平成13年
巳年の業界展望


◎製造業

○出版
東法出版事業(協)専務理事 
星澤哲也氏

○窯業土石
日本屋陶器瓦(協業)理事長 松澤勝司氏

○機械金属
佐久市工場団地事業(協)理事長 内藤毅氏

○電気機器
長野県プリント回路事業(協)理事長 牛山今朝治氏


◎非製造業

○(流通業)卸売業
(協)長野アークス理事長 夏目潔氏

○(流通業)小売業
小諸観光センター販売(協)理事長 内藤夏雄氏

○サービス業
浅間温泉旅館(協)理事長 今井将人氏

○建設業
長野県室内装飾事業(協)理事長 宮澤幹雄氏


出版     

東法出版事業協同組合
専務理事 星澤哲也

 読者の活字離れが叫ばれて久しい。出版業界は、本当の意味で生き残りをかけたサバイバルの時代にさしかかったと思う。
 業界は3年連続しての対前年マイナス成長であり、売上げ規模は6年前まで後退してしまった。この原因については携帯電話の驚異的な普及(4年前から)による児童生徒学生の通話料への支出、インターネットの拡充による中高年社会人の時間消費のための本離れ、デジタルテレビの出現、コミック喫茶の進出など、売上げマイナス要因を挙げればきりがない。
 今世紀の経済・社会の仕組みを根底から変えてしまいそうなIT社会において出版業界では既に辞書や事典、六法類などがCD・ROM化され電子化への移行により媒体変化が起きており、また役所や企業、団体などでも組織内LANによる検索システムの構築など、紙から電子化への大きな流れが見られる。
 このようなITの時代にあって業界全体が今まで以上のプロフェッショナルスタンダードを求めることによって、多様なベンチャービジネスやすき間ビジネスを生み出すことも不可能ではない。ソフト産業分野での諸々の開発は、我々クリエイティブな世界に携わる者の喜びとしなければならない。舞台は出来つつある。そこでどのように演出し演じるかは我々プロデューサーにまかされる。
 大事なことは奪われたお金と時間をどのようにして取り戻すことが出来るかにあります。なかなか難しい問題ですが……。
 知識や教養を身につけたいのであれば、やはり本に勝る媒体はないと私は確信いたします。私は時々、お会いする人達に質問をいたします。昨夜テレビを見ましたか?どんな内容でしたか?今覚えていることは何ですか?と。大半の人はほとんど覚えていないと回答します。一方的に送られた画面とリラックスした時間の経過の中ではそれはそれとして価値があります。
 一方今朝新聞を読んできた人との会話では内容もさることながらその行間を読みとって自分自身の意見を述べられる方が多勢おいでになる。ディスプレイと紙面とでは、これだけの差が生じることにもう1度、時間の大切さを認識してほしいと希うところであります。
 特に知識欲旺盛な30代位までの方には声を大にして叫びたい。どんなジャンルのものでも構わないが読書の習慣と継続をお願いしたい。活字を追うばかりではなくその行間に隠されている何かを見つけ出し、自分の考えと対比しながら、常に考えることへの訓練を身につけることが肝要と思います。
「本」は時間、空間を超えて過去の英知、現在の理解、そして未来への洞察を与えてくれるすばらしい媒体であると確信いたします。
 その上で我が業界も「本」の持つ明確な価値やおもしろさ、話題性を読者ニーズに合わせた商品開発に専念しなければならないと痛感する次第です。

窯業土石    

日本屋陶器瓦協業組合
理事長 松澤勝司

平成13年の景況見通し
 今年は、21世紀最初の年として大変記念すべき年であり、かつ我々建築・瓦業界にとっても重要な年になると位置付けております。長野県の県政も若い田中新知事となり、県内公共事業の見直し等の土木・建築業界に厳しい影響が出て来ることと考えます。また、昨年より「住宅品質確保促進法」の施行、建築基準法の改正と住宅の10年保証に関する規定・業務等が厳しくなり、一段とコストアップを引き起こす要因が増えてきております。またその反面、ハウスメーカー等大手住宅メーカーが本物志向となり、屋根材として耐久性・経済性に優れた陶器瓦を指定する傾向が増えているという、うれしい変化も起きてきております。また、戦後50年以上を経過して、全国的に約10、000万戸という建て替え住宅の潜在需要・リフォームが今後急速に発生するという事実もあります。もうひとつ、世の中の環境問題意識の高まり、地球温暖化防止など屋根に関する部分の《太陽光発電システム》の注目と目を見張る普及スピードの早さ等21世紀に向けて、好材料も見え隠れしてきました。
 本年より当組合も、この成長分野への果敢な挑戦を開始する年と位置付けております。まずはリフォーム分野に対しては、4年前に開発した”新軽量耐震瓦スカイハイ“の全国普及、増産・拡販を考えております。スカイハイは、実用新案・商標意匠登録も済み、新築住宅はもとより、リフォーム住宅に最適な陶器瓦として、研究・開発した商品です。また、3年前より始めました”太陽光発電システム“の販売・工事も長野県では程々の実績がついて参りました。このシステムは、設置工事が完了して初めて価値のでる商品であります。我々屋根のプロがお客様に安心と安全をお届けする心構えで日々販売、工事をしております。この太陽光発電の市場は2015年には全国の1/3住宅に設置されると予測され、国 が補助金制度を年々増額して、この近年2倍3倍と急成長している期待の事業分野であります。
 私は、21世紀の住宅の屋根は、雨・風をしのぐものだけではなく、地球環境に優しい無限のクリーンエネルギー活用の熱・電気の発生源・源となり、住宅における大変重要な存在へと変貌をとげることと確信しております。
 我々瓦屋根業界もこの機会を1000年に1度のチャンスと捕らえ、伝統の瓦業と太陽光発電の最先端技術をミックスした、レーシングカーに盆栽をのせて未来に突き進むような魅力のある経営組合活動を進めて参りたいと思います。本年も温かい御指導の程よろしくお願い申し上げます。

