ホーム > 月刊中小企業レポート > 月刊中小企業レポート(2004年10月号) > 特集2 上手に使って会社を大きく 第2回
MENU

 月刊中小企業レポート
> 月刊中小企業レポート

月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集2 上手に使って会社を大きく 第2回

中小企業税制 国では経営に前向きな姿勢で企業経営に取り組んでいる中小企業を支援するため、さまざまな税制上の措置を講じています。
 中小企業向けの代表的なもので、得られる効果が大きなものを『平成16年度版中小企業税制「45問45答」』より抜粋し、数回にわたり紹介します。

中小企業の範囲

 「中小企業」の範囲は、「法人税法における定義」によると、「資本金1億円以下の法人」をいいます。
 但し、法律や制度によって「中小企業」の範囲が異なる場合があります。例えば、次の通りです。

業種区分 法人税法における定義 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金1億円以下 資本金3億円以下又は従業員数300人以下
卸売業 資本金1億円以下又は従業員数100人以下
小売業 資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下
サービス業 資本金5,000万円以下又は従業員数100人以下

中小企業は大企業と比べて、様々な税負担の軽減措置があります。
例えば、「法人税率」の軽減税率です。資本金が1億円以下の中小企業には、大企業の法人税より低い税率が適用されます。

中小企業投資促進税制と中小企業等基盤強化税制

Q1 設備投資等を行った場合には、どのような優遇措置がありますか?

代表的なものに、「中小企業投資促進税制」と「中小企業等基盤強化税制」があります。 これらの税制を活用すると、中小企業者等が設備投資等を行った場合には、30%の特別償却又は7%の税額控除の優遇措置が認められます。

●対象設備の比較

  項目 中小企業投資促進税制 中小企業等基盤強化税制
1 対象業種 「ほぼ全業種」(注1) 卸売業・小売業・
飲食店業(注2)・
サービス業(注3)
2 対象事業者 青色申告書を提出する中小企業者等
3 機械・装置
(注4)
対象 すべて
金額 取得 160万円以上 280万円以上
リース 210万円以上 370万円以上
4 器具・備品 対象 特定の9品目(注5) すべて
金額 取得 120万円以上
リース 160万円以上
5 その他の設備
普通貨物自動車(車両総重量が3.5t以上のもの)
内航船舶(但し、取得価額の75%が対象)
-
6 適用期間 平成18年3月31日までに行われる設備投資等に適用される。 平成17年3月31日までに行われる設備投資等に適用される。

※「中小企業投資促進税制」と「中小企業等基盤強化税制」は、いずれか1つの制度しか適応できません。

 

(注1) 次の業種は、対象から除かれます。
料理店業その他の飲食店業のうち、料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業
サービス業のうち、物品賃貸業・娯楽業(映画業を除く。)・性風俗関連特殊営業
(注2) 飲食店業の方は、特定の器具・備品(電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器)が対象となります。
(注3) 具体的なサービス業の例示
物品賃貸業 旅館業 洗濯業 洗張・染物業 理容業 美容業 公衆浴場業 映画業 娯楽業 有線テレビジョン放送業 デザイン業 個人教授所業 経営コンサルタント業 機械設計業 写真業衣服裁縫修理業 物品預り業 葬儀・火葬業 その他の個人サービス業 情報サービス業 広告業 駐車場業 自動車整備業 速記・筆耕・複写業 商品検査業 計量証明業 建物サービス業 民営職業紹介業 警備業 その他の事業サービス業 機械修理業 家具修理業 かじ業 表具業 その他の修理業
(※)風俗営業法対象の飲食店業・サービス業は除かれます。
(注4) 「機械・装置」とは、製品を製造する設備等をいい、詳細については財務省令の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第二)」に定められています。
(注5) 「特定の器具・備品」とは、事務処理の能率化等に資するものとして財務省令で定められている次のものです。
①電子計算機
②デジタル複写機
③メモリー送受信機能付普通紙ファクシミリ
④デジタル構内交換設備
⑤デジタルボタン電話設備
⑥ 電子ファイリング設備
⑦マイクロファイル設備
⑧ICカード利用設備
⑨冷房用又は暖房用機器

(注) 各器具・備品が金額要件(取得の場合120万円以上、リースの場合160万円以上)に該当するかどうかは、同一種類の設備の複数台の合計の金額によって判定されます。

