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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

元気な企業を訪ねて -チャレンジャーたちの系譜ー

“世界トップクラスの技術で顧客のモノづくりを支援。
「サービス業」を標榜するオンリーワン企業グルーブ。”

永田 修平さん
ナガタグループ
(株式会社ナガタ
株式会社永田製作所 株式会社サンテックダイヤ)
代表取締役 永田 修平さん

CS(顧客満足)の提供。それが企業の責任

 「我々は、レンズの加工機械や治工具を作る製造業ではあるが、実はサービス業だと思っているんです。要は、いかにお客様のニーズを見極め、必要なモノを必要な場所にタイムリーに提供するかということ。
 ナガタグループのコンセプトは、お客様がより合理的にレンズ生産をするためのお手伝い。そのために商社と製造業をグループ化し、機械、治工具・刃物、測定器、加工ノウハウ、資材を提供する。しかも、キーパーツは自分たちで作る。総合的なサービスを提供できることが、うちの強みです」。
 ナガタグループを率いる永田修平社長は、顧客志向の論理は時代の必然であり、CS(顧客満足)を提供することが企業の責任であると考える。海外(香港、ジャカルタ)も含めた営業所の全国展開も「お客様のために」の結果だ。

世界トップクラスの技術力で、光学関連企業のほとんどと取引

 デジタルカメラ、CD・DVDプレーヤーなどのAV製品から、コピー機、ファクシミリなどの情報関連機器、内視鏡などの医療機器、半導体や液晶の回路を焼き付ける大型スキャナーまで、レンズは光を媒介する機器に必ず搭載されているキーパーツ。日本が世界で圧倒的シェアを誇る、レンズを中心とする光学分野は、ここ10年来のデジタル革命によって急激な拡大をみせている。
 永田製作所は創業以来、光学器械・治具・原器・試作レンズなどを製造し、レンズの曲面を研磨する光学皿では、国内70%以上という圧倒的シェアを誇る。光学レンズ製造に必要な各種設備や治具、資材、測定器などを販売する(株)ナガタ、自動化機械の開発・製造を行う(株)サン・ブライト、光学専門のダイヤモンド工具メーカーである(株)サンテックダイヤを擁する、ナガタグループの中核企業。大手光学機器メーカーはもとより、光学に関連する企業のほとんどと取引を持ち、その技術力では世界でもトップクラスと高く評価されている。

世界トップレベルの加工機の開発に成功

 「レンズの品質には、性能と外観の2つがあります。性能は寸法精度。外観はキズや汚れ。性能は出ているが外観で不良になるケースが多いんです。それがレンズ加工の難しさ。機械加工では0.3ミクロン(100分の3ミリ)の球面精度が限界で、その段階での良品率は80%。その後、何とか調整して90%まで高めるというのが業界の常識だった」と、永田社長。
 カメラ付き携帯電話に搭載されるレンズはわずか、2、3ミリ。この極小レンズを磨くためには、従来の加工機械や技術ではもはや対応不可能なところまできている。一方、メーカーが中国などで大量生産するためには、素人でも安定して加工できる自動機が必要となる。「そういう機械の依頼がウチに来るんです。このレンズを磨ける機械を開発して欲しい」と。
 こうした光学メーカーのハイレベルなニーズに応え、ナガタグループでは最近、0.1ミクロンの球面精度が得られる、世界トップレベルの加工機の開発に成功。これで良品率は99.4%と飛躍的に向上し、依頼したメーカーはもちろん、世界の光学業界を驚かせた。