機械金属   

佐久市工場団地事業協同組合
理事長 内藤毅

 国の施策は、経済の構造改革を、引き続き推進していく中で、IT革命ともいうべき情報技術産業に、特別の力点を置いていくことが明確にされている。
 このような中で、我々中小企業者も、その流れをしっかりとつかんで、IT産業に関わる仕事に、方向を向けていかなければならないと考えている。
 全体的に景気は上向いていると云われるが、こと中小企業にとっては、まだまだ厳しい状況がある。信用保証協会の特別保証によって、かろうじて守られてきた中小企業も、ここにきてバタバタと倒産している。
 いまこそ中小企業は、連携によるメリットを最大限に生かすべく対応しなければならないと思う。特製品開発や新市場開拓は、力の弱い一社一社の中小企業では対応すべくもないが、これが集まって、お互いの長所を合算するならば、より付加価値の高い産業基盤を確立できると思う。
 21世紀に入って、中小企業の連携は、益々重要性を帯びるのではないかと、このごろ深く感じ入っている次第である。
 それにつけても景気循環説からみると、そろそろアメリカを中心にした世界大不況がやってきてもおかしくない頃である。
 しかし、もし今、あの第2次大戦前の世界的大不況が、実際にやってきたらと思うと、ぞっとする。今、世界の株価は下がり傾向にあり、信用経済で成り立っている世界経済が、一挙に瓦解することがあってもおかしくない。ただひたすら、世界不況がおこらないように祈りつゝ、日本経済の構造改革が、あまり大きな痛みもなく、ソフト・ランディングすることを願っている。

電気機器   

長野県プリント回路工業協同組合
理事長 牛山今朝治

平成13年度業界展望
 長いこと続いている景気低迷の中、当業界は比較的恵まれた環境で今日を迎えております。業界は、日本プリント回路工業会と称し、5百社程度。内大企業にランクされるのは80社。大部分は資本金3億円以下の中小企業で占められている。
 1999年における業界の生産高は2兆1千億円、2千年度2兆5千億円(推)、2千1年度2兆8千億円(推)と比較的規模の小さい業界であります。
 内大企業の生産高比率67%、中小企業33%となっている。
 電子部品、半導体は私どもの業界が製造するプリント配線板に搭載されて、初めてその機能の素晴らしさを発揮する事が出来るものです。
 人間に例えるならば電子部品、半導体は頭脳であり、プリント配線板は差詰め、血液を運ぶ血管と言えましょう。更に最近は、半導体を実装する上で従来はリードフレーム上に実装する方法がメインでしたが、最近の半導体は大容量、高機能化、加えて小型化が進み、分野によってはリードフレームに実装出来ないものが増えております。
 数年前からこのリードフレーム実装に代わって、BGA実装、CPS実装が開発され、それに使われるプリント配線板の需要が急速に増加しております。
 この半導体用のプリント配線板は1部の限られた会社にしか出来ませんが、業界のレベルアップと秩序、そして重要な牽引役になっております。
 この分野の半導体はパソコン携帯電話用を含む情報、通信分野をはじめ、IT革命と称する分野に膨大な数量が使われてきておりますし、小型化と高機能化が急速に進展している為、技術的に高いレベルのプリント配線板が要求されているわけです。
 しかしながら、業界全体を取り巻く環境は、常に短納期対応、価格競争、高密度化への技術対応、更には国内外の市場に於ける競合激化と変化に対応する為企業の大小を問わずランクアップを図っているのが大きな特徴であります。又、大企業では、環境問題等の規制強化を重要視する傾向にあり、コストアップの要因になっております。このような経営環境の中で業界は、付加価値の拡大と短納期化、技術力の更なる向上を図る為の内製化が重要視されている。
 又半導体、IT等の分野に関係するプリント配線板メーカーは生産能力増強と併せコスト削減、生産性向上に重点を置き、自動化設備の導入を積極的に進めている。当組合としては各社が国際マーケットの中で国内外のメーカーとの競争に勝ち残れる体質を保持し続ける為に、コスト、技術、品質を最重点として、技術講習会、先進企業視察、共同研究開発を進めて来たが今後更にレベルを高めて、推進すると共に現在数社の組合員が取り組んでいるTPM活動を軸にして、活発な情報交換を実施して組合員のレベルアップと体質強化を図るとともに、自然に対し優しさと愛情をもって接し限りある資源を大切にしながら、人類をはじめ地球に生存する尊い命を守る為に、今日まで蓄積した多くの技術と知恵を活かし環境保全を推進していく所存であります。

