たゆまぬ挑戦 新たな飛躍
第55回 中小企業団体全国大会


 去る10月30日、第55回中小企業団体全国大会が東京都渋谷区の「渋谷公会堂」において開催された。
 「たゆまぬ挑戦 新たな飛躍」のキャッチフレーズのもと、大会には、全国の中小企業団体の代表者2,300名が参加。また、来賓として、小泉純一郎内閣総理大臣をはじめとし、政財界から19名にのぼる臨席を得た。
 大会では、「劇的な景気対策、デフレ対策の即時実施」を始め、中小企業に関する13項目の決議及び大会宣言が採択されたほか、優良組合37組合、組合功労者69名、中央会優秀専従者22名が表彰された。
 なお、次回の第56回中小企業団体全国大会は、平成16年11月11日、新潟県新潟市で開催することとなっている。

宣 言

 長期にわたるデフレ不況から脱却するための方途が見えない中、日本経済を支える底力である中小企業は困窮を極めている。加えて、構造改革の痛みは、中小企業と中高年齢労働者に集中して現われている。
 今、景気回復政策に舵を切らない限り、中小企業は壊滅の危機に立たされ、日本経済も崩壊に追い込まれること必定である。
 従来の制約にとらわれず、今こそ中長期的な展望を持って、大胆な景気対策を即断・実行し、デフレ経済からの脱却、民間需要の拡大、新規雇用の創出を実現しなければならない。さらに、厳しい状況にあえぐ中小企業への金融対策にも万全を期するべきである。
 他方、かかる時期に、消費税率の引上げなどの議論をすることは、景気回復に逆行するマイナスの景気の対策となることを認識すべきである。
 本日、全国の中小企業団体の代表2,300名は首都東京に集結し、「たゆまぬ挑戦 新たな飛躍」を合言葉に、55回目の記念すべき全国大会を開催し、我が国中小企業が、時代のニーズに即応して積極的にその期待に応えていくために必要な重点事項を決議した。
 政府は、全国470万余の中小企業が、その活力を最大限に発揮し、希望と勇気を持って、明るい展望を切り拓いていくことができるよう、本大会が決議した事項を早急に実現すべきである。
 我々中小企業もまた、我が国経済の活力の源泉として、それぞれの地域・分野において、懸命の努力を続けてきたところである。本日の大会を契機に、企業家精神をさらに発揮しつつ、中小企業組合を始めとする連携組織に相互の力を結集し、希望と活力に満ちた新しい経済社会の創造に向け、大きく翔くことを期する。

 右宣言する。
平成15年10月30日
第55回中小企業団体全国大会


表彰された県内優良組合と中央会優秀専従者

表彰事業については、優良組合(3組合)、中央会優秀専従者2名に対し、表彰状と記念品が授与されました。
優良組合
宇都宮 元 協同組合長野県中古自動車リサイクルセンター
長野県長野市大字高田五分一沖679番地10
理事長 宇都宮 元
設立年月日   平成7年2月28日
組合員数   48人
主な共同事業   1. 共同施設事業
2. 部品等共同販売事業
3. 輸出用廃棄自動車共同販売事業

吉沢 正宣 長野県税理士協同組合
長野県松本市中央1丁目23番1号
理事長 吉沢 正宣
設立年月日   昭和41年6月27日
組合員数   891人
主な共同事業   1. 共同購買事業
2. 教育情報事業
3. 福利厚生事業

林 善八郎 信州諏訪味噌工業協同組合
長野県諏訪市諏訪2丁目10番24号
理事長 林 善八郎
設立年月日   昭和22年7月26日
組合員数   23人
主な共同事業   1. 共同購買事業
2. 教育情報事業
3. 福利厚生事業

優秀専従者
畑山 佳久 畑山 佳久
昭和37年2月10日生
長野県中小企業団体中央会
連携支援部情報課 主任

鈴木 幸一 鈴木 幸一
昭和38年10月30日生
長野県中小企業団体中央会
東信事務所 主任


第55回中小企業団体全国大会決議

1 劇的な景気対策、デフレ対策の即時実施

 我が国経済は非常事態。なかでも経済の底支えを担う中小企業は存亡の危機にある。また、多数の失業者を抱えるなど、国民の将来不安は極めて高まっている。
 企業経営者が、そして国民が、不安感を断ち切り、元気になって復活に向けて生き生き活動できるきっかけとなるような、分かりやすく、目に見えて、驚きのあるデフレ不況対策を即時実施すること。
 特に、大きなウェイトを占める個人消費に着目した施策を創案するなど内需の振興に注力すること。
 逆に、不安感を煽り、中小企業や中高年齢者に痛みが集中しかねないような施策等は行わないこと。

