特集2 上手に使って会社を大きく 第1回
平成16年度の中小企業向け税制のご紹介
国では経営に前向きな姿勢で企業経営に取り組んでいる中小企業を支援するため、さまざまな税制上の措置を講じています。
中小企業向けの代表的なもので、得られる効果が大きなものを『平成16年度版中小企業税制「45問45答」』より抜粋し、数回にわたり紹介します。
「中小企業」の範囲は、「法人税法における定義」によると、「資本金1億円以下の法人」をいいます。
但し、法律や制度によって「中小企業」の範囲が異なる場合があります。例えば、次の通りです。
業種区分 |
法人税法における定義 |
中小企業基本法の定義 |
製造業その他 |
資本金1億円以下 |
資本金3億円以下又は従業員数300人以下 |
卸売業 |
資本金1億円以下又は従業員数100人以下 |
小売業 |
資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下 |
サービス業 |
資本金5,000万円以下又は従業員数100人以下 |
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● |
中小企業は大企業と比べて、様々な税負担の軽減措置があります。
例えば、「法人税率」の軽減税率です。資本金が1億円以下の中小企業には、大企業の法人税より低い税率が適用されます。 |
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財務基盤強化のために押さえておきたいツボ
Q1 |
中小企業税制を上手に使うと、どのようなメリットがありますか? |
●中小企業税制のメリット
中小企業の将来を考えると、経営者には現在の厳しい経営環境の下でも、競争力や技術力を強化するために、なんとかお金を工面して設備投資や研究開発を行うことが求められます。
中小企業税制を活用することにより、中小企業が苦労して生み出した利益に対する税負担を軽減することができます。そして、その分だけ自己資本が多く蓄積され、将来の再投資に充てることができます。
同族会社の留保金課税の停止措置
A |
同族会社(3人以下の株主等で、持株割合が50%超の会社)が内部留保した金額に対して、追加的に課税される制度です。 |
●留保金課税の概要
留保金課税額=[所得等-(配当等+法人税等)-留保控除額]×特別税率 |
(注1)「留保控除額」
次の基準の中で最も多い金額です。
①所得基準額=当事業年度の所得等の金額×35%
②定額基準額=年1,500万円
③積立金基準額=期末資本金の25%相当額-期末利益積立金額 |
(注2)「特別税率」
課税留保金額 |
率 |
年3,000万円以下の金額 |
10% |
年3,000万円超
年1億円以下の金額 |
15% |
年1億円を超える金額 |
20% |
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同族会社の留保金課税の停止措置
Q3 |
中小企業において、留保金課税が停止されるのは、どのような場合ですか? |
A |
青色申告書を提出する同族会社で、次の①~④のいずれかに該当する場合に、留保金課税が停止されます。 |
①自己資本比率50%以下の中小法人(資本金1億円以下) |
④ |
前事業年度の損金の額に算入される試験研究費及び開発費の合計額が、収入金額の3%を超えている中小企業者(注1)、(注2) |
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(注1) |
ここでいう「中小企業者」の範囲は、中小企業基本法で規定する中小企業者をいいます。 |
(注2) |
「試験研究費及び開発費」の内容については、Q4を参照して下さい。 |
●適用期間
①、②、③については、平成18年3月31日(④については平成17年4月13日)までの間に開始する各事業年度に適用されます。
Q4 |
「試験研究費及び開発費」(Q3参照)とは、どのようなものですか? |
A |
「試験研究費及び開発費」の具体的な範囲は次の通りです。 |
●試験研究費(試験研究費に充てるため他の者から支払いを受ける金額を除く。)
事業シーズ発見のための費用
◇ |
製品の製造又はサービスの提供に係る試験研究
(研究者の人件費、原材料費、 調査費、外部委託費等) |
◇ |
技術の改良・考案又は発明に係る試験研究
(研究者の人件費、製作の原材料費、調査費、外部委託費等) |
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●開発費
事業化・製品化のための費用
以下の使途のために特別に支出した費用。( )は、対象となりうる費用項目の例。
◇ |
新技術の採用
(技術習得のための指導料、セミナー等の受講料、特許権使用料、技術利用マニュアル加工・使用料、調査費、外部委託費等) |
◇ |
新経営組織の採用
(販売・仕入先との提携、代理店やフランチャイズ採用、人員や設備の配置転換、事業の再編・統廃合、経営管理の刷新等のための人件費、会議費、コンサルタント等委託費、配置転換に伴う退職金等) |
◇ |
市場の開拓