[流通業]卸売業 

協同組合長野アークス
理事長 夏目潔

『21世紀を迎えて思うこと』
 世紀末から新世紀にかけて、まさに時代の転換期に遭遇していることを実感するここ数年でありました。20世紀終盤の10数年間、常に時代の大転換期とか変革の時とか言われてまいりましたが、将来の歴史的な評価では、多分ここ数年間が歴史的大転換期だったと言われるような気がします。長引く不況に加え極めて構造変化が進行している以上、私達の経営も只単に体力の消耗を少なくし、『生き残り』等と悠長な考えで済まされる時期は過ぎたような気がします。いかに『勝ち残る』かという積極的な姿勢に転換しなければならないと考えます。とりわけ私達のような中間流通に携わる者にとっては、取り引き環境やシステムが目まぐるしく変化するとともに、私達の得意先の経営環境が激変する中、この一手が決め手というような妙手は無く、ややもすれば寡占化の波に飲み込まれる不安感に苛まれているのではないでしょうか。昨年末には海外資本の流通業が日本への進出を開始し、メガバトルと呼ばれる流通戦争が始まりました。この事により、単なる勝敗の行方以上に、確実にわれわれ流通に携わる者に対しても一段とクローバルスタンダード化が急速に押し寄せるものと思われます。このように書いて来ると年初から暗い気持ちになってしまいますが、要はこの位厳しい現状にあるとの認識を持った上で、どの様に対処して行くのかを考えなくてはならないということです。世の中はすべからく『IT時代』の到来ということで、『IT』に関係しない企業は衰退してしまう様な錯覚に陥りがちですが、いかに『IT』を活用してそれぞれの企業の経営体質を変化および強化させるかが、課題であります。また、変動する企業業績に対してもかなりフレキシブルに対応して行く為には、アウトソーシングと言う課題にも積極的に取り組む必要もあります。それにも増して大事な事は我が企業の存在価値、我が企業の強み・弱みを徹底的に分析し、顧客にとって絶対必要とされる存在を目指すということだと思います。この数年間、将来の方向が全く見えなかったのですが、朧気ながら流れだけは少し見えて来たように思えます。21世紀は始まったばかりであり、企業は限りない継続と発展を目指すものでありますから、ここはじっくり、新たな百年の計をしっかり立てる1年にしたいと思っております。

[流通業]小売業 

小諸観光センター販売協同組合
理事長 内藤夏雄

 昨年の国内経済は、各種政策の効果と輸出の増加により、業種間格差はあるものの、全体として緩やかに回復していると総括しているが、個人消費は依然足踏状態が続き回復感の乏しい状況でありました。上場企業の3月期決算は全産業ベースで売上高が前期比4・9%増、最終利益も増加するものといわれ、4年ぶりの増収増益が予想されているが、個人消費については雇用、所得環境に目立った改善が見られない中で引続き厳しい状態は脱しきれない状況にあります。
 国民が景気の先行きや、政府の施策に希望がもてなくなっているからだともいわれている。政治の不安感を払拭し強い指導力の発揮を期待したいものである。
 サービス業を取り巻く状況も不況や少子化の影響もあり、大変厳しいものがありますが、社員の意識革命を図り、フル回転して仕事に取り組む環境作りに努めて参りたいと思っているところです。
 小諸市では観光の目玉となる浅間山の登山規制緩和に伴うシェルターなど設置作業が進められてきていましたが最終登山道整備が冬期に入った為、今春の浅間山開きを目途に準備を整え全国にPRやイベントが計画されています。今、グリンツーリズムは潮流期といわれていることから、ホテル、旅館、民宿は各組合あげて宿泊イベントを検討しています。土産品組合市街地商店連合会も商工会議所を事務局として県内外客の受入体制を進めている。
 小諸市は市長を大会長に、商工会議所会頭、小諸市観光協会長、小諸市商店連合会会長を副会長として関係組合との連携を密にして浅間山登山規制緩和による山開きに向け、30万人ともいわれる登山者の対応に取組んでいる。
 しなの鉄道でも、SLの走行、展望車の運行等、行政が中心となって関係市町村との話合が進められている。
 21世紀の幕開は小諸市にとって正に夜明けであり初日の出の年である。
 私共小諸観光センターもホテルの独自イベントにも合せて、新たな時代に向かって事業展開を図って参ります。

