全国先進組合事例集 コラボレーション による経営革新
 近年、新たな活路を求めて業種・業態、機能、形態、国境等の壁を超えて企業が外部組織と連携・融合・ネットワーク化することにより事業展開を図る方向性が顕著に見られる。組合においても、変化する経済環境に対応し、組合事業や組合員の経営を革新するためこうした連携活動に取り組んでいる。そこで、大学・TLO、NPO、行政、他組合、異業種企業、海外企業などとネットワークを組み(いわゆる、産学官、産学、産産間連携)、それぞれが持つ優れた情報、技術、人材、資金等を効果・効率的に結合させ、活用することにより、研究開発やマーケティング活動等を通じて新たな事業の創出に取り組む事例を収集し今後こういった分野に取り組もうとする組合に移転・普及する。
産産連携で花開く、炭素繊維による水圏環境浄化技術
協同組合ぐんま環境技術コンソーシアム
アルミニウム合金鋳造の鋳湯工程を完全自動化
協同組合名古屋テクノ
5つの伝統工芸品産地のコラボレーションで新商品開発
福井県和紙工業協同組合
大学の協力を得てリンキング機開発に成功、実用化へ
協同組合靴下屋共栄会
眠れる知的財産を発掘、創業・経営革新をサポート
協同組合大阪デザインオフィスユニオン

産産連携で花開く、炭素繊維による水圏環境浄化技術
協同組合ぐんま環境技術コンソーシアム
■所在地:前橋市 ■設立:平成10年4月
■組合員数:7人 ■出資金:1,400万円
■地区:群馬県
■主な業種:環境浄化装置製造業他
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事: - ■組合専従者: -
■連携先:桐生織物(協) 新日本製鐵(株)

NEDOの委託を受けた産学官共同研究とその後の新たな産学共同研究を経て、実務的な「産産連携」が実現し、本格的な事業展開に向けての基盤が整備された
 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて平成9年度から3年間にわたって行われた本格的な産学官共同研究「地域コンソーシアム研究開発事業」によって、炭素繊維による水圏環境浄化の有効性は実証されたものの、官公庁を中心とした市場開拓は想像以上に困難を極めた。
 思うような実績をあげられないなかにあって、群馬大学や前橋工科大学との共同研究を続けてきた結果、ようやく本格的な共同受注事業に手ごたえが感じられるようになった。しかし、このため、基本的な取引契約や大手企業の要請に対応した技術供与のあり方などを検討する必要が生じてきた。
 平成12年12月、桐生織物協同組合と相互に販売代理契約を締結した。これは、これまでも炭素繊維の編織技術開発で協力関係にあった桐生織物協同組合の内部組織であるインテリア資材部会の6社が炭素繊維原糸を編織加工して「炭素繊維製人工藻」「炭素繊維製接触濾材」を製作し、当組合に一元的に納入していることがあった。当組合はこれらを組み込んだ装置を、顧客から要望される仕様に基づいて製作し、販売することになる。
 また、平成13年3月には、新日本製鐵株式会社との間で、当組合が保有している「炭素繊維による水域浄化技術」に関する特許の実施権許諾契約を締結した。
 桐生織物協同組合との相互販売代理契約により、生産と販売を分担し合う事業体制が整備されたことになる。また、新日本製鐵株式会社に対する技術供与は組合の保有技術が大手企業に評価されたことになり、今後の共同受注事業推進に弾みがつくことが期待される。
炭素繊維製人工藻による水質浄化の様子

アルミニウム合金鋳造の鋳湯工程を完全自動化
協同組合名古屋テクノ
■所在地:名古屋市緑区 ■設立:平成3年4月
■組合員数:5人 ■出資金:250万円
■地区:名古屋市、瀬戸市、豊田市
■主な業種:金属加工機械部分品附属品製造業 陶磁器用はい土製造業 電力制御装置製造業 理化学用・工業用陶磁器製造業
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事: - ■組合専従者: -
■連携先:(財)ファインセラミックスセンター 岐阜大学工学部応用精密工学科 他