機械と治工具の二本立て、そしてレンズ研磨技術の構築

 永田製作所は現会長である父、永田暢男氏が1954年(昭和29年)に創業。今年3月、創業50周年を迎えた。
 戦地で終戦を迎えた永田会長は1年後、岡谷に復員。しかし地元に就職口はなく、自らモノづくりを志す。「この地域は不便なところで大きなものは作れない。自ずと資本があまり要らず、小さくて、しかも付加価値の高いものということになった。レンズ加工はその条件に合っていたんです」(永田会長)。
 当時、レンズ加工に必要な何種類もの治具の製作は、すべて東京の専門業者に依頼。発注や受け取りのたびに東京に出かけなければならず、非常に手間がかかっていた。それを見かねて治具の製作に着手したのが、ナガタグループの礎となった。機械と治工具の製造の2本立てでいく道を選んだのである。
 その後、顧客であるレンズメーカーから、より高度なレンズ加工を進めるために機械や研磨材についてアドバイスを求められることが多くなる。
 「お客様と同様のレンズ研磨技術を持たなければ、本当の指導、アドバイスはできない」。そこで永田会長は社内にレンズ研磨部門を設置し、大手レンズメーカーの退職技術者を採用してレンズ研磨技術の導入を図る。ところが採用した技術者はいわゆる職人意識が強く、他人に技術を教えない。
 「職人の技術」を「会社の技術」に標準化しなければ事業を持続できないだけに、「社内の人間がレンズ研磨の技術を身につけなければだめだ」と痛感した。ちょうどそんな時、長男である現社長が機械工学を学んでいた大学を卒業。「すぐ会社に入れ、5年間レンズを磨かせました。そのおかげで、今では全国5指に入る技術を持つと自負しています」(永田会長)。

ナガタグループを形成し、より強い企業体づくりを推進

 もうひとつの転機は、1990年前後に訪れる。バブル崩壊と時を同じくして訪れた、情報革命と流通革命によってである。気がつけば地域の顧客は力を落とし、その結果、同社も売上高が3億円にまで落ち込む。それまで順調に業績を伸ばしてきただけに衝撃だった。
 永田社長は「80年代まで、我々は地域の企業として地域のニーズに応えていればそれで十分だった。ところが情報革命によって、外にはもっとすごい会社がたくさんあることが分かってしまった。また流通革命によって地域差もなくなった。地域性が崩壊し、もはやこの地域だけでは生きていけないことがその時、はっきりと分かった」と当時をふり返る。
 そこで同社はまず、営業力の強化に取り組んだ。ユーザーとダイレクトに接することで時代のニーズを的確につかむためだ。88年にはレンズ製造に関する機器および測定器、消耗副資材の商社、ナガタを設立。初めての営業所を茨城に出した後、短期間で秋田、仙台、東京と拠点を拡げていった。
 同時に自動化機械の開発メーカーだったサン・ブライトを買収し、ニーズが高まっていた機械の自動化に対応。99年にはサンテックダイヤを買収し、最重要工具のひとつであるダイヤモンド研削工具の自社製造に着手した。
 こうして専門企業の集合体であるナガタグループを形成し、より強い企業体づくりを推進していったのである。

受発注システムを独自開発し、「標準在庫」を実現

 情報革命と流通革命がもたらしたものは「一番でなければ生き残れない」という事実。日本一になるために選んだのが、光学皿だった。
 光学皿はレンズの曲面を研磨する必須工具。レンズメーカーによって規格が異なり、製造には膨大な型や材料が必要となる。そのため各社それぞれ鋳物業者に発注し、できあがるまでに一週間ほどかかっていた。その製造を一手に引き受け、納期短縮ニーズに応えようというのである。
 まず、使用される頻度が高い型を五百種類、材料を3、4万点ピックアップ。そして、顧客からの受注情報を受けて即座に製造を開始し、使用した材料は業者に自動発注することでつねに一定量の在庫をキープする受発注システムを独自に開発。それによって「標準在庫」を実現し、ほとんどの注文に即座に応えられる体制を整えた。
 「光学皿は大手は絶対に手がけないが、絶対に必要なもの。それがうちの大きな武器になる。その強いつながりを利用し、お客様とのパイプをさらに太くしているんです」。