サービス業  

浅間温泉旅館協同組合
理事長 今井将人

平成13年の景気見通し
 一言で言えば、誠に厳しいと言わざるを得ない。昨年は、年の初め頃からよい方向に向いていたので、期待をしていたのが、9月頃より雲行きが怪しくなってきました。
 この業界は、他の業界と密接に関係しています。たとえば建設業界が元気がないと、裾野が広い業界ゆえに、その影響は大きいし、又青果物、果物を扱ういわゆる農協関係の生産物の出来、不出来によっても影響を受けます。
 そして、天気の影響もかなりのものです。
国の政策が国民に対する、将来へのビジョンの提言不足と老後への不安材料も重くのしかかっている事も見逃し得ない事であります。
 不況と言われて、余りにも長い年月が過ぎてきました。
わが旅館協同組合としても、ただじっと景気の良くなる事を待っているわけでなく、観光客のニーズに応えるべく頑張っています。その1つに自然へのふれあいと温泉に入って、のんびりしたい気持ちは、今も昔も変わらない。
 ただ、それだけでなく何かを求めている。その1つに、露天風呂への欲求があります。当組合の旅館でも、その欲求に応えるべく風呂の改造が成されています。その他浅間温泉そのものの魅力作りが急務とされます。
 本年は、昨年に引き続き『ザ・ツールド美ヶ原』を7月1日(日)に決定。松本市主催、浅間温泉観光協会が実行委員会を組織し、全国に参加選手を募集し開催します。
 この『ザ・ツールド美ヶ原』を通じて、美ヶ原高原のつつじの良さを知って頂き、同時に浅間温泉の知名度を揚げていきたい。
業界の抱える課題
 旅館の建物は、商品その物であります。1度建てれば建て替えするのに最低15~20年は無理である。固定資産税の負担が重いのが実感であります。
 雇用問題では、就業時間が不規則であり、その対応に苦慮している。又同業者間でのダンピング競争が激しい。この事は他の業界に於いても同じ事が言えるだろうと思います。近年客層が家族、友人、小グループ化に移行し、従来の団体旅行はメッキリ減っているのが実情です。この事が大旅館の低料金化への引き金にもなっている。また、大手斡旋業者のパック企画も低料金志向であります。
組合運営について
 当組合としては、パソコンによる宣伝活動として松本商工会議所の窓口を利用してホームページを2年前から立ち上げました。旅館の若い世代の人達が協力し合って宣伝に力をいれています。
 毎月理事会を開催し、宣伝委員会には、良いと思える情報提供の宣伝には積極的に参加する様に心掛けてもらっている。いずれにしても景気の浮揚を願うばかりです。

建設業   

長野県室内装飾事業協同組合
理事長 宮澤幹雄

 21世紀の到来に先駆けてトータル的に古い体質改善が求められる時がきた。
 厳しい環境が続いている現在、愚痴など言っている時ではない。流れを早く読み取り対応すべく努力を怠ってはならないし自身の行動に自信と勇気を持って改革を行い悪い態勢の立て直しを図り安定経営に整える大切さが必要なのではないだろうか。私共の専門業種である内装仕上げ工事業は、こうした変化の中で高度な技能者を必要とする分野がシステム化され規格化された内装工事が一般化した後もニーズが残るであろう特定の分野で高品質な仕事を行える技能者の養成を始めなければならない。又これからは保障制度も内装施工の対象になる可能性もある。業界の抱える課題は異業種の人達の進出である。特にこのような人達が施工単価の乱れと技術面における不安感を植えつけている、バブル崩壊後発注者の意識は大きく変化し元請けからはより一層厳しい要求を突きつけられるようになっている。またIT技術の進展に伴いインターネットを利用してより安いところを検索発注を行うような動きも出てきている。こうした状況下、基幹技能者を必要とする技能開発計画の策定はまさに喫緊の課題となっている。
 建設省も自らが主導し我々業界に対し経営基盤の確立、施工技術の確立を進めるよう促している。基幹技能士の育成とはこの施工技術の確立の一部と位置づけられるものであります。住宅の長寿化傾向に伴うリフォーム、バリアフリー対応の受注は増加が予想され我々の組合員の仕事はより重視されていくものと思う。


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