全国中小企業団体中央会
平成12年度通常総会開催



 全国中央会の通常総会が、去る5月30日、東京全日空ホテルにおいて開催された。

 当日の来賓として、森喜朗内閣総理大臣、深谷隆司通商産業大臣、玉川徳一郎農林水産大臣、牧野隆守労働大臣が出席され、それぞれ祝辞を述べられた。
 通常総会においては、平成11年度の事業報告、決算関係書類、平成12年度事業計画及び収支予算が承認されるとともに、中小企業がおかれている現下の厳しい状況を打破して新たな課題に積極的に挑戦し、その活力の増進を図ることができるよう、緊急議案として提出された「中小企業対策に関する要望」の九項目を決議し、政府、国会、政党等関係方面に要望することになった。
 なお、「中小企業対策に関する要望」内容については、次のとおりである。
  1. 景気回復を最優先とした経済運営の推進について
  2. 法人事業税の外形標準課税導入絶対反対について
  3. 中小企業における事業承継、税制の更なる拡充について
  4. 貸し渋り対策など中小企業金融対策の充実について
  5. 中小企業のIT革命・EC(電子商取引)への対応円滑化のための支援の充実について
  6. 中小企業の発展基盤の抜本的強化に向けた中小企業対策予算の大幅な増額等について
  7. 経営革新、創業等への積極的な取組みを支援する中小企業連携組織対策の充実について
  8. 中心商店街等の活性化について
  9. 有珠山噴火災害に関する中小企業対策の充実について

中小企業対策に関する要望

平成12年5月30日
全国中小企業団体中央会
平成12年度通常総会

 わが国経済は、情報通信関連を中心に設備投資に持ち直しの動きが見られるなど、自立的回復に向けた動きが徐々に現われているものの、個人消費が低迷し、失業率も高水準で推移するなど、先行き不透明感がいまだ払拭されておらず、特に、中小企業においては、引き続き厳しい状況が続いております。
 さらに、中小企業は、経済のグローバル化とIT革命の急速な進展、下請分業構造の流動化、ものづくりの基盤である産業集積の弱体化の懸念、中小商業を巡る流通構造の変化、規制緩和の進展等による競争の一層の激化、環境・エネルギー等の制約の増大など、急激な構造変化に直面しております。
 こうした状況の下、新中小企業基本法を軸とした新しい中小企業政策が打ち出され、中小企業は、今後のわが国経済のダイナミズムの源泉として、新たな産業の創出、就業機会の増大、市場競争の促進、地域経済の活性化について、積極的な役割を果たしていくことが期待されており、このような期待に応えていく上で、経営革新や創業・新事業展開に果敢に取り組み、その発展基盤を強化していくことが大きな課題となっております。
 ついては、厳しい環境の下で懸命の経営努力を続けている中小企業が、このような新たな課題に積極的に挑戦し、その活力の増進を図ることができるよう、下記事項の実現について、特段の配慮を強く要望致します。



1.景気回復を最優先とした経済運営の推進について

 本年は、景気が回復軌道に乗ることができるかどうかの重要な年でありますが、中小企業の景況は、一部に改善の動きは見られるものの、その足取りは重く、なお予断を許さない厳しい状況が続いております。
 したがって、民需主導の景気回復の実現に向けて、その牽引車となるべき中小企業の活力を引き出すため、引き続き景気回復最優先の経済運営の下で、公共事業等予備費の機動的な活用など平成12年度予算の円滑な執行をはじめ、今後の景気動向を注視しつつ、切れ目のない景気対策を推進して頂くようお願い致します。

