~平成13年度中央会通常総会開催~
中小企業対策に関する要望

全国中小企業団体中央会 平成13年度通 常総会開催

全国中央会の通常総会が5月24日、東京赤坂の東京全日空ホテルで開催された

平成13年度 通常総会 当日は来賓として、平沼赴夫経済産業大臣、遠藤武彦農林水産副大臣他多数出席され、祝辞を述べられたほか、小泉純一郎内閣総理大臣よりメッセージが寄せられた。
 総会では、平成12年度決算関係書類、平成13年度事業計画及び収支予算及び電磁的方法による議決権行使を可能とすること等を理由とした定款の1部改正並びに「電磁的方法による中央会運営に関する規約」が承認されるとともに、中小企業がおかれている現下の厳しい状況にかんがみ、緊急議案として提出された「中小企業対策に関する要望」の8項目を決議し、政府、国会、政党等関係方面 に要望することになった。
 また、任期満了に伴う役員の改選が行われ、会長に大河内信行氏(愛知県中小企業団体中央会会長)が選任されたほか、本会の和田会長が副会長に選任された。
 なお、「中小企業対策に関する要望」は8項目であり、内容については次の通りである。

1. 中長期的な将来展望の提示と機動的マクロ経済運営
2. 不良債権処理の円滑化と中小企業金融対策の充実強化
3. 創業・経営革新支援の強化、組織法制の改善及び雇用セーフティーネット対策の充実
4. IT革命への積極的な対応のための支援の強化
5. 中小企業の実態を踏まえた会社法制の見直し
6. 法人事業税への外形標準課税導入絶対反対
7. 中小企業における事業承継税制等の更なる拡充
8. 中心商店街等の活性化


中小企業対策に関する要望

平成13年5月24日 全国中小企業団体中央会 通常総会決議

 わが国経済は、戦後初めて政府がデフレとの認識を示し、経済の基調判断を4カ月連続で下方修正するなど、極めて厳しい状況下にあり、デフレスパイラルの淵に立たされていると言っても過言ではない。特に中小企業においては、本会の実施している「中小企業月次景況調査」においても、昨年秋以降、景況DIが7カ月連続で低下し、今年に入ってからはさらに停滞色を強めているなど、景況の一層の下振れが懸念されている。
 また、中小企業は、IT革命の急速な進展と経済のグローバル化の一層の深化、下請分業構造の流動化、流通 構造の変化、規制緩和の進展、環境・エネルギー等の制約の増大など未曾有の構造的な難題にも直面 している。
 不良債権処理などバブル経済崩壊の後遺症からの早急な立ち直りが迫られる中で、国民の間に充満している将来に対する不安感を払拭するためには、政府が中長期的な視点に立って明確な将来展望を提示し、こうした展望を踏まえた機動的な経済運営が行われることが不可欠である。
  また、中小企業が現下の厳しい経済状況を克服しつつ、わが国経済のダイナミズムの源泉として期待される役割を果 たしていくためには、自助努力を基本としつつも、創業・経営革新などの前向きの取組みに対する支援の充実を図るとともに、金融や雇用面 でのセーフティーネット対策の強化等が肝要である。
  ついては、厳しい環境の下で懸命の努力を続けている中小企業が、直面 する多様な課題に積極的に挑戦し、本来の活力を発揮できるよう、下記事項の実現について、特段の配慮を強く要望する。

                         記



1  中長期的な将来展望の定時と機動的マクロ経済運営

 バブル経済崩壊に起因する金融システム不安などもあって、景気低迷は長期化し、事業者のみならず国民の将来に対する不透明感・不安感は、依然これを拭い去ることができていない状況にある。
 このため、政府は速やかに、中長期的な視点に立った明確な将来展望を提示することにより、国民の将来に対する不透明感・不安感を払拭することが何よりも重要である。
  こうした明確な将来展望の下で、緊急経済対策で示された不良債権処理や証券市場の活性化等の構造的な課題など、様々な構造改革への積極的な取組みを促進していくことが肝要である。
  このような構造改革への円滑な対応を図る上で、デフレと言われる景気低迷からの早期の脱却を図ることが不可欠であることから、マクロ経済運営面 においても金融面での量的緩和策を継続し、平成13年度予算の前倒し執行や予備費の効果 的活用に努めるとともに、今後の経済情勢を注視しながら、補正措置も視野に入れた機動的な対応を図ることが必要である。

