全国先進組合事例集 受注・販売の共同化
 昨年度全国中央会が実施した事業協同組合実態調査によると、共同受注事業・共同販売事業は現在実施している重点事業の3位、6位にあがっており、それぞれ回答組合の約20%の組合が実施している。特に共同受注事業については、回答組合の4分の1以上が以前より活発になったと回答し、今後重点としたい事業の上位にあがっている。これらの事業は、市場への訴求力の強化やコスト削減効果等が期待され、従前より組合の中心事業として実施されてきたが、最近再び注目され、活発化しつつある。そこで、この分野に取り組む先進的事例を収集し、受注・販売の共同化に取り組もうとする組合に移転・普及する。
“新漆器時代”をめざしこだわりの産地づくり
秋田県漆器工業協同組合
組合イントラネットの構築で共同受注の拡大
福島県鉄工機械工業協同組合
共同受注でチャンスロスの削減を達成
富山県情報ネットワーク事業協同組合
コントラクト家具から広がる大川の木の世界
協同組合コスモス
芸能活動の融合化を図り共同受注のシステムを確立
沖縄県舞台芸術振興協同組合

”新漆器時代“をめざしこだわりの産地づくり
秋田県漆器工業協同組合
■所在地:雄勝郡稲川町 ■設立:昭和25年2月
■組合員数:179人 ■出資金:716万円
■地区:秋田県
■主な業種:漆器製造業
■組織形態:産地組合 ■専従理事: - ■組合専従者:4人
■URL:http://www.chuokai-akita.or.jp/shikki/index.htm

「日常生活で使われる漆器」をテーマに、各製造工程に携わる職人達の連携強化に力を入れ、学校給食用食器等を共同で開発・受注。産地形成とともに、一貫体制の構築をめざす
組合パンフレット
組合パンフレット
 約800年の歴史を持つ川連漆器は、栗駒山麓の豊富な原木と漆に恵まれて発展してきた。秋田県雄勝郡稲川町を中心に秋田県内の5市町村で生産される、椀、鉢、皿、茶器、箸、重箱等の食器や、座卓、箪笥、ペン皿等のクラフト品等は、秋田県を代表する漆器製品である。当組合は川連漆器に携わる179組合員で構成され、組合員全体の出荷額は平成12年で13.4億円。長引く景気の低迷や生活様式の簡素化、中国等からの類似品の輸入増等により、組合員の経営は厳しく、また、他産地と同様に職人の高齢化、後継者の確保難、技術の伝承等の課題を抱えている。川連漆器の製造工程は長く、受注した製品は各工程を請負う職人の手を経なければ完成しない。顧客の要求に応える製品を受注するには、各工程に携わる職人間の連携と、各工程のコストダウンや品質維持が不可欠である。また、産地間の競争に勝つためには、製販一体となった産地形成(ブランド化)と販売促進活動が必要である。
 そこで当組合では、関係機関の支援制度を積極的に活用し、組合員の緊張感を持続させながら、意識改革や技術の向上を行うために、共同受注や共同製品開発、漆器フェア等を開催し大きな成果をあげている。最近では、組合内にある10の職人グループを上手に活用し、学校給食用食器や秋田ワールドゲームズ2001入賞メダル等を共同で受注し開発することに成功した。まだまだ解決しなければならない問題は多いものの、これら事業の成功で、時代のニーズを捉え、日常生活で使われる漆器をつくろうとする産地の意識を統一することで、あらたな漆器製品を開発・販売していくための基盤を固めることができた。

組合イントラネットの構築で共同受注の拡大
福島県鉄工機械工業協同組合
■所在地:福島市 ■設立:昭和24年11月
■組合員数:72人 ■出資金:786万円
■地区:福島県
■主な業種:機械工業 金属工業 電機工業
■組織形態:下請組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:5人
■URL:http://www.tekkou.or.jp/