商品開発力をいかに高めるか。課題は人材の採用と育成

 現在、ナガタグループには5ミリ以下のレンズを磨くことができる機械の開発依頼が世界中から舞い込む。また大手メーカーからはレンズを磨くための仕組みづくりへのニーズも高まっている。
 「実際、ナガタグループにとっては荷が重いものもある。でも、それはできないなどと言わず、お客様ニーズとして受け止め、どこまでも挑戦し続けるつもりです。私たちはあくまで、主力のモノづくりがより合理的にできるお手伝いをする産業なのだから」。
 今、大手メーカーの生産技術力は相対的にパワーダウンしているという。小さいながらそれを肩代わりして担っているという自負と自信からだろう、永田社長の言葉には力強さがこもる。
 目下の経営課題は、時代が求める商品をいかに開発するか。そのためには人材、だが、永田社長は「こんな小さな会社にいかに質の高い人材に入ってもらうか。それが大きな課題。会社に魅力がなければ人は来ないし、来なければ会社は伸びない。命がけです」と打ち明ける。
 ナガタグループでは、将来性のある若手社員には、営業、製造、開発の3部門をそれぞれ3年ほど経験させる。その間、開発プロジェクトに参加させて達成感やモノづくりの喜びを体験させながら、「開発する」「作る」「売る」のバランス感覚にすぐれ、顧客ニーズをくみ取れる人材の育成に取り組んでいる。

異業種交流会は情報交換の場

 「異業種交流会で具体的に成功している事例は少ないのではないか」。そう指摘する永田社長にとって異業種交流は「情報交換の場」。岡谷市の「NIOM」、会長を務める「DTF(デスクトップファクトリー)研究会」など複数の交流会に参加している。
 DTFとは机の上に乗る大きさの
”工場“。超小型の部品や機械をA4サイズ程度の機械で合理的かつ経済的に生産しようという、新しいモノづくりの概念だ。同研究会ではすでに、NC旋盤、射出成形機、マシニングセンター、プレス機、洗浄機などを完成。03年10月に開かれた「諏訪圏工業メッセ2003」にも出展してデモンストレーションを行い、数多くの来場者の注目を集めた。
 「会の目的は、世界標準づくりをめざすこと。機械そのものは小さくできたが、内部に組み込む極小サイズのモーター、シリンダー、ベアリング、コネクターがまだこの世の中にはない。我々がその標準規格づくりができればという夢を抱きながらやっているんです」。

プロフィール
永田修平さん
代表取締役社長
永田修平
(ながたしゅうへい)
中央会に期待すること

御所工場(岡谷市)
御所工場(岡谷市)
中小企業施策についての提言
日本中の企業はみんな感じていると思いますが、国が集める税金は必要最低限にとどめ、企業が自分の責任で一番使いたいところにカネを使えるようにしてほしい。それが行政の一番の役割ではないかと思います。民間活力に任せてもらわなければ世界との競争に勝てない。そう感じます。

経歴
1950年 (昭和25年)7月21日生まれ
1973年   日本大学工学部機械工学科卒業
1973年   株式会社永田製作所入社
1988年   代表取締役社長に就任
趣味   山野草の栽培。鉢植えの他、庭に地植えしている。時間がないのでなかなか世話ができないのが悩み。
家族構成   妻、長男と長女

企業ガイド
株式会社永田製作所

所在地 〒394-0025 長野県岡谷市大栄町2-4-15
TEL.0266-22-4592(代) FAX.0266-24-0317
創業   昭和29年(1954年)
資本金   1,000万円
事業内容   光学分野における機械設備、治工具、測定器の製造、消耗副資材の販売、およびノウハウの提供
事業所   本社 工場/本社、御所 営業所/茨城、秋田、仙台、東京
海外拠点   香港、ジャカルタ
グループ会社   (株)ナガタ、(株)サン・ブライト、(株)サンテックダイヤ
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