全国先進組合事例集 循環型社会への対応
 廃棄物の大量発生、廃棄物処理施設の立地困難性、不法投棄の増大、リサイクルの一層の推進等の課題を解決するため、平成12年6月に循環型社会形成推進基本法が公布された。同法では形成すべき循環型社会の姿を明確にし、発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再利用(リサイクル)、熱回収、適正処分という対策の優先順位を法定化している。本年4月には家電リサイクル法が施行されるなど、関連規制法が整備されつつあり、中小企業は待ったなしの対応を迫られている。
 そこで、こうしたなかで廃棄物処理の共同化、リデュース・リユース・リサイクルの促進、環境保全、化学物質の排出抑制など、環境問題に積極的に取り組む組合の事例を収集し今後こういった分野に取り組もうとする組合に移転・普及する。
リサイクルデザインの提案で、市民との交流促進
横浜市資源リサイクル事業協同組合
食と健康をキーワードに、資源循環の実践の場を提供
協同組合エコファーム新潟
ISO14001取得は職員の意識改革と弛まぬ研修
鳥取県金属熱処理協業組合
1台3役の破砕減容機と着色びんから軽量発泡骨材
豊関異業種交流協同組合
廃材石膏ボードを再利用した屋上緑化システムを開発
環境共生事業協同組合

リサイクルデザインの提案で、市民との交流促進
横浜市資源リサイクル事業協同組合
■所在地:横浜市西区 ■設立:平成4年12月
■組合員数:139人 ■出資金:6,950万円
■地区:横浜市
■主な業種:再生資源卸売業
■組織形態:同業種同志型組合 ■専従理事: - ■組合専従者:146人
■URL:http://www.recycledesign.or.jp/

業界のメリットだけにとらわれず、横浜市民に向けた月刊誌発行とフォーラム開催で情報提供を行い、リサイクルへの理解、市民と組合員とのコミュニケーション促進を図る
 リサイクル品の買入価格は再生資源相場によって左右されるため、情報の少ない市民にとって買い入れ価格の変動は業者の自分勝手な行動と誤解され、不信を招く要因となっていた。組合では設立当初、市民アンケートを行った結果、価格やリサイクル全般についての情報提供の要望が高いことがわかった。そこで事業者としては公開したくない価格情報をあえて公表することとともに質の高いリサイクルや環境に対する情報提供を行うことで理解と協力を得ることをめざした。そのため、月刊誌「リサイクルデザイン」を発行するとともに、市民と組合員が集い環境について考える「リサイクルデザインフォーラム」を開催している。
 月刊誌では、環境問題などを中心に、市民と組合員のためのリサイクル情報の発信を行っている。買入価格については事業者の公開価格を、販売価格については経済専門誌などに掲載される公開情報を掲載しており、業者の厳しい経営環境を理解してもらうのに役立てている。同時に、回収品質の向上、回収の効率化などを組合員から市民に呼びかけるよう提案している。発信先は市内小中学校、区役所、一般市民などで、発行部数は1万6千部を数える。
 平成6年から実施しているフォーラムでは、子供環境会議、環境絵日記コンクールを行い、市内の小学生を巻き込み大きな反響を呼んでいる。最近では市・県外からのコンクール参加希望も多く、市民からも幅広く支持されている。
 業界の立場に偏らない情報提供や、デメリットな側面もあえて公開する姿勢は市民に支持され、組合や業界への理解促進が図られている。また、リサイクル品回収時に組合員が月刊誌を市民に手渡すことで、会話・コミュニケーションが生まれ、組合員の広報宣伝活動の一翼を担うなど、成果は大きい。
組合が提案する「リサイクルデザイン」の概念
組合が提案する「リサイクルデザイン」の概念
 これらの活動は組合が提案する「リサイクルデザイン」の概念に発しており、再生資源業を自治体と民間の中間事業として位置づけ、組合は公(Official)と民(Private)の良いところを活かし、半公共的な視点から行政支援、民間支援のできる「共(Public)」であるとするものである。こういった活動が評価され、平成13年「かながわ地球環境賞」を受賞した。

食と健康をキーワードに、資源循環の実践の場を提供
協同組合エコファーム新潟
■所在地:長岡市 ■設立:平成13年3月
■組合員数:6人 ■出資金:600万円
■地区:長岡市
■主な業種:造園工事業 有機質肥料製造業 各種食料品小売業 畜産農業 他
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:4人