二.法人事業税の外形標準課税導入絶対反対について

 東京都の主要銀行に対する外形標準課税導入を契機として、外形標準課税の全国一律導入の議論が出ており、現在、政府税制調査会で検討が行われておりますが、法人事業税の外形標準課税は、(1)企業の利益の有無にかかわらず課税するもので、「担税力」のない赤字法人(約160万社、うち99%は中小法人)への課税はもとより、収益性の低い中小黒字法人までも増税となるおそれが強く、極めて多くの中小企業にとって課税強化となること、(2)企業経営の状況如何を問わず、人件費(賃金)に課税しようとするいわば人頭税であり、雇用創出がわが国経済の最重要課題であるにもかかわらず、企業や地域の雇用に抑制的に作用し、経済活力を削ぐおそれが強いこと、(3)ベンチャー企業など、いまだ収益力の弱い新規創業企業の税負担を増大させ、その成長発展を阻害しかねず、これは、日本経済を牽引する新規創業企業を支援することで産業再生を図るという政府の方針に逆行することなど、その中小企業の経営に与える影響は極めて重大かつ深刻であります。
 地方の税財源の確保については、今後、景気回復が確実になった段階で、税の自然増収や、納税者が納得できる徹底した行財政改革による経費節減効果を明らかにした上で、経済や国民生活に与える影響を慎重に考慮し、税制全般の議論の中で検討を進めるべきであります。
 したがって、外形標準課税の導入は絶対に行わないようお願い致します。

3.中小企業における事業承継税制の更なる拡充について

 事業承継税制については、事業用小規模宅地等の相続に係る課税特例措置の拡充や非上場株式の評価方式の見直しなど、ここ二年連続してかなりの改善が図られたところでありますが、なお、相続税・贈与税の最高税率の引下げ及び税率構造の緩和、贈与税の基礎控除額の引上げなどが課題として残されております。これは、まさに相続税改革の仕上げとも言うべきものであり、その実現方を是非とも図って頂くようお願い致します。

4.貸し渋り対策など中小企業金融対策の充実について

 特別信用保証制度については、10兆円の増枠と適用期限を明年3月末まで1年間延長して頂いておりますが、中小企業に対する貸し渋りは、当面かなりの落ち着きを見せているものの、金融機関の再編、不良債権処理が進められつつある中で、今後ともなお予断を許さない状況にあります。また、今後の景気動向如何によっては、資金繰りが逼迫する中小企業が増加することも懸念されます。
 したがって、今後とも、金融情勢の推移を注視しつつ、貸し渋り対策など中小企業金融対策に万全を期して頂くようお願い致します。
 また、政府系中小企業金融三機関の特別融資制度等についても、引き続き充実強化をお願い致します。

5.中小企業のIT革命・EC(電子商取引)への対応円滑化のための支援の充実について

 近年のIT革命の急速な進展及びインターネットの普及とこれを介したECの急激な拡大は、新市場や新業態の創出等新たなビジネスチャンスを生み出すとともに、経済活動の枠組みそのものに大きな変化をもたらしつつあり、いまや中小企業にとって、デジタル経済社会への対応は避けて通れない重要な経営課題となっております。
 こうした中で、わが国経済社会の源泉としての役割が期待されている中小企業においては、デジタル経済社会への対応は必ずしも十分なものとは言えない状況にあり、特に、最新の情報技術の導入やインターネットの高度な利用の面では大企業に大きく遅れており、技術革新・市場の変化のスピードが速く、先行者利益が大きい分野であることを踏まえると、情報力格差が深刻化しつつあり、中小企業に対する早急な対策が望まれるところであります。
 また、IT革命やECへの対応は、初期投資コストが大きく、市場においてネットワークの経済性が要求されることなどから、一企業単位の合理化努力には限界があり、中小企業が効率的に対応していくためには、異業種・異分野の企業との連携による取組みが不可欠であります。
 このため、中小企業に対するIT支援策としては、(1)ITを活用した中小企業の新たなビジネスモデル開発やものづくり技術の情報化等への支援、(2)中小企業のIT・EC対応のためのビジネス情報ネットワークの構築への支援、(3)IT経営戦略アドバイザーの養成や情報リテラシーの向上など、情報人材育成のための支援、(4)インターネット通信料金の欧米並みの引下げなど、中小企業の情報通信インフラ利用コストの引下げ、(5)情報化の対応が遅れている中小企業に対する「特定情報通信機器の即時償却制度」をはじめとする、税制、金融上などの支援の拡充強化等が必要でありますので、これらの対策を強力に推進して頂くようお願い致します。

