2003年版中小白書が発表されました。
平沼赳夫経済産業相は4月25日の閣議において「2003年版中小企業白書」を提出し、了承を得ました。同白書は、中小企業基本法に基づいて、政府が毎年中小企業の動向を分析し国会に提出しているもので、本年版が40回目となります。
2003年版の白書は2部構成をとり、第1部では「最近の中小企業を巡る動向」として、厳しい中小企業の経済環境や金融環境を分析。第2部では「日本経済の再生と中小企業の役割」として、(1)日本経済を長期に支えてきた中小企業の「強み」、
(2)創業、退出、再生・再起が容易な経済社会の構築への課題、(3)財務データだけでは測れない企業の質を見る金融実現の方途、(4)経営革新をめざした中小企業ネットワー
ク構築のための課題、などを具体的事例や追跡調査等を交えて分析していま す。
本誌では、今月号と来月号の2回にわたって、「2003年版中小企業白書」のポイントについてレポートいたします。 |
2002年の中小企業の業況について、輸出に牽引された製造業と内需に力強さを欠く非製造業の格差が拡大した。製造業全体では前回の景気の谷であった1998年12月よりもいったん回復しているのに対し、中小製造業ではその水準を下回り、大企業と中小企業の格差が拡大している。
中小企業を取り巻く金融環境では、資金繰りは長期的に悪化。2002年に一時景況判断DIは持ち直したが、貸出態度DIは悪化したまま回復が見られない。企業の5割近くが借入残高を削減する方針で、借入申し込みを拒絶された企業はその後の借入方針を慎重にすることが、その傾向を助長。金融機関の借入申し込み拒絶がさらに借入申し込み減少を招く関係が見られる。
2002年の中小企業の倒産件数は歴代6位の18,000件台と高水準。特に長期の景気低迷により不況型倒産の割合が増加し、2002年は過去最大となった。
(第2章以降は次号で紹介します)
第1章 我が国経済における中小企業の地位と経済再生に果たす役割
高度成長、2度のオイルショック、円高などの激変にも関わらず、付加価値、従業者数で見た中小企業製造業の地位は、長期的にきわめて安定的に推移し、わが国経済の発展に寄与してきた。特に多品種少量、需要変動の激しい分野では、中小企業が大企業以上に活躍。量産ものは大企業、多品種少量ものは中小企業という分業を形成するとともに、新商品開発を通じて成長を実現してきた。
また成長する中小企業をみると、経営面では(1)同族企業から非同族企業への脱皮等による外部人材の活用、(2)自らの対面する市場にあった水準の技術の洗練化等が重要であることが分かる。
成長過程での新商品開発等を通じて、多くのイノベーションを世の中に提供してきた中小企業。その「強み」を生かし、イノベーションの創出、雇用の創造等を通じて日本経済再生の担い手となる存在として、今後ともその活躍が期待されている。
第1節
長期的に見た中小企業の日本経済における地位とその背景としての中小企業の「強み」
中小製造業の地位(付加価値額シェア、従業者シェア)の変遷
POINT |
~中小製造業の付加価値額シェアは長期的にきわめて安定的に推移~ |
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資料:経済産業省「工業統計表(産業編)」、総務省「事業所・企業統計調査」
(注) |
1. |
付加価値額シェアについては従業者規模4~299人事業所を中小企業とした。 |
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2. |
従業員シェアについては従業者規模1~299人事業所を中小企業とした。 |
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従業者規模別に見た取組生産品の特徴(製造業)
POINT |
~従業者規模が小さいほど多品種少量生産を中心とする取り組みの割合が大きい~ |
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資料: |
(財)商工総合研究所・商工組合中央金庫「第6回中小機械・金属工場の構造変化に関する実態調査」(2000年) |
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従業者規模別にみた各企業が取り組む製品・サービスのライフサイクル(製造業)
POINT |
~従業者規模が小さいほど製品・サービスのライフサイクルは短い~ |
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資料: |
中小企業庁「経営戦略に関する実態調査」(2002年11月) |
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中小企業の主たる競合先(製造業)
POINT |
~中小企業は大企業と異なる分野で活躍~ |
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資料: |
中小企業庁「経営戦略に関する実態調査」(2002年11月) |
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第2節
中小企業のダイナミズム
新製品開発に取り組むことによる従業者数増加率への効果(1998~2002年)(製造業)
POINT |
~新製品開発に取り組んだ企業は従業者数増加率が高い~ |
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資料:中小企業庁「経営戦略に関する実態調査」(2002年11月)
(注) |
各従業者規模層毎に新製品開発へ取組んだ企業の各従業者数増加率平均値と各従業者規模層全体における従業者数増加率平均値との差をみている。 |
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第3節
経済構造の変化を主導する中小企業の内部構造と経営戦略
同族企業と非同族企業の従業者数増加率(製造、卸売、小売業)
POINT |
~同族企業に対し非同族企業が成長上まわる~ |
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資料:経済産業省「企業活動基本調査」(2000年) 再編加工、中小企業「経済戦略に関する実態調査」 |
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製品・サービスの先進度と総資産営業利益率(製造、卸売、小売業)
POINT |
~企業収益から見れば、先進度は必ずしも高度である必要はない~ |
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資料:中小企業庁「経済戦略に関する実態調査」(2002年11月)
(注) |
調査では、主力製品・サービスの先進性について、「1.世界にとって新しい、2.日本にとって新しい、3.ターゲットとする市場にとって新しい、4.自社にとって新しい」の4つの中から該当すると思う選択肢を一つ選んでもらった。 |
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第4節 日本経済再生と中小企業
中小企業は成長過程での新商品開発等を通じて、多くのイノベーションを世の中に提供している。現在普及している例として、シュレッダー、魚群探知機、総合警備業、カラオケマシン、シャープペンなどがあげられる。
第5節 日本経済再生に向けた中小企業をめぐる課題
1. |
開業率が低水準で推移し、倒産件数が高止まりする中で、創業が盛んに行われ、退出においても再生・再起が容易な経済社会を構築すること。 |
2. |
資金供給における「土地担保主義」の崩壊のもと、変化しつつある金融システムにおいて中小企業が円滑に資金を調達できる仕組みを構築すること。 |
3. |
経済のグローバル化を背景とした競争激化の中、引き続き地道な経営革新を推進していくこと。 |
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