米糠、籾殻、おから等の廃棄物を発酵させ、有機質肥料や土壌改良材を共同生産。これらを組合員に供給し食材生産に活用することで、廃棄物の減量化と資源リサイクルに貢献
 環境問題の中でもとりわけ廃棄物リサイクルは身近な環境保全対策として各地で取り組まれてきた。しかし農と食がリンクするシステムは少なく、資源循環型農畜産業の新たなスタイル構築が必要との考えに賛同した地域企業が集まり、廃棄物再利用事業を開始した。 
 米糠、籾殻、おから等を発酵させ、有機質肥料、土壌改良材等をプラントで共同生産し、これらを組合員に供給することで資源のリサイクル化を図っている。
 また、これらの有機原料等を利用して生産される農畜産物を販売するため、レストランや販売店、バーベキューハウスを設置し、組合員の収益向上に貢献するとともに、「食と健康」について地域に提案し情報発信を行っている。集客力を高めるため体験観光施設を併設し、体験教室として有機農業の場(田畑)の提供やソーセージなどの製造を指導している。
 組合員企業においても、地域NPOとの連携による家庭生ゴミの再資源化や給食残滓の飼料化など、新たな資源リサイクル事業を手掛け始めている。
組合パンフレット
組合パンフレット
 資源循環型農畜産業の実践の場としての評価が高まり、環境問題に関心の高い地域住民の支持を受け、当初目標の6千人の集客数を達成することは確実な状況である。レストランや体験教室で利用する「素材」に対する評価も高く、固定客(ファン層)が形成されつつある。
 このように、当組合事業が農畜産業の新たなスタイル(モデル)として社会的に認知されてきている。

ISO14001取得は職員の意識改革と弛まぬ研修
鳥取県金属熱処理協業組合
■所在地:米子市 ■設立:昭和55年4月
■組合員数:67人 ■出資金:2,000万円
■地区:鳥取県
■主な業種:機械金属製品製造業
■組織形態:一部協業型協業組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:29人
■URL:http://www.chukai.ne.jp/~netsu/

ISO9002取得の職員研修活動の中から得た自信で、環境改善と省エネコスト削減のためにISO14001を取得。意識向上と大幅なコスト削減により取引先の信用を確立した
背景と目的
   作業の工程上で有害物質の有機溶剤を大量に使用していたが、取引先の大手企業が環境管理の維持改善に取り組んでいることから、業界としても対応が求められていた。また電気・ガスなどのエネルギーを大量に消費する産業であったため、有機溶剤の適切な管理運用、エネルギー管理による大幅コスト削減や組合体質の改善を図る必要に迫られていた。そのためISO14001の取得に取り組むこととなった。

取り組みの内容
   品質管理の国際基準ISO9002取得の後、国際的な企業の環境管理の流れに対応することと、組合の体質改善とコスト削減、信用力の向上を目指してISO14001の認証取得に組合及び組合員、職員が一丸となって取り組んだ。加工現場の問題点解明と解決方法について、環境的な側面から研究を行ったことや、組合職員がISO9002取得の時から実施したQCサークルなどの活動を通じて、環境に対する意識が高まり、職員内のプロジェクトチームの活動、5Sの徹底などにより、比較的にスムーズに取得へ向かった。

成果
   ISO14001の認証取得に取り組んだことにより職場内の産廃の削減、省エネ意識向上につながった。また、前回のISO9002取得と同様に先端技術を有する企業を組合員に持つ組合として、鳥取県内の産業基盤技術としての金属熱処理分野を受け持つ組合に対する信頼度が高まり、組合員の有利な営業展開につながっている。また、省エネの部分においては、電気量を2年間で10%弱の削減を達成することができた。

1台3役の破砕減容機と着色びんから軽量発泡骨材
豊関異業種交流協同組合
■所在地:下関市 ■設立:平成8年3月
■組合員数:13人 ■出資金:130万円
■地区:下関市、豊浦郡
■主な業種:総合工事業 電気機械器具製造業 金属製品製造業 専門サービス業 他
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事: - ■組合専従者:1人
■URL:http://www.tip.ne.jp/emission/

