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未だ先行きの不透明な日本経済の中、長野県の地域経済においてもまた、消費者ニーズの多様化、価格競争の激化、さらに加速する情報化の波、生産拠点の多国籍化とそれにともなう産業の空洞化さまざまな問題が生じつつある昨今です。このような状況にともない開業率と廃業率の逆転現象が起こり、経済の新陳代謝の停滞と諸産業自体の活力の低下が深刻な問題として懸念されています。 このような、ともすれば閉塞的な状況の中、経済の活性化や新たな雇用の創出を図る上で、創業支援・ベンチャー企業の支援を行うことは重要なキーポイントになってきているとの認識を、当会では痛感しています。また、それだけにとどまらず長野県産業の大多数を占める中小企業自らが、積極的な経営革新に取り組むこと、そしてこうした取り組みを支援することもまた、当会の役割の一つです。 こうした背景の中、長野県中小企業団体中央会では去る平成15年3月6日、「創業・企業経営刷新プラザ」を開催しました。 同プラザでは内容を「創業セミナー」「企業経営刷新セミナー」の二セミナーに分け、それぞれゲストによる基調講演、産・学・官による、熱を帯びたパネルディスカッションが開催されました。また今回改正となる組合法についてもそのねらい、メリットなどが説明され、同時に会場となったホテルメトロポリタン長野では企業PR・展示・相談会も開催されました。 本特集では、このセミナーの目玉とも言える基調講演の講演録と組合法改正のポイントを掲載します。
当社のSYVECという社名は、創業当時の「信友工業」からSYを付け、Vはバリュー、Eはエンジニアリング、Cはカスタマーで、「お客様に技術を使って価値のあるものを提供しよう」という意味になります。金型を造り部品のスタンピング加工をしている会社です。アメリカやシンガポールの精密金型トップメーカーや、台湾の工業技術院に塑性加工の分野で、技術供与をしています。そして昨年、カナダに会社を作り、現在、そこで製造をするための準備をしています。 我々のような部品メーカーが、今どのような状態に置かれているかということを、しっかり理解しておかないと新しい戦略は立てられません。当然、海外生産へのシフトは必要条件となっています。よって国内でコストを低減する技術が重要なポイントとなるのです。何故お客様は海外へ出て行くのか?それは大きなマーケットが海外にあり、そのマーケットがある地域で生産することが大企業の方針ですであるからです。さらに低賃金であることも魅力のひとつでしょう。特に中国では日本の20~30分の1くらいの人件費ですので、これは非常に大きなメリットになります。そしてドルに対する為替のリスクの問題も不可避です。米ドルとカナダドルを比較すると36%ほどカナダドルの方が安いので、アメリカで生産するよりも、隣のカナダで生産した方が35%コストダウンできるのです。 現地調達するために大企業だけでなく、部品メーカーも海外へと流れています。市場のニーズを満たすためにどの様な戦略を組むかというと、グローバル経営+海外生産です。そして国内で残るためには「VT戦略」を踏まえて、仲間に勝たなくてはなりません。VT戦略とは、バリューテクノロジーの意味で、「価値のある技術」ということです。価値というのは2つ必要で、お客様に対する価値と、自社に対する価値です。お客様に対する価値で今一番大事なのは、「コストダウンの提案」です。中国コストに勝たなくてはならないからです。しかし品質を落としてはいけません。そして自社に対する価値はもちろん高付加価値で、儲からなくてはなりません。いかにコストダウンを提案しながら高付加価値のある技術開発をしていくかというのが、国内で生き残るための条件だと思います。私達の「バリューテクノロジー研究所」には、当社社員59名の中の13名が、スタッフとして配属されています。やるからには皆が一丸となって向かっていく仕組みが大切です。お客様に喜ばれる提案が、社会に一番貢献することとなるでしょう。さらに、私たち技術者は、知恵と技能、そしてロマンが必要だというビジョンを持っています。 