ITを活用した共同受注システムを新たに導入。共同受注を全面に出したホームページを開設。組合内LANシステムも整備し、新規受注の獲得をめざす
背景と目的
   景気が低迷し、構造改革が求められているが、従来のような取引関係が保証されることは少なく、結論的に安価で納期が守れる生産能力の提供が一層重要になっている。このため、より効率的な共同受注に関する新たなシステム作りをめざし、福島県の補助事業である「福島県地場産業振興事業」を活用し事業に取り組んだ。IT(情報技術)による緊密な連携を組合員間で構築することにより、取引先からの注文に迅速に応じられる体制作りを行い、受注機会の損失を防ぐ努力をしている。また、組合と組合員各社の総合力をアピールできる体制も併せて構築し、組合全体の受注増加にも結びつけていくことをねらいとした。

取り組みの内容
   従来のホームページを共同受注を全面に出した(FAMIO NET)にリニューアルを行った。ここで組合員の加工技術等を紹介し、発注企業に対し組合への発注のメリットとして安価で、早く、高品質な加工ができることをPRし新たな共同受注を確保するための仕組みを作っている。
 また組合内部にLANシステム(クライアントサーバーシステム)を構成し親企業との新たなオンラインシステム(EDIシステム)を稼働した。
 さらに、現在試験的ではあるが、受注から納品までを一括処理しスピードアップを図るための仕組みとしてグループウェア(ロータスノーツ)を導入している。取引先からの受注は図面データとともにグループウェアのライブラリに自動登録し、受注状況をリアルタイムに組合員企業に公開することを予定している。

成 果
   ホームページは現在のところ問い合わせのみに止まっており新規受注の獲得にはつながっていない。今後は更にホームページを充実させることにより受注拡大が期待できる。組合内LANシステムと新たなEDIシステムは組合コンピュータで受信した得意先からの受注内容をもとに組合から組合員企業に対する発注業務が自動化され、従来と比べ格段のスピードアップが図られた。グループウェアについては現在も継続的に試験中で、将来的には受注した物件を自動的にグループウェア上で公開することにより組合員が公開入札方式で展開できる環境になることが期待でき、また組合員企業での作業効率の向上、技術向上につなげられ受注増が期待できるとともに業界のレベルアップにも貢献できるものといえる。

共同受注でチャンスロスの削減を達成
富山県情報ネットワーク事業協同組合
■所在地:富山市 ■設立:平成10年1月
■組合員数:6人 ■出資金:110万円
■地区:富山市他3町1村
■主な業種:情報提供サービス業 ソフトウェア業 他
■組織形態:異業種組合 ■専従理事: - ■組合専従者: -
■URL:http://www.kumiai.or.jp

個々では受注しにくい高度・複雑・大型・短納期の情報処理システム構築案件を、共同受注することでチャンスロスを少なくし、同時に効率的でフレキシブルな組織構造を実現
 情報社会に進展はドックイヤーといわれるように変化のスピードが速く、高度・複雑・大型・短納期案件の多い情報処理システム構築プログラム等の受注は、個々の中小企業では難しくチャンスロスが多く発生していた。また、官公庁、諸団体からの受注に対しては従業員規模、資本金額等で信用が得られにくい状況があった。そこで平成10年1月に関連技術を備えたメンバーで組合を設立し、共同受注を開始した。組合員の業種は全て業種が異なっており、組合員間で競合する業務はない。組合員は共同受注プロジェクトとは別に通常の仕事を抱えているものの、各々が、特意分野を活かしそれぞれ独立して活動しており、組合は受注案件ごとに最適な組合員に振り分けることができるため、常にローコストオペレーションが可能となっている。また、組合員間は上下関係ではなく、機能・役割に応じた水平関係にあるため自由闊達な意見交換ができ、フレキシブルな組織構造になった。事務処理については、組合の専務理事が「営業・企画・プロデュース」及び「納品・代金回収」の窓口となっている。また、組合員がいざプロジェクトに臨み的確に要求レベルに応えるにはチーム全体の念入りな協議が必要となるため、常に意識して情報交換を行っている。今後、より受注能力を高め、組合員の技術アップを図るため研修を進めると同時に、優秀な組合員の加入促進を図ることとしている。

