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活発化する事業協同組合。その事業と今後の重点事業 事業協同組合が行っている事業は極めて多岐にわたっている(図1)。組合がめざす具体的な目的に合わせ、自由に事業を定めることができる上、事業の相乗効果を狙って、いくつかの事業が相互に連携して行われているケースも多いためだと思われる。 現在行っているかどうかを問わず、事業協同組合が今後重点としたいと考える事業は「情報の収集・提供」が22.7%でトップ。以下、「共同購買・仕入れ」(20.4%)、「教育・訓練、人材養成」(17.5%)、「共同宣伝・販売促進・イベント」(13.8%)、「市場調査・販路開拓」(11.7%)と続く。 「共同購買・仕入れ」「共同受注」「共同販売」といった共同経済事業は、現在の実施事業と今後の重点事業のどちらでも高い順位にあり、今後とも重要な位置を占めていくと考えられる。 一方、主要事業の最近の動向(活発度)について、点数化して比較を行った。ポイントは「以前よりかなり活発」を100、「以前よりやや活発」を75、「以前と変わらない」を50、「以前よりやや不活発」を25、「以前よりかなり不活発」を0とした(図2)。 それによると、「コンピュータの共同利用」(61.1P)を最高に、以下、「製品・技術等の研究開発」「情報の収集・提供」(各57.7P)、「市場調査・販路開拓」(57.3P)、「教育・訓練、人材養成」(57.0P)、「共同宣伝・販売促進・イベント」(55.8P)、「組合員事業に関する調査研究」(54.5P)の順。主要事業のほとんどが50ポイント以上をあげ、事業協同組合は活発化の傾向があることを示している。
インターネット活用など、情報力強化への高い意欲 事業協同組合が事業を行うにあたっては、物的共同施設を必要とする場合も多い。調査した事業協同組合全体の62.9%が何らかの物的共同施設を設置しているが、事業の目的や活動の多様性に応じて、その内容は極めて多種多様である。 全体の38.7%と多くの組合に設置されているのが「会館・事務所」。これに関連して「集会場・研修施設」も約1割ある。 情報機器については、「ファックス」が34.8%、「パソコン」が29.4%、「ファックス、パソコン以外のオフコン等情報機器」が5.5%。ITが急速に進展している現在の状況を考えると、情報機器の設置率は必ずしも高いとはいえない。しかも、「パソコン」および「ファックス、パソコン以外のオフコン等情報機器」を設置している組合(合計34.9%)でも、インターネットに「既に接続している」のはその内の37.7%(2350組合)にすぎない。もっとも「接続したいと思っている」組合は4割にのぼり、インターネット活用への意欲の高さはみられる。 インターネットに「既に接続している」組合の組織形態をみると、「卸商業団地」(64.5%)、「下請組合」(56.7%)、「異業種連携組合」(52.7%)などが高い。 パソコンまたはその他情報機器を活用して、今現在実施している事業では、「組合の事務処理(経理処理、組合員管理)」が61.7%と突出。「ホームページによる外部への情報発信」(16.0%)、「共同計算・組合員の経理処理事務代行」(12.7%)、「情報ネットワークによる情報交換」(12.6%)、「受発注システム」(9.7%)と続く。 情報機器を活用して今後実施する予定の事業では、「情報ネットワークによる情報交換」(36.8%)、「ホームページによる外部への情報発信」(36.4%)が高い。インターネットを活用し、情報力の強化を図ろうという意欲がうかがえる(図3)。
