靴下の商品企画・卸のA社は、フランチャイズ店のPOSデータを靴下メーカーや糸商社などと情報ネットワークで共有。一足からでも注文を受け付けながら、全国の店舗に着実に翌日納品する効率的なサプライチェーンを構築した。
同社の特徴としては以下があげられる。
第一に、小売店から同社(卸)、メーカーだけではなく、メーカーが原料を仕入れる糸商社、そして糸商社が染色を委託する染工場等、靴下の製販プロセスにかかわる取引先すべてをネットワーク化しており、ネットワークの範囲が広い。
第二に、POSデータを、「赤色の糸が○グラム、黄色の糸が○グラム」など、素材レベルのデータに分解し、このデータを利用して糸商社の原料調達や、染工場での染色作業を最適化しているなど、各プロセスで共有化している情報の質が高いこと。
これにより、製造と販売の全プロセスでの無駄を大きく削減。納期も大きく短縮し、店が追加発注した商品は翌日に納品して売れ筋を逃さない体制をつくりあげている。
同社は、このシステムを含めた川上の取引先を含めたネットワークにより、9期連続で増収を続けている。
(「日経情報ストラテジー 中堅・中小企業版経営情報化読本」p6-p7の記事を一部抜粋)
LPガスの販売を主たる業務としているB社は、同社独自の情報システムにより、業界の1社あたりユーザー数平均の25倍以上である約23,000のユーザーを管理している。
同社では、ハードもソフトも「あるものを使う」という発想をするアドバイザーの助言に基づき、独自の顧客管理システムを自社で構築し、きめの細かい顧客管理を行い顧客数を伸ばすことに成功した。
「情報は同時に全員に」ということをまだ紙を媒体とする時代から徹底してきた同社では、「顧客満足のために、過程も含めて情報を共有化する」、「従業者のプライバシーの情報等を除きオープンにできない情報は極力減らす」という社長のコンセプトのもと、顧客管理システムを自社で構築。このシステムにより、社外業務の進捗状況も携帯電話を使ってリアルタイムで管理し、かつ、どの社員でもお客様に対し同じようなサービスを提供することが可能となった。
一例を挙げると、従業者が新築中の住宅を見つけた際には、営業情報として社内に持ち帰り、次工程の部署に提供する。また、作業の進捗状況は、従業者の日報及び工事工程管理によって確認ができ、その後の完成検査につなげていく。さらに、新規入居の顧客に対しては、ガス開栓後10日ごろに「何かお困りの点はないか」の確認の電話をし、お祝いの花を届ける等、顧客に対するきめ細かなサービスの提供を行っている。このように、作業時やその後の顧客への電話でのサービス等、顧客との関係を共有化することで、個々の顧客の要望にあった対応ができることを目指している。システムを導入してもうまく使えていない企業が多い中で、勤務管理などで全員が必ず使わざるを得ないシステムにしたことも、
成功の要因の一つであると同社社長は言っている。
なお、同社ではこのほかにも、「受信する電話から発信する電話へ」として、コールセンターシステムも稼働させているが、今後は情報ネットワークを社外にも拡大していくことも予定している。
(出典:2000年(平成12年度)版「中小企業白書」)