2 中小企業対策予算の抜本的拡充

 中小企業に温かく手厚い支援施策を講ずることができるよう中小企業対策予算の抜本的拡充を図ること。
 創業、新技術、新商品、アイデア開発へのさらなる思い切った支援、既存中小企業への助成の拡充、中小企業を組み込んだ我が国らしい対外経済協力の推進、貸し渋り駆け込み寺等金融面・資金面でのさらなるテコ入れを実施すること。

3 中小企業連携組織対策予算の大幅拡充と組合法等の改正
1. 中小企業連携組織対策予算の大幅な拡充及び確実な確保
 創業・経営革新にとって重要な役割を果たしている中小企業連携組織を育成・支援するため、中小企業連携組織対策予算を大幅に拡充すること。
 さらに、都道府県向けの国庫補助負担金の廃止・縮減により、都道府県中央会が行う中小企業連携組織対策事業に支障が生じないよう、都道府県は十分な中小企業連携組織予算並びに都道府県中央会の人件費を確実に確保すること。
2. 前向きな組合運営を支援するための中小企業等協同組合法等の改正
 中小企業組合が経済社会環境の変化に積極的かつ機動的に対応できるようLLCの法制化をも見据えつつ、①員外利用制限の緩和、②准組合員制度の導入、③組合設立要件の緩和、④決算関係書類・議事録等の電子化など、中小企業等協同組合法等を改正すること。

4 中小企業のすみずみまで行き渡る金融対策の実施
1. 公的資金注入行のうち中小企業向け貸出増加計画未達の銀行は、改善のための具体的なプランを策定し、金融庁はその実施による結果を出すよう強力な指導監督をすること。
2. 長期にわたるデフレ不況に苦しむ中小企業を金融面から支援するため、次のようなすみずみまで資金が行き渡る金融支援措置を講ずること。
(1) 政府系中小企業金融機関の機能を将来も維持・強化し、中小企業の金融セーフティネット機能を充実すること。
(2) 中小企業が信用保証協会を利用しやすくするために、信用保証協会の「基金補助金」、中小企業総合事業団の「保険準備基金」「融資基金」を増額し、信用補完制度を拡充すること。
(3) 担保・個人保証に依存した現行の融資慣行を抜本的に見直し、無担保でも融資できる融資慣行の確立、第三者保証の新規借入分からの廃止、経営者個人保証の債務範囲の限定等の金融手法を導入すること。
(4) 中小企業高度化事業については、貸付手続の簡素化、既往借入に対する返済条件の緩和・金利負担の軽減を図ること。

5 消費税の引上げ議論反対、中小企業支援税制の抜本的強化
1. 不安感をあおる消費税率の引上げや引上げ論議は景気回復の足を引っ張りかねないことから、当面行わないこと。
2. 中小企業の事業継続を可能とする事業承継税制を確立すること。
3. 中小企業の事業活動の活性化のための中小企業関係税制の改善・整備を行うこと。
4. 創業・起業、中小企業の新事業展開のための税制措置を確立すること。
5. 中小企業政策とリンクした形で税制上の中小企業の範囲の見直しを行うこと。

6 信用組合に対する支援の充実・強化
 地域・中小企業金融において重要な役割を果たしている信用組合が、一層十全かつ有効にその役割を果たすことができるよう、次の措置を講ずること。
1. 中小企業金融の多様化を進めるため、信用組合の新規設立を認めること。
2. 金融検査マニュアルの運用に当たっては、信用組合の取引先やその経営形態の特性に鑑み、機械的・画一的な運用を排除した弾力的な運用とすること。
3. 地方公共団体の公金預金は、地域住民の生活に直結しており、円滑な政策運営を確保するためにも、預金保険制度とは別途の特別立法等の措置によって、全額保護すること。
4. 起業支援・中小企業再生支援を強化するため、信用組合を活用した地方公共団体の特別融資制度及び信用補完制度を充実すること。

7 中小企業のIT化推進支援策の充実・強化
1. IT化による効率的経営の推進、新たなビジネスチャンスへの挑戦等に対する支援策を抜本的に強化すること。
2. 電子政府・電子自治体の推進に当たっては、中央会電子認証サービスを活用するなど、利用者負担の少ない簡素で効率的なシステムを導入するとともに、普及啓蒙の徹底を図ること。