組合ホームページ 組合ホームページ
組合ホームページ 組合ホームページ

コントラクト家具から広がる大川の木の世界
協同組合コスモス
■所在地:大川市 ■設立:平成4年8月
■組合員数:15人 ■出資金:1,500万円
■地区:大川市
■主な業種:家具製造業 コントラクト家具製造業
■組織形態:産地組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:1人

460年余の大川家具の歴史に育まれた木を扱うセンスとノウハウ。組合は個々の組合員の得意分野をコントラクト(特注)家具に結集させた。
 全国有数の家具産地である大川は、箱もの(婚礼家具等)、棚もの(食器棚・書棚)等の既製品を中心に売り上げを伸ばし、ピーク時には年商1,500億円、全国の10%のシェアを占めていたが、生活様式や住宅構造の変化などから年々需要の低迷が続いていた。
 最近は建築様式が多様化しており、家具も設計段階から取り込む壁面収納家具などトータルインテリアとしての性格が強くなってきている。そこで、将来性のあるこのコントラクト(特注)家具に着目し、新規市場開拓と共同受注を目的に家具、建具業者が平成4年協同組合を設立した。
 組合で共同受注した案件は、組合員対象に説明会を開き受注を希望する者が見積書を提出することで実施事業者を決定する方法で行っている。これによって家具製造、内装工事等各々の得意分野を活かし、一事業者では対応できない案件でも受注することができるようになった。
 コントラクト家具の取扱高は平成11年度12年度とも約1億4千万円となり、着実に実績を上げている。また、コントラクト家具に取り組んだことで、家具製造に加え建築に関する技能を備えた技術者が育ってきており、これが組合の大きな財産となっている。組合も研修講座の開催などで、積極的に技術者の育成に務めている。
 組合は、市の第3セクターである大川総合インテリア産業振興センターの企画・開発する「大川の家」の販売窓口となる予定である。

高級感のある貴賓室の応接テーブルと椅子 特注で制作したソファー
高級感のある貴賓室の応接テーブルと椅子 特注で制作したソファー

芸能活動の融合化を図り共同受注のシステムを確立
沖縄県舞台芸術振興協同組合
■所在地:那覇市 ■設立:平成10年1月
■組合員数:14人 ■出資金:216万円
■地区:沖縄県
■主な業種:音楽家 演劇家 舞踏家 他
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事:2人 ■組合専従者:1人
■URL:http://www.cosmos.ne.jp/~saps-oki/index.html

沖縄県内の芸術活動家の受注確保を目的に組織化、総合プロデュース、企画・運営等のノウハウを駆使し、芸術活動の融合化を図りそれにより共同受注のシステム化を確立した
背景と目的
   沖縄県では25年ほど前からオーケストラ・声楽を中心にして芸術活動が盛んであり、芸術鑑賞教室等、教育現場や地域からの出演依頼の要請も多いことから、音楽教室・バレエ教室など個人教授所を営む事業所が中心になり、芸術活動を後押しし、受注機会を確保するため協同組合を組織化した。

取り組みの内容
   窓口を一本化することにより出演依頼の要請に対応し、演劇公演、芸術鑑賞教育、クラシックコンサート、クリスマスコンサート、ロビーコンサート等を開催している。事業計画の策定については、団体活動と個人教授所の内容をミックスして競合や配分のバランスに注意しているほか、組合員以外のアーティスト50名とも連携して運営している。
 多様なニーズに対応するため、演奏家のデータベース化を行い、楽器編成を基にカタログ化し受注を受けた時にパッケージとしてクライアントが選択できるように工夫したことや、演奏料及び演奏形態の設定について不明瞭であったところを体型化し明瞭化した。また、ホームページ制作、各種パンフレットの作成、組合員による直接宣伝等で営業を行っている。

成 果
   共同事業の実績については、平成10年度7,158千円、平成11年度13,816千円、平成12年度16,249千円と年々実績は着実に推移しており、当初の目的は達成している。
 顧客満足度を高めるため様々なジャンルの芸術活動を融合化するなど企画・運営等のノウハウを活かした提案力が成功の要因といえる。
 また、事業を実施することで、思わぬ人的結びつきの拡大につながっており、今後も人的ネットワークによる共同受注の相乗効果が期待できる。


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