●詳しくは、中小企業庁ホームページでご確認下さい。
Q2 「特別償却制度」と「税額控除制度」は、どのようなものですか?
まず、特別償却と税額控除の各制度について説明します。

●特別償却制度
 特別償却制度とは、「取得価額×30%」を、通常の減価償却費とは別枠で特別に償却することができる制度です。

(注) 当事業年度に、30%の特別償却限度額まで償却しなかった場合には、翌事業年度に限り、その償却不足額を繰越すことができます。
当期償却額

 

●税額控除制度
 税額控除制度とは、法人税額からさらに税額を控除することができる制度で、その分だけ納付する法人税額が少なくなります。

(注) 税額控除額はその期の法人税額の20%を限度としますが、限度を超過した分は、翌事業年度に限り、繰越して適用することができます。
※【注意点】
「特別償却制度」と「税額控除制度」とは、重複適用できず、どちらかの選択適用となります。会社の損益状況等を良く勘案して選択して下さい。
税額控除額

 

Q3 リースの場合でも、この税制が使えますか?

一定の要件を満たすリース契約ならば、「税額控除制度」が使えます。

●「税額控除」ができるリース契約の要件
 次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

(1) リース契約期間が、「5年以上」かつ「法定耐用年数以下」であること。
(2) 対象設備(1台又は1基)ごとに、リース費用の総額が定められていること。
(3) リース料の支払いが均等額で、定期的に支払われること。

●具体的な活用例【前提条件】
 中小企業者だけでなく、すべての事業者に活用できるものとして、

・事業年度 平成16年4月~平成17年3月
・課税所得額   800万円(左記のリース料計上前の金額)
・リース契約期間   5年(60ヶ月均等払い)
・リース実行年月   平成16年12月
・リース費用総額   1,200万円
・月々のリース額   20万円
・法定耐用年数   5年

●税額控除適用比較表(単位:万円)

項  目 通常 税額控除をした場合 効果
①リース料計上前課税所得 800 800 -
②リース料の合計 80 80 -
③課税所得(①-②) 720 720 -
④法人税額(③×22%) 158 158 -
⑤税額控除額 - 32 32
⑥納付法人税額(④-⑤) 158 126 △32

(注)活用例は、万円未満四捨五入で計算しています。

【解説】

リース料の合計 20万円×4ヶ月(12月~3月)=80万円
税額控除額
(イ) リース費用の総額×60%×7%[1,200万円×60%×7%=50万円]
(ロ) 法人税額の20%[158万円×20%=32万円]
(ハ) (イ)50万円と(ロ)32万円の少ない方 → 32万円

【結論】
32万円だけ法人税額が軽減されます。

(注) 控除しきれなかった18万円(50万円-32万円)は、翌事業年度に繰越して、税額控除の対象となります。

 

少額減価償却資産の特例

Q4 少額減価償却資産を取得した場合、中小企業者等にはどのような優遇措置がありますか?

中小企業者等が損金算入できる少額減価償却資産の取得価額要件は、「30万円未満」となっています。

●「少額減価償却資産」の取扱い
 固定資産は通常、減価償却費として損金経理しますが、少額のものは取得時に、その取得価額の全額を損金算入(即時償却)することが認められています。

●取得価額の要件

  青色申告書を提出する中小企業者等 それ以外の事業者
取得価額 30万円未満の減価償却資産 10万円未満の減価償却資産

●適用期間
 平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に、少額減価償却資産を取得し、事業の用に供した場合に適用されます。

●少額減価償却資産の会計処理方法
 中小企業者等は、次のいずれかを選択できます。

項目 少額減価
償却制度
一括
償却制度
通常の減価
償却制度
対象事業者 中小企業者等 すべての事業者 すべての事業者
対象資産 30万円未満の
減価償却資産
20万円未満の
減価償却資産
すべて
償却方法 即時償却
(全額損金算入)
3年均等償却
の年償却)
普通償却
(定率法又は定額法)
固定資産税 かかる かからない かかる

(注) 少額減価償却資産の取得価額の判定は、消費税の会計処理(税込経理方式又は税抜経理方式)によって異なります。
例えば、税込304,500円(税抜価格290,000円)のパソコンを購入した場合、取得価額は、税込経理方式の場合は304,500円、税抜経理方式の場合は290,000円でそれぞれ判定されます。
(注) 損金算入できる少額減価償却資産の取得価額基準は「30万円未満」ですが、少額繰延資産の取得価額基準は「20万円未満」です。また、資本的支出と修繕費の金額の基準は「20万円未満」となっています。いろいろな金額基準がありますから、注意して下さい。

 

Q5 試験研究を行っていると税負担が軽減すると聞きましたが、本当ですか?

