中小企業のインターネットの
利用等に関する調査

 商工中金は中小企業でのインターネットの利用等の現状、今後の方向性の分析、電子商取引に対する認識、取り組み状況の把握を目的に平成13年8月1日現在で、取引先企業のインターネットの利用等に関する調査を行った。対象企業五,337社のうち2,148社の有効回答があり、その集計結果を平成13年11月5日に発表した。
 インターネットの導入や電子商取引を考えている会員や組合員の参考に資するため、本会ではこの記事を掲載することにした。 
なお、この調査に対する問い合わせ等は、商工中金調査部(電話・03-3246-9370)までお願いします。




インターネットの導入率は8割、ホームページの開設も全体の半数程度に
~ECへの過大な期待は沈静化、インターネットの活用は着実に進展~

【ポイント】

インターネットの導入率は82.1%にまで上昇。また、インターネット導入企業のホームページ(HP)開設率も63.3%に上昇、インターネットの導入率上昇からみて、全体に対しては半数程度に達している。インターネット、HPの普及は相当程度進展した。
電子商取引(EC)を実施中の企業はHP開設企業の37.5%と昨年(40.1%)に比べて比率はやや低下。インターネットやHPに比べると普及ピッチは相対的に遅い。一方、ECの実施予定なし(27.5%)とする企業は、実施中や検討中の企業よりは比率が低いものの、昨年時点(20.7%)からは大きく上昇している。取組みに慎重な企業が増加している。
また、インターネットの利用目的をみても、インターネット導入済みの企業ではBtoC(消費者向けEC),不特定企業向けBtoBが昨年に比べて減少しており、導入を検討中の企業でも激減している。ただ、情報収集や取引先との電子メール交換といった基本的な目的や特定企業との受発注、原材料等の購入では実施企業が増加しており、これらについては効果を認めている。
こうしたインターネットとECに対する認識から、インターネットの利用は経営改善に有効とみる企業は1年前より現在の方が多くなっている。対照的に、ECの普及・拡大が自社に好影響があるとみる企業は昨年に比べて減少、さしたる影響はないとする企業は増加し、半数を占めている。総じて、効果が確実に見込める目的<相手の顔が見える商取引や情報収集・通信のツール>にインターネットを活用する企業が増加している。一方、ECに対する過大な期待は沈静化したと言える。
なお、EC実施企業では、ECの有効性を規定する要因としてクイックレスポンスを最重視、代金決済や顧客情報のセキュリティも重要と考えている。



【概要】


1
インターネットの導入状況
~導入企業は8割に達する

インターネットの導入率は82.1%と全体の8割に達した。一方、検討中の企業(8.2%)、導入予定のない企業(9.7%)はそれぞれ1割を切った(図表1)
業種別の導入率をみると、加工型製造業(91.2%)、サービス業(89.3%)の導入率が高い(図表2)。規模別には、大規模中小企業(89.0%)が9割に迫る勢い。小規模中小企業(72.7%)でも7割に達した(図表3)

2
ホームページの開設状況
~インターネット導入企業の6割が開設

インターネット導入企業では、ホームページ(以下、「HP」と略す)の開設率は63.3%と、2000年8月時点(56.7%)から上昇。全体に対しても5割程度に達している。一方、開設の「予定なし」(12.2%)は2000年8月時点(13.1%)と同程度で推移。サービス業(82.5%)、小売業(71.3%)、加工型製造業(69.7%)の開設率が高い(図表4)
ホームページの更新頻度は、「必要の都度」(50.5%)とする企業が多く、2000年8月(47.1%)からもやや増加。一方、定期的に更新している企業の比率は若干低下(図表5)

3
ホームページ上での販売・注文の受付
~電子商取引の普及ピッチは相対的に緩やかに(電子商取引:調査要領の(注1)参照)

電子商取引に取り組んでいる企業の比率は、HP開設企業の37.5%と2000年8月時点(40.1%)からやや低下。また、検討中の企業の比率も低下(同:39.2%→同:35.1%)。インターネット・HPの導入・開設率が上昇していることから、全体としては電子商取引を実施している企業はやや増加しているものの、インターネット・HPの導入・開設が順調に普及しているのに比べると、中小企業の電子商取引への取組み意欲は相対的に落ち着いたものとなっている(図表6)
業種別にみると、サービス業で電子商取引を実施している企業が多い(58.8%)。一方、小売業で低下が著しい(2000/8:49.3%→2001/8:35.7%)。

