩がその疎開先となっていました。
○長野県内エコステーション設置商店街
 上田市中央通り商店街振興組合
 海野町商店街振興組合
 中込商店会協同組合

飯山燃料協同組合では

 飯山燃料協同組合(理事長小野澤明氏)は、LPガスの集団供給をしている組合ですが、今回の震災に対して、長野県が提供している被災地での入浴施設に対して10月27日よりLPガス及び供給設備を提供しています。ライフラインが発達した新潟県は都市ガスが普及しているものと思いますが、阪神淡路大震災の時も取り上げられたように震災に強いLPガスがクローズアップされます。
 中小企業個々がボランティアで震災支援することが難しくとも、組合のような中小企業団体としてはそれが可能となる典型的な事例と考えています。
 大企業の場合は、社内でのコンセンサスを得るのに時間が掛かりますが、組合では、中小企業の経営者がその場で会って話をすれば意思決定ができるのです。

信州フーズショップ企業組合では

 信州フーズショップ企業組合(設立平成16年9月。理事長丸山文義氏)はメロンパンの移動販売を行っていますが、今回の震災については、10月28日、販売車両3台で十日町市に入り3カ所で約3、000個の焼きたてのメロンパンを提供してきました。設立間もない組合ですが、機動性を発揮した事例です。今後県内ショッピングセンターで販売車両を見かけたら一度お試しください。

今回の震災から思うこと

 今回の震災におきましては、長野県各地より多数の支援が行われたものと思いますが、ご紹介できなかった関係者の方々からはまたご意見ご連絡頂きたいと存じます。各業界の県レベルの組合においては、新潟県の同業組合との連携、又は全国組合との連携の中で様々な対応がなされているようです。
 さて、野沢・戸狩の当初の受け入れ計画に対しての実績は予想を下回ったようでしたが、このことは、被災者の多くは被災地を離れたくても離れられないということを意味し、ストレスと身体的な疲労を抱えているということだと思います。スピードの時代といわれる現代社会の中で、隣接長野県としてのいち早い行動が注目されていると思われます。
 また、飯山エコステーションのように全く民間レベルでのネットワークで、素早い対応ができたことは、情報化社会の成せる技であり、おもしろいコミュニティの力と発想を感じました。
 飯山燃料協同組合の事例から感じることは、地域中小企業のパワーであり、中小企業の「おやじ」の顔が浮かびます。しかし、残念ながら、経済優先の現代社会においてはこのようなことが評価されにくく、あらゆる入札制度においては価格優先の流れにあります。中央会としても官公需適格組合制度の利用等を促しているところですが、飯山燃料のような組合こそが評価されてほしいと思います。また、各地の水道組合のように緊急当番を決めながら地域の普段の生活に貢献しているような組合も多数あります。今回のような震災、また日常の中で困った時、役に立ってくれる人は誰なのかと強く感じてしまいます。
 依然被災地においては、約6,800人が避難していますが、災害時の緊急的な避難から安定した生活へ早期に回復できますようお祈りし、被災地の中小企業の皆様については厳しい現状を克服して事業の継続ができますよう頑張ってほしいと思います。

取材構成 北信事務所
取材協力   野沢温泉旅館ホテル事業協同組合
戸狩温泉事業協同組合
飯山燃料協同組合
信州フーズショップ企業組合
野沢温泉村
戸狩観光協会
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