特集1 2003年版中小企業白書の概要
―再生と「企業家社会」への道― 第2回

 2003年版中小企業白書が発表されました。中小企業基本法に基づいて、政府が毎年中小企業の動向を分析し国会に提出しているもので、本年版が40回目。
 同白書は第1部「最近の中小企業をめぐる動向」、第2部「日本経済の再生と中小企業の役割」に分かれ、具体的事例や追跡調査等を交えて2002年の日本の中小企業の動向を分析。さらに平成14年度の中小企業施策と、平成15年度において国が講じようとする中小企業施策についても紹介し、解説を加えています。
 前回8月号では、厳しい中小企業の経済環境や金融環境を分析した第1部と第2部の第1章をご紹介しました。
 今月号では、第2部第2章から終章までと、平成15年度において講じようとしている中小企業施策についてレポートします。

第2部 日本経済の再生と中小企業の役割

第2部 日本経済の再生と中小企業の役割

第2章 参入の活性化と円滑な退出、再生・再起
 高度成長期の活発な新規企業の参入と退出の動きは、雇用創出とイノベーションの源泉となった。開業が停滞している今、その原因および解決の方策と、廃業・倒産からの再生・再起の実態について考察する。

 わが国の開業率は1980年代に入って低下し、今も依然、低迷している。
 しかし業種別の開業率について見ると、「電気通信附帯サービス業」「ソフトウェア業」「老人福祉事業」の開業率が極めて高い(図2-1)。その多くが情報化や高齢化、リサイクル問題への社会的関心の高まりといった経済社会の流れに対応している。
 創業希望者を年齢別に見ると20代、30代で高いが、それ以外は減少。他方、創業実現率は若年層ほど小さく、若年層における希望と現実の間に大きなギャップが見られる。
 創業希望者の創業に対する障害としては、資金面、マーケティング面、技術・専門知識の問題があるが、若年層で特に問題となるのは資金と技術・専門知識の不足。こうしたことから2002年1月、国民生活金融公庫において「新創業融資制度」が創設された。
 一方、長引く経済停滞や戦後すぐに開業した世代の高齢化等の中で、廃業や倒産といった市場からの退出が近年、高水準で推移している。経営者の約3割は自分の代での廃業を考えているが、業績不振の他、経営を承継する人材がいないこともその理由のひとつとなっている。
 中小企業経営者は企業を自分と一心同体と考える傾向が強いといわれる。しかし実際には、事業売却・事業譲渡や、その受け入れを考える経営者が多数存在する(図2-2)。経営者が事業継続の意志をなくした場合の円滑な退出の方法として、事業譲渡は有効な手段のひとつといえよう。
 経営の危機を感じた企業経営者が倒産を回避するための行動として、営業活動の強化やコストダウン等、事業の収益体質の改善を意図した対策をとるケースと、新たな借入金の導入や経営者の自己資金の投入など、一時的な資金難解決のための対策をとるケースがある。倒産に至る企業は後者に走る傾向が強い。
 倒産企業の約32%は事業を継続しているが、事業を継続しやすいのは倒産前に事業拡大傾向にあり、売上高が伸びている企業となっている(図2-3)。
 倒産後の事業の資金繰りについては、親・兄弟や友人・知人以外には頼れない状況にあり、金融機関等の弾力的対応が今後の政策的課題である。倒産企業経営者の約43%が破産しているが、そのうち約14%は再起業を実現している。その場合でも、資金調達は通常の創業時に比べても親族・友人・知人に多く依存。制度的金融の充実が今後の課題となっている(図2-4)。


図2-1●開業率が高い上位5業種(年平均、1999年~2001年)
POINT ~情報化や人工の高齢化と関係している業種で高い開業率となっている。~

図2-1●開業率が高い上位5業種(年平均、1999年~2001年)

資料:総務省「事業所・企業統計調査」再編加工
(注) 1. 開業率=年平均開業事業所数/1999年調査時点の事業所数×100(%)
  2. 2001年調査時点で事業所が10,000以上の業種のみ集計した。


図2-2●事業譲渡引受意志の有無について
POINT ~他社の事業を条件によっては引き受けても良いとする経営者が約半数にのぼる。~

図2-2●事業譲渡引受意志の有無について

資料: (財)中小企業総合研究機構「事業承継に関する実態調査」(2002年)
(注) アンケート回答者全員を対象に集計。


図2-3●倒産後も事業を継続している企業の実績
POINT ~売上げが増加傾向の企業は、倒産後も事業を継続している割合が高い。~

図2-3●倒産後も事業を継続している企業の実績

資料: (社)中小企業研究所「事業再挑戦に関する実態調査」(2002年)