4
インターネットの利用目的
~電子商取引は減少、有効性が確実な目的では増加

インターネット導入済の企業では、現在実施中の目的としては「一般的な情報収集」(82.4%)や『取引先との電子メール交換』(68.2%)など、基本的なものが2000年8月と同様に上位を占めている。2000年8月と比べると、電子商取引関連(注2)では、「特定企業との受発注取引」(26.0%→32.7%)が増加する一方、「BtoC」(15.9%→8.4%)、「BtoB」(11.0%→6.1%)は減少している(図表7)。今後実施を検討中の目的としては、「特定企業との受発注取引」(17.6%)が最も多くなっている(図表8)
インターネットの導入を検討中の企業では、「一般的な情報収集」(57.1%)や『取引先との電子メール交換』(54.3%)など、基本的な目的に続いて「特定企業との受発注取引」(40.6%)が続いている(図表9)

5
インターネットの利用目的別の効果及びその内容
~高度な目的の効果は十分と言えず

現状ではインターネットの利用目的として効果を上げているのは基本的・定型的なものが多く、「特定企業との受発注取引」を除くと電子商取引関連等の比較的高度な目的では効果を上げている企業は少なく、効果がなかったとする企業も相対的に多い(図表10)
効果があったとする利用目的についてその内容をみると、BtoCでは「売上増・受注増」(86.0%が多い(図表11)。BtoBでは2000年8月に比べて「売上増・受注増」が減少している(66.7%→41.2%)(図表12)。一方、特定企業との受発注取引、意見やクレームの受付では2000年8月に比べて「売上増・受注増」が増加している(各19.5%→24.6%,13.3%→24.0%)(図表13,14)。また、原材料や備品・消耗品の購入では「仕入単価の低下」、「物流費の削減」が増加している(各56.3%→61.4%,2.9%→15.8%)(図表15)

6
インターネットの利用による経営改善への効果
~有効と考える企業は1年前より多い

インターネットの利用による経営改善への効果について、1年前の判断では『効果あり』とする企業は5割であったが、現在の判断では6割に増加している。業種別には、サービス業では現在約7割の企業が『効果あり』とみている(図表16)

7
電子商取引の有効性に重要な要因
~クイックレスポンスを最重視。代金決済・顧客情報のセキュリティも。

電子商取引の実施企業を対象に電子商取引の有効性に重要な要因をみると、BtoC、BtoBともに「クイックレスポンス」が最も多い。BtoCでは、「製・商品、サービスの分かりやすい説明」、「安全な代金の決済方法」、「製・商品、サービスの独自性」が以下に続き、BtoBでは「安全な代金の決済方法」、「製・商品、サービスの分かりやすい説明」、「顧客情報のセキュリティ体制の確立」が続いている。「価格競争力」はBtoC、「アクセス時間の自由度」はBtoBの方がそれぞれBtoB、BtoCよりも比率が高くなっている(図表18)
全体を対象にして重要な要因をみると、上位の2項目はBtoC、BtoBともに電子商取引の実施企業と同じである。「価格競争力」と「アクセス時間の自由度」について、BtoC、BtoBの比率の上下関係が電子商取引の実施企業を対象とした場合と逆転している(図表19)
BtoC、BtoBともに、HPを定期的に更新している企業で効果が高い傾向がみられる。特に、BtoCでは2000年8月時点以上にその傾向が鮮明になっている(図表20,21)

8
電子商取引の普及・拡大の影響
~好影響を見込む企業は減少

電子商取引の普及・拡大の影響は、「さしたる影響はない」とする企業が48.5%を占めている(図表22)。また、『好影響がある』、「わからない」とする企業が2000年8月時点に比べて減少する一方、「さしたる影響はない」、『悪影響がある』とする企業が増加している。特に、卸売業、小売業で『悪影響がある』とする企業の増加が目立つ。



【調査要領】

○調査目的

(1)中小企業でのインターネットの利用等の現状と今後の方向性の分析
(2)中小企業の電子商取引に対する認識と取組み状況の把握

○調査時点

2001年8月1日

○調査対象

商工中金取引先5,337社(有効回答 2,148社、回収率40.2%)

○調査方法

調査票によるアンケート調査(郵送自記入方式)

○調査事項

(1) インターネット・ホームページ(HP)の導入・開設状況
1. 導入・開設時期、2. 導入予定なしの理由、3. HPの更新頻度、他
(2) インターネットの利用動向
1. 目的、2. 目的別効果、3. 目的別効果の内容、4. 経営改善に対する効果、他
(3) 電子商取引の動向
1. 電子商取引の有効性に重要な要因、2. 電子商取引の普及・拡大の影響、他

(注)本調査での用語の定義
1. 「電子商取引(EC)」とは「ホームページ上での販売・注文の受付」あるいは「BtoC」「BtoB」を指す。
2. 「電子商取引関連」とは上記に加えてインターネットによる「特定企業との受発注、ソフトウェアの入手、原材料や備品・消耗品の購入、仕入・調達先の募集、電子入札への参加」も含む。

○ご照会先

商工中金/調査部(藤野)
TEL:03-3246-9370


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