短期連載 新技術・新分野への取組み |
長引く不況の中、長野県経済は製造業を中心に、受注・生産の落ち込みや設備投資の減少など厳しい状況が続いています。そんな中にあって、自ら創造性を発揮して新たな技術開発に取り組み、経営の向上をめざす中小企業のために、長野県では幅広い支援制度を実施しています。 支援制度は、補助金・助成金などの資金支援、委託開発制度、人材育成、産官学による共同研究、専門家による指導・助言、産業財産権の活用、製品のPRおよび販路開拓、法的認定による優遇措置など。それぞれのニーズに応じて最適な制度を選択し、上手に活用することによって、中小企業の創意ある向上発展が可能となります。 ここでは「新技術・新分野への取組み」として、各種支援制度を活用し、経営向上を図っている県内中小企業の実例、および活用支援制度の内容等を紹介。中小企業が新たな経営革新への挑戦をめざす上で、貴重なヒントがここにあります。
業績を伸ばす中小企業。その共通点は、技術力に裏打ちされた提案型営業力。 (株)セルコは、情報機器、産業用機械、自動車、医療機器など、さまざまな部品に使われるコイルに特化した研究開発メーカー。 昭和45年に創業し、セイコーエプソン、米国ウェスタンデジタル社、韓国サムソン社などに製品を納入し、その技術力は高く評価されてきました。ところが製品ライフサイクルの終焉や、より安価な海外生産体制への移行によって、各社と事実上取引がストップ。平成10年には倒産の危機を迎えます。 その時に実兄から引き継いで社長に就任したのが現社長、小林延行氏。従業員をそれまでの3分の1の20名にする大リストラを慣行し、廃業へのソフトランディングを模索していました。 そんな中、研修を受けた日本創造研究所で情報交換を重ねるうち、製造業空洞化の時代に国内オンリーで業績を伸ばしている中小企業の経営者仲間に、ある共通点を見いだしました。それは技術力に裏打ちされた提案型営業力でした。 「それまで30年間下請けで、営業は一度もしたことがなかった。しかし、もう待っていてはダメだとはっきり認識しました。翌日から取引先を積極的に回って営業活動を開始。県の展示会などにも積極的に出品し、広告活動などPRも積極的に行うようになりました。試作・開発、少量多品種にターゲットを絞り、相手先の研究開発部門に営業をかけています。他でできないものをやる。それしか日本でやり続ける方法はないんです」と、小林社長は力を込めます。 「開発型企業をめざすなら必須」アドバイスで創造法の認定取得 その一方で、マイクロストーン(株)の白鳥社長との出会いから、超磁歪振動子を用いた応用研究を、長野県工業試験場、信州大学、マイクロストーン(株)との共同で着手。平成12年6月には「HDD用スタンピングアームモールドの研究開発」により、中小企業創造活動促進法(創造法)の認定を受けました。「開発型企業をめざすなら、絶対に創造法などの認定を受けた方がいい、と白鳥社長にアドバイスされたのがきっかけです」。 「HDD用スタンピングアームモールドの研究開発」とは―。HDDの重要構成部品である多板型アクチュエーターアームは従来、アルミを切削加工したEブロックとコイルをモールドして作られているが、スタンピングアームを独自方式によって組み込み、新規開発する高度なモールド方式によってコイルと一体化することにより、低コスト・高品質な生産を実現する、というもの。 同社は創造法の認定を足がかりに、中小企業が行う新製品、新技術の開発等に要する経費の一部を県が補助する中小企業技術開発費等補助金を利用。600万円をスタンピングアームのモールド金型とコイルの製造に投資しました。「すでにアメリカとシンガポールで特許取得済みです。業界はとても保守的なので、スタンピング方式はまだ厳しい状況にありますが、これは間違いなく安く作れる方式。これからの主流は確実にスタンピング化に向かうはずです」と、小林社長は期待しています。 同社はさらに、ジョイントレスコイル、エッジワイズ多層巻コイルの研究開発によって中小企業経営革新支援法も取得。これらは今後、飛躍的に伸びる分野と期待されている分野であり、同社では経営革新法にもとづく低利融資により、量産化をめざした設備投資を計画中です。 「中小零細企業は営業を知らない。優秀な技術を持っているにも関わらず倒産する企業が多いのは、自分の会社を売り込むことができないから。だから私は2年半前、これからは営業力だと痛感したんです。収益を積極的に研究開発に向け、良い物を作る会社だけが生き残っていく時代。その動向を的確につかみ、我々はターゲットを定めた営業をしていくべきだと思っています」。
中小企業創造活動促進法(創造法) 中小企業創造活動促進法(創造法)は、中小企業者(新規創業者を含む)が行う製品開発、新サービス、ソフトウェア等の技術に関する研究開発および、その成果の事業化を通じた創造的活動を支援することを目的としています。 所定の書式によって作成した研究開発等事業計画書によって長野県(地方事務所商工担当課)に申請し、内容の調査および審査を受けます。「著しい新規性があるか」「新たな事業分野の開拓につながるか」などの認定基準をクリアすると、知事の認定を受けることができます。 創造法の認定を受けると、以下のような支援策を利用することができます。 1. 中小企業技術開発費等補助金 2. 債務保証制度の拡充 3. 税制面の優遇措置 4. 投資育成会社の投資制度の充実 5. リース事業者等のリース・割賦制度の利用の促進 6. 政府系金融機関の低利融資制度の充実 7. 新規・成長分野雇用奨励金 8. 小規模設備資金制度の充実 但し、認定を受けたからといっても、これら支援策の適用が保証されるわけではありません。それぞれの申請先によって別途審査が行われ、支援策の利用が決定されます。 中小企業技術開発費等補助金 《支援の内容》 中小企業が行う新製品・新技術の開発等に要する経費の一部を補助し、中小企業の技術開発を支援します。 《利用できる人》 県内に主たる事務所を有する中小企業者 《条件など》 1. 補助対象となる技術開発等
2. 補助対象となる経費
3. 補助率:補助対象経費の2/3以内 4. 補助金額
5. 受付期間:例年1月中旬~2月中旬 《問い合わせ先》 県商工部産業技術課研究管理係 〒380-8570 長野市大字南長野字幅下692-2 TEL 026-235-7194 《相談・受付窓口》 地方事務所の商工課(商工建築課) |