図2-4●創業時と再起業時の資金調達方法
POINT ~初めての創業に比べても、再起業時は私的ネットワークへの依存が強まる。~

図2-4●創業時と再起業時の資金調達方法

資料: 中小企業庁「創業環境に関する実態調査」(2001年12月)(社)中小企業研究所「事業再挑戦に関する実態調査」(2002年)
(注) 複数回答のため合計は100を超える。
再起業時については、再起業を実現した倒産企業経営者を対象に集計。

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第3章 金融環境変化の中での中小企業の資金調達
 「土地神話」を前提とした、従来の中小企業金融システムは今日、急速に変化しつつある。従来型金融システムが変化した後に、中小企業が円滑な資金調達を達成するための方法を探る。

 中小企業の多くは資金調達を銀行などからの借入金に依存している(図3-1)。ところが規模が小さい企業ほど、希望通りの資金を貸してもらいにくく、金利も大企業に比べて高い。
 しかし、それは積極的な企業情報の開示、メインバンクとの長期継続的な取引とメインバンク以外の銀行との取引、そして財務情報以外の情報(ソフトインフォメーション)の伝達といった取り組みにより克服可能である。
 自主的に資料を提出している企業は貸してもらいやすく、借入金利も低い。メインバンクと長期的かつ緊密な取引関係を築き、自主的かつ積極的な情報開示を心掛けること、金利知識を身につけることも重要なポイント。一方、セーフティネットとして、地域金融機関、政府系金融機関などと取引しておくのも賢明である(図3-2)。
 2002年の1年間で約4分の1の企業が短期借入金利の引上げ要請を受けている。金利引上げ要請を受けた企業の割合を見てみると、メインバンクが大手銀行で、資料の自主提出がない企業が最も多い。ただし、金利引上げ要請を受けたとしても、1~2割の企業はその要請を断ることに成功している。
 2002年度は金融機関の破綻が続発したが、合併を経験したメインバンクの貸出態度は厳しくなり、そうでないメインバンクよりも貸してもらいにくいケースが多い。メインバンクが破綻した場合には、特に小規模企業にマイナスの影響を与える(図3-3)。
 図3-3に示すように、経常赤字や債務超過でも経営努力によって数年後には黒字化を達成したり、債務超過を解消する企業は多い。
 それだけに金融機関に求められるのは、財務に現れない企業の能力を見抜く審査能力を向上させることである。銀行は中小企業向け融資において、財務や保全などの外形的基準を重視し、事業の強みや弱み、成長性などをあまり見ないことが多い(図3-4)。多様な中小企業に対応した資金供給の円滑化を図るためには、このような財務に現れない部分を見逃さない「目利き」としての能力の強化が必要である。金融機関の硬直的な貸出態度は、中小企業という将来有望な顧客を失うことにもつながり、金融機関にとっても損失といえる。
 企業金融に占める銀行などの割合は約8割。残りは保険・年金基金、ノンバンクなどが利用されている。
 中小企業庁も中小企業の資金調達の多様化に取り組み、平成13年12月から売掛債権担保融資保証制度を実施し、平成15年2月からは政府系金融機関を活用した売掛債権の証券化への支援を行っている。このような新しい資金調達手段の活用も重要である。


図3-1●資金調達構造(2001年度・従業員規模別・非一次産業)
POINT ~規模が大きい企業ほど借入金は少なく自己資本が多い。~

図3-1●資金調達構造(2001年度・従業員規模別・非一次産業)

資料:財務省「法人企業統計年報」(2001年度)再編加工
(注) 1. 各項目の構成比率は分母を負債+資本+割引手形残高として算出。
  2. 営業債務(企業間信用)は支払手形+買掛金、その他は割引手形残高及び引当金等の残高。


図3-2●メインバンクから貸してもらえなかった後の借入先(メインバンクの業態別)
POINT ~地銀・第二地銀や政府系中小企業金融機関からの借入れが多い。~

図3-2●メインバンクから貸してもらえなかった後の借入先(メインバンクの業態別)

資料: 中小企業庁「金融環境実態調査」(2002年11月)