省スペースでびん・缶・ペットボトルの破砕減容を可能にした地球にやさしい新型再資源化機の開発と、着色ガラスびんを軽量発泡骨材として再生資源化することに成功した
破砕減容機「スーパー大砕神III」
破砕減容機「スーパー大砕神III」
 「容器包装リサイクル法」完全施行の1年前、缶やびんなどがそれぞれ別々の機械で減容されている現状に着目し、1つの機械で缶もびんもペットボトルも減容できないかと考え、「びん・缶・ペットボトル減容機」の開発に取り組んだ。現在は、その減容機をベースに、機動性を追及した車載型の開発、破砕したガラスびんの再利用方法等、時代の求める環境共生の実現をめざしている。
 地上設置型の開発においては、ガラスびんの破砕減容や搬送のための車載コンテナの開発は当組合員の固有技術を使い、缶やペットボトルの破砕減容については、山口地区の異業種交流グループの一員が開発した空き缶リサイクルプラントを採用した。車載型も同メンバーで開発に携わった。
 「びん・缶・ペットボトル破砕減容機」による回収・減容、破砕に加えて、破砕ガラスに粉砕・焼成の工程を加えることにより軽量発泡骨材とし、再資源化するまでのトータルなリサイクルシステムを実現した。
 従来の「地上固定型」「1工場1装置」という概念を180°転換し、車載型(小型の4トントラックへの搭載)の減容機の開発により、いつでもどこでも移動できるといった機動性、効率性の高さを実現した。平成12年は、4トントラックに搭載できる車載型(約3,000万円)と固定型(約2,200万円)あわせて13台の販売を実現した。また、家庭から資源ゴミとして出される着色ガラスびんをパウダー状に粉砕し、さらに高熱で燃焼して発泡させる軽量発泡骨材の開発も実現した。下関市の水族館建設にも使用され、軽量と水はけの良さを生かし、軽量地盤材料としての活用が期待される。

廃材石膏ボードを再利用した屋上緑化システムを開発
環境共生事業協同組合
■所在地:佐世保市 ■設立:平成13年3月
■組合員数:10人 ■出資金:200万円
■地区:佐世保市
■主な業種:防水工事業 塗装業 総合建設業 土建業 板金業 他
■組織形態:環境対応型組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:1人

建築陶器廃材の石膏ボードと天然鉱石を組合わせた基盤材開発により、土のいらない屋上緑化システムを開発。防水、建設、土木事業者が組合を結成し環境問題に対応する事業を展開
 構造的不況のトンネルの中で、建設、土木、防水工事業を営む事業者が今後の事業展開に限界を感じ、組合を結成してこれまで蓄積してきた技術を活かしかつ地元に排出される建築陶器廃材の有効活用を図り、時代のニーズに即した屋上緑化の事業に参入しようとする試みである。
 現理事業は防水工事業を行っており、数年前からこのテーマに関心を持ち、全国のあらゆる研究会に足を運び、情報収集と一流の研究者との交流の機会を重ねてきた。その結果、多孔質の天然鉱石の存在を知り、長崎大学環境保全センターとの共同研究でこの天然鉱石に建築廃材である石膏ボードを組み合わせて、ブロック状の基盤(30cm×30cm×5cm)の開発に成功した。このブロックを佐世保市内のホテルの5階、6階のベランダに敷きつめ、その上に芝をおいたところ、2週間でしっかり根づき、階下の室温が5℃低下していることがわかった。この予想以上の成果により、9月には屋上全体に導入した。根がついた芝生を基盤に敷き、水をやるだけで肥料は不要である。天然鉱石は穴が多い多孔質素材で、通気性に優れ、芝の生育も他の基盤に比べ3ヶ月程度早く、土のいらない低コスト工法とメンテナンスの容易性から既に、大手企業からの引き合いもきている。
 大学との共同研究を13年8月からはじめたばかりであるが、既に大手企業から契約の話が届いており、量産化のための準備もしているところである。今後、単なる環境問題解決のための緑化にとどまることなく、屋上、ベランダを新しい癒しの空間として庭園化の発想、及びビルの壁面を屋上から植物をたらして緑化する等、美的景観等への対応も取り入れ、より幅広く事業展開を考えている。成功すれば従来の工事施工型からソフト創造型企業として、新しい業態への転換も可能である。

屋上緑化システム(SGグリーンコート)取組概念図
屋上緑化システム(SGグリーンコート)取組概念図


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