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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集1「2004年のものづくり白書」のポイント

第2章 明日のものづくりを支える人材の育成

第1節 ものづくりを支える人材の雇用・労働の現状

1. 雇用失業情勢
(1)完全失業率、有効求人倍率の動向及び就業者数・雇用者数

 2003年の労働市場は、景気が確実に回復する中、完全失業率は高水準で推移し厳しい状況にあるものの、新規求人は増加傾向にあり、雇用情勢は持ち直しの動き。このうち製造業については、新規求人が前年同期比で2002年7~9 月期以降増加に転じる一方、就業者数や雇用者数は、1992年以降減少を続けてきたが、この1年の減少幅は縮小し下げ止まり傾向にあり、全体として製造業の雇用はこのところ横ばい。

(2)求人と求職のミスマッチ
 我が国の労働市場においては、欠員と失業が併存する不均衡が大きく、職種別の過不足状況は、単純工で過剰感が不足感を上回っていたが、2004年に入りこれが逆転。しかし、恒常的に単純工より技能工が、技能工より専門・技術での不足感が強い。

2. 就業者の年齢構成の変化
(1)新規学卒入職者の状況

 製造業における新規学卒入職者数は、2002年は前年より減少し、1992年のピーク時と比較すると52%減少と、他産業を上回る減少幅。大企業の新規学卒入職者数は、2000年にはピーク時の約3割にまで落ち込んでいたものの、その後増加の動きが見られるが、中小企業については2002年は減少。(図表18)

図表18 製造業における新規学卒入職者数の推移

図表18 製造業における新規学卒入職者数の推移

(2)製造業における高齢化の進展
 製造業の就業者に占める55歳以上の者の割合は、全産業平均を下回っているものの、高齢化の速度は全産業平均と比べて速い。一方で製造業の就業者に占める15~29歳の者の割合は全産業平均を下回り両者の差は拡大。(図表19)

図表19 就業者に占める若年者・高齢者の割合の推移

図表19 就業者に占める若年者・高齢者の割合の推移

 

第2節 ものづくりを支える人材育成の取組と課題

1. ものづくり人材の能力レベルの現状と育成の取組
(1)企業のものづくりを支える人材の現状、問題点

 製造業において、高齢化が進んでいて問題となっているとする割合が高いのは製造部門の人材であり、中でも技能者についてその割合が高い。
 企業規模別では、大企業の半数以上が製造部門技能者の高齢化が進んで問題としている。(図表20・21)

図表20 製造部門技能者の高齢化の状況(規模別)

図表20 製造部門技能者の高齢化の状況(規模別)

 

図表21 ものづくり人材の種類ごとの高齢化の状況

図表21 ものづくり人材の種類ごとの高齢化の状況

(2)ものづくり人材の能力レベルの現状と人材育成の取組
 製造部門の人材については、能力レベルが「低下してきている」とする割合(17%)が「むしろ向上している」とする割合(14%)を上回っていることが、特徴的である。人材の能力向上のため、OJT、Off-JTなどの教育の充実に取り組む企業が過半数(61%)。(図表22)

図表22 製造部門の人材の能力を向上させるための取組(規模別)

図表22 製造部門の人材の能力を向上させるための取組(規模別)

〔事例 ものづくり人材の能力向上の取組・設計者自身が製品の試作により能力向上〕
 A社(超精密部品プレス加工、50人) のコア技術である金型設計の技術者は、入社後1年間プレス加工、その後4~5年間金型の部品づくりを担当し、ものづくり現場経験を身につけた後、金型設計部門に配属、単に設計を行うだけでなく試作用金型の製作と試し打ちまでも担当することで、設計の見極めを自分自身で行い能力向上につなげる。

(3)企業におけるものづくり人材育成と企業パフォーマンス
 製造業においては、計画的なOJTはここ数年間横ばいで、Off-JTは2002年度について低下しており、OJT、Off-JTともに2002年度における実施率は約半数。
 一方で、人材育成に力を入れている企業ほど人材の能力が向上している割合が高く、また、売上高が増加している割合が高い傾向。今後、景気回復基調の中で企業における人材育成の重要性を再認識し、力を傾注することが必要。(図表23)

図表23 人材育成と売上高の伸び

図表23 人材育成と売上高の伸び

〔事例業績の良い企業での人材育成の取組〕
 C社(プラスチック成形、80人)では、顧客工場の中国移転に伴い、デジタルカメラの部品やモータの生産を中国に移転したが、レンズ関係については日本での生産を続けており「人材、育成は大きな設備投資」との考えの下「中国にはできないものを考える力」を持った技能者育、成のため、技能検定受検奨励や技能伝承星取り表の作成などにより、積極的に人材育成を行っている。

