特集1 地域企業と環境
環境改善への取り組みが中小企業を変える。

 21世紀産業において、「環境」は大きなリスクであるとともに、チャンスであると言われている。
 現在、環境問題は全地球共通の課題となっているが、その背景は、60億に近い人間が、限られた地球という環境および資源に根ざして快適かつ健全な社会生活を営んでいくために、いかにして環境と調和した社会を創り上げていくかという、きわめて深刻な命題に根ざしている。大消費から資源循環へ、社会と経済の基本的な構造そのものを転換することが求められているわけだ。こうしたなか、わが国でも、官民という枠組みを越えて推し進められており、政策レベルでもすでに平成11年以降に制定された法律・政令・省令は40件にものぼっている。
 こうした中、長野県下の中小企業からも、果敢に環境改善に取り組み、あるいは環境関連事業を創出しようとする動きは活発だ。いま、地域における企業と環境のあり方はどうなっているのか。その視点から考えてみたい。

大転換時代を乗り越えるために
 わが国の産業経済においては、すでに公害問題や産業廃棄物問題、あるいはフロン対策や有害危険化学物質への対応など、さまざまな課題に立ち向かい、このハードルを乗り越えてきた実績を持っている。しかし、現在直面しているのは、「環境負荷の限りない軽減」と「持続可能な開発・発展」の実現という、より包括的な課題だ。
 資源をより少なく消費し、排出物の発生を限りなく抑え、循環型の経済構造へと大転換を図っていくことが求められているのである。
 大手企業から始まった、環境管理の国際規格ISO14001認証取得への取り組みも、現在ではあらゆる業種業態の企業や団体に及んでいる。有力企業から一商店、オフィスまで、それぞれの事業者が試行錯誤の中で取り組もうとしている環境改善への取り組みとはどのようなものだろうか。その事例を後半で紹介したい。


■ISO導入による認証取得のメリット・デメリット
■ISO導入による認証取得のメリット・デメリット

■規模別所要コスト
■規模別所要コスト


環境活動取り組みのリスクとコスト
 地域の中小企業が環境改善に取り組む最大の動機は、やはり環境関連法規に定められた諸規制への対応が第一と言えるだろう。事業活動を継続するためには、事業からの排出物の抑制と管理、さらに省資源・省エネルギーの推進などが不可欠のものとなっている。
 しかし一方、世界的な産業活動においては、適切な環境管理の存在や、グリーン購入基準に基づいた部品調達などがすでに常態化してきており、環境管理システムを確立しなければ事業が成り立たないという状況が生まれつつあることも事実である。
 また、地域に根ざす一企業市民としての社会責任を果たすことや、消費者に対する製造責任などの観点からも、真摯に環境改善活動に取り組むことが避けられないものとなっているのである。
 環境改善への取り組みが、新たなコストを要することは避けられないが、上記のような「企業活動における環境リスク」を回避し、取引先企業や顧客、地域住民との良好な関係を維持構築していくためのコストとしては不可欠なものなのである。


政策レベルにみる循環型社会形成への取り組みへ
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