信州の企業人-チャレンジャーたちの系譜-

“~ 「中小企業の総合支援」を テーマに掲げ、積極的な活動を展開する。 ~”


望月宗敬さん
望月総合経営グループ
代表 望月 宗敬さん



いま企業とは変化対応業である


 いま長引く不況とデフレの中で、地方の中小企業は厳しい経済状況のもとでの経営を余儀なくされている。
 開業以来、税理士として地域の中小企業を見続けてきた望月宗敬さんは、「今こそ革新にチャレンジする時」と呼び掛けている。同氏が代表を務める望月総合経営グループは、松本市に本拠を置き、税理士法人望月会計を軸とする7社及び関連企業二法人で構成。地域中小企業の経営を取り巻くあらゆる課題に総合的なサポートとサービスを提供し続けている。
 変化の流れに対応できた者だけが勝ち残る、とも言われる現在、経営者に求められるのは、企業の現状をしっかりと見すえ、取り巻く環境を的確に把握しながら、経営革新へと明確な目標を設定していくこと。
 そう語る同グループ代表の望月宗敬さんにうかがった。


「中小企業の総合支援」とは

 「会計事務所の枠をはるかに超えた経営支援のプロフェッショナル集団」として、高い評価を受ける望月総合経営グループ。いわゆる財務会計にとどまらず、各種手続き・計算業務から、情報、マネジメントシステムへの支援、さらに人材育成等に至るまで、広範なサポート体制を構築して、トータルな経営支援を推進していることが特徴だ。
 こうしたグループのあり方について、代表の望月宗敬さんは次のように語る。
「私たちは、企業経営の助言者として、どれだけ的確なアドバイスやサービスが提供できるかを考えてきました。経営者というのは、孤独なものなのです。重要なことほど、1人で判断し決断しなければならない。そうした時に頼られる相談相手であることが本来の会計事務所の役割なのではないかと思ったのです。」
 ただ相談相手になるのではなく、一緒に考え、「より良い答え」を見いだす。そして企業経営者がこれを実践していけるよう、自らも具体的なサービスとサポートの機能を持って支援する。それが、地域に根ざした会計事務所の果たしていくべき役割だという発想である。
「『企業経営は環境適応業』だとよく言われますね。それは私たち会計事務所も同様です。お客様が課題として抱えているものがあるのなら、それを解決できる組織に変わっていかなければならない。当事務所を法人化したのもその一環です。現代のような激変する環境のもとで、個人の能力にのみ頼ったスタイルでは高度化するお客様ニーズにとても対応できないと判断したのです。」


27歳での開業

  そうした望月さんが、この世界に足をふみだすきっかけとなったのは高校3年の時のこと。「母が病を得て、目指していた大学進学を断念しなければならなかった」という。
 そこで縁あって就職したのが会計事務所でした。高校を出たばかりの望月さんにとって、会計事務所の仕事は驚きと発見の連続。関心を深めるとともに、ぜひ自分も資格を取得したいと考えるようになったという。
 仕事の傍ら、松商学園短期大学の2部で学び、さらに専門の税法研究所にも通い、税理士資格の取得に必要な科目を1つずつクリアした。
「昼は仕事、夜は受験勉強、休日も実家の農作業をやっていましたから本当にめまぐるしい日々でした。」
 やがて資格を取得。さらに独立し望月税務会計事務所を開業したのは昭和46年4月のこと。望月さんは27歳になっていた。


TKC全国会との出会い

 事務所が軌道に乗るようになって、望月さんは次第にひとつの疑問を持つようになっていた。
 地域の中小企業からは、税法の知識や対策ばかりが求められる。しかし、それで良いのか。将来にわたって本当にお客様に役立つ仕事ができているのか。
「景気のいい時代だったこともあるでしょうが、『きちんと正しい決算をして、経営内容を理解することがいちばん大切』と話してもなかなか解ってくれる人は少なかったのです。」
 そんな時に出会ったのが、職業会計人の集団であるTKC全国会。その代表者である飯塚毅さん(現・同会名誉会長)の言葉に接した時、「自分がやろうとしてきたことはこれだ」と思ったという。
 TKC全国会は「自利利他(自利とは利他をいう)」を基本理念として、納税義務者の信頼に応え、「適正な会計処理」により作成された計算書類に基づいて、「租税正義」の実現を目指すことを活動の目的としている。そのためには、対象である企業が適切な経営計画を持ち、的確に事業状況を把握して経営を行えるよう、専門家の立場からアドバイスと支援を行っていこうという考えである。
「これからの会計人は、企業経営が解らないとつとまらない。そう痛感しました。同時に、自分が良いと考えたことなら、たとえ無駄と思われる努力でも、くり返し続けることの大切さを知らされました。」
 その思いが、いま同グループの掲げている理念「担雪埋井」に示されているわけだ。


