特集2 上手に使って会社を大きく 第3回
国では経営に前向きな姿勢で企業経営に取り組んでいる中小企業を支援するため、さまざまな税制上の措置を講じています。
中小企業向けの代表的なもので、得られる効果が大きなものを『平成16年度版中小企業税制「45問45答」』より抜粋し、紹介しております。 |
「中小企業」の範囲は、「法人税法における定義」によると、「資本金1億円以下の法人」をいいます。
但し、法律や制度によって「中小企業」の範囲が異なる場合があります。例えば、次の通りです。
業種区分 |
法人税法における定義 |
中小企業基本法の定義 |
製造業その他 |
資本金1億円以下 |
資本金3億円以下又は従業員数300人以下 |
卸売業 |
資本金1億円以下又は従業員数100人以下 |
小売業 |
資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下 |
サービス業 |
資本金5,000万円以下又は従業員数100人以下 |
● |
中小企業は大企業と比べて、様々な税負担の軽減措置があります。
例えば、「法人税率」の軽減税率です。資本金が1億円以下の中小企業には、大企業の法人税より低い税率が適用されます。 |
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事業継承に関する税制
A |
会社の維持・発展のためには、事業承継を円滑に行うことが重要です。
そのため、様々なケースに対応して次のような事業承継に関する税制が用意されています。
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計画的な贈与により事業承継を円滑に行いたい!
①暦年課税制度(Q3、5)
②相続時精算課税制度(Q3、4、5)
相続発生、さあ、どうする?
①土地に対する軽減措置(Q6、9)
②自社株式に対する軽減措置(Q8、9)
A |
相続税・贈与税は次のような仕組みになっています。 |
●相続税の概要
相続税とは、死亡した人(被相続人)が持っていた全部の財産を、一定の親族(相続人)が受け継ぐときにかかる税金です。
基礎控除額(5,000万円+[1,000万円×法定相続人の数])までの相続財産には、相続税がかかりませんし、申告も不要です。 |
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●相続税の税率表
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円 以下の金額 |
10% |
- |
3,000万円 以下の金額 |
15% |
50万円 |
5,000万円 以下の金額 |
20% |
200万円 |
1億円 以下の金額 |
30% |
700万円 |
3億円 以下の金額 |
40% |
1,700万円 |
3億円 超 の金額 |
50% |
4,700万円 |
【計算例】
Q. |
相続財産1億円を、法定相続人である子供(成人)2人で相続する場合の相続税はいくらですか? |
A. |
次のようになります。
(課税価格)
1億円-(5,000万円+1,000万円×2)=3,000万円
(法定相続分による各取得金額)
3,000万円×=1,500万円
(1人分の相続税額)
1,500万円×15%-50万円=175万円
(相続税額)
175万円×2人=350万円 |
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●贈与税の概要
贈与税とは、生前に無償で財産を取得した場合にその取得した財産にかかる税金です。
● |
暦年課税制度
基礎控除額(年間110万円)までの贈与財産には、贈与税がかかりませんし、申告も不要です。 |
● |
相続時精算課税制度については、Q3以降を参照して下さい。 |
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●贈与税の税率表
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円 以下の金額 |
10% |
- |
300万円 以下の金額 |
15% |
10万円 |
400万円 以下の金額 |
20% |
25万円 |
600万円 以下の金額 |
30% |
65万円 |
1,000万円 以下の金額 |
40% |
125万円 |
1,000万円 超 の金額 |
50% |
225万円 |
【計算例】
● |
現金1,000万円の贈与を受けた場合の贈与税を計算してみましょう。
(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円 |
|
Q3 |
計画的な贈与により、事業承継を円滑に行いたいのですが、どうしたらよいですか? |
A |
計画的な贈与を行う場合には、暦年課税制度と相続時精算課税制度とがあり、家族構成や財産構成などを考慮して、どちらが自分にとって有利であるかを判断する必要があります。 |
①暦年課税制度
これは、暦年(1月1日から12月31日までの1年間)毎にその年中に贈与された価額の合計に対して贈与税を課税する制度です。
②相続時精算課税制度
これは、将来相続関係に入る親から子への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する課税制度です。
●暦年課税と相続時精算課税の比較
両者は一長一短あります。ここで比較してみましょう。
区 分 |
暦年課税 |
相続時精算課税 |