8 中小企業に配慮した労働政策の実施
1. 中小企業を危機に陥れるコスト負担増反対
 景気が一向に回復しない中で、中小企業は企業の存亡をかけて、競争力強化のためのコスト削減に懸命に取り組んでいるが、その努力ももはや限界を超えている。
 こうした危機的な状況に鑑み、中小企業にとってこれ以上のコスト負担増となる年金保険料の引上げや、厚生年金のパートタイム労働者への安易な適用拡大は行わないこと。加えて、雇用保険財政の圧迫要因となる育児・介護休業制度の拡充も行わないこと。
2. 中小企業に配慮した労働基準法の見直し
(1) 労使紛争の早期解決を目指す「解雇無効判決の場合における金銭解決」の制度化に当たっては、使用者側に過度の手続上の制約を課すことなく柔軟な枠組みとすること。また使用者が支払う金銭の水準は、中小企業の厳しい経営実態と支払能力を十分踏まえたものとすること。
(2) 裁量労働制(みなし労働時間制)については、中小企業が活用できる制度とするため、導入・運営の思い切った規制緩和と受入れ環境の整備を行うこと。さらに、ホワイトカラーについては、ホワイトカラー・イグゼンプション(労働時間の適用除外制)の導入も検討すること。
3. 最低賃金制度の見直し
(1) 産業別最低賃金は、地域別最低賃金が全国的に整備・適用され定着をみている今日、これに屋上屋を架するものであり、早急に廃止すること。
(2) 地域別最低賃金は、厳しい経済状況を反映して、本年度も目安「0円」答申(2年連続据え置き)が出されたことは評価するが、経済の動きとは無関係に毎年改定諮問がなされ、引上げの議論が行われる現在の方式は不合理であるので、経済実態に合った改定システムに改めること。
4. 中小企業への雇用支援を重視した雇用保険三事業の抜本的見直し
(1) 雇用セーフティネットを一層充実するとともに、中小企業の持つ雇用吸収力を最大限活用し、新たな雇用創出を実現するため、創業・起業支援策や労働力確保法等による人材確保策、若年者・高齢者の雇用促進策など、中小企業に重点を置いた支援施策の充実を図ること。
(2) 危機的状況にある雇用保険三事業(全額事業主負担)の財政を早急に立て直すため、事業の一層の合理化・重点化はもとより、取扱機関の統合、コスト削減等による徹底した効率化を図ること。
(3) 雇用関係各種助成金制度は、中小企業にとっては要件が厳しく、申請手続も極めて煩雑で、依然として利用しにくいのが実態であることから、早急に制度の抜本的改善を図ること。
5. パートタイム労働者に対する税制上の配慮
 パートタイム労働者に対する雇用ニーズが年々増大する中で、所得税・住民税の非課税限度額が低額なため、依然としてパートタイム労働者自らによる「就業調整」が行われている。このため、非課税限度額を大幅に引き上げるとともに、社会保険の適用年収基準も引き上げること。

9 若年者に対する産業教育、就業対策の充実・強化
1. 小中高大の各教育段階における産業教育の充実 
 若年者の失業率が上昇し、定職を持たないフリーター・未就職者が急激に増加している現状に鑑み、将来の我が国経済社会を担う若年者のキャリア形成を支援するため、小中高大の各教育段階において、「工場見学」「職場体験」「インターンシップ」「日本版デュアル・システム」(企業実習と組み合わせた教育訓練)など実践的・体験的な産業教育を強化すること。
 とりわけ、中小企業への認識・理解・関心を深める教育、職業観や勤労観を育てる教育、創業・起業意欲を高める教育等を充実・強化すること。
2. 産業教育推進のための基盤整備
 デュアル・システム等の産業教育の推進に当たっては、企業の協力が不可欠である。このため、協力企業の開拓やコーディネート機能を果たす地域支援システムの整備、協力企業の負担軽減措置等の支援策を早急に充実・強化すること。
3. 若年者就業対策の強化
 若年者の就業対策として、「トライアル雇用」や「紹介予定派遣」などの多様な就業形態の中小企業への普及・拡大や創業支援の強化を図るとともに、地域の経済団体等を活用した、キャリアコンサルティングから能力開発・就業体験・職業紹介までの一連のサービスをワンストップで行う枠組み及び拠点の整備を早急に行うこと。
4. 中央会のコーディネート機能・ネットワーク網の施策への活用
 上記施策を推進する際には、全国約5万の中小企業組合と300万の中小企業を擁する我々中小企業団体中央会は、できる限りの協力をしていく所存であり、中央会の有するコーディネート機能や、全国を結ぶ地域中小企業組合・企業ネットワーク網を大いに活用することが重要である。

10 環境・リサイクル対策支援の拡充
1. 国及び地方自治体は、最終処分場を始めとする廃棄物処理場を設置・確保するとともに、中小企業が共同で取り組む廃棄物処理のための設備導入や技術開発等のシステム構築に対して、予算・金融・税制等の各種支援策を講ずること。
2. 国及び地方自治体は、環境法令及び条例の制定や改正に当たっては、審議会等を通じて中小企業者の意見を十分聴取し、経営資源が限られている中小企業が確実に対応できるよう助成措置等について特段の配慮を行うこと。