21世紀、我々の分野でターゲットとなるものは、超精密、超微細、高機能、環境分野で、軽薄短小といった製品です。自動車、医療機器、燃料電池、携帯電話等に使用される部品の開発技術に、需要があると思います。当然、環境が変わることによって商品も変わります。そういったものをいかに見つけ出し、ターゲットと定め、開発していくかということが、物造りでは大切だと思います。開発の期間はますます短くなっていきます。新車の開発はこれまで3年くらい掛けてやっていたのですが、今は13ヶ月です。となると、使用される部品はもっと早く立ち上げなければならず、6ヶ月間で開発しなければタイミングを逃してしまいます。そして開発されたものはベンチマークに残していかなければなりません。ベンチマークとは、同業他社に対して差別化された技術を言い、それがコストダウンに繋がるバリューテクノロジーでなくてはなりません。つまり、勝つ技術です。物を造ったら外部へ情報提供をし、それを次の商品展開として残していかなくてはなりません。当社は、客先へ出向いてプライベートなフェアを開き、パネルや製品のサンプルを展示し、パソコンの動画を用いて説明をしたり、VA技術の相談できるスタッフを揃えて、その場で提案するといったマーケティング戦略を取っています。スピードの時代ですから、そこまでしないと相手がのってきません。企業へ出向いての講演も非常に多いです。そうすることにより、開発者との繋がりができ、その会社が何年後にはどういう商品を開発しているかという商品の流れも酌み取りやすくなります。
日本マクドナルド創業者の藤田 田氏は、著書「ユダヤの商法」で、ユダヤ人が新事業を起こす時は必ず2つのテーマを考えると述べています。そのテーマとは、「女」と「口」を狙え、というもので、ユダヤの商法の基本であると言います。戦後、藤田氏は、これから日本は西欧社会と同化していくだろうから英語を学ぶ必要があると直感し、進駐軍の軍人と仲良くなりました。そしてヤミ屋のような仕事から始めて、宝石の商売でユダヤ人と付き合うようになり、彼は銀座のユダヤ人と呼ばれるようになりました。そのうち宝石の商売にもの足りなさを感じ、アメリカへ旅行をした時にマクドナルドが非常に繁栄していることを知りました。彼はマクドナルドの本社へ乗り込んで直接交渉して、日本にマクドナルドを作りました。その時、彼は「日本人の髪を金髪にしてやる」と言いました。草食動物だから黒い日本人の髪を、肉食にして金髪にしてやる、という、そのくらいの意気込みだったのです。そうして外食産業No.1の地位を築きます。最後の数年は、凄まじい成長ぶりでした。「ほかの外食産業を全部潰してやる。勝つのはマクドナルドだけだ」という号令の下に、大膨張政策を取りました。そして、このデフレ不況の中、店の拡張によって全体的な規模の利益を追求しながら値段を下げて、競争に勝ちました。ところが、最後の最後に、大変な苦境に喘ぐことになりました。事業というのは、いい気になってやり過ぎると必ず反動が出てきます。企業の寿命は30年と言われますが、マクドナルドも40年続きませんでした。企業というのはいつも危機に瀕しています。成長する一番華やかな時に、危険な足音が近付いているのだということを痛感します。 今の日本経済は、「失われた10年」と言われてきましたが、既に10年は過ぎています。そして相変わらず下り坂を続けていて、どこかで立ち直るきっかけがあるという気が全くしません。これだけ不景気が続いたのだから、もう景気はよくなると言う人もいます。しかし、これからの日本経済はまだ悪くなります。経済が立ち直らないのは小泉首相がいつまでたっても何の手も打たないからだ、と商社マンは言います。しかし、財政投融資をいくらやっても国民の税金を投入するだけで、むしろ後世にツケが残るだけです。日本は、きちんと経済の基盤を作り直して再起を果たさなくては、先行きはもっと苦しくなります。 世界の銀行が新しく競争力を持って日本の金融市場に乗り込んできているこの時代、地銀はやがてなくなるでしょう。考えてみてください。日本の経済を支えている自動車メーカーは何社あるでしょう。