環境変化への対応めざし、情報ネットワーク化を志向 中小企業を取り巻く環境変化に対し、事業協同組合としてどんな対応策をとっているのだろうか(図4)。 その内容で最も多かったのが、「委員会、部会の強化」(34.5%)で、「組合の目的・事業の見直し」(27.4%)が次ぐ。組合運営に機動性と柔軟性を持たせ、組合員の新たなニーズに対応していこうという姿勢がうかがえる。 また「組合内部の情報ネットワーク化」(18.1%)、「各種共同事業への情報機器の導入」(17.6%)、「環境・リサイクル・エネルギー・安全問題への対応」(16.2%)なども比較的多くの組合で行われている。 一方、今後どう対応していくかについては、「組合の目的・事業の見直し」が38.2%と最も多く、「組合内部の情報ネットワーク化」(32.8%)、「組合外部との情報ネットワーク化」(31.8%)と続く(図5)。 今後の対応は、現在のそれとはかなり異なり、組合内外との情報ネットワーク化を非常に重要視していることが分かる。 「組織運営体制面」における今後の重点項目としては、半数近くが「組合員の意識改革」をあげ(46.4%)、「既存事業の拡大強化」(32.9%)、「組合員との連携強化」(31.8%)も多い。 興味深いのは、組織の形態別に取り組み事項が異なっていること。商店街組合では「組合員の意識改革」が、卸商業団地組合では「既存事業の拡大強化」と「組合員との連携強化」が、連鎖型組合では「組合員の増加」が、そして異業種連携組合では「産学官交流」が、最も多かった。 また「事業面」における今後の重点項目としては、「組合員事業の活性化策の策定」(43.0%)をトップに、「共同購入等共同経済事業」「販売促進事業」(それぞれ29.9%)、「教育情報事業」(27.7%)が続く。「コンピュータを利用したネットワークの構築」(19.3%)、「環境・安全問題等新たな社会要請への対応」(13.3%)もかなり高い比率を示し、時代のニーズを敏感にとらえていることがうかがえる(図6)。 「共同施設の設置・利用」(9.7%)は、卸商業団地組合では28.1%、流通団地組合では24.4%と、高度化関連組合ではポイントが非常に高い。当該組合にとって施設もしくは設備の設置が、今後とも重点事業となっていることが分かる。また「研究開発事業」は、異業種連携組合の四割以上が今後の重点項目に取り上げていることも注目される。
発展段階に応じて異なる組織運営体制および事業 組合の組織運営体制および事業は、組合の発展段階においても異なる傾向にある。 「組合員数の増減状況」と、直近年度の「税引き前利益の状況」を軸として、組合の発展段階を4段階に分けたのが図7である。 29.8%の組合は「安定期」(組合員数に変化ないか減少し、黒字の組合)にあり、特に流通団地組合(81.1%)、福祉専門型組合(78.2%)に顕著。業種別では「運輸・通信業」(68.1%)、「一般機器・電機・輸送・精密機器」(68.0%)が多い。 組合員数別にみると、人数が多くなるほど「成長期」(組合員数は増加し、黒字の組合)の割合が増え、「衰退期」(組合員数は減少し、赤字の組合)の割合が減る傾向にある。 組織運営体制面における重点事項で多いのは、「安定期」または「衰退期」の組合では「組合員の意識改革」(それぞれ48.8%、46.8%)、「成長期」の組合では「既存事業の拡大強化」(43.1%)、「準備期」の組合では「組合員の増加」(44.6%)となっている(図7)。 事業面における重点事項では、「安定期」「準備期」「衰退期」の組合では「組合員事業の活性化策の策定」(それぞれ44.6%、45.5%、44.7%)が多い。それに対して「成長期」の組合は、「共同購入等共同経済事業」がトップ(42.9%)で、「教育情報事業」を重点事項とする割合も高い(38.7%)のが注目される。
大きな広がりをみせる、多角的連携組織の導入と活用 経済構造や市場ニーズの変化に対応する、新たな生産活動や販売方法、サービスなどが求められている。そのため中小企業では、自社にない専門的な知識や技術を、他企業や専門家などの外部経営資源から導入する例が増加。特に技術や情報といったソフトな経営資源については、目的に応じた特定のメンバーで構成する「緩やかな連携組織」を活用して、導入する動きが広がっている。 経営資源に乏しい中小企業がお互いに連携し、それぞれの得意分野を持ち寄り、新たな価値を生み出していくためには組織化が効果的。