事に及んで、躊躇はしない

 望月さんは、以降、お客様である中小企業経営者の相談に積極的に応える活動を行うとともに、新たな事業・サービスを次々に興してきた。
 人材派遣会社の設立。地域に根ざした若い企業人材を育成する専門学校の開校。中小企業の業務OA化や各種マネジメントシステムの導入を支援するコンサルティング専門会社の設立。
 さらに近年では、高齢化と少子化の時代の流れの中で必要性が高まっている事業承継や譲渡等の課題に対応する経営コンサルティング会社を設立するなど、一層その取り組みを強めている。
 そうした中では、「一税理士がなぜそこまでやるのか」と心配する周囲の声も少なくなかった。しかし、望月さんはいう。
「地域の中小企業経営者が、本当に困っている、悩んでいることがある。その時にどう応えるかだと思うのです。アドバイスだけでは済まない。それならば自分でやってしまおうと決断したのですね。」
 もちろん、新たな事業を立ち上げるためには、知識もノウハウも資金も必要である。資金調達には苦労したというが、知識ノウハウについてはそれほど苦労はなかったという。なぜだろうか。
「全国に、さまざまな人のネットワークができていたことが大きいですね。今までに培った人脈を通じていろいろな情報が伝わってくるんです。困った時には、向こうからアイデアがやってくるという感じでしょうか。私としては、そういう全国の先進事例やアイデアをしっかり学べばよかったのです。」
 必要だと思えば、すぐに現地へ足を運んだ。見学し、話を聞き、情報を収集して、ノウハウを吸収するようにした。その豊富なノウハウを事業の立ち上げに活用していったのである。
「立ち上げる段階は、自分が主体です。責任がありますから。しかし一旦軌道に乗ったら、後はそれぞれの担当責任者を決めて、そちらに委ねていくわけです。」
 事に及んで、躊躇はしない。しかし、事例には徹底的に学ぶという望月さんだ。


活力のある地域づくり、街づくりへ

 望月さんは、還暦を迎えたことを1つの区切りとして、新たなチャレンジを始めている。地域づくり、街づくりに役立つ取り組みへの挑戦である。
「例えば今、社会的なインフラを形成していく手法としてPFIなどに注目が集っています。全国でも幾つもの事業モデルが動き始めています。しかし、私たちのような地方では、なかなかこうした取り組みの受け皿となるところがありません。ですから地域の企業や団体、ボランティアなど、さまざまなネットワークを結び合わせて進めていきたいと考えているのです。」
 企業経営を取り巻く環境はつねに変化するもの。その変化もますますダイナミックになっている。
「変化には変化で対応するしかないと思います。自ら革新することです。しかしそのためには、客観的な指標としてのデータに強くなければ。数字できちんと状況を把握し、変化をとらえて対応する。それがこれからの経営者に不可欠なことです。」
 確かに先が見えにくい時代だが、自ら変化していくことで対応できるものであり、そのために「経営者はもっと勉強しなければ」と望月さんは呼び掛ける。
「景気がいい頃は、皆さん目が輝いていました。でもいま、県下の中小企業経営者にお会いすると、残念だが、目が輝いていないのです。」
 だからこそ、勉強をして欲しい。自分なりの企業の目的、そのための計画、そして具体的な目標を持って欲しいと願っている。



プロフィール
望月宗敬さん
代表
望月宗敬
(もちづきむねのり)
中央会に期待すること

 地域経済の活力源は、創業のエネルギーです。新たに起業しようとする人、新規事業にチャレンジしようとする人がいれば、その地域は活性化されます。ですから創業支援をさらに強化して欲しい。
 小さくとも元気な企業がもっとでてくるように、サポートをしていただきたいと思います。

経歴 昭和18年松本市生まれ。
高校卒業後、会計事務所に勤務しながら、松商学園短期大学及び日本大学の税法研究所で学び税理士資格を取得。昭和46年4月、望月会計事務所を開業した。
近年は、会計事務所を税理士法人とするとともに、(株)船井財産コンサルタンツ長野、(株)ビジネス総研の2社を設立し、グループに加えた。現在、税理士法人望月会計を中心として「望月総合経営グループ」を形成し、財務会計にとらわれず、中小企業のあらゆる相談に対応できるよう「中小企業の総合支援」をテーマに活動をしている。
趣味 ゴルフと端唄が趣味。3年前から始めた端唄では、この春も発表会に出演したほど。
家族構成 母、妻、長男



企業ガイド
望月総合経営
所在地 長野県松本市城西2-5-12
TEL.(0263)32-4737
望月総合経営グループ
■税理士法人 望月会計
■株式会社 ビジネスブレーン
■株式会社 ビジネス総研
■望月社会保険労務士・行政書士事務所
■有限会社 ビジネスサービス
■株式会社 船井財産コンサルタンツ長野
■株式会社 地域総研
営業内容 税務・会計業務、人材派遣業、社会保険・行政手続き業務、給与計算・保険業務、中小企業向けコンサルティング業務
関連企業 ●学校法人 未来学舎
 国際コンピュータービジネス専門学校
 国際福祉専門学校
所属団体 ●長野県中小企業経友会事業協同組合

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