平成11年度
中小企業白書の要点


 深谷前通産相は、4月25日の閣議に「2000年版中小企業白書」(「平成11年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「平成12年度において講じようとする中小企業施策」)を報告し、了承された。
 今回の白書は、36年ぶりに改正された中小企業基本法に基づいて作成された最初の白書であり、中小企業を「我が国経済の活力の源泉」と位置づけ、次のとおり分析している。

  1. コンピュータの高性能化・低価格化や、通信回線の高速・大容量化といった情報技術革新が、中小企業にもコンピュータ・ネットワーク活用の機会を広く提供するとともに、その競争環境を大きく変化させている実態を把握。
  2. 金融システム改革が、金融システム不安・信用収縮の厳しい体験と相まって、中小企業に「資金調達戦略」の見直しを迫っている現状を紹介。
  3. 我が国と米国の制度を比較し、「創業が活性化される事業環境」の必要条件について分析。

 平成11年度中小企業白書の要点については、次のとおりですので、組合及び組合員企業の運営指針としてご活用下さい。

 尚、この特集記事は、中小企業庁ホームページ(http://www.chusho.miti.go.jp/)「2000年(平成12年)版中小企業白書のポイント」を参考に作成しました。中小企業施策については8月号の活性化情報として発行する予定です。

第一部
構造変化する
経済社会での中小企業の挑戦
経済社会の構造変化と中小企業の対応
  • 平成10年秋を最悪期とする信用収縮の影響は改善したものの、平成11年度も、中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、景況の回復の足取りは大企業と比較して重かった。
    厳しい環境に加えて、中小企業の景況の回復が遅れている理由として考えられるのが、情報技術革新、資金調達環境の変化など経済社会の構造変化への対応の遅れである。
  • そこで、小規模企業をはじめとする中小企業が、経済社会の構造変化に対応し、以下の諸課題を克服しようとする姿を描く。

業種横断的課題
 -情報技術革新への対応
 -金融システム改革等への対応
 -大企業の雇用慣行の変化・アウトソーシングの進展への対応

業種ごとの課題
 -製造業における製品差別化競争への対応(研究活動、ISO等に対する取組)
 -流通業における消費者ニーズへの的確な対応
 -少子・高齢化に関連した家事支援サービス業の実態分析
創業・経営革新

 ・我が国の創業・経営革新の事業環境が整備されている状況を分析する。

〈米国の事業環境〉

  • 中堅・中小企業向けの直接金融市場(ナスダック)が活発。
  • ベンチャー企業に投資するベンチャーファンド(基金)が発達。
  • 大学からの技術移転が活発                 など

〈我が国の事業環境整備〉

  • 金融システム改革法(平成10年12月)により直接金融市場が活性化。
  • 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年10月)により、ベンチャーファンド(基金)の設立を容易に。
  • 大学等技術移転促進法(平成10年8月)により、技術移転機関(TLO)の設置を促進。既に10機関が設立済。
  • ベンチャー支援策を充実(平成12年度において講じようとする中小企業施策の中で、以下を実施)
(第20図・第21図)

 -中小企業・ベンチャー総合支援センターの整備
 -都道府県等中小企業支援センターの整備
 -地域プラットフォームの整備
 -エンジェル税制の拡充
 -創業・ベンチャー国民フォーラム
 -創業セミナー・創業塾の開催
 -ベンチャープラザ・ベンチャーフェア事業
 -ベンチャー・ワン・ストップ・サービス提供事業                    
                        など



第二部
近年の中小企業の動向
中小企業の動向

・平成10年秋を最悪期とする金融システム不安・信用収縮が中小企業に与えた影響と、中小企業の対応、政府の対策等について分析した。
・中小企業の景況は、緩やかに改善を続けているが、大企業と比較して回復の足取りは重い。
・信用収縮については平成10年秋頃と比較して、企業の貸出態度に対する懸念が薄らいでおり、中小企業についても、資金繰りに対する懸念の改善が見られる。



・平成10年秋に特別信用保証制度を実施してから、倒産件数は急速に低下した。
・特別信用保証制度を利用する企業の生産性は、利用していない企業よりも低いものの一般の信用保証を利用している企業よりも高い。これは、生産性の低い中小企業を温存し、産業界における新陳代謝を阻害したという批判は当たらないことを意味する。



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