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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集1 2004年版中小企業白書の概要

中小企業の海外進出・撤退の趨勢

 現在、急速に進行しつつある経済のグローバリゼーションの動きは、中小企業にとって海外の企業との競争という新たな試練を与えると共に、日本とは生産要素の賦存量、市場構造、社会制度、法制等の異なる海外への進出と海外生産といった新しい選択肢を中小企業に提供するものである。また、自社による海外生産にまで至らない場合であっても、自らの製品の海外企業への生産等の委託といった新しい可能性を中小企業へも与えるものでもある。
 本章では、経済のグローバリゼーションの中、海外展開等の取組を行う中小企業に注目し、こうした取組が成功するためのポイントは何かということについて探ることとする。

1.増加傾向にある中小企業の海外進出


(1)中小企業の海外進出の状況

 はじめに経済産業省「海外事業活動基本調査」により製造業の海外生産比率を見ると、1992年度での6.2%から2001年度の16.7%と年々増加傾向にあり、製造業の海外生産への移行が進んでいる状況にある(第1図)。このような中で中小企業自身の海外進出の状況を経済産業省「企業活動基本調査」により見ていくと、海外子会社を持つ企業の割合は2002年調査時点において大企業で28.5%、中小企業では9.3%(第2図)となっており、1992年調査時点から比較すると、中小企業の海外進出は漸増傾向にある。また、中小製造業に限ると1992年調査時点での7.1%から2002年調査時点の13.0%と中小企業全体と比べ増加傾向が強く現れており、特に中小製造業において企業活動のグローバル化が進んできたことが分かる。

第1図
海外生産比率の推移
~加速する製造業の海外生産~

第1図 海外生産比率の推移

第2図
海外子会社を保有している企業割合
~中小企業で漸増傾向~

第2図 海外子会社を保有している企業割合

(2)地域別の進出状況

 (財)中小企業総合研究機構、独立行政法人経済産業研究所が2003年11月に実施したアンケート「中小企業海外活動実態調査」により中小企業の直接投資の目的を地域別に見ていくと、北米・ヨーロッパへは「海外市場への販路拡大を図るため」を目的とした投資が多い(67.9%)のに対して、中国、NIEsへの直接投資は、「安価な製品を輸入し、コスト削減を図るため」(中国66.7%、NIEs61.8%)が多くなっている。また、東南アジアについてみると「主力取引先の要請に応えるため」が多くなっている(50.8%)(第3図)
 また、進出地域別の主力販売先について見ると、北米・ヨーロッパでは「主に生産品を日系以外の現地企業向けに販売」が46.9%と最も多いのに対し、東南アジアでは「主に生産品を現地日系企業向けに販売」(52.3%)が最も多く、中国とNIEsでは「主に生産品を日本に輸出」がそれぞれ47.8%、41.9%と一番多くとなっており、それぞれの地域の投資環境を反映した進出目的の違いが見てとれる(第4図)

第3図
中小企業の地域別海外進出目的
~地域により異なる進出目的~

第3図 中小企業の地域別海外進出目的

第4図
中小企業の現地法人の主力販売先(地域別)
~アジアに進出する企業は進出目的を反映して、
日本への逆輸入や日系企業向けの販売が多い~

第4図 中小企業の現地法人の主力販売先(地域別)

(3)地域別、進出時期別の出資形態

 地域別に中小企業の直接投資における独資と合弁の割合を見てみよう。独資の割合について、北米・ヨーロッパで67.8%であるのに対し、中国で52.7%、NIEsで45.8%、東南アジアで43.6%と割合は低くなっている(第5図)

第5図
中小企業の直接投資の地域別出資形態
~アジア地域では、北米、ヨーロッパに比べて合弁方式の割合が高い~

第5図 中小企業の直接投資の地域別出資形態

2.海外からの撤退の現状

 はじめに中小企業がどの地域から撤退しているかについて見ていくこととしよう。経済産業省「海外事業活動基本調査」により、2001年度に中小企業が撤退した件数を、地域別に見ると北米・ヨーロッパが40件、中国、NIEs、東南アジアで約10件となっている(第6図)。年度別の撤退状況の推移を見ると、若干のばらつきがあるものの各地域共に緩やかな増加傾向にある。

第6図
中小企業の撤退現地法人数(地区別)
~各地ともおおむね漸増傾向にある~

第6図 中小企業の撤退現地法人数(地区別)

 

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