アルミニウム溶解炉から金型までの溶湯の移送を完全密封化し、電磁ポンプで搬送する自動システムをチタン酸アルミニウムセラミックスの利用で実用化した
 自動車メーカーをはじめとするアルミニウム合金製部品の鋳造工程においては、鋳造品の高品質化、低コスト化、省エネルギー化、環境負荷低減化、作業安全性の向上、省力化等のための技術開発が切望されている。これらの問題を解決するひとつの方法として、電磁ポンプによる連続供給かつ密封化した鋳造システムが注目されている。しかし、高温のアルミニウム合金溶湯に対するシステムの耐久性不足が最大の技術課題となっていた。
 そこで、本研究開発では、アルミニウム合金溶湯に対して、優れた非漏れ性と耐熱衝撃性を有するチタン酸アルミニウムセラミックスを溶湯接触部材に適用し、リニア誘導方式の電磁ポンプによる自動溶湯供給システムの開発を企図した。
 具体的取り組みの内容は(1)チタン酸アルミニウムセラミックス溶湯接触部材の開発、(2)チタン酸アルミニウムセラミックス製スタティック電磁ポンプの開発、(3)溶湯の精密定量供給技術の開発、(4)システム設計の最適化に関する研究、(5)総合調査および評価に関する研究、である。
 ヒートサイクルに強く、対溶融アルミニウム非漏れ性の高いチタン酸アルミニウムの部材開発を要素開発の中心にし、さらに溶湯をチタン酸アルミニウムパイプの中でリニア駆動する電磁ポンプの要素開発、それらを含むシステムとしてのアルミ鋳物用無人溶湯搬送システムの開発がほぼ完了し、特許の出願、学会での発表、(財)ファインセラミックスセンターからの公表という形で成果がまとめられた。若干の課題は積み残しているものの、個別のユーザーへのプレゼンテーションも終わり、事業化へのステップに入っている。

5つの伝統工芸品産地のコラボレーションで新商品開発
福井県和紙工業協同組合

■所在地:今立郡今立町 ■設立:昭和39年4月
■組合員数:75人 ■出資金:2,143万円
■地区:福井県
■主な業種:機械すき和紙・手すき和紙製造 紙加工業
■組織形態:産地組合 ■専従理事: - ■組合専従者:11人
■連携先:越前漆器(協) 越前焼工業(協) 越前打刃物(協) タケフナイフビレッジ(協)


丹南地域の5つの伝統工芸品産地間連携で、現代の床の間・現代の食卓・現代の縁をテーマとして、現代生活に融和した新商品・新用途の統一ブランド品「新・越前屋」を開発
 現代の生活者の生活様式の変化に伴う市場規模の縮小、人件費高騰による生産拠点の海外移転など、伝統工芸品を取り巻く環境は厳しい状況にある。このような状況を打開するため、福井県丹南地域の5つの伝統工芸品産地組合(福井県和紙工業協同組合・越前漆器協同組合・越前焼工業協同組合・越前打刃物協同組合・タケフナイフビレッジ協同組合)が連携し、公的機関等の支援・指導を受け、新商品・新用途商品開発に取り組んだ。 
 平成11年、「丹南伝統的工芸品産業交流会」を設立し、「伝統的工芸品産地広域交流対策事業」に取り組んでいる。具体的には、現代の床の間・現代の食卓・現代の縁の3つのテーマのもと、「現代生活との融和~新しい生活を提案する新しいものづくり~」を目標とした統一ブランド商品「新・越前屋」開発に取り組み、平成12年9月「丹南産業フェア2000」で試作品を披露した。なお、「新・越前屋」開発に当たっては、それぞれの伝統工芸品の良さを引き出すコーディネーターを配し、「売れるモノづくり」を目標に事業を行った。
 「丹南産業フェア2000」で一般消費者に好評を得た約200種類の商品は、平成13年に東京の百貨店で2週間、地元の百貨店等で3ヶ月間の展示即売会を行うなど、生産者(組合員)自らが販売するという販路開拓が図られた。この即売会では、各組合の組合員や組合事務局員が売場に立ち、「新・越前屋」商品に対する消費者の声を直接聞くことができた。その結果、従来の「ものづくり中心」の意識から、現代の生活者へ向けた「生活が豊かになるモノづくり」への意識が一層高まり、今後の商品開発・産地組合の方向性のヒントをつかむことができた。
伝統的工芸品産地広域交流対策事業の組織図