図3-3●1998年度と2001年度の財務状況
POINT ~経常赤字先から正常先へ好転する企業も多い。~

図3-3●1998年度と2001年度の財務状況

資料: 中小企業信用リスク情報データベース(1988年度、2001年度及びデフォルト有無のデータがある251,490社を対象とした。)
(注)
1. 正常先とは、経営赤字でもなく、債務超過でもない企業を指す。
2. デフォルトとは、原則3ヶ月超の延滞先、金融機関自己査定による実質破綻先・破綻先、信用保証協会が代位弁済を実行した先を指す。


図3-4●中小企業向け貸出の際に特に重視する点
POINT ~財務や信用保証協会保証を重視する銀行が多い。~

図3-4●中小企業向け貸出の際に特に重視する点

資料: (社)中小企業研究所「中小企業向け貸出の実態調査」(2003年1月)
(注) 複数回答のため、合計は100を超える。

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第4章 中小企業のネットワークによる経営革新
 変化が激しい経済情勢にあって、中小企業はネットワークの形成が重要になっている。異業種連携や産学官連携制度、産業集積など、中小企業にとって有効なネットワークの構築の条件を探る。

 わが国において、下請け企業が全中小製造業に占める割合は1998年調査時点において47.9%を占める。垂直連携ネットワークとしての下請け取引関係は、製造業の発展、競争力の源泉として非常に大きく貢献してきた。
 製造業に限らず、あらゆる業種において、下請け取引のメリットは仕事量の安定や営業活動が不要という企業間の垂直連携のメリットから、取引リスクのない取引、技術指導の恩恵へと徐々に変化している。その大きな理由の一つが、経済のグローバリゼーションの動きであり、「空洞化」の影響である。
 親事業者においては、下請け企業との取引実績は依然として重視するものの、その一方で、品質やコスト、納期を重視する動きが強まっている。このような状況の中で、下請け企業自身の意識を見てみると、高付加価値製品の開発、製品のコストダウンなどへの取り組みを重視しており、こうしたことへの対策から高い効果が得られている(図4-1)。また、親事業者が海外進出をしたとしても、高付加価値製品の開発は自社の売上高にプラスの影響をもたらすことから、下請け企業自身の開発能力保有も重要となっている。
 垂直連携ネットワークに変質が生じつつある現在、中小企業が他の機関と水平連携ネットワークを構築することは、経営革新のための重要な選択肢である。企業間の横の連携ともいえる事業連携活動には多様な目的があるが、共同研究開発や共同仕入等は企業のパフォーマンスを向上させる(図4-2)。また、異業種交流活動に参加している企業は事業連携活動に取り組むことが多く、その意味で異業種交流活動は事業連携活動の苗床にもなっている(図4-3)。
 一方、図4-4に見られるように、産学官連携は新しい知識の吸収、新しい技術の確立、新しい人的つながりなどの点で効果が大きい。規模別に見ると、規模の小さい企業の方が産学連携の効果がより出やすいが、時間がかかるなどの理由により取り組みは遅れている。それを解消するため、TLO(技術移転機関)による技術移転への期待が寄せられている。もっとも、技術移転等の専門人材(ライセンス・アソシエイト)をはじめ、TLOスタッフの不足は大きな課題である。
 また近年、商店街の低迷・衰退が様々なところで問題化。そのため空き店舗の活用(内部資源活用型)、新規開業者支援による商店街内における事業環境整備(事業環境整備型)、商店街店舗の組合参加率を高めること、既存店舗が店舗革新を行いやすい環境整備など、商店街活性化のために様々な取り組みが試みられている。
 地方中心都市の商店街では、空き店舗優遇施策活用が新規参入者の新規出店の大きな理由となっている。内部資源活用型と事業環境整備型の取り組みをあわせて実施することによって、商店街の新陳代謝をより促進すべきである。


図4-1●親事業者の海外進出に対応した受注側中小企業の戦略の効果(製造業・中小企業)
POINT ~製品の低コスト化・高付加価値製品開発への取り組み等に高い効果が見られる。~

図4-1●親事業者の海外進出に対応した受注側中小企業の戦略の効果(製造業・中小企業)

資料: (財)全国下請企業振興協会「産業の空洞化に伴う下請企業への影響に関する実態調査」(2002年)再編加工


図4-2●事業連携活動の効果(製造、卸、小売業・中小企業)
POINT ~事業連携活動は企業のパフォーマンスを向上させる。~

図4-2●事業連携活動の効果(製造、卸、小売業・中小企業)