2  不良債権処理の円滑化と中小企業金融対策の充実強化

 金融機関等の不良債権処理が遅れることとなれば、金融システム不安や貸し渋りの再燃のみならず、デフレ懸念の一層の深刻化を招来しかねない。
 したがって、機動的なマクロ経済運営を基本としつつ、金融機関等の不良債権の抜本的なオフバランス化を促進するため、経営困難企業の再建及びこれに伴う債権放棄に関するガイドラインの早急な整備、債権放棄の際の税制上の措置の明確化、再建計画中の企業への融資枠組(DIPファイナンス)の充実、デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)の活用の円滑化などを図るとともに、併せて、証券市場活性化のための構造改革、証券関連税制の所要の改正、土地の流動化のための不動産証券化の推進、中小企業の有する売掛債権流動化促進、などの対策を早急に実施することが必要である。
  また、金融機関の再編や不良債権のオフバランス化の強化は、金融機関の中小企業に対する選別 融資を強めたり、リストラに取り組む大企業等と取引関係にある中小企業者にも大きな影響をもたらすことが懸念されることから、厳しい経済環境の中で事業の継続に真剣に取り組んでいる中小企業者に悪影響が及ぶことのないよう、中小企業金融・信用保証制度の弾力的運用をはじめとする所要の金融セーフティーネット対策に万全を期すべきである。

3  創業・経営革新支援の強化、組織法制の改善及び雇用セーフティーネット対策の充実

 中小企業は、その雇用創出機能を期待されながらも、現実には長期にわたる景気低迷の下で、リスク投資に積極的に踏み出せないまま体力を消耗させつつある。このため、政府が先に設置した「産業構造改革・雇用対策本部」の主導により個人や中小企業が一層積極的に創業や経営革新等「前向きの取組み」に挑戦し得る環境を整備するとともに、中小企業にも十分配慮した雇用セーフティーネットの充実が必要である。
 具体的には、まず、IT分野における高速・安価なインフラの速やかな整備・普及、介護・福祉分野における新規参入の容易化など、新市場の開拓に資する制度改革を強力に推進することである。
 また、中小企業者の研究開発等のリスク投資に対する助成金や融資制度を拡充するとともに、「中小企業創造活動促進法」に係る特定中小企業者や「経営革新支援法」に係る経営革新計画に関する認定基準の緩和も図られるべきである。
 さらに、個々では不足する経営資源を相互補完し合うことができ、かつ、少ない資本で事業をスタートできる中小企業組合制度について、より活用しやすくする見地から、1. 認可行政庁を組合の主たる事業の所管行政庁に一元化する、2. 最少組合員数要件を3人(現行4人)とするとともに、組合員となるための要件を、例えば「資格事業を行う意図を有する者」へと弾力化する、3. 個人創業の手段として有力な「企業組合」の認可について認証に近い運用をする、4. 組合の機関運営の一層の効率化のためIT活用をさらに広範に容認する、などの改善が図られることが求められる。
 雇用面のセーフティーネットとしては、中小企業からの離職者の場合、事業主負担による離職者訓練等の再就職援助は、なかなか期待しにくいことから、中小企業の再就職援助に対する助成率の改善及び手続事務負担の軽減が図られる必要がある。また、中小企業における雇用創出促進の見地から、雇入れ対象を常用雇用に限定しないこと、公共職業安定所の紹介を要件としないこと等の弾力化が検討されるべきである。

4  IT革命への積極的な対応のための支援の強化

 わが国経済の構造改革を推進し、国際競争力を高め、21世紀における持続的成長を確実なものとしていくためには、中小企業経営の各分野に一層のITの普及を図り経営基盤を強化するとともに、ITによってもたらされる様々なビジネスチャンスを積極的に捉えていくことが重要な課題となっている。
 また、「e-JaPan重点計画」において示されている電子政府の実現や、電子商取引の市場規模70兆円への拡大を視野に入れた、中小企業者の的確なIT対応が不可欠である。
 しかるに、大企業等に比べて資金、人材、技術力等に制約のある中小企業においては、最新の情報通 信技術への対応は必ずしも十分とは言えず、「デジタル・デバイド」といわれる情報力格差がさらに拡大すれば、中小企業に期待される経済発展のダイナミズムを損なう要因ともなりかねない。
  このため、先に策定された「中小企業IT化推進計画」を着実に実現するなど機動的な支援を展開することが必要である。とりわけ、急速に進展している電子商取引等に対応するためには、組合等の連携組織を活用した取組みが効果 的であり、1. 中小企業が使いやすいアプリケーションソフトの開発やビジネス情報ネットワークの構築、2. 中小企業が的確にITを導入するための指南役であるITコーディネータの養成、3. 中小企業が電子商取引等に対応する上で必要となる人材育成策の拡充、4. 急激に増加しているコンピュータ犯罪やコンピュータ・ウイルス等セキュリティ対策の強化、5. 高速かつ安価なネットワークインフラの整備、6. 電子認証システムの整備及び普及、等について一層の支援強化が必要である。