本当です。
新技術・新製品の開発や新分野への進出のための試験研究への投資は、将来の収益確保にとって必要なものです。そのため、試験研究費に対する税額控除制度が設けられています。その代表的なものが「中小企業技術基盤強化税制」です。

(1)中小企業技術基盤強化税制
 これは、試験研究に対する税制措置の中でも、中小企業者等向けの、代表的で、使って得られる効果の大きいものです。

税 制 概 要
中小企業技術基盤強化税制 Q6参照

(注) 対象事業者は、青色申告書を提出する中小企業者等です。

(2)その他の税制措置
 中小企業者だけでなく、すべての事業者に活用できるものとして、次の3つの税制措置があります。

  税 制
A 試験研究費の総額に係る特別税額控除制度
B 増加試験研究費の特別税額控除制度
C 産学官連携の共同研究・委託研究に係る特別税額控除制度

(注) 対象事業者は、A・B・Cすべて青色申告書を提出する事業者です。

●開発研究用設備の特別償却
 平成15年1月1日から平成18年3月31日までの間に、一定の開発研究用設備(開発研究用資産の耐用年数表の器具・備品、機械・装置で取得価額が280万円以上のもの)の取得等をして、これを国内で開発研究の用に供した場合には、その取得価額の50%相当額の特別償却を行うことができます。

 

Q6 試験研究税制の具体的な内容を教えて下さい。

わかりました。具体的な内容を説明します。

(1)中小企業技術基盤強化税制

●制度の概要
 中小企業者等は、試験研究費の総額に対して、次の控除率による税額控除が認められています。

  平成17年度まで(注) それ以降
税額控除率 15% 12%
税額控除限度額 当期の法人税額の20%相当額

(注) 平成18年3月31日までの間に開始する事業年度に適用できます。

●対象事業者
 青色申告書を提出する中小企業者等です。

●対象となる試験研究費
 試験研究費とは、製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用です。(Q7参照)

(2)その他の税制措置

A 試験研究費の総額に係る特別税額控除制度
 試験研究費の総額に対して、次の控除率による税額控除が認められています。

試験研究費割合(α)
(注2)
平成17年度まで
(注1)
それ以降
10%以上の場合 12% 10%
10%未満の場合 10%+(α)×0.2 8%+(α)×0.2
税額控除限度額 産学官連携の共同研究・委託研究に係る特別税額控除制度の税額控除額と合計して、当期の法人税額20%相当額

(注1) 平成18年3月31日までの間に開始する事業年度に適用できます。
(注2) 試験研究費割合(α)=当該事業年度の試験研究費の総額÷当該事業年度を含む過去4年間の平均売上金額

B 増加試験研究費の特別税額控除制度
 当該事業年度の試験研究費の支出額について、過去の一定の基準額を超えた場合には、大企業・中小企業にかかわらず、次の金額を法人税額から控除できます。

(注) 平成18年3月31日までの間に開始する事業年度に適用できます。

(支出試験研究費の額-比較試験研究費の額(注))×15%但し、その期の法人税額の12%を限度とします。

(注) 比較試験研究費の額とは、試験研究費の直近5年間の支出額の多い方から3年間の平均の額をいいます。

C 産学官連携の共同研究・委託研究に係る特別税額控除制度
 企業と大学、公的研究機関等との共同試験研究及びこれらに対する委託試験研究に係る試験研究費の額に対して、一定の控除率による税額控除が認められています。

 

Q7 対象となる「試験研究」及び「その費用」とは、どういうものですか?