資料: 中小企業庁「中小企業連携活動実態調査」(2002年11月)
(注) 売上高増加企業とは、1997年度~2001年度における売上高の伸びがプラスの企業、営業利益率改善企業とは、同期間における売上高営業利益率が改善(2001年度で赤字の企業でもマイナス幅が縮小していれば改善に含む)している企業を指す。


図4-3●異業種交流活動への参加と事業連携活動取り組み割合(製造、卸、小売業・中小企業)
POINT ~異業種交流活動は、事業連携活動の苗床となる。~

図4-3●異業種交流活動への参加と事業連携活動取り組み割合(製造、卸、小売業・中小企業)

資料: 中小企業庁「中小企業連携活動実態調査」(2002年11月)


図4-4●産学連携に取り組んだことによる効果(製造業・中小企業)
POINT ~製品の商業化よりも、知識の吸収という点で産学連携の効果は大きい。~

図4-4●産学連携に取り組んだことによる効果(製造業・中小企業)

資料: 中小企業庁「経営戦略に関する実態調査」(2002年11月)

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終 章 再生と「企業家社会」への道

 以上で第40回目に当たる「中小企業白書」の分析は終わる。この中で我々が見てきたのは、この40年間の経済の質的、量的な大変化の中で中小企業が、多品種少量分野を中心に逞しく活動してきたその姿である。こうした中小企業の営みは、結果として日本経済の基盤を支える役割を果たしてきた。
 そしてこれから失われた10年を超えて日本経済が再生を果たすためにも中小企業が「強み」を発揮することが必要となるのである。
 町工場に行くとしばしば耳にするのは中小企業者の自らの仕事に対する高い誇りである。ある工場主はいう。「この技術は大田区でうちしかできません」
 またある居酒屋の女主人からは次のようなことを聞いた。「うちのこの料理は出汁に工夫があるんです。だから大阪一おいしいんです」
 このような企業家一人ひとりの技術的工夫やちょっとした知恵は、それ自体、ささやかなものである。しかしながら、こうしたものの積み重ねが、日本にとって必要なのである。
 元来、ダイナミズムに富む存在である中小企業はわずかの期間で急変身を遂げる力を持っている。しかしながら、それはすべての中小企業が自然に成し遂げることができるものではない。本業における地道な経営努力を行うことが、生き残り、成長する道であり、こうした中小企業が多数、活躍する経済―「企業家社会」が日本経済再生につながる。
 この「企業家社会」は、多くの者に事業を通じた自己実現の喜びを与えるものである。というのは、多くの者が事業から自己実現を達成するためには、多くの価値観を認める企業形態が必要であるが、そこに勤める者の価値観がとかく画一的になりがちな、大規模組織が中心となった社会ではそうした条件が成立しにくい。それに対して、中小企業は多様性を容認するものであるからである。
 昨年、『世界がもし100人の村だったら』という書籍がベストセラーに名を連ねた。その村がひとつの企業体から成り立っていたらどうであろうか。1人の社長と99人の部下、すべては一律の会社の価値観で律せられる。それに対してその村が100人の自営業者から成り立っていたら、100の価値観に基づく仕事が行われる。こうして多数の人々が仕事を通じた自己実現を図ることができるようになる。
 こうしたことを考えると、活力と意欲に溢れた中小企業が活躍する「企業家社会」が仕事を通じた自己実現への近道なのであるということができる。
 一方で、もちろん「企業化社会」の主役である「まちの企業家」の仕事には常に多くの「重い」決断に迫られる局面が存在する。中小企業者は常に1人で会社の存亡に係る重大な決断をしなければならない。その決断の背後には中小企業の従業者、さらには、多くの場合、面識のあるその家族の顔がある。大企業の場合には、たった1人で会社の浮沈に係る決断を行うことは少ない。
 その意味で10人の従業員を抱える中小企業の経営者の決断は、100人の部下を持つ大企業の重役の決断より重いともいえる。
 さらに中小企業者は50歳代、60歳代になっても技術の進歩と共にCAD、CAM等の新技術と奮闘しなければならない。
 このように重い決断に耐え、新技術を常に吸収しなければならない中小企業者こそが日本の経済再生の真の担い手なのである。
 最後に、本白書では「倒産も破産も終わりではない」ことを述べた。日本経済も現在は極めて厳しい状況にあるが、決してこれは終わりの始まりではない。財政赤字、貿易赤字の「双子の赤字」に悩まされた70年代のアメリカは90年代以降、見事な復活を遂げている。それを見るとわが国にも再生の途は十分に存在する。悲観論に陥らず、経済構造改革を着実に進め、日本経済の再生を実現していかなければならない。