11 魅力ある中心市街地形成と中小商業・ サービス業の活性化支援強化
1. 魅力ある中心市街地形成 
 適切な都市計画や交通対策がないまま、地域の公共的公益施設、中核的商業施設などの都市機能が市街地から撤退し、郊外に展開していることが中心市街地空洞化の大きな要因であることから、以下の施策を強力に推進すること。
(1) 無秩序な商業の郊外化を抑制し、公共公益施設の中心市街地への計画的配置を推進する。①大店立地法等まちづくり3法の地域の実情に沿った運用確保、②土地利用に関する広域調整ガイドラインの策定、③地域独自のルールとしてのまちづくり条例の制定促進、④道路・公共交通機関・駐車場等交通アクセスの整備支援。
(2) 魅力ある複数個店が入居し、強力な集客力を持つ新しい集積の場(新商業核拠点)の公共投資による形成(新規投資の呼び水)と、魅力ある個店の安価な入居支援。
2. 商店街の活性化と個店及び共同店舗対策
 商店街を活性化させ、魅力ある商業集積とするためには、新しいテナントや新規参入店舗の入居を促進し、来街者を引きつける魅力あるテナントミックスの形成と、街のリニューアルが必要であることから、以下の施策を強力に推進すること。
(1) 商店街振興組合・TMO・街づくり会社等を介した土地・建物の取得・賃貸により、意欲ある商業者の入居を促進し、個店の新陳代謝をすすめるシステムの整備と、大型店等の商店街活動への協力確保。
(2) アーケード、ストリートファニチャー、ロードヒーティング等商店街が設置した公共性の高い共同施設の保守・修繕・解体・撤去に対する補助の創設と、商店街退店者が負担していた高度化資金返済分についての返済特例措置の創設。
(3) 魅力ある個店づくりのため、①地域商業の若手リーダーを育成する「商人塾」への助成制度の創設、②シニアアドバイザーの派遣などの支援策の拡充。
(4) 商店街空き店舗対策を拡充し、共同店舗に対する空きスペースの入居費(賃借料)や改装費等の助成制度の創設。
3. 中小卸売業・中小サービス業の振興
(1) 流通構造の激変の中で、中小卸売業の中核的機能の強化が急務となっている。このため、広域化、品揃え形成能力の強化(共同によるフルライン化、商品開発能力の強化)、物流機能の強化(共同による効率的物流システムの構築)、情報システム化などの経営革新を総合的に支援すること。
(2) 国民生活に密着した生活支援や企業への事業支援等の多様なサービスの提供を通じて、新たな市場と雇用の場を創造する中小サービス業を振興するため、情報、人材育成、マーケティング、資金等の総合的な支援策を一層充実すること。

12 不当廉売の防止、下請取引の適正化等公正取引の強力な推進
1. 不当廉売等の防止
 大規模小売業者相互の価格競争が激化する中で、中小企業者に不利益を与える不当廉売、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法や消費者の適正な選択を妨げる不当表示等の行為が激しさを増しており、公正取引委員会の排除勧告・警告・注意等は、多くの中小企業者が実際の商取引で直面している実態のほんの一部に過ぎない。
 こうした違法行為に対し、国は、監視・監督機能を一段と強化するとともに、厳正・迅速に対処すること。
2. 下請取引の適正化
 親企業の優越的地位の濫用等による下請代金の支払遅延、下請代金の減額、受領拒否などの違反行為は依然として後を断たない。
 このため、先の改正で下請代金支払遅延等防止法の規制対象範囲が拡大されたこと等から、親企業を監視し、違反企業を取り締まる検査官(現行約60人)を大幅に増やし、運用・監視体制を一層強化すること。
 また、建設業における下請取引の適正化についても、実効ある行政指導を行うこと。

13 中小企業並びに官公需適格組合への官公需発注の増大実現
1. 「平成15年度中小企業者に関する国等の契約の方針」に示された中小企業者向け発注目標額を上回る契約実績を確保すること。
2. 適正価格での受注確保のため、国等の発注にも最低価格制限制度を導入すること。
3. 組合随意契約制度を「工事施工、物件製造、役務提供」にも適用すること。
4. 各発注機関は、分離・分割発注の推進に努めること。
5. 官公需適格組合等の官公需共同受注事業を積極的に活用すること。
6. 地方公共団体は、国と同様の官公需施策を講ずること。
7. 政府調達手続の電子化の推進に当たっては、中小企業者に対して特段の配慮を講ずること。


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