対象となる「試験研究」及び「その費用(試験研究費)」は、次のとおりです。

●「試験研究」の内容

・製品の製造又はサービスの提供に係る試験研究
・技術の改良、考案又は発明に係る試験研究

●「対象となる試験研究費」
 試験研究を行うために要する次の費用が対象となります。但し、試験研究費に充てるため、他の者から支払いを受ける金額は除きます。

・原材料費
・人件費
(専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。)
・経費(試験研究に使用する機械等の減価償却費を含む。)
・外部への委託試験研究費等
・繰延資産としている試験研究費の償却費等

 

Q8 試験研究費の適用範囲が明確化されたって、本当ですか?

対象となる「試験研究」及び「その費用(試験研究費)」は、次のとおりです。

●適用範囲の明確化(国税庁に対する文書照会により明確化)
 試験研究以外の業務と兼務する者の人件費についても、税額控除の対象となる適用範囲を以下のように明確化しました。

「専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者」とは、以下のいずれかに該当する者です。
(1) 試験研究部門に属している者や研究者の肩書を有する者等の試験研究を専属業務とする者。
(2) 研究プロジェクトの全期間中試験研究に従事する者。
(3) 次の各項目のすべてを満たす者。
その研究者が研究プロジェクトチームに参加し、全期間ではないが、担当業務が行われる期間、専属的に従事すること。
担当業務が試験研究に欠かせないものであり、専門的知識が当該担当業務に不可欠であること。
従事期間がトータルとして相当期間(おおむね1ヶ月以上)あること。(担当業務がその特殊性等から期間的に間隔を置きながら行われる場合はその期間をトータルする。)
担当業務への従事状況が明確に区分され、担当業務に係る人件費が適正に計算されていること。

 

Q9 今回の適用範囲の明確化により、どのような「人件費」が試験研究税制の適用対象となるのですか?

●試験研究税制の対象となる試験研究費に含まれる人件費の具体例

[E社の事例]
微生物培養装置に関する試験研究のプロジェクトを立ち上げ(プロジェクト総期間8ヶ月)
プロジェクトスケジュール:
設計:1/1~1/31
開発:2/1~3/31
試作:4/1~6/30
性能評価・分析:7/1~8/31のうち、断続的に実働延べ30日間性能評価・分析に従事
試験研究の従事者の人数 4名
A(設計部)プロジェクト担当業務:今回の培養装置開発のプロジェクトリーダー
B(生産部)プロジェクト担当業務:同プロジェクトにおける培養装置の設計、試作
C(生産部)プロジェクト担当業務:同プロジェクトにおける培養装置の開発
D(検査部)プロジェクト担当業務:同プロジェクトにおける培養装置の性能評価・分析

●E社の試験研究プロジェクトに対する研究者の従事状況

E社の試験研究プロジェクト期間

 このE社の例ではアミかけの部分の人件費がすべて試験研究費の対象となります。
 この場合、性能評価・分析については、その業務の特殊性等から、期間的に間隔を置きながら行われましたが、性能評価・分析が行われる時期において専属的に従事したA及びDについても、その従事した実働期間に対応する部分の人件費が対象となります。

●試験研究費に含まれる人件費の対象となる費用について
 人件費の計算においては、試験研究プロジェクトの担当業務に係る賃金・給与、諸手当、賞与、退職金、法定福利費(健康保険法、雇用保険法等による事業主負担額)、厚生福利費(医務、衛生、保険その他の従業員の厚生福利に係る費用)等が含まれます(但し、教育訓練費や従業員募集費等従業員を雇用するに当たって支出することとなる間接的な費用は含まれません)。なお、法人の所得金額の計算上、損金の額に算入されることが前提となります。
 また、例えば役員が試験研究プロジェクトに従事するような場合では、その役員が、試験研究担当業務としての職務を有し、前述の条件(「専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者」)を満たすものである限り、その役員に対する報酬についても、適用対象となり得ると考えられます。但し、その場合、当該役員の研究業務の実態や社内の他の研究者に対する人件費等から鑑みて、当該報酬が研究者の職務に対するものとして相応のものでなければならないと考えるべきでしょう。

【注意点】
試験研究担当業務以外の業務と兼務している者の人件費を試験研究費として計上するには、「当該者の担当業務への従事状況が明確に区分され、当該担当業務に係る人件費が適正に計算されていること」が必要です。このため、試験研究プロジェクトの計画書・報告書や兼務者がその試験研究プロジェクトに従事した期間・費用が明確に分かる勤務記録等が必要となります。
このページの上へ