平成15年度において講じようとする中小企業施策

 平成15年度の中小企業政策においては、以下の4点に重点をおきつつ、総合的かつ積極的に施策を展開する。
(1) 金融セーフティネットの充実-不良債権処理の進展等構造改革を推進するにあたり、やる気と能力のある中小企業の連鎖的破綻を回避する。
(2) 中小企業の再生支援-「中小企業再生支援協議会」を全都道府県に展開していくとともに、中小企業の多様性、地域性といった特性を考慮したきめ細やかに対応。
(3) やる気と能力のある中小企業の育成と支援-個人の創業や中小企業の新事業展開への挑戦に対して、新たに中小ベンチャー企業と優秀な企業OB等とのマッチング事業、新市場創出見本市の開催、わが国製造業の基盤的・戦略的分野の技術開発への集中的な支援などを開始するほか、資金面、人材面、技術面等強力かつ多面的な支援を行う。
(4) 中心市街地・商店街の活性化-中心市街地の大型空き店舗対策支援など、各地域のニーズに応じたきめ細かな支援を行う。

●施策の具体例
1. 「産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律」に基づく、中小企業の再生支援
 経営環境が悪化しつつある中小企業の事業再生のため、中小企業再生支援協議会が各種施策を総動員できる体制を強化。地域の実情に応じた、きめ細かな中小企業の再生への取り組みを支援する。
 また、中小企業等投資事業有限責任組合の事業に、経営が悪化している企業の金銭債権取得等の特例業務を追加。再生支援ファンドとしての活用を可能にするとともに、中小企業総合事業団の業務の特例として、当該組合に対する出資業務を追加した。これらにより、中小企業の再生への取り組みについて資金面からの支援を促進する。

2. 創業・経営革新への法的支援
●中小企業創造活動促進法
 中小企業創造活動促進法に基づいて都道府県知事の認定を受けた創業や研究開発・事業化等を行う中小企業者を対象に、以下の支援を行う。
1) 技術開発に対する補助金(地域活性化創造技術研究開発事業)
2) 信用保証協会の債務保証制度(新事業開拓保険等)
3) ベンチャー財団からの直接金融支援制度
4) 政府系金融機関による設備資金・長期運転資金の低利融資制度等

●経営革新支援法に基づく支援
 中小企業経営革新支援法に基づき、中小企業の自助努力を基本とする経営革新支援及び経営基盤強化を支援。
(1) 経営革新の支援
国または都道府県より承認された「経営革新計画」に従って行う事業に対し、以下の支援を行う。
1) 新商品または新役務の開発、販路開拓、人材育成等に対する補助金
2) 政府系金融機関による低利融資制度
3) 税制上の特例措置
4) 新規・成長雇用分野雇用創出特別奨励金
5) 「雇用対策特例法」による新規雇い入れ労働者の賃金等の助成
(2) 経営基盤強化の支援
 経済的環境の著しい変化等で業況が悪化している業種(特定業種)が対象。主務大臣が承認した「経営基盤強化計画」に従って行う事業について、機械等割増償却制度等の税制上の特例措置、政府系金融機関による設備運転資金への低利融資等を講じる。

3. 起業家育成施設(ビジネス・インキュベータ)の整備
起業家育成施設の整備に対する支援
 地域における新事業創出や雇用の拡大のため、新事業創出のポテンシャルの高い地域において起業家育成施設(ビジネス・インキュベータ)等の整備を行う自治体や第3セクターを支援。
地域振興整備公団による起業家育成施設の整備
 新事業創出促進法に基づく高度研究機能集積地区または高度技術産業集積地域において、地域振興整備公団は起業家育成施設(ビジネス・インキュベータ)の整備を行う。
地域振興整備公団による大学連携型起業家育成施設の整備
 大学の技術シーズや知見を活用した、大学発ベンチャーの起業や中小企業の新事業展開を促進するため、地域振興整備公団は大学の隣接地またはキャンパス内において大学連携型の起業家育成施設(ビジネス・インキュベータ)の整備を行う。
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