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富士通協力工場からの脱皮 アサップ18協同組合の組合員17社は、かねてより富士通長野工場の協力会の構成メンバーとして、親会社と協力してきたが平成5年~6年頃、急激な円高により親会社富士通は、海外へ生産シフトする意向を表明していた。 協力工場17社も、これからは親会社への依存関係でなく、自立しなければならないことを意識していたので、新しい道を模索しようということになった。 当初、この協力会のグループを、株式会社にするか、事業協同組合にするか迷っていたが、結論としては、協力会のメンバーが相互扶助の精神に基づいて活動しようということで事業協同組合を設立することになった。 なお、設立にあたっては、親会社である富士通長野工場の協力・支援も充分に得ていこうということで17社+1社=18社となった。 アサップの意味は、as soon as possible(出来るだけ早く)の頭文字を取ったものだが、組合員の相互扶助精神で、高付加価値製品を、出来るだけ早く、スピーディに開発しようという当組合の理念を表す名称となった。 ロケット博士の糸川英夫先生を顧問にする。 当組合の設立準備期間中から、かの有名なロケット博士の糸川英夫先生を顧問に迎え、設立総会の時は、記念講演として糸川先生のお話を聞くことになった。 糸川先生は、丸子町の音楽村に居を構えていたので、現理事長の笠原一洋さんとは、おつきあいがあり、そんな関係で、笠原さんより、当組合の顧問ご就任をお願いしたところ、快くお引き受けいただいた。 先生からは、どんな小さなことでも好奇心をもって取り組めば、おもわぬ発見があると、自らロケット開発の時の心境などをお話しされ各組合員が勇気をいただいたことを覚えている。 また先生は非常に気さくな人で、組合員全員をご自宅に招待され、再び先生の講義を聞いた後奥様の手づくりのおにぎりをふるまわれた。先生がお亡くなりになった今では、鮮明な記憶として思い出される。 組合員の創意から生まれた研究開発 当組合では設立当初より、研究開発プロジェクトA、研究開発プロジェクトB、研究開発プロジェクトC、研究開発プロジェクトDの4班に分かれ、それぞれ組合員企業の経営者、技術開発担当者が、研究開発テーマの選定から、その研究開発の実施まで一貫して進めてきた。 その結果として次のものが開発されたが、まだまだ研究開発は、これからも続いていく。 1. 年間スケジュールタイマー(写真1) 一年にわたって、日間・週間計画をもとに、自動的に、自動販売機から工場設備、商業設備農業設備等の電源を、こまめにスイッチon・offする器具。これによって、節電と経費節減、人力節減が可能になる。 2. 傘除滴装置「カンブレラ」(写真2) わずかな時間で傘の水滴を除去する。雨の日の濡れた傘の水滴を除去するので、もう傘のポリぶくろもいらないし、大切な商品を濡らすこともないし、客同士のトラブルもなくなる。 3. 紙おむつ炭化処理機(写真3) 熱分解による「紙おむつ炭化処理機」で、生ゴミ、紙類の分別も不要であるし、処理量は大きく、低騒音、、高温処理のため、病院等での医療廃棄物も処理可能、炭化物は燃料としてリサイクルできる。クリーンな排ガスで、臭気は、高温燃焼によって消滅する。なお、この「紙おむつ炭化処理機」の開発は、中小企業創造法の認定を受けており、長野県技術開発費補助事業の対象にもなっている。
これからの課題 上記3つの新製品の開発を、アサップ18協同組合で行い、製造は、特定の組合員企業一社、販売は各組合員企業で行うという開発・製造・販売分離によるシステムも、当組合独特のもので、画期的であると思われる。 今後さらに新製品の開発を行う中で、この開発・製造・販売の分離システムをさらに発展させていっていただきたい。 いま当組合で一番問題と思われることは、組合員に温度差があるということである。 具体的にいうと、理事長である笠原一洋氏の笠原工業(株)と、専務理事である手塚伸氏のコトヒラ工業(株)の2社が、当組合に、かなり入れ込みをしてくれているが、将来は、他の組合員企業も、もっと当組合にかかわってもらいたいと思っている。 今、日本の企業を取り巻く諸情勢は、大きく変ってきており、従来のような親企業と下請企業の関係が崩れつつあり、代って自立化した企業が生まれてくる過渡期であるが、しからばその自立化をどのように進めたらよいか試行錯誤の時期でもあり、組合員企業としても苦慮されていると思われるので、温度差があるのはある程度いたしかたないが、これからは異業種連携による生き残りが、明るい将来を約束する1本の道であることは間違いないので、現在のこの道をさらに充実・発展させていってもらうことを切に希望する。 (取材・構成/中央会東信事務所 朝間庸介)
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