(新たな販路を拓くための調査費、広告宣伝費、展示会出展費、PR品制作費、パンフレット印刷費等) |
◇ |
新事業の開始
(プロトタイプ製作のための人件費、原材料費、新サービス提供に係るマニュアル作成費、研修費等) |
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●試験研究費・開発費の対象にならないもの
・ 製品化された製品の生産設備の取得費
・ 量産化のための設備投資
・ 販売促進のマーケティング費
・ 工場・店舗の修繕費 |
欠損金の繰越し・繰戻還付
青色申告を提出する法人は、欠損金の繰越制度と欠損金の繰越還付制度とのいずれかを選択適用することができます。
(注) |
欠損金とは、各事業年度の所得金額の計算上、その事業年度の損金額が益金の額を超える場合の、その超える部分の金額をいいます。 |
A |
欠損金が生じたとき、その欠損金額を一定の条件のもとに、以後の事業年度で生ずる所得から控除できる制度です。 |
●この特例の要件
①青色申告書を提出していること。
②繰越しできる期間は、翌事業年度以降7年間。
③欠損金の控除は、直近の翌事業年度以降から順次行うこと。
Q6 |
欠損金の繰越期間が延長されたって、本当ですか? |
繰越欠損金については、従来はその欠損金が生じた事業年度の翌事業年度から5年しか繰越控除ができませんでしたが、平成16年度税制改正で、繰越期間が「7年」に延長されました。
また、この繰越期間の延長は平成16年度以後に新規に発生した分だけでなく、平成13年4月1日以後に開始した事業年度に発生した欠損金についても適用されることとなりました。
注意点
この改正に伴って、平成13年4月1日以降に開始した事業年度に係わるものから、次のように取り扱われます。
①帳簿書類の保存期間→すべて「7年」
②法人税にかかる更正の期間制限
→欠損金額にかかるものは「7年」
→脱税以外の場合の過少申告にかかるものは「5年」 |
A |
欠損金が生じたとき、その欠損金を前事業年度の所得に繰戻して、既に納付済みの法人税額の還付を請求することができる制度です。 |
●この特例の要件
この特例が活用できるのは、青色申告書を提出する次のいずれかの法人です。
① |
中小企業経営革新支援法(Q8参照)における経営革新計画の承認を受けた中小企業者であって、最近1年間のうちの3ヶ月間の生産額又は取引額が5年以内のいずれかの同期間に比べ30%以上減少していることについて、計画の承認をした行政庁の確認を受けた者。 |
② |
設立後5年以内の中小企業者 |
●還付請求ができる金額
(前事業年度の法人税額) × |
当事業年度の欠損金額 |
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前事業年度の所得金額 |
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●具体例
C社は、中小企業経営革新支援法における経営革新計画の承認を受けている中小企業者で、上記①の要件を満たしています。
前事業年度は課税所得が800万円(法人税額が176万円)でした。
当事業年度に欠損金が500万円生じました。
還付請求できる法人税額は、次のように計算されます。
還付請求金額の計算
176万円× |
500万円 |
=110万円 |
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800万円 |
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【結果】110万円だけ法人税が還付請求できます。
●適用期間
平成18年3月31日までの間に終了する事業年度に適用できます。
Q8 |
「中小企業経営革新支援法」って、知っていますか? |
A |
様々な経営課題にチャレンジする中小企業の経営革新(新たな取り組みによる経営の向上)を全業種にわたって幅広く支援する制度です。 |
●この制度の手続
①経営の向上に関する目標を設定します。
(注) |
3年から5年の期間で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が9%~15%向上することを目標にします。 |
②「経営革新計画書」を作成します。
(注) ①を目標に具体的には、次のような計画実施内容を入れます。
①新商品の開発又は生産
②新役務の開発又は提供
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入
その他新たな事業活動 |
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↓ |
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●承認の効果
承認されると次のような支援が受けられます。
①商品開発などの経費についての補助金
②設備資金及び運転資金について商工中金等からの低利融資
③設備投資減税、欠損金の繰戻還付等の優遇税制措置
④その他 |
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