とりわけ、緩やかな連携組織としての任意グループは多額の資金も不要で、柔軟かつ機動的な対応が可能な組織として活用されている。 「緩やかな連携」は、その活動目的や態様によって、次の3つのタイプに分類することができる。 ①「人的交流型」 多数のメンバーで構成され、定期的な会合を持ち、経営上のテーマ等に関して相互の情報交換などをめざす。 ②「研究開発型」 比較的絞られたメンバーで、新技術、新製品の開発をめざす。 ③「市場化型」 新商品のマーケティングをめざす。 これら3タイプの中にも、それぞれの形態で完結するものと、連携事業の発展に応じて「人的交流型」から「研究開発型」、さらには「市場化型」へとステップアップしていくものがある。また、任意グループとして「緩やかさ」のメリットを生かそうとするケースがある一方で、グループ事業の展開に応じて、組合や共同出資会社等に法人化するケースもみられる。 都道府県中央会では平成7年度から中小企業の多角的連携組織(任意グループ、共同出資会社、公益法人を含む)に対する支援事業を実施したが、平成10年度までの3年間に把握した組織数は約16,000グループ。多角的連携組織の導入と活用の動きは大きな広がりをみせている。 活力ある中小企業を創造する力強い「前向きの自助組織」として、連携組織は今後、さらに大きな役割が期待される。 |
■組合運営のアンケート分析から | 南信州精密事業協同組合(伊那市) |
昨年からわが国経済は回復局面を迎えたといわれているが、中小企業の経営環境は依然厳しく、底這いの感で推移している。しかし、こうした厳しい状況の中にあっても、未来に向かって意欲的なチャレンジが求められている。 そこで、地域中小製造業組合の組合員企業の奮闘されている状況を概観し、「中小企業の生き残り」と「組合事業の見直し」戦略策定の一助になればと、伊那市の南信州精密事業協同組合のご協力により、実態調査を実施した。 〈調査要項〉 1. 調査対象 南信州精密事業協同組合加盟企業 2. 調査時期 平成15年8月~9月中旬 3. 調査方法 郵送等によるアンケート調査。一部、ヒヤリング調査
(南信州精密事業協同組合のプロフィール)
(組合の抱える課題) 賦課金収入・施設利用料収入・共済手数料収入・助成金収入を財源とし、研修施設管理運営・人材確保推進・職場環境改善事業・福利厚生事業を実施して組合を運営している。①研修センターが組合所有となり維持管理のための負担増加、②助成事業が最終年度となった、③組合事業への組合員の参加意識が低下、などが原因となり、組合運営費負担の財政面と組合の必要性、存在意義が問われることとなった。
(南信州精密事業協同組合のプロフィール)
(組合員が組合に期待するもの) 組合員の32.7%が「情報交換の場」、12.7%が「後継者・幹部従業員育成研修」、9.1%が「組合員同士の交流・連携」のメリットを期待している。あとの約四割は「組合内外との情報ネットワーク化推進」「受注の共同化」「他組合との交流・連携」「組合所有施設の活用」と、求めているメリットの多様化もうかがわせる。上位3項目を柱に、多様化する組合員ニーズにいかに対応するかが課題だ(図7)。 (まとめ) 組合員が組合に求めるものは多岐にわたるが、将来に向け自信のない企業も自信のある企業も、それぞれ強い企業になるため必要な組合事業(組合員間交流、そのための施設利用等)を望んでいる。 差別化した技術・能力を持ち、コアコンピタンス経営で活路を見いだそうとしている地域中小企業によるネットワーク化・グループ化の新しい動きが全国で始まっている。 例えば、京都試作ネットもその1つ。こうした緩やかな連携といわれるグループ化を取り組み活路を見いだすことが将来の活力ある中小企業に求められているのである。 図8の交流連携イメージのように、組合は組合員の交流連携するための場作りの役割を果たすべく事業運営するよう取り組みを始めており、中央会としても一層の支援をすることが重要である(図8)。
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