6.中小企業の発展基盤の抜本的強化に向けた中小企業対策予算の大幅な増額等について

 中小企業が、新中小企業基本法の下で、経営革新や創業・新事業展開に果敢に取り組み、わが国経済のダイナミズムの源泉としての役割を現実に果たしていくためには、自助努力はもとより、国等のきめ細かい配慮に基づく積極的な支援とそのための十分な財政的裏づけが必要であります。
 ついては、新たな中小企業理念の下で、経営革新や創業、新事業の創出に積極的に取り組み、発展基盤の形成・強化を図ろうとする中小企業への強力な支援をはじめ、中小企業施策の抜本的な強化を図るため、中小企業対策予算の大幅な増額をお願い致します。

7.経営革新、創業等への積極的な取組みを支援する中小企業連携組織対策の充実について

 中小企業が、様々な成長分野で、経営革新や創業・新事業展開などに積極的に取り組んでいく上で、技術、人材、情報、資金等の経営資源をすべて単独で保有することは極めて困難であり、組合をはじめとする多様な連携組織に結集し、経営資源を相互に補完し合うことによってその制約を自主的に克服していくことが不可欠となっております。
 現に、最近の中小企業組合においては、異業種や同業種の中小企業が連携し、それぞれの得意分野の技術やアイディアなどを持ち寄り、ITや福祉・介護、環境・リサイクルなど高成長が期待される事業分野など広範な分野で、共同研究開発や新たな事業に取り組む動きや、簡易な創業手段として注目されている企業組合制度を活用して創業に取り組む動きなどが顕著になってきております。また、このような新たな事業等に取り組む動きは、組合のみならず、緩やかな連携組織(法人格を持たない任意グループ)によって行われるケースも拡大しつつあります。
 このように、中小企業の連携の促進は、新たな中小企業政策理念を中小企業が主体性をもって実現していく上において、欠くことのできない極めて重要な政策ツールであることに鑑み、私ども中小企業団体中央会としても、こうした組合をはじめとする中小企業連携組織による新たな課題への取組みに対して、今後とも支援の一層の充実強化を図って参る所存でありますので、その裏づけとなる予算の拡充強化をお願い致します。

8.中心商店街等の活性化について

 本年6月からの大規模小売店舗立地法の施行にあたっては、政府及び各地方自治体は、まちづくり三法の趣旨を踏まえた中心市街地の活性化はもとより、「商店街競争力強化基金」を活用するなど、多様で個性ある魅力的な街づくりを強力に推進して頂くようお願い致します。また、都市計画法制について、農地等もカバーした総合的な土地利用の仕組みとして整備されるようお願い致します。
 さらに、商店街の活性化を一層推進するため、新規開業、新業態開発及び高齢者対応事業等に積極的に取り組む商店街組合等に対する総合的な支援策等の充実強化をお願い致します。

9.有珠山噴火災害に関する中小企業対策の充実について

 平成12年3月31日に発生した有珠山噴火は、ようやく終息に向かう可能性も指摘されているものの、噴火の危険性も当分続くとされており、引き続き厳重な警戒が必要な状況にあります。また、この種の災害は、終息した後も、被害の克服には相当の期間を要することも懸念されます。
 特に、有珠山周辺は、道内有数の温泉地であり、観光産業はもとより、地元商工業にとって有珠山噴火の影響は極めて大きく、まさに死活問題となっております。
 ついては、直接・間接の被害を被っている中小企業を救済するため、利子補給を含めた長期無利子の運転資金融資制度の早期創設を是非ともお願い致します。


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