トヨタ、ニッサン、ホンダ、東洋工業、スズキ、ダイハツ等の5~6社でしょう。世界に、日本は自動車を売っているというのに、それしかないのです。日本人は毎日、東京ドーム2杯半くらいのビールを飲むと言われていますが、ビール会社も4社しかありません。こういうことを考えると、日本の金融機関の競争はいかに過当競争であるかということがよく分かります。銀行は自分達の資金繰りが悪くなったからといって、順調にいっている企業から、返せ返せと「貸し剥がし」をしています。日本の企業に対する資金供給のパイプはますます細り、借金をして企業経営をしている方にはまだ厳しい状況が続きます。そんな中で、新しい企業・産業の創設は求められています。しかし日本は今、開業率より廃業率の方が多い。戦後のデフレで活躍した人は退き、デフレを誰も経験していないのです。経営者には、事業を清算するというのも非常に重要な選択でしょう。そして、儲からない事業はどんどん止めていく。「選択と集中」をし、その中で選ばれた一番強い部分だけを育成していかなければなりません。何を作るか、何を売るかというのは問題ではありません。どう作るか、どう売るかというのが非常に重要な時代になっているのです。お客は一人ひとり需要が違うのだ、ということに気付いて、コツコツやってきたトヨタが今、強みを発揮しています。大量生産の姿勢を崩さず、潰れる寸前だったニッサンは、今の新しい社長が来て、不要なもの・無駄なものは全部切り捨て、ニッサンをあっという間に立て直しました。そして新しい車作りに投資している。この不況下に利益を高めているキヤノンも、製品は70%が新製品だといいます。キヤノンも4~5年くらい前に、大量に作ってコストを下げるという考え方から、売れるだけ作る、客が欲しがるものを次々と生み出していくというやり方に変えたのです。 今、大卒でも職がないという時代が、目に見えています。私は「新事業創造論」という授業で、学生達に「もう就職先はない。自分達で何か起こしてやっていくしかないのだ」と言っています。現在、日本の経済において発展して株価の高い順調な企業は、商業とサービス業に集中しています。特に、介護・環境に絡む会社の株は高く、成長性があります。最初から大企業を起こすのは難しいです。小さく産んで、大きく育てることが大事です。そして、金融機関に頼らない。日本の企業は借金をし過ぎています。身の丈に合わない事業はしてはいけません。事業を起こすときに一番大事なのは、「志」です。ただ志すだけではなく、高い志を持って、社会に貢献することを考えましょう。 (文責 長野県中小企業団体中央会)
組合員となることができる方々の範囲が拡大されました。 (組合員資格の拡大) これまで、組合員は個人の方々だけに限定されていましたが、株式会社などの法人や任意グループを加入させることができるようになりました。 これにより、自己資本の充実などを通じて企業体としての機能の強化を図ることが容易になりました(ただし、個人以外の組合員数は全組合員の4分の1以下、個人以外の組合員全体の出資比率は出資総額の2分の1未満であることが必要です。)。 事業に従事しなければならない組合員の割合が緩和されました。 (従事比率の緩和) 事業に従事しなければならない組合員の比率が、組合員全体の「3分の2以上」から「2分の1以上」に緩和されました。 これにより、組合の事業活動に賛同しながらも、様々な理由で事業に従事することができない方々を組合員へ勧誘しやすくなりました。 従業員全体に占める組合員の割合が緩和されました。 (組合員比率の緩和) これまで、従業員(事業に従事する者)全体の「2分の1以上」は組合員でなければなりませんでしたが、これが「3分の1以上」に緩和されました。 これにより、事業規模の拡大に対応して、雇用する従業員を増やすことが容易になりました。 配当することができる剰余金の範囲が拡大されました。 (出資配当の範囲の拡大) 「年1割以内」の剰余金の配当の範囲が、「年2割以内」に拡大されました。 事業に従事した分量に応じて行う配当(従事分量配当)ができることは今までどおりです。 |