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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

トピックス東西南北

バイオマス・ニッポン総合戦略

 わが国では、新エネルギー法や各省庁の連携による『バイオマス・ニッポン総合戦略』に代表される環境関連法や政策の施行、実施が相次いでいる。これらは近年の地球規模的な環境破壊にも対応したものであり、枯渇が憂慮される化石エネルギーの代替として太陽光、風力などのほか「森林バイオマス」を利用しようという社会動向を反映させた法規、政策であるといえる。この環境に対する積極的な働きかけは行政や一部の企業だけではなく、現在は広く世間の注目を集め、「森林バイオマス」への理解を深める契機となっている。
 森林バイオマスとは、「バイオマス(biomass=生物により生産された有機物量)」という学術用語との合成語で、森林生態系に存する生物からなる有機物として解される。一般的に再生可能であり低公害の循環資源という概念がなされ、その利用促進や新技術開発が急がれているのである。なかでも、木材からなる木質バイオマスは多様な用途が期待されるもので、エネルギーやプラスチックなどのマテリアルとして普及しようとしている。
 今回、県下でこの木質バイオマスをストーブや、ボイラーなどの燃料とすべく、「木質ペレット」として商品化に臨んでいる南信バイオマス協同組合を紹介する。

南信バイオマス協同組合の取り組み

木質ペレット
木質ペレット

 組合の位置している飯田市は冬季においても比較的温暖な地域であるため、温帯性樹種及び亜寒帯性樹種ともに広く分布しており、古くから地域特性を活かした農林業など特色のある地場産業が発展していた。しかし近年、小規模素材生産者による安定的な事業量の確保の困難や林業での採算性の問題等により、高性能林業機械の導入や作業員の新規雇用に慎重になっており、地元産材供給体制の弱体化に繋がってきた。
 こうした中、組合では当地域活性化のため、現在未利用木材が有効活用されずに林地残材として放棄されている現状を踏まえ、木材の多面的利用を目標に掲げ、農林水産省の林業経営構造対策事業の一環である「木質バイオエネルギー利用促進事業」に飯田市の協力のもと申請し、約89,000千円の事業費により10月には工場建設及び設備投入が、11月には操業開始を計画している。当面年間300トン~800トンの生産を目指し、平成20年には1,000トンを予定している。


木質ペレットのメリット

ペレットストーブ
ペレットストーブ

・カーボンニュートラルによるCO2の削減。
 カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の増減に影響を与えない性質のことを言う。つまり、木質バイオマスを燃料として使用したときに発生するCO2は、植物が生長過程で光合成により吸収した二酸化炭素を発生しているものであり、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させていることにはならないというものである。
 そのため、CO2の削減による地球温暖化抑制に繋がる。

・廃材等の有効利用
 組合員企業の製材工場から出る大量の残材(廃棄物)を原材料として使用することにより、処分費用の軽減に繋がり、自然環境と経済面の両面で負荷を軽減できるため、環境に適応した好循環型社会の構築と醸成に寄与する。

・森林の適切な整備への寄与
 現在森林整備の多くは、間伐や伐期を迎えた樹木を伐採し林地残材として放置するものである。その残材にエネルギーとしての価値を持たせれば、林業振興に寄与し、ひいては真の森林整備の推進にも繋がることが期待できる。

・山村地域への経済効果
 間伐材など地元の未利用資源をエネルギーとして利用することで、資源の収集や運搬、バイオマスエネルギー供給施設や利用施設の管理・運営など新しい産業と雇用が創られ、山村地域の活性化に貢献できる。

今後の問題点

 当面の問題点としてはペレット発熱量とその価格にある。発熱量は1キロ当たり約4,000kcalであり、灯油の1リットル当たり約8,000kcalに比べると、半分に留まる。価格についてもペレットがキロ40円に対し灯油は1リットル50円前後。灯油と同じ熱量にするためには、2倍のペレットを必要とするため、価格も2倍になる。
 理事長の井口肇さんは、こうした問題点は、既存の設備やノウハウを利用したコスト削減と、消費者の環境への意識向上による、新たな需用の発生が解決に繋がると考えており、そのために、組合としてもペレットストーブの代理店事業やストーブの設置・メンテナンスを推進していく方針と話している。

取材構成 南信事務所

物資収支計画予定

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