2. 製造現場における技能継承の現状と課題
(1)技能継承の危機感・背景及び取組

 ものづくり力の源泉となっている製造現場の技能の継承について、63%の企業が危機感を持ち、大企業では85%が危機感。
 危機感を持った理由・きっかけは「製造現場の高齢化」(42・5%)が最も多く、次いで「製品の品質の低下、不良品の発生(37%)「グローバル化やデジタル化などものづくりをめぐる環境の変化」(36%)「製品の売れ行き低下」(30%)。(図表24・25)

図表24 ものづくり力の継承への危機感(規模別)

図表24 ものづくり力の継承への危機感(規模別)

 

図表25 危機感を持った理由・きっかけ(規模別)

図表25 危機感を持った理由・きっかけ(規模別)

(2)熟練技能伝承・継承の取組状況
 熟練技能伝承の方法としては「OJTによるマンツーマン指導の充実(64%)が最も多く次いで退職したベテラン技能者を指導者として活用(43%)「技能のデジタル化・マニュアル化」(29%)「技能塾などの設置」(16%)。
 熟練技能・ノウハウを有する技能者のネットワークを構築するなど、社会基盤の整備が今後の課題。(図表26)

図表26 熟練技能の伝承を図る方法(規模別)

図表26 熟練技能の伝承を図る方法(規模別)

3. 海外進出に伴う我が国のものづくり人材の国内での役割
(1)製造業の海外進出に伴う人材面での影響

 中国をはじめとするアジア諸国へ生産拠点が拡大する中、国内工場は「高度技能・技術を要する製造拠点」、「コア技術を生かした開発・製造拠点」の役割が期待されている一方、「将来的に国内工場の存在意義は少ない」と考える企業はほとんどない。(図表27)

図表27 今後の国内工場の果たすべき役割

図表27 今後の国内工場の果たすべき役割

(2)海外の人件費コスト面から見た国内の人材活用の方向
 海外事業と国内雇用との関連で、「海外事業の強化・拡大と国内雇用の増減とは関連が薄い」(59%)が「海外事業の強化・拡大によって、国内雇用は減少した」(26%)を大きく上回っており、国際分業体制の構築が進む中で、両者の関係は薄れてきている。今こそ、企業は我が国人材の優位性を生かした人材育成に取り組むことが必要。

図表28 製造部門の人材について、今後特に重点的に伸ばしていきたい
能力・知識(規模別)

図表28 製造部門の人材について、今後特に重点的に伸ばしていきたい能力・知識(規模別)

(2)事業環境の変化に対応するために求められる人材の能力・資質
 事業環境の変化の中に対応して発展していく上で今後企業が求める人材として、「リーダーシップを持ち、担当部署等を引っ張っていける人材」(49%)や「指示されたことだけではなく、自ら考えて実践できる自立した人材」(46%)。(図表29)

図表29 事業環境の変化の中でものづくり企業として発展していく上で
求められる人材(規模別)

図表29 事業環境の変化の中でものづくり企業として発展していく上で求められる人材(規模別)

〔今後求められる人材像〕
 製造部門の人材については、各種側面で、以下のような能力・資質が必要。

技術・技能面:多能工的能力、改善能力、作業立案能力。
中小企業ではコンピュータ対応能力のニーズ大。
資質面:市場ニーズ・情報把握能力、設計・開発への提案能力、発想力・想像力、新商品開発、販売戦略。
役割面:部下の指導育成能力。

2. 若者側のものづくりへの意識をめぐる課題
(1)中高生のものづくり職種に対する意識

 中学生・高校生は、ものづくり関連の職業について、どんな仕事をするのかイメージできないことから自分の職業としてやってみたいと思う者も少ない状況にあり、この傾向は、具体的な製品が身近でなくイメージできないものの場合に、一層顕著。このため、中学生・高校生に対し、ものづくり関連の職業について、適切な情報を与え、身近に感じられる職業として興味・関心を持たせることが必要。(図表30)

図表30 中高生がやってみたい職業

図表30 中高生がやってみたい職業

3. 今後のものづくり人材育成の方向性
(1)若者の職業能力開発の推進

 日本版デュアルシステムが開始されており、ものづくり産業分野の技能職種においても金属加工、機械技術などをはじめとする様々な職種で実施が見込まれる。今後、企業、業界団体の理解、協力も得ながらさらに導入を促進していくことが必要。
 このほか、技能検定制度において若年者向けの3級の設定職種をさらに増加させるとともに、若年者のものづくり人材の育成を図るための各種事業を実施する。(図表31)

図表31 「日本版デュアルシステム」の導入に係る連携

図表31 「日本版デュアルシステム」の導入に係る連携

今後の人材育成の方向性
1. 若者の職業能力開発の推進
日本版デュアルシステム導入
技術検定制度で若者向け3級職種の拡大
2. 若者へのものづくり意識啓発の推進
2007年ユニバーサル技能五輪国際大会に向けものづくり技能習得に対する若者のチャレンジを支援
3. 総合的なものづくり力を持つ指導的な人材育成への支援
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