大学の協力を得てリンキング機開発に成功、実用化へ
協同組合靴下屋共栄会
■所在地:北葛城郡広陵町 ■設立:平成4年4月
■組合員数:8人 ■出資金:4,000万円
■地区:奈良県、大阪市
■主な業種:靴下製造業
■組織形態:同業種同志型組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:25人
■連携先:立命館大学

リンキング(つまさき)機械の開発に立命館大学の協力を得て取り組み、試作に成功、実用化を目前に事業の重要性が評価され行政の支援も受け、その成果は国内外で注目されている
 靴下製造は原糸から製品まで多くの工程があり、機械化も進んでいるが、編立の次工程であるリンキング(つまさき)工程は自動化が難しく手作業の状態のままであった。
 このため、生産効率の低下や下請先、内職先への外注依存などで労務費、外注費の節減が十分に図れず、中国からの輸入品に対抗できないという事態がもたらされた。そこで、同工程の自動化を実現するため最有力組合員である役員が奈良県中小企業振興公社に相談したところ、産学共同プロジェクト事業をスタートさせた立命館大学に相談することをすすめられ、同大学を訪問することとした。大学側でもこのテーマに興味を示し、ロボット分野を中心に、画像・繊維分野等の研究者らとでプロジェクトチームを組織し開発に取り組むことになった。
 本機の開発は当初上記組合員と大学とが連携して取り組んでいたが、行政機関のアドバイスもあり、組合が国の補助金を活用して行うこととなった。新しい体制での研究開発も順調に進み、着手後3年余りで試作機が完成した。本機開発所要資金は約350万円であるが、うち300万円は自己資金で、50万円に補助金を当てた。本機を利用することにより生産性が向上しそれにつれてコストダウンが図られ、左右靴下のバランスが良く、色落ちしないという品質の向上が得られることになった。既に国内では特許権を取得済みで海外へはアメリカ・カナダ・EUに申請中である。
 靴下生産に際し、主要工程である編立については、編機の高速自動化は進んでいるものの後工程であるリンキング工程は労働集約的であったが、本機開発により全体の加工工程の合理化・効率化が実現することになった。それだけに国内外の関係者の注目するところとなり、平成13年11月にはアメリカ・フランス・カナダ等の領事が当組合施設を見学した。また本機の利用により、コスト・品質面で中国製品に十分対抗し得る見込みである。

眠れる知的財産を発掘、創業・経営革新をサポート
協同組合大阪デザインオフィスユニオン
■所在地:大阪市中央区 ■設立:昭和50年2月
■組合員数:81人 ■出資金:4,050万円
■地区:大阪府
■主な業種:デザイン業
■組織形態:同業種同志型組合 ■専従理事: - ■組合専従者:1人
■連携先:(社)大阪工業会 関西TLO (株)ベンチャーラボ
■URL:http://www.odou.or.jp/

組合の運営するPDD(休眠特許及び未活用知的財産活用)事業が評価され、関西TLO、(株)ベンチャーラボとネットワークを組み、創業・経営革新をサポートしている
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 デザイン事業者による初の組合として設立された当組合は、平成13年3月よりデザイナーによるPDD(パテント アンド デザイン ディベロップメント)事業を開始した。これは、無数にある休眠特許や未活用知的財産の中から、ある程度事業化が見込まれるものを、デザイナーが商品イメージとして作成し、データベース化したものである。これをインターネットを利用して配信し、商品化に結びつけるというもので、デザイナー(組合員)81社400人、企業400社の参加を目標として行ってきた。
 この活動が会員1,300社を有する(社)大阪工業会に評価され、同工業会の主催する「モノづくり伴走ネットワーク事業」に参加することとなった。創業・経営革新を目指す企業に事業・技術評価から最後の事業化までをサポートしようというこのネットワーク事業は、関西を中心とした36大学で作る「関西TLO」、事業・技術評価の「(株)ベンチャーラボ」、そして当組合の3団体で組織されており、前二者は主にシーズの発掘と創出を担うのに対し、組合ではニーズに適した商品デザインマーケティング(デザインの観点からのアドバイスやコンサルティングの実施)を担っている。
 現在10数社と具体的な話が進んでおり、web系のデザイナーからの注目度も高く、新規加入者も少なくない。これらの取り組みで、典型的受注型産業からITを活用した提案型のデザイン業に転換できる基盤ができ、今後、デザイナーの役割と業務拡大が期待される。

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