5  中小企業の実態を踏まえた会社法制の見直し

 法制審議会が取りまとめ、先般公表した商法等改正「中間試案」には、中小企業の柔軟な経営に資する改正点がかなり盛り込まれているものの、計算書類の開示に関しては、中小株式会社の実態を無視した規制強化が打ち出されている。
  すなわち、現行商法では、株式会社は「官報又は日刊新聞紙」に「貸借対照表又はその要旨」を公告することとされているが、中小株式会社においてはその実施状況が極めて低い中で、中間試案では、法務省が新たに構築する計算書類の公開システムへの提供・公開を義務づけるとともに、公開すべき書類の範囲についても「貸借対照表」のみならず、「損益計算書」及び「監査報告書」にまで拡大するものとなっている。
  これは、多数の株主や債権者が存在する大会社を念頭に検討されている内容を、株主や債権者が通 常極めて少数である「非公開型中小会社」に対しても実態を無視して強制するものであり、こうした考え方やこれに伴う事務負担増は到底中小企業者の理解を得られるものではない。
  計算書類の開示については、多くの中小株式会社が資金調達の円滑化等の観点等から計算書類の開示の実益を理解しつつ、前向きに取り組んでいけるよう改善が図られるべきと考える。具体的には、公開すべき書類の範囲は現行どおりとしつつ、公開方法について「官報又は日刊新聞紙」に加えて、コスト及び公衆縦覧性から現実的な手段である「インターネット(自社ホームページを含む)」による公告を新たな選択肢として認めることが適切である。

6  法人事業税への外形標準課税導入絶対反対

 平成13年度税制改正においては、外形標準課税の導入は見送られたが、依然としてこれを導入すべしとの論調も完全に終息したとは言えない状況にある。
  外形標準課税は、1. これが人件費に課税される場合には、当面のわが国経済の最重要課題である雇用創出に逆行し、経済活力を削ぐこと、2. 「担税力」のない赤字法人(約160万社、うち99%は中小法人)への課税はもとより、収益性の低い中小黒字法人までも増税となるなど、中小企業にとって課税強化となること、3. ベンチャー企業など、いまだ収益力の弱い新規創業企業の税負担を増大させ、その成長発展を阻害しかねず、政府の創業支援の方針にも逆行することなど、その悪影響は極めて重大かつ深刻である。
 したがって、外形標準課税の導入は今後とも絶対に行うべきではない。

7  中小企業における事業承継税制等の更なる拡充

 平成13年度税制改正において、相続に係る特定小規模宅地等に対する課税の特例の拡充、贈与税の基礎控除額の引上げなどの改正が行われたところであるが、いわば「第2の創業」とも言うべき中小企業の事業承継を一層円滑化するためには、今後とも、相続税・贈与税の最高税率を引き下げ、税率構造を緩和する方向で見直すとともに、事業用資産の生前贈与について相続時まで贈与税の納税を繰り延べる生前相続特例制度の創設等、引き続き事業承継税制の拡充に積極的に取り組む必要がある。
  また、中小同族会社の留保金に係る重課税制度を廃止すべきである。

8  中心商店街等の活性化

 長引く個人消費の落込み等により、全国各地の商店街等の商業集積は大幅な売上げ低下が相次ぎ、かつてない厳しい状況に陥っている。このため、政府及び各地方自治体は、まちづくり3法の趣旨を踏まえた中心市街地の活性化はもとより、多様で個性ある魅力的な個店の集積としての街づくりを強力に推進する必要がある。
  また、国は、ITを活用し商業集積としての魅力を高めるための多機能カード事業やバーチャルモール事業及び高齢者対応事業を推進するとともに、個店の競争力を強化するため、小売業同士の共同化や卸売業者との連携によるEOS(電子受発注システム)等を活用した商品調達の効率化等を図るための支援措置等を拡充強化すべきである。


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