特集2 低空飛行時代に高成長
いま目覚ましい飛躍を 続ける成長分野とは何か。

 長引く不況の中で、依然として消費マインドは冷え切ったままだ。内閣府が発表した平成14年11月の月例経済報告でも、「景気は、引き続き持ち直しに向けた動きがみられるものの、そのテンポはさらに緩やかになっている」とまとめている。個人消費は横ばい、企業の設備投資は低迷、さらに輸出等も弱含みという状況の中、長野県下の中小企業にとっても厳しい状況が続いている。
 しかしこうした全体動向と裏腹に、目覚ましい高成長を続けている事業分野も少なくない。とりわけ介護・福祉や環境、人材・教育、一部の情報サービス関連などで成長がみられ、注目を集めている。
 国や県などでも、こうした今後成長が見込まれる分野・新規分野の育成により、経済の活性化と雇用の創出を図る観点から、これまでの産業政策を超えた支援や相談機能などの充実を図ろうとしている。
 そこで、雇用・能力開発機構長野センターでは、第一回長野県成長分野等雇用創出啓発懇談会を開き、成長分野の一つである医療・福祉関連分野の中でも特に介護サービス等の新たな成長産業分野の県下における現況と見通し、雇用を拡大していくための当面する課題などについて語っていただいた。これに伴い実施されたアンケート調査の結果とともにご報告する。

(資料提供:雇用・能力開発機構長野センター様)

第一回長野県成長分野等雇用創出啓発懇談会

A氏 福祉に対する社会の関心の度合いの変化に感無量
 
20年前を思い起こせば福祉施設はいわゆる3K職場といわれ、数も少なかった。(自分自身の)施設はできるまでに5年かかった。現在はやる気・資金・土地・スタッフに恵まれれば2年で社会福祉施設ができるようになった。
意識も大きく変化
 サービスをする側とされる側が対等の立場になった。利用者の権利意識も強くなった。(人不足を訴える新聞記事に対し)施設に申し込みが殺到しており、さぞ儲かっているかのような印象を与える記事だが、1人のお年寄りが5つも6つも応募しているという例もあり、部屋が空いたからといって必ずしも入所するとは限らないのが現状だ。
 障害者福祉も措置制度から支援費制度へ移行することとなった。
就職は競争が厳しい
 1人の欠員による応募に30名程度が殺到するような状況である。昔はなかなか集まらず、学校や関係施設出身の人が多かったが、現在はさまざまである。リストラにあった人など中高年が本当に多くなった。「ヘルパーの資格を取るから採用してほしい」といわれる。しかし実際に採用するかどうかといえば躊躇してしまうのが現状だ。
資金的には恵まれている。
 社会福祉施設の給与体系は公務員に準ずる。
「選ばれる施設に」
 今までは黙っていても利用者は集まった。行政側が「こういう人がいる」と連れてきてくれた。これからは自分たちで客を捜さなくてはならない。
 いかに利益を生む経営をするかが問題になっている。介護保険開始直後は大きな黒字だった。国は施設入所の介護保険料をかなり減額した。
人件費が高騰して経営を圧迫
 人事考課制度はほとんど普及していない。人件費をいかに抑制するかは大きな問題である。
B氏 人材面でのミスマッチが顕著
 就職状況は厳しい。学生も真剣。施設側もいい人材を採ろうとしている。やはり資格を持った人が求められているが、看護師が不足しており介護職の方が余っている。看護師は病院(医療)に回って施設(介護)には回らないのでは。求人はあるのに求職者はいない。結婚・出産を経験して休職している看護師の不安を解消すればいいのでは。理学療法士、ケアマネージャーも足りない。介護職は給与も安く、差もある。そのことが採用につながらないということも。
C氏 1. 支援費制度の導入に伴う賃金体系の変化は? 2. 正規職員とパートタイマーの割合は?
A氏 1. 給与体系を改正。会計事務所に依頼して人事考課制度の導入を考えている。2. 適正配置基準というものがある。支援費制度の導入に伴い、パート、非常勤の利用が高まるだろう。
D氏 全体像を把握したい。
 県内の現状はどのようなものなのか。どういう施設がどのくらいあり、入所者、サービスの実態はどうなっているのか。
 公的措置から支援費制度へと変わることで、公的機関はどうなるのだろう。
B氏 (D氏の質問を受けて)次回資料を準備したい。県内では330施設、職員総数は1万人程度か。措置から契約への移行に伴い、利用者が主体的に施設を選ぶようになり、大きな変化が起こるだろう。民間(個人以外)にどんどん認可が下りるだろう。
D氏 情報の入手
 ケアマネ不足というが、一般の人が利用者の立場でメニューを得るにはどうしたらいいのか。
B氏 パンフレットがあるが。PRはしているつもりだが…。
E氏 変化に驚き
 昔は特養などは非常に珍しかった。介護サービス業がこんなに大きくなるとは。介護保険ができるとは。
お金の問題
 やはり金がないと困るのでは。年金暮らしの老人はこれからどうなるのだろう。1割負担ができない人もいる。貧富の差によってサービスが受けられないというのはいかがなものであろうか。
在宅ヘルパーの条件は厳しい
 給料は安く、不安定で苦労の割には報われない。資格を取っても就職に結びつかない。施設ばかりでなく在宅も重視するべきだ。それには、ヘルパーの待遇を改善すべきではないか。せっかくの有資格者を国がもっと政策的に優遇し、身分的安定を図っていくことが重要ではないか。


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