贈与者 |
制限なし |
65歳以上の親(父・母ごとに選択できる) |
受贈者 |
|
20歳以上の子(兄弟姉妹ごとに選択できる) |
選択の届出 |
不要 |
必要(一度選択すれば、相続時まで継続適用) |
控除 |
基礎控除額(毎年): 110万円 |
非課税枠:2,500万円
(限度額まで複数年にわたり使用可) |
税率 |
累進税率 10%~50%(6段階) |
一律20%の税率 |
適用手続 |
贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出 |
選択を開始した年の翌年3月15日までに、本制度を選択する旨の届出書を提出 |
相続時精算 |
相続税とは切り離して計算(相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される) |
相続税の計算時に精算(合算)される。
(贈与財産は贈与時の時価で評価) |
Q4 |
相続時精算課税制度を選択した場合の計算例を具体的に示して下さい。 |
A |
わかりました。父と推定相続人である子が1名の場合の具体例を見てみましょう。 |
【結論】
納付する相続税の総額は600万円ですが、贈与時にすでに140万円納付しているので、相続時に納付する相続税額は460万円となります。
Q5 |
子供に住宅取得資金等を贈与する場合には、どんな特例がありますか? |
A |
父母から住宅取得又は増改築に充てる資金の贈与を受けた場合、通常の贈与税に比べ、大幅に軽減される措置があります。また、「相続時精算課税制度」についても、住宅取得資金等の贈与については、非課税枠2,500万円に1,000万円を上乗せする特例が設けられています。 |
●住宅取得資金等の贈与の特例
制 度 |
暦年課税 |
相続時精算課税 |
贈与者 |
父母又は祖父母 |
父母(年齢制限なし) |
受贈者 |
子供・孫
(年齢制限はないが、所得制限年所得金額1,200万円以下) |
子供
(年齢制限20歳以上・所得制限なし) |
非課税
限度額
|
5分5乗方式
(550万円まで非課税) |
通常の2,500万円の非課税枠に1,000万円を上乗せ(総額3,500万円まで非課税) |
適用期間 |
平成17年12月31日までの贈与 |
上乗せの1,000万円分については平成17年12月31日までの贈与 |
(注) |
平成17年までの贈与については、今までの「住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例」も選択できますが、この場合、その年以後5年間は相続時精算課税制度を選択できません。 |
(注) |
相続時精算課税制度を選択する時は、贈与税の申告書を提出するのと同時に次に掲げるものも提出しなければなりません。
・相続時精算課税選択届出書
・子の戸籍謄本(抄本)又は戸籍の付表の写しなど
・親の住民票の写しなど
・財産の贈与を受けたことを明らかにする書類
また、贈与税の申告期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間ですので、必ず期限までに届出書を提出して下さい。 |
Q6 |
土地等を相続する場合には、どんな特例がありますか? |
A |
特定の小規模宅地等(被相続人又は被相続人と同一生計の親族が事業の用又は居住の用に供していた宅地等)を相続する場合には、相続税評価額を軽減するという「小規模宅地等の減額の特例」があります。 |
●特定事業用宅地等の特例
特定事業用宅地等は400m2まで評価額の80%が減額されます。
[計算例]
相続する土地の面積は400m2で、被相続人が事業用として使っていました。その土地の評価額(路線価)は1億円です。
この場合、特例を使った相続税評価額はいくらになりますか?
(減額される額)1億円××80%=8,000万円
(相続税評価額)1億円-8,000万円=2,000万円 |
●特定居住用宅地等の特例
特定居住用宅地等は240m2まで評価額の80%が減額されます。
[計算例]
相続する土地の面積は400m2で、被相続人が居住用として使っていました。その土地の評価額(路線価)は1億円です。
この場合、特例を使った相続税評価額はいくらになりますか?
(減額される額)1億円××80%=4,800万円
(相続税評価額)1億円-4,800万円=5,200万円 |
(注) |
上記以外の居住用や事業用、貸付用等(不動産貸付業等)の小規模宅地等については、200m2まで評価額の50%が減額されます。 |
Q7 |
「取引相場のない株式」の評価方法を教えて下さい。 |
A |
「取引相場のない株式」とは、全国の各証券取引所に上場されている株式及び気配相場等のある株式以外の株式をいいます。代表的なものは、「自社の株式」で、相続・事業承継にあたって重要な要素となるものです。 |
〔1〕評価上の区分
「取引相場のない株式」の評価は、同族株主等は原則的評価方式で評価し、同族株主等以外の者は特例的評価方式(配当還元方式)で評価します。
〔2〕原則的評価方式の評価
原則的評価方式には、類似業種比準方式と純資産価額方式があります。
〔3〕会社の規模による区分と評価方式
支配株主の原則的評価方式は、会社の規模によって異なります。
●大会社の場合
(原則的取扱い)類似業種比準方式により評価します。
(例外的取扱い)純資産価額方式による評価を選択することもできます。
●中会社の場合
類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式で評価します。
具体的には、中会社を大・中・小に区分し、それぞれ次の算式により評価します。
【評価額の算式】
評価額=類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額×(1-L)
区 分 |
内 容 |
大 |
類似業種比準価額×90%+1株当たりの純資産価額×10% |
中 |
類似業種比準価額×75%+1株当たりの純資産価額×25% |
小 |
類似業種比準価額×60%+1株当たりの純資産価額×40% |
●小会社の場合
(原則的取扱い)純資産価額方式で評価します。
(例外的取扱い)下記の併用方式による評価を選択することもできます。
【併用方式の算式】
評価額=類似業種比準価額×50%+1株当たりの純資産価額×50%
Q8 |
自社株式を相続する場合、税負担の軽減措置があるって、本当ですか? |
A |
本当です。平成16年度税制改正で「自社株式(取引相場のない株式)に対する相続税の課税価格の10%軽減特例」について、軽減対象となる自社株式の価額の上限が3億円から「10億円」に引き上げられました。
これにより、相続税の課税価格からの軽減額が、これまでの最高3,000万円から、最高1億円まで拡大されました。 |
【自社株式に対する相続税の課税価格の10%軽減特例の要件】
項 目 |
内 容 |
対象会社 |
発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未満の会社であること |
経営者=親
(被相続人) |
同族関係者(親族(6親等内の血族・配偶者等)等)で発行済株式等の総数の50%超を保有していること |
後継者=子
(相続人) |
・ |
相続開始から申告期限まで自社株式を保有していること・申告期限を経過するときにその法人の役員として経営に参画していること |
|
軽減対象となる
自社株式 |
・ |
発行済株式等の総数の3分の2まで |
・ |
当該相当する価額のうち10億円までの部分 |
|
選択要件 |
一定の範囲内で小規模宅地等の評価減の特例と併用して適用できます。 |
(注) |
相続時精算課税制度を選択した場合の生前贈与分についても、本制度が適用できます。 |
Q9 |
小規模宅地等と自社株式の評価の特例を併用した場合の具体例を教えて下さい。 |
(1)小規模宅地等を優先的に適用した場合の事例
【前提条件】
自社株式10億円(発行済株式総額18億円)
特定事業用宅地等240m2(相続税評価額1億円)
を相続する場合 |
①特定事業用宅地等(240m2)の適用
上限400m2
|
+ |
②自社株式(10億円)の適用
上限10億円(注)
|
特定事業用宅地等の評価減は400m2が上限です。
したがって、この事例の場合、240m2すべてが減額の対象となります。
1億円×80%=8,000万円
(評価減額される金額) |
小規模宅地等の評価の特例で使った上限の枠の残りは、自社株式の評価の特例に適用することができます。(残りの上限の範囲)
400m2-240m2 |
|
400m2 |
|
= |
2 |
|
5 |
|
|
|
|
|
(注)上限は、発行済株式総数の3分の2又は10億円のいずれか低い方です。
18億円× |
2 |
|
3 |
|
= |
12億円>10億円(上限) |
|
自社株式の評価の特例は、小規模宅地等の評価の特例を適用した残りの分、つまり5分の2だけが適用できます。
10億円× |
2 |
|
5 |
|
= |
4億円 |
|
4億円×10%=4,000万円
(評価減額される金額) |
|
|
【結論】
この事例の場合では、小規模宅地等の評価額に対しては8,000万円の減額、自社株式の評価額に対しては4,000万円の減額、トータルで1億2,000万円の減額ができます。 |
(2)自社株式を優先的に適用した場合の事例
【前提条件】
自社株式7.5億円(発行済株式総額18億円)
特定事業用宅地等160m2(相続税評価額 1億円)
を相続する場合 |
①自社株式(7.5億円)の適用
上限10億円(注)
|
+ |
②特定事業用宅地等(160m2)の適用
上限400m2
|
(注)上限は、発行済株式総数の3分の2又は10億円のいずれか低い方です。
18億円× |
2 |
|
3 |
|
= |
12億円>10億円(上限) |
|
この事例では、自社株式の評価の特例を適用するのは、仮に、相続する自社株式の80%だけとします。
6億円×10%=6,000万円
(評価減額される金額) |
自社株式の評価の特例で使った上限の枠の残りは、小規模宅地等の評価の特例に適用することができます。(残りの上限の範囲)
10億円-6億円 |
|
10億円 |
|
= |
2 |
|
5 |
|
|
|
|
|
特定事業用宅地等の評価の特例は400m2が上限です。
小規模宅地等の評価の特例は、自社株式の評価の特例を適用した残りの分、つまり5分の2だけが適用できます。
400m2× |
2 |
|
5 |
|
= |
160m2 |
|
したがって、この事例の場合、160m2がまるまる評価の特例の対象となります。
1億円×80%× |
160m2 |
|
160m2 |
|
= |
8,000万円 |
(評価減額される金額) |
|
|
【結論】
この事例の場合では、自社株式の評価額に対しては6,000万円の減額、小規模宅地等の評価額に対しては8,000万円の減額、トータルで